ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

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タオル補正

手にした居場所


振り返れば、いくつかのターニングポイントがありました。

その最初のものは既に述べたアンダラ2ndシーズンです。

ここで見せた彼女のド根性と漢気。

以降、井上小百合は闘将・柱谷哲二ばりの「闘ってる感」を纏うようになります。
この頃からかつてのトレードマーク「大人に言われてやった」ツインテール姿は激減し、ライブでの凛々しいポニーテールが彼女の新たなイメージになりました。
全くの余談ですが、漢気が強すぎるあまり46時間TVの漢気じゃんけんで勝ち残ってしまったのも今となってはいい思い出です笑


そして2015年10月の舞台『すべての犬は天国へ行く』。

ひとりの演者としての彼女の可能性が観る者の目に明らかになった記念すべき舞台です。
外部から「狂った村」への訪問者として観客と同じ目線の狂言回しの役割を果たしつつ、徐々にその狂気に飲み込まれていくという役を見事に演じ切りました。
早撃ちエルザに扮する彼女の登場シーンで鳥肌が立ったのを今でも憶えています。


忘れてはならないのが2016年2月の『乃木坂工事中』での「かわいいが苦手」発言。

デビューから4年。自分のビジュアルにコンプレックスを持ちながらアイドルとしてのあるべき姿に囚われてきた彼女が、その呪縛から解き放たれた瞬間でした。
普通のアイドルグループなら「自分が可愛いとわかってて嫌味言ってんのかこいつ」と叩かれそうなところを乃木坂のビジュアルレベルの高さによって免れるというのも凄いですよね笑


こうして長い時間をかけてゆっくりと本来の自分を出せるようになり、自分の生きていく場所を見つけることができた彼女。

「ツインテールの妹キャラで泣き虫の守ってあげたい女の子」だったはずの彼女は、いつしか「凛々しいポニーテールの漢気キャラで誰かを守るために立ち上がる女性」へと成長していました。

笑顔の日ばかりではなかったけれど


ままならない乃木坂人生でした。

18枚のシングルで選抜入りしたものの、実にそのうち17回が3列目。2列目になったのは福神になった『いつかできるから今日できる』のわずか1回。

でも、素晴らしかった。

『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』と『行くあてのない僕たち』。
代表作と呼べる作品がふたつもできました。

どちらの楽曲も彼女が当時置かれていた状況とリンクし、それを残酷なまでに美しく描き出したMVが残っています。

運営の扱いはどこまでも「名脇役」どまりだったかもしれません。
それでも舞台ではヒロイン格を演じ続けてきました。

2014年:4月 帝一の國
2015年:6月 じょしらく、7月 帝一の國 ~決戦のマイムマイム~、10月 すべての犬は天国へ行く
2016年:3月 帝一の國 ~血戦のラストダンス~、4月 大人のカフェ 飲みかけで帰ったあの娘、5月 じょしらく弐 ~時かけそば~、10月 墓場、女子高生
2017年:5月 あさひなぐ、12月 夜曲
2018年:4月 若様組まいる~アイスクリン強し~、6月・9月 乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」
2019年:3月 愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」、6月 TXT vol.1「SLANG」、9月 LITTLE WOMEN ~若草物語~、10月 フラガール

生き急ぐように舞台に上がり続け、そして最後は必ず想像を超えてきた彼女。

そんな日々の末に、夢である女優としての道が大きく開けました。


ままならない、それでも素晴らしき日々。

君じゃないとさ


あんなに可愛いのに「かわいいが苦手」で中身は男子小学生。
お金が大好き、でも使うのは人のため。口が悪い。言葉が少し足りなくてよく炎上する。
負けず嫌いで意地っ張りで、プライドと不安の間で行ったり来たり。

