ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

カテゴリ:乃木坂46 > 楽曲考察

タオル補正
『羽根の記憶』
乃木坂46の12thシングル『太陽ノック』カップリング曲。セブンイレブン限定版収録。2015年7月22日リリース。歌唱メンバーは『太陽ノック』選抜メンバー18人、センターは生駒里奈。

杉山楽曲そして乃木坂の「美」のワンオブザベスト


杉山勝彦楽曲の中でも屈指の名曲。

と言うたびに友人からは「いやMV補正入ってるだろ」とつっこまれますが、まあそりゃ補正も入りますわな。

誤解を恐れずに言えば「一番美しい頃の乃木坂46を永久保存したMV」でしょう。

こういうことを言うと「1期至上主義者かよ」と叩かれそうですが、私は正真正銘のWMD(割とみんな大好き)ですのでまあ怒らずに最後まで読んでください。

乃木坂の全盛期はいつか。

ファンそれぞれに思うところがあるし、そもそも推しメンが誰かによって全然認識も違ってくることでしょう。何なら非常に揉めるところです笑
個人的にはその話題になると頭をよぎるのがこの『羽根の記憶』のMVです。
(まあグループとしての全盛期がここだとは正直思っていないんですが)

もちろんそれぞれのメンバーにおける「美の極致」は時期がバラけるでしょう。ただこと「1期生」というくくりでは全員のビジュアルがひと通り洗練され完成の域に達したのはこの頃だと思っています。

それはつまり、最後のピースである齋藤飛鳥のビジュアルが仕上がったということを意味します。

MV開始1分過ぎの飛鳥の美しさたるや。
彼女が15thシングル『裸足でSummer』のセンターに抜擢され一気にブレイクするまだ1年前のことです。

歌唱メンバー=『太陽ノック』の選抜である18人も、斉藤優里を除けば全員が後に選抜固定となる強力布陣。ちなみに新内眞衣はこの時が初選抜でしたのでちょっと初々しいです。

さらにそのメンバー全員がきちんとフィーチャーされるカット割り。
これだけのビジュアルが揃っていればそれを素直に見せるだけで素晴らしい作品になるということを証明しています。秋元康なら「こんな当たり前のことやってもしょうがないんだよ!」とか的外れな指摘をするところでしょうが笑

そして何より、深川麻衣と橋本奈々未がいます。

グループにおいて特別な役割を果たし、多くの年少メンバーから慕われ、高い人気でグループを牽引したふたり。

乃木坂を乃木坂たらしめたのは間違いなく1期生たちで。
そんな彼女たちの作り上げた世界の完成形こそ、この頃から翌2016年6月にまいまいが卒業するまでの1年にも満たない期間。

私はそう考えています。

「ベストワン」はそれぞれのファンの思い入れで決めればいい。
ただ乃木坂の「美」という視点では、まいまいとななみんがいるこの時期が「ワンオブザベスト」に入るのは間違いないでしょう。

