ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

カテゴリ:乃木坂46 > 桜井玲香

びーむ色調補正3

そして何かが託された


アンコールからは桜井玲香卒業セレモニーでした。

ドレスを着て登場した彼女がひとりでファンに語りかけます。
そして歌われたのは、この場が最初で最後の披露となるソロ曲『時々 思い出してください』でした。最初は笑顔だった桜井。しかしステージ上に登場してきたメンバーの寂しさを感じ取り、自らも涙を流します。

続く曲は『夜明けまで強がらなくてもいい』。
イントロの4期フロント3人と先輩が手を取り合う振り付け。遠藤さくらの手を取った桜井が何か語りかけ、感極まったさくちゃんは力強く頷きながら顔をくしゃくしゃにして泣き出します。そこに被さるファンの「オイ!オイ!」の絶叫。いやあ、あれはグッときました。

「あとは任せたよ」なのか、それとも「あなたなら大丈夫」か。
初代キャプテンから、未来のエースへ。何かが託された瞬間でした。

桜井玲香の『夜明けまで』。大阪ドームと神宮、わずか4回しかステージ上では披露されなかった特別なものです。正直この曲あんまりだったんですがこれを見せられては抗えるはずもなく、好きな曲のひとつになりました。
ちなみに以前の記事で「ヘイはいらん」と書いたのですが、ライブではめちゃめちゃ盛り上がります笑


継承の儀式が済んだところで『ロマいか』から『僕だけの光』。
そしてトロッコで場内一周しステージに戻ってきた桜井が叫びます。「にゃんが来てくれたよ~!」。ただひとりこの日のステージに参加していなかった井上小百合がここでサプライズ登場!

この日は出演するミュージカル『リトル・ウィメン』の開幕2日前。既に劇場入りして劇場稽古を行なっている切羽詰まった状況の中、キャプテンの最後を見届けるために駆け付けます。
94年組。他星ユニット。犬メン。いくつもの共通点を持つふたりの間にはファンに見えている以上の深い結びつきがあるのでしょう。

そして先日卒業を発表した井上小百合にとってもこれが最後の神宮となりました。


思い出で散らかった部屋を出てゆくよ


次期キャプテン秋元真夏から心のこもった手紙が読まれ、最後はやはり『乃木坂の詩』。
涙にくれるメンバーに囲まれながら桜井は笑顔で最後の挨拶をし、退場していきました。

それでも「玲香」コールが鳴り止みません。

それに応えて駆け出してくるメンバーたち。そして歌われたのはなんと『会いたかったかもしれない』!!

ここでこの曲を持ってくるか!

AKB48の公式ライバルとしてスタートした乃木坂の歴史。
オケも歌詞も同じ、メロディラインをちょっといじっただけの、タイトルからしていかにもネタ先行の秋元康の思い付きっぽい曲。「パチモン」と呼ばれAKBファンから嘲笑されたけれど、ライブではやたらと盛り上がるので初期のセットリストでは重宝されていた曲。
しかし乃木坂が独自の個性と評価を確立した現在となっては歌われる機会も減っていました。

個人的には最初のプリンシパルが忘れられません。Bフレでメンバーが両サイドのカメラに駆け寄るシーンを下手側最前列で観た時に「一体俺はどこを見ればいいんだ!可愛いが多すぎて脳が処理できない!」と思ったあの日の衝撃。まあこれは完全に余談ですが。

この曲が選ばれた理由はきっと、
初心に返る。

言葉にするのは簡単だけれど、あまりにも状況が変わってしまった今となってはとても難しいこと。

初めて撮影したMVで、何が正解かもわからないままただ懸命に言われることをやっていたあの頃、メンバーもスタッフもそしてファンさえも、乃木坂がここまで大きくなるとは誰も思っていなかったあの頃へ。

私も、乃木坂46も。
もう一度、初心に返ろうよ。

そんな桜井玲香からのメッセージではないでしょうか。


最後に場内を一周する彼女の前に現れたのは相方、若月佑美(この日も相変わらず驚くほど美形!)。

「よく頑張りました」

この言葉にすべてが込められていた気がします。


セレモニーの中で桜井玲香はこう語っています。

「グループの外で、これからも乃木坂を作り続けていく」

私が外の世界でグループの価値を上げてくる。そう言ってるんです。

見ようによってはもの凄い自信。
でも、彼女だからこそ言える言葉。

全方位にハイスペックなポテンシャルを持つ彼女。これまではグループのことを第一にして、どこかブレーキをかけていた部分があったのかもしれません。

でもこれからは。

自分が全力を振り絞ることがグループのためになる。
そう信じて、堂々と「元乃木坂」を名乗っていく。

なんて頼もしい。惚れそうだ笑

これからの彼女がどんな姿を見せてくれるのか、本当に楽しみです。

タオル補正

『じょしらく弐』が切ない


個人的に忘れられない場面があります。

2016年5月に行なわれた舞台『じょしらく弐 〜時かけそば〜』。
そのクライマックスで彼女演じる防波亭手寅(ぼうはてい・てとら)がひとり残されて、コールドスリープする仲間たちをずっと見守るというシーンがありました。
それを見た時に「ああ、桜井玲香は最後のひとりになるまで残って、キャプテンとしてみんなの卒業を見届けるつもりなんだ」と勝手に思って勝手に感動したのを思い出します。