でもひとたびさゆ推しになってしまえば、そんなすべてが井上小百合でした。

普段はふざけた内容しか送ってこないモバメで、時々ポロっと吐露する本音がファンへの信頼を感じさせて嬉しかったものです。


そして、これほど推し甲斐のあるメンバーもいませんでした。

「自分が応援した子が階段を上っていく」ことこそ醍醐味と考えるアイドルファンの方には理解できないかもしれません。

でも、彼女を推してきたおかげで、色んな感情を味わい色んな景色を見ることができました。

毎回の選抜発表でドキドキして。
代表曲があって。全体ライブで見せ場もあって。
頻繁に舞台に出演して間近でその姿を観ることができて。
アンダラ2ndシーズンや中国シリーズでは決して忘れることのできない感動的な景色を見せてくれて。

乃木坂では極めて珍しい、泥臭く生き様を見せるタイプだった彼女。
あきらめない限り未来はあるということをその歩みで証明してくれました。

私自身、その姿に何度励まされたことか。


最後に例によって勝手ながら彼女の今後について考えてみます。

演技はもちろん歌もダンスも高いレベルで、なんならイラストも書けて料理も作れちゃう隠れ万能戦士なさゆ。
と言っても、もはや舞台女優としての姿しか思い浮かびませんね笑

そこで願うことはふたつ。

ひとつは乃木坂の後輩が『犬』を再演し、その時に鳥居みゆきさん演じたデボア役をさゆがやること。

もうひとつは、いつかどこかの舞台で伊藤万理華と共演することです。


井上小百合さんの8年間に、あらん限りの感謝を込めて。

残りの半年間がどうか笑顔に満ちた日々でありますように。


タオル補正

壮絶で濃密で劇的にして怒涛の2週間


始まったアンダーライブ2ndシーズン。
アンダー曲『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』のセンターを任された井上小百合は座長として臨みました。

しかし、15日間18公演という過酷なスケジュール。
全員出ずっぱり、踊りっぱなしのハードなセットリスト。
以前から痛めていた彼女の膝は限界を超え、ついに欠場という判断が下されます。

そしてその同じ夜、ネット上を駆け巡ったのがあのスキャンダルでした。

未曽有のバッシング。まさに乃木坂史上最大の危機。

凄まじい逆風が吹き荒れる中で迎えた10月11日、昼の部のこと。

六本木ブルーシアターに傷だらけの天使が舞い降ります。

両膝をガチガチにテーピングで固めながら、鬼神のごときパフォーマンスを繰り広げる井上小百合。大切なものを守るため、ボロボロになりながら立ち上がるアンダーメンバーたちの姿は観る者の心を震わせました。

こうしてアンダラ2ndシーズンは伝説となり、かつて「無職」と呼ばれたアンダーの存在価値は格段に向上します。

アンダーライブ2ndシーズンを題材にした小説を小説投稿サイト「エブリスタ」で公開していますので、よろしければこちらもどうぞ。


伊藤万理華との「さゆまり」さらに中元日芽香を加えた「温泉トリオ」。この日々を共に戦ったアンダラセンター3代は、戦友として特別な絆で結ばれることになります。

さゆまり、その闘いと挫折


その後、12thシングルで選抜復帰した彼女。
しかしこの先も決して順風満帆とはいきませんでした。

乃木坂の選抜はさらに硬直化が進んでいました。

星野みなみ、衛藤美彩、齋藤飛鳥とさゆまり。この5人が新たに選抜固定になり、前の記事で書いた「16人中13人固定」から「16人固定」へ。アンチかわしのため一時的に選抜落ちしていた堀未央奈を加えれば「17人固定」。「思い出選抜」枠もなくなり、もはや選抜に空きがないに等しい状況でした。