まいまい卒業寸前の『NOGIBINGO!6』でのメンバーのビジュアルは本当にとんでもなく素晴らしいです。これ書いちゃうと論旨がずれますが笑



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やはりこの人、橋本奈々未


そしてもうひとつ。
この曲、個人的には「あらかじめ作られた乃木坂の解散シングル」だと思っています笑

 想像してみた 10年後の自分

こんなセンチメンタル全開のフレーズで始まるこの曲。

MVで描かれるのは「乃木坂後」のメンバーの姿。
ただ星野みなみと齋藤飛鳥が学生服なので少なくとも「10年後」ではないですね笑

彼女たちは離れ離れで、それぞれの場所でそれぞれの時間を生きています。

明らかに芸能界に残っている描写なのは生駒里奈、生田絵梨花、そして松村沙友理の3人だけ。他のメンバーは一般人に戻っているような日常が描かれています。

そしてその中でも異彩を放つのがやはりこの人。

橋本奈々未。

彼女のいる場所はコインランドリー。

生活感。
ななみんのシーンだけ、それがあるのです。

ずっと前から、卒業する時は芸能界引退と決めていた。
だからあえてこんな生活感を醸し出すシチュエーションでの撮影を選んだんじゃないか。

他のメンバーたち(どこかスタイリッシュな日常を切り取ったイメージ)との対比でそんな幻想を抱かせるのも彼女ならではですね。

 その時2人 友達のままで
 冗談言いながら 生きていられたらいい

既に歌唱メンバーの過半数が卒業している現在、この歌詞を聴くとそれだけで切なさを覚えます。


この曲が出た2015年夏。

全ツファイナルの神宮球場で桜井玲香が叫びました。

 絶対皆さんを後悔させないようなグループになります!
 どこにも負けないようなグループになります!
 なので乃木坂のことを愛し続けてください!

まだ紅白もレコ大も東京ドームも知らない、坂の途中にいた彼女たちの記憶です。


そしてあれから5年近くが経った2020年春。

再びこの『羽根の記憶』が脚光を浴びます。

配信ドラマ『サムのこと』で4期生5人(遠藤さくら、掛橋沙耶香、金川紗耶、田村真佑、早川聖来)が演じる解散したアイドルグループ「ホワイトベアーズ」のデビュー曲としてこの曲が使われたのです。アイドル時代のMV、さらに解散後に当時を思いながらカラオケで歌うというシーンもあります。

美しさの極みにあった2015年の乃木坂が10年後の自分たちを思って歌ったこの曲を、当時を知らない後輩たちが5年後に歌う。劇中でアイドルとして、そしてアイドルでなくなった者として。

このシチュエーションもかなりグッとくるものがあります。

これについて本気で語りだすとかなり長くなりそうなので、いつか『サムのこと』に関する記事で書きたいと思います。


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過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

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『世界中の隣人よ』
感染拡大防止の呼び掛けを目的として作成された楽曲。新型コロナウイルス対策の活動支援を目的として配信シングルとしてリリースし、その収益を全額寄付する予定。
2020年5月25日公式Youtubeチャンネルで公開。歌唱メンバーは白石麻衣を含む全在籍メンバー、ならびに卒業生11人。

本当に大きなグループになったもんだ


イントロのリフは『羽根の記憶』にだいぶ似てますが、楽曲全体としては『悲しみの忘れ方』ですね。合唱曲っぽい、というか実際に合唱曲をイメージして作られたのでしょう。シンプルなメロディ。アレンジもピアノとストリングスを中心にした実にシンプルなもの。

『忘れ方』も名曲と評価される方が一定数おられるのは承知しているのですが、個人的には正直あまりこういう曲はピンと来ないんです。

でもそういうことじゃないですよね。

こういうチャリティーソングを乃木坂が歌うようになった。
まずそのこと自体にちょっと感慨深いものがあります。

『忘れ方』では深く傷ついた自分と目の前の彼女を励ます歌でした。
それがこの『隣人』では見知らぬ「あなた」への愛情と感謝を歌っています。

『忘れ方』はドキュメンタリー映画の主題歌で『隣人』はチャリティーソングなんだから当たり前かもしれません。

でも、この歌詞をてらいもなく歌える、歌っても恥ずかしくないグループに乃木坂がなった。

今の状況の中で世界に向けてメッセージを発信するグループになった。
本当にビッグネームになったんだな、って思いました。

予想通り、でも胸が締めつけられる


そしてMV。
やっぱり泣きそうになりました。



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以下、順に好きなポイントを挙げていきます。(カッコ内はMVの時間)

公式サイトに「卒業生多数参加」「神宮球場の現在の様子」と明記されてたので心構えはできていました。

それでもやっぱり、白石麻衣で始まったAフレにそのまま西野七瀬が登場した時(0:43)はウッと来ました。予想通りなのに、胸が締めつけられる。

サビ前、星野みなみがふと外を眺めるシーン(1:21)では『羽根の記憶』で彼女が見せた同じ仕草を思い出します。彼女はこういう「ふとした」表情が本当に上手いですよね。