あの舞台ではアイドルグループの解散ライブをメンバーたちが演じていたのも印象的でした。
蕪羅亭魔梨威(ぶらてい・まりい)を演じた井上小百合の「悲しいこともつらいこともいっぱいあったけど、皆さんのおかげでここまで来れました」という台詞に、やがて訪れるであろうその日を思って目頭が熱くなったのは内緒です笑

コメディなのに、アイドルという職業の儚さを痛切に感じさせる内容でした。

最近CSで放送されていましたが、今観るとその内容と当時から今に至るまでの乃木坂に起きた出来事とが色々とリンクしてとても切ないです。あとひめたんがやたらと可愛くて、それがまた切ない。


この舞台の後から桜井玲香は体調を崩して療養します。

体調不良により真夏の全国ツアー2016を全欠席。
そしてツアーの最後は乃木坂の聖地・神宮球場でのバスラ3Daysでした。

初日のオープニング映像で「桜井」と書かれたマイクを握る誰かの姿がモニターに流れ、巻き起こる大歓声。

あの時、よくぞ戻ってきてくれた。今改めてそう思います。


それ以降でしょうか。徐々にスポークスマンとしての役割は減っていきます。それまで対外的な発表の場には桜井がいることがほとんどでしたが、外番組で経験を積んで喋れるようになってきた秋元真夏や高山一実がその役割を担うことが増えました。


別れの時が近づいて


東京ドームの前ぐらいからだと思いますが、少しずつグループの未来に対して前向きな発言が目立つようになります。

特に3期生に対する信頼を繰り返し言い表す彼女の言葉は、後輩たちにとって大きな支えになったことでしょう。

今にして思えば、これも自身の卒業への準備だったのかもしれません。


2018年には盟友との別れがありました。

生駒里奈と若月佑美。
キャプテン桜井玲香を両脇で支えてきたふたりでした。

生駒ちゃんとの絆。
初代センターとキャプテン。誰も答えを知らずに手探り状態の活動初期に、重い責任を課せられた者同士の熱い信頼関係。
本来は強いことを言えるタイプではないふたりが協力してメンバーに向かって真摯に語りかけ、グループの空気を引き締めたことは多くの証言があります。

そして「若桜」「れかつき」と呼ばれファンにも親しまれた若とのコンビ。
大好きで楽屋でもプライベートでも仲が良くて、グループ内でのポジションも近くて、『犬』や『松子』で同じ舞台を経験して。とてもとても特別な存在の「相方」。

それまではメンバーの卒業を最後は笑顔で見送ってきた桜井が、このふたりの卒コンだけははっきり違う表情を浮かべていました。

嫌だ

映画館のスクリーンで大写しになったその表情は、観る者の胸を締めつけるものでした。


ずっと前から


どこからどう見ても美人で、抜群の歌唱力と魅力的な声を持っていて。ダンスはしなやかかつ切れがあり、演技までできちゃう。
個人的にはビジュアルもパフォーマンスも、全方位でグループトップクラスだと思います。

でもお高く留まったところが全くなく、むしろ「ポンコツ」なんて呼ばれて親しまれていました。ポンコツといってもちょっと天然で勘違いとか言い間違いが多いというだけなのですが。

完璧すぎるスペックだと嫌味になるので、ちょっと隙を残しているところが逆に完璧ですよね笑


当初の生真面目な印象が和らぎ、いつからか肩の力が抜けた姿をファンにも見せるようになってきた彼女。

『乃木中』で誰よりも大きく口を開けて豪快に笑う姿が好きでした。
普通なら下品になりそうなのに決してそうならない。

11thシングルのペアPVを撮った小泉監督が語った「可愛く撮られなくても気にしないっていうスタンスの方」というコメントが彼女の素晴らしさを端的に表していると思います。


卒業発表のブログはこう締めくくられています。

「グループの更なる成長のためにも、未来の新たな仲間のためにも、何より私自身のためにも。早く一人前になって、この人、乃木坂46の初代キャプテンだったんだよ!とみんなの自慢になれる様に頑張らなきゃな!!」


気づいてなかったんですか?