結果的にアンダーメンバーのファンの敵意は相対的に握手人気が劣っていた生駒里奈、万理華、さゆに向かいます。


そして15thシングル『裸足でSummer』。

運営にとってもこれ以上硬直した状態が続くとアンダーメンバーのモチベーションが保てないという苦渋の決断だったのでしょう。

選抜から落ちたのは、さゆまりでした。

結局、ふたりは運営に「便利屋」としていいように使われていた感があります。それは裏返せば信頼感の表れかもしれません。

ずっと選抜落ちしていないメンバーを落とすとモチベーションが心配だけれど、さゆまりならアンダーでもしっかりやってくれる。そんな計算があったのではないでしょうか。

歌番組で選抜メンバーの代打を務め、アンダーライブを成功させ、『じょしらく』『すべての犬は天国へ行く』『墓場、女子高生』とグループ内の舞台を牽引する。どこにいてもモチベーションとスキルの双方を高く保ち、結果を残し続けたふたりに対する甘え。今となってはそう感じられます。

一説によれば、万理華が卒業を決意したのはこの時でした。


罪滅ぼしのつもりか、ふたりにはユニット曲とMVが用意されます。

それが『行くあてのない僕たち』。

タイトルと歌詞を見たふたりは「何年も必死で頑張ってきたのに、まだ私たちには行くあてがないのか」と号泣したといいます。

それでもこの曲で観せた「背中合わせの相棒」感溢れるふたりのパフォーマンスは強烈な印象を残し、いつしか『行くあて』は名曲と呼ばれるようになります。

2016年神宮。アンダラ中国シリーズ。そして2017年さいたまスーパーアリーナ。どれも忘れられません。


そして2017年10月、伊藤万理華は躍進する3期生たちに道を譲るように卒業を発表。

彼女らしい、潔い引き際でした。


『逃げ水』のMVでスケバンニートに扮したふたりがセグウェイを転がして去っていくシーン。

今観るとなんだか切なくなります。

変わりゆく景色の中で


話をさゆのキャリアに戻します。

16thシングルで万理華とともに選抜復帰し、これ以降は活動休止した24thを除きすべて選抜入り。それでも3期生加入など厚みを増した乃木坂において、「選抜ボーダーメン」のそしりを受け、アンチの激しい攻撃は続きました。

ずっと目標にしていた福神入りは19thシングルたった1回でした。それも盟友・万理華の卒業福神と一緒だったのでまた「抱き合わせ」だの「記念福神」だのとバッシングされます。

握手人気がずっと選抜ボーダーラインあたりだったのも事実です。初期に高い握手人気を誇ったメンバーが早々にいわゆる「握手免除」になり、同じ土俵で勝負できなくなってしまったのも厳しかったように思います。

釣り対応ができないので握手人気が爆発するということもない。いわゆる「勘がいい」タイプではないしボキャブラリーもない(結果ちょいちょい炎上する)のであまり番組では活躍できない。そのため推し変・推し増しもそれほど期待できない。
(これ書いていて気づいたんですが、秋元真夏と真逆のスペックですね笑)

急速に大きくなるグループ。メンバーもファンも入れ替わり新しいものがもてはやされる中、地道に少しずつ少しずつファンを増やし一定の人気を保ち続けたのはむしろ称賛に値するのかもしれません。


2017年には温泉トリオのふたりが相次いで卒業します。

それ以降、常に「次はさゆではないか」という憶測が飛び交っていました。

本人からもいつしかギラギラしたコメントは影を潜め、グループとメンバーへの愛着、そして後輩たちへの信頼を公言するようになります。今にして思えば、自らの引き際を考え始めた多くの1期生と同じように。


2019年7月、全国ツアーへの不参加と24thシングルの活動休止が相次いで発表されました。これまで殺人的なスケジュールを押して参加し続けてきた彼女の不参加に、ファンはいよいよかと覚悟を迫られます。