そして若月佑美と衛藤美彩の美形コンビ(1:38)。
さらに斉藤優里と能條愛未というグループに明るさを加えていたふたり(1:46)が続き、ソファの上に胡坐をかいてゆらゆらと揺れる生駒里奈(1:51)で1番が終わります。

ほんの少しふっくらしたように見える生駒ちゃんの、ずっと何かと闘っている感のあった彼女とは違う、穏やかで柔らかな表情。安定感がありすぎて若干影のフィクサー風味もありますが笑

1番は1期生たちでまとめられていました。

みんな大人になったなあ。
でもやっぱ今も乃木坂だな。そんなことを感じました。

間奏で描かれる人気のない東京の風景がまた切ない気分にさせ、2番に入ります。

そこでいきなり登場するのが斎藤ちはると市來玲奈の局アナコンビ(2:14)。ちょっとしたサプライズですね。

その後は2期生以降の後輩たちが登場してきます。

その中でも特に、大園桃子の彼女にしか出せない陽だまりのような表情(2:39)が素晴らしい。

ぶりっ子をする新内眞衣(2:55)を挟み、2番でサビへのブリッジを務めたのは久保史緒里のまっすぐな瞳(3:04)。

ストレッチする遠藤さくら。歯を磨く賀喜遥香。そして丼でメシを喰らう松村沙友理笑(3:15)
ビジュアルの強い3人がそれぞれの魅力全開。個人的にはここの流れが一番好きです。

伊藤かりんと相楽伊織。卒業したふたりの暖かなイメージ(3:22)。
岩本蓮加の自粛期間中も完成度が上がっているんじゃないかと思わせるビジュアル(3:27)。

立ち昇る乃木坂感


そして大間奏。

閑散とした神宮球場が映し出されます(3:53)。
そこから紫のサイリウムで埋め尽くされたライブの映像(4:21)に切り替わり、さらに無人の神宮が再び紫の海となるCG(4:33)へと。

そりゃ色んなこと思い出して、もう二度とこんな日が来ないかもしれないとも思って胸が締めつけられますよ。

 ララララ ラララララ…

いつかまた。その願いが空へと羽ばたきます(5:09)。

そして一番心を揺さぶられたのは5:22からのメンバー連打。

桜井玲香能條愛未北川悠理伊藤理々杏早川聖来衛藤美彩市來玲奈矢久保美緒林瑠奈伊藤かりん掛橋沙耶香金川沙耶黒見明香弓木奈於松尾美佑斉藤優里相楽伊織中村麗乃阪口珠美佐藤璃果若月佑美斎藤ちはる吉田綾乃クリスティー田村真佑佐藤楓柴田柚菜生駒里奈

1期も2期も3期も4期も新4期も卒業生も。

16歳から27歳までいて。入りたての新人から局アナからレジェンド(そして人妻)までいて。ビジュアルもキャラクターも表情もそれぞれで。

さらに言ってしまえば卒業生を除けば主にここまでのシーンで取り上げられていなかった、比較的地味なメンバーたちで。

それでも皆が醸し出す、驚くほどの乃木坂感。

以前24th選抜に関する記事でこんな文章を書きました。

 私の思う乃木坂は眩いほどの純白ではなく、生成り。

 『シンクロニシティ』のMVを思い出してください。メンバーたちが着ていた衣装は確かに純白でした。しかしその撮影場所はスポットライトに照らされたステージではありませんでした。窓から差し込む木漏れ日を背に踊る彼女たち。その姿は柔らかな色味を纏っていました。



そして今回の『隣人』。
屋内での撮影。多くのメンバーは恐らく自宅なのでしょう。カーテンや壁の前で歌っているため、全体の色味は柔らかなアイボリー。生成り。

そして彼女たちから立ち昇る「乃木坂感」。

生駒ちゃんが『シンクロニシティ』のMVを観た時に言ったのと同じ台詞が頭に浮かびます。

 ああ…乃木坂だ

こんな状況でも、ここには確かに乃木坂があって、今も「やっぱ乃木坂だな!」と思わせてくれる。

きっと私はこの僅か14秒の間にそのことを感じて感動