あなたは、ずっと前から自慢のキャプテンでした。


8年間、本当にお疲れさまでした。


そして、新キャプテンに任命された秋元真夏さん。

偉大な前任者の後を継ぐプレッシャー。1期生の卒業が相次ぎ激動の真っただ中にあるグループ。今キャプテンになることは火中の栗を拾うようなものかもしれません。
聡い真夏さん、ましてや「女子校カルテット」として桜井玲香の苦労を間近で見てきた彼女が感じる不安は相当なものでしょう。

それでも、大切なものを守るためにキャプテンを引き受けてくれた。

その漢気は素敵です。

タオル補正
2019年7月8日、公式サイト上で乃木坂46キャプテン、桜井玲香さんの卒業が発表されました。

まずはこれまでの歩みを振り返ってみましょう。

いつしか消えたアンチ


彼女は2012年2月のデビュー直前に冠番組内で暫定キャプテンに、そしてその6月に正式にキャプテンとして任命されます。メンバーの投票による選出だったと言われています。

はっきりした顔立ちとハキハキ喋る姿。幼稚園から私立の女子校という経歴。そして漂うお嬢様感。いい意味で「大人受けのいい」彼女。
結成当初「公立共学校」のAKB48対し「私立女子校」のイメージと評された乃木坂のキャプテンとしてはうってつけの人材だったのでしょう。

しかし、これは弱冠18歳の彼女にとってとても重い荷でした。

AKB48高橋みなみの強烈なリーダーシップと比較され「何もやっていない」と容赦ない批判を浴びせられたのです。

そして、年齢、人気、ポジションが自分より上であるメンバーが何人もいる状態。

当時をご存じない方は驚かれるかもしれませんが、初期の彼女は特にアンチが多いメンバーのひとりでした。

当初はなかなか握手人気が上がらなかったこともあり、キャプテンという役職による選抜聖域呼ばわりをされていたのです。

デビューシングル『ぐるぐるカーテン』こそ3列目でしたが、2nd『おいでシャンプー』ではフロント。さらに続く『走れ!Bicycle』もフロントだったのですが、なぜか福神からは外れるという謎の采配。(フロントで福神でなかったのはこの時の桜井玲香と『バレッタ』センター堀未央奈がなぜか福神扱いでなかった2例だけです)

このあたりのモヤモヤがファン心理に与えた影響は決して小さくありませんでした。2作連続フロントという状況で臨んだ最初のプリンシパルでは全公演2幕出演するものの、ほとんどトランプ役(観客投票で9位以下)と非常に苦戦します。

そして彼女がフロントに立ったのはこの『走れ!Bicycle』が最後になりました。

4thから12thまではずっと2列目で福神。
唯一の例外は福神の人数をフロントの5名だけに絞った8th『気づいたら片想い』でした。

この時の選抜発表で、彼女はずっと抱えていた胸の内をこぼします。
「キャプテンだからずっと福神に入れてるんだって言われる、それが悔しい」

6thシングルあたりからは握手人気も向上し、完売かそれに準ずる売上を出すようになります。しかし御三家の厚い壁、西野七瀬の躍進、交換留学生松井玲奈のフロント固定などの状況が絡み合い、彼女を再びフロントへという機運が高まることはありませんでした。

この頃から、彼女は演技の道に活躍の場を見出します。
2014年10月の『Mr.カミナリ』を皮切りに舞台へのに出演を積み重ね、現在ではグループ内でも屈指の舞台メンという評価を不動のものとしています。

13thから18thは2列目と3列目をいったりきたり。
19th以降はまた24thまでずっと2列目で福神。
人気・ポジションとも選抜メンバーの中間あたりの位置を保ち続けます。

この時期は、その立場ゆえか一歩引いた場所からグループ全体を眺めていた印象です。
「メンバーと一緒の撮影だと無意識のうちに引いてしまう」と語っていたこともありました。


ふと気がつけばあんなにいたアンチはほとんど見かけなくなりました。

彼女のポジションと人気のバランスが取れてきたことも、もちろんあるでしょう。
ビジュアルとパフォーマンスのレベルの高さに多くの人が気づいた、それもあります。

しかし何よりも、乃木坂の魅力である雰囲気の良さの一端を間違いなく桜井玲香の穏やかなキャプテンシーが担っていることを、多くのファンが認めるようになったからではないでしょうか。


たとえ時が戻せたとしても


かつてインタビューで彼女はこう語っています。

「キャプテンという重みは、思いのほかズシンとあるんです。考え方から何から、何をしていてもキャプテンということを意識してしまいます」

自分の発言がグループの意見と受け取られる怖ろしさ。そして時には自分の思いとは違うことをキャプテンとして言わなければならない場面もあったことでしょう。

同じ記事で、キャプテンを辞めたいと思ったことは?と問われた時の答え。

「あります。やりたい、やりたくない……の繰り返しで。本当に紙一重。常に葛藤しながらです」

そして最後にこうつけ加えています。

「時々思うんです。もしキャプテンじゃなかったら、どんな乃木坂46人生になってたかなって」

もしキャプテンという枷がなかったら彼女がどれほどの輝きを放ったか。それを見てみたかったという気持ちは確かにあります。

でも、彼女がキャプテンではなかった場合の乃木坂を見たいとは思いません。


キャプテン、桜井玲香。

それが間違いなく正解だったと確信しているから。


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