そして、その日はやって来ました。

アンダラ2ndシーズンの初日から、ちょうど5年後のことでした。


続きます。
【乃木坂46考察】凍てつく地面を転がるように走りだそう ~井上小百合の卒業に寄せて④

タオル補正
ついにその日が来てしまいました。

2019年10月5日、公式サイト上で井上小百合さんの卒業が発表されました。

私にとっては8年間ずっと応援してきた推しの卒業です。
ずっと前から覚悟はしていましたが、だからといって受け止められるものでもないんだな、と今感じています。

言い尽くせぬ感謝を込めて、彼女の8年間を振り返りたいと思います。

ままならない日々


ままならない。
それが井上小百合の乃木坂人生でした。

本人も、ファンも、そしておそらく運営にとっても。

スタートした瞬間は順調に見えたのです。

つぶらな瞳、綺麗な鼻筋、小さな口。いかにも和風美少女という整ったビジュアル。ツインテールの妹キャラで泣き虫の守ってあげたい感。さらに戦隊オタというフックまで装備。普通のアイドルグループなら大人気で不動のフロントメンバーだったでしょう。
事実、結成直後のお見立て会では白石麻衣、高山一実に続く3番人気。

しかし、デビューシングル『ぐるぐるカーテン』では選抜入りするもポジションは3列目でした。

ただ、当時スタッフからは「(センターの)生駒里奈が太陽なら、君は月のような存在」と言われたそうです。想像ですが、「3列目から徐々に階段を上っていく」シナリオ候補のひとりだったのではないでしょうか。3列目とはいえこの後も5thシングルまでは中央付近に配置され続けたことからもそれが窺えます。

そして、その時既に最初の躓きがありました。
冠番組『乃木坂って、どこ?』で放送された選抜発表。そこで彼女は「悔しい、もっと上に行きたい」と涙を流します。控えめな態度で選抜された喜びを述べるメンバーたちの中にあって、感情を露わにするその姿はいかにも異質に映りました。
そして当然のことながら、アンダーメンバーのファンから激しいバッシングを受けます。

以降、さゆの乃木坂人生はアンチにつきまとわれるものとなります。


さらに彼女が入った乃木坂46は、これまでの常識が通じないグループでした。

アイドルは成長物語を見せるもの。
そんなセオリーに則り初代センターに選ばれたのは、田舎っぽさの中にキラリと光る原石感を漂わせる生駒里奈でした。その両サイドも当時10代半ばの生田絵梨花・星野みなみで固めるという定石通りの采配。

しかし、このフロント3人の人気は思うように上がりませんでした。

圧倒的な人気を得たのは白石麻衣・松村沙友理・橋本奈々未の御三家。後に深川麻衣も続きます。「綺麗なお姉さん」が人気上位を独占というのはこれまでのアイドルでは考えられないことでした。

AKB48の公式ライバルという成り立ちゆえなのか、「いかにもアイドル」というものに対しむしろ拒否反応を示すファンが多かったように思います。

これも、さゆにとって逆風でした。

女優志望の彼女にとって元々そのアイドル然としたビジュアルはコンプレックスでした。
しかしオーディションで何度も「女優よりアイドル向き」と言われ続け、そんなに言われるなら前向きにそれを活かしていこうとアイドルに。それなのに、なんとそこでもそのビジュアルが裏目に出るという考えられないほどの皮肉。

余談ですが、初期にツインテールをしていたメンバー(さゆ以外では川後陽菜、斎藤ちはる、中元日芽香、星野)は例外なく人気面で苦戦していました。

そして抜群の握手対応により西野七瀬が一気にトップグループ入りを果たします。
泣きながら「太った鳩が好きなんです」と語る衝撃の名場面でなーちゃんは守ってあげたいキャラの座も手にし、逆境から階段を上るシナリオも彼女のためのものとなります。

他にも秋元真夏、衛藤美彩らが「釣り師」と呼ばれるほどの対応の良さで握手人気を伸ばしていく中、さゆは伸び悩みます。後に明らかになる彼女のパーソナリティを見れば、さもありなん。釣り対応なんて、どだい無理な話だったんです笑

下がっていく序列


気がつけば、デビューから6枚目のシングルまで彼女のポジションはずっと3列目。

太陽であるはずの生駒ちゃんが輝きを失うのと比例するように、それを反射して輝く月のさゆも存在感を失っていきます。

手が届きそうだったはずの福神は、いつしか遠いものになっていました。

初期の乃木坂において、選抜は16名中13名が固定というイメージがありました。
3rdシングルで共に初選抜となったまいまいと若月佑美が、そして4thでサプライズ復帰した真夏さんが選抜固定メンとなる過程で、中田花奈、斉藤優里、市來玲奈といった選抜固定と思われていたメンバーがアンダーを経験します。
そして残る選抜固定メンのうち、生駒、星野、井上の3人が「ゴリ押し」呼ばわりされアンダーメンバーのファンから激しい憎悪を向けられます。

