びーむ色調補正3

圧倒的逸材の苦悩


最後のポイントはアンダラ初登場となる久保ちゃんでした。

他の3期生たちは20th、21stシングルのアンダラに参加してステージを経験していました。
つまり、今回彼女だけが曲と振り付けをいちから覚えなければならなかったのです。

彼女は3期生の中でも早くから頭角を現しました。
舞台『3人のプリンシパル』では最多の第2幕選出回数(15回中11回)。
『Seventeen』で3期生初の専属モデル。
地元宮城の銘菓「萩の月」の菓匠三全のCM起用。
そして乃木坂の20thシングル『シンクロニシティ』では初選抜初福神。

圧倒的な歌唱力と高い演技力、そして舞台度胸。
乃木坂感溢れる儚げなビジュアル。それとは裏腹の高いトークスキル。
そして誰にも負けない乃木坂愛。

どこからどう見ても逸材。
あの「怪物」生田絵梨花の後継者に推す声が上がるほどのポテンシャル。

まさに、乃木坂の未来。

このまま選抜、いや福神に定着し、いずれはセンターを張る人材。
私個人もそう思っていました。

しかし、持っているもののあまりの大きさと、そして強すぎる乃木坂への愛情が生来ネガティブ思考である彼女を苦しめることになります。

体調を崩し、活動休止。

21stシングルと夏の間の活動をほぼすべて不参加だった彼女は、22ndシングルで選抜に選ばれることはありませんでした。


私は正直心配でした。

3期単独ライブや2017年7月神宮での期別ライブで彼女が見せた溢れんばかりのキラキラ感。

あれは失われてしまったのではないか。

そんな恐怖に近い予感がありました。
事実、ライブ開始から数曲の間は彼女の姿を探してもなかなか見つけられませんでした。

でもすべてが杞憂でした。

『私のために 誰かのために』が流れ始め。

久保史緒里は、あのキラキラ感をまき散らしていました。


お帰り。

そう語りかけるような笑顔で歌うかりんちゃんとずんな。

ろってぃー、ちはる、じょーさん。アンダラのいわゆる歌うまメンが今年相次いで卒業する中、現在のアンダラを歌で支えているふたりです。

ふたりと久保ちゃんが微笑みあいながら織りなすハーモニー。

2期生のふたりが後輩の復活を温かく祝福する光景はとても胸に迫るものでした。


おそらく、活動休止さえなければ、彼女がアンダラに参加することはなかったでしょう。

しかし彼女にとってアンダラは約束の場所でもあったのです。


「久保ちゃんがたまに、ひめたんに見えました」


彼女が乃木坂を好きになったきっかけは『何度目の青空か?』。
そう、伝説のアンダラ2ndシーズンの時のシングルです。ここでは多くは語りませんが、いわくつきのあの曲です。

そして初めて乃木坂をTVで観たのが2014年大晦日のCDTV年越しライブ。その時披露されたのがこの『何度目の青空か?』でした。深夜であるため出演できなかった生ちゃんに替わりセンターを務めたのは、2ndシーズンの極限の日々の中、毎日センターとしてこの曲を歌い続けた井上小百合でした。

さらに初めて生で乃木坂を観たのもアンダラでした。中元日芽香が座長として乗り込んだ2016年のアンダラ東北シリーズ。集客面で大苦戦しアンダーメンバーが大きな挫折を味わった公演でしたが、その観客席で感動に身を震わせていたひとりの少女。

それが久保ちゃんでした。

この時の衝撃で彼女は乃木坂入りを熱望するようになります。

2016年9月、3期生オーディションに合格しその夢をかなえた久保ちゃん。

2017年5月、3期生ライブが開催された際に、彼女はあの曲のセンターを任されます。

『何度目の青空か?』。

まさに運命の子。


運命のいたずらが彼女の復活の舞台にアンダラを選びました。

まして座長は2017年アンダラ九州シリーズ、ひめたんの最後を隣で見送ったきいちゃん。

現実は時に、なんてできすぎたシナリオを描くのでしょう。


初日のステージを観た井上小百合はこう言っています。

「久保ちゃんがたまに、ひめたんに見えました」

アンダーセンターを最も多く務めた人。
アンダーの苦悩と輝きの両面を残酷なまでにその身に纏ってしまった人。
そして久保ちゃんに「絶対乃木坂に入る」という決心のきっかけを与えてくれた人。

2017年11月の東京ドーム、最後の『きっかけ』で花道を歩き出したひめたんの手を握り、泣きじゃくっていた久保ちゃんの姿が忘れられません。

ひめたんの代表曲『君は僕と会わないほうがよかったのかな』で場内がピンク一色に染まる中、花道を歩いてきた久保ちゃんの姿は本当にひめたんのようで。

胸が締め付けられました。


デスティニー・チャイルド久保史緒里、堂々の帰還。

彼女は今も、乃木坂の未来です。


変わりゆくもの、受け継がれるもの


アンダラは変わりました。

初期アンダラのヒリヒリするような緊張感はもうありません。

でもあの頃と同じように魂をたぎらせる、きいちゃんのようなメンバーがいます。
アンダラの成長を誇りに思い、後輩に引き継いでいく川後Pをはじめとする先輩たちも。

そして乃木坂愛に溢れる3期生たちは、きっとアンダラの歴史を、その素晴らしさを受け継ぎ、4期生にも伝えてくれるでしょう。


2019年1月時点で、1期生はとうとう15人にまで減りました。

ななみん卒コン、そしてその翌日から3期生がライブに参加し新体制となった2017年2月と同じように、なーちゃんの卒コンと4期生の加入により、また乃木坂は新しい段階に入ります。

でも大丈夫。

この日のアンダラを観て確信したことがひとつあります。

乃木坂は変わり続ける。

でも、乃木坂であり続ける。


長々と書いてしまったアンダラ東京公演レポもこれでようやく終わりです。

お付き合いいただきありがとうございました。