ここでも増幅するアンチ。

そしてついに。7thシングル『バレッタ』での2期生堀未央奈のセンター抜擢というサプライズの煽りを受ける形でアンダーに落ちます。

続く8thでもアンダー。

ただ、この期間に彼女にとって大きな意味を持つ出来事がふたつありました。

2014年4月13日の幕張メッセで開催された、シーズンゼロとでも言うべき初のアンダラ。
そして樋口日奈とのWキャストでヒロイン美美子を演じた、舞台『帝一の國』。

アンダラと舞台。
このふたつが彼女の未来を変えることを、まだこの当時は知る由もありません。


9thでは選抜に復帰し喜んだのも束の間、なんと選抜期間中に冠番組で彼女の発言がオンエアされることは一度もありませんでした。
完全なる、空気。

10thでは当然のように再びアンダーへ。

正直、当時は私自身も落胆しこう思っていました。

ああ、序列っていうのはこうやって下がっていくんだな。そして二度と取り戻せないんだな。
このままアンダーに定着して、尻すぼみのまま卒業していくんだろうか。


迎えた10thシングル期間。

そこで待ち受けていたのは、想像を絶する極限の日々でした。

アンダーライブ2ndシーズンです。


続きます。
【乃木坂46考察】頼りない君もいつしか僕らを救う明日の羽になった ~井上小百合の卒業に寄せて③

びーむ完成版
ずっと前から覚悟はしていましたが、ついにその日が来てしまいました。

2019年10月5日、公式サイト上で井上小百合さんの卒業が発表されました。

私にとっては8年間応援してきた推しの卒業です。

正直、今は言葉にできません。


奇しくも、はちょっと言い過ぎかもしれませんが、ずっと書き綴っていたアンダーライブ2ndシーズンを題材にした小説をつい先日完結させたところでした。

「井上小百合 卒業」でこの記事にたどり着いたさゆ推しの皆さん、そして彼女の卒業を惜しんで下さる方々にぜひ読んでいただきたいです。

『アンダラ伝説』(小説投稿サイト「エブリスタ」で公開しています)

2014年10月11日。
ブルーシアターのステージに舞い降りた、傷だらけの天使の姿が今も忘れられません。

奇しくもと言えば、2ndシーズンの初日からちょうど5年だったんですね。

よくぞここまで。

タオル補正

『じょしらく弐』が切ない


個人的に忘れられない場面があります。

2016年5月に行なわれた舞台『じょしらく弐 〜時かけそば〜』。
そのクライマックスで彼女演じる防波亭手寅(ぼうはてい・てとら)がひとり残されて、コールドスリープする仲間たちをずっと見守るというシーンがありました。
それを見た時に「ああ、桜井玲香は最後のひとりになるまで残って、キャプテンとしてみんなの卒業を見届けるつもりなんだ」と勝手に思って勝手に感動したのを思い出します。

あの舞台ではアイドルグループの解散ライブをメンバーたちが演じていたのも印象的でした。
蕪羅亭魔梨威(ぶらてい・まりい)を演じた井上小百合の「悲しいこともつらいこともいっぱいあったけど、皆さんのおかげでここまで来れました」という台詞に、やがて訪れるであろうその日を思って目頭が熱くなったのは内緒です笑

コメディなのに、アイドルという職業の儚さを痛切に感じさせる内容でした。

最近CSで放送されていましたが、今観るとその内容と当時から今に至るまでの乃木坂に起きた出来事とが色々とリンクしてとても切ないです。あとひめたんがやたらと可愛くて、それがまた切ない。


この舞台の後から桜井玲香は体調を崩して療養します。

体調不良により真夏の全国ツアー2016を全欠席。
そしてツアーの最後は乃木坂の聖地・神宮球場でのバスラ3Daysでした。

初日のオープニング映像で「桜井」と書かれたマイクを握る誰かの姿がモニターに流れ、巻き起こる大歓声。

あの時、よくぞ戻ってきてくれた。今改めてそう思います。


それ以降でしょうか。徐々にスポークスマンとしての役割は減っていきます。それまで対外的な発表の場には桜井がいることがほとんどでしたが、外番組で経験を積んで喋れるようになってきた秋元真夏や高山一実がその役割を担うことが増えました。


別れの時が近づいて


東京ドームの前ぐらいからだと思いますが、少しずつグループの未来に対して前向きな発言が目立つようになります。

特に3期生に対する信頼を繰り返し言い表す彼女の言葉は、後輩たちにとって大きな支えになったことでしょう。

今にして思えば、これも自身の卒業への準備だったのかもしれません。


2018年には盟友との別れがありました。

生駒里奈と若月佑美。
キャプテン桜井玲香を両脇で支えてきたふたりでした。

生駒ちゃんとの絆。
初代センターとキャプテン。誰も答えを知らずに手探り状態の活動初期に、重い責任を課せられた者同士の熱い信頼関係。
本来は強いことを言えるタイプではないふたりが協力してメンバーに向かって真摯に語りかけ、グループの空気を引き締めたことは多くの証言があります。

そして「若桜」「れかつき」と呼ばれファンにも親しまれた若とのコンビ。
大好きで楽屋でもプライベートでも仲が良くて、グループ内でのポジションも近くて、『犬』や『松子』で同じ舞台を経験して。とてもとても特別な存在の「相方」。

それまではメンバーの卒業を最後は笑顔で見送ってきた桜井が、このふたりの卒コンだけははっきり違う表情を浮かべていました。

嫌だ

映画館のスクリーンで大写しになったその表情は、観る者の胸を締めつけるものでした。


ずっと前から


どこからどう見ても美人で、抜群の歌唱力と魅力的な声を持っていて。ダンスはしなやかかつ切れがあり、演技までできちゃう。
個人的にはビジュアルもパフォーマンスも、全方位でグループトップクラスだと思います。

でもお高く留まったところが全くなく、むしろ「ポンコツ」なんて呼ばれて親しまれていました。ポンコツといってもちょっと天然で勘違いとか言い間違いが多いというだけなのですが。

完璧すぎるスペックだと嫌味になるので、ちょっと隙を残しているところが逆に完璧ですよね笑


当初の生真面目な印象が和らぎ、いつからか肩の力が抜けた姿をファンにも見せるようになってきた彼女。

『乃木中』で誰よりも大きく口を開けて豪快に笑う姿が好きでした。
普通なら下品になりそうなのに決してそうならない。

11thシングルのペアPVを撮った小泉監督が語った「可愛く撮られなくても気にしないっていうスタンスの方」というコメントが彼女の素晴らしさを端的に表していると思います。


卒業発表のブログはこう締めくくられています。

「グループの更なる成長のためにも、未来の新たな仲間のためにも、何より私自身のためにも。早く一人前になって、この人、乃木坂46の初代キャプテンだったんだよ!とみんなの自慢になれる様に頑張らなきゃな!!」


気づいてなかったんですか?

あなたは、ずっと前から自慢のキャプテンでした。


8年間、本当にお疲れさまでした。


そして、新キャプテンに任命された秋元真夏さん。

偉大な前任者の後を継ぐプレッシャー。1期生の卒業が相次ぎ激動の真っただ中にあるグループ。今キャプテンになることは火中の栗を拾うようなものかもしれません。
聡い真夏さん、ましてや「女子校カルテット」として桜井玲香の苦労を間近で見てきた彼女が感じる不安は相当なものでしょう。

それでも、大切なものを守るためにキャプテンを引き受けてくれた。

その漢気は素敵です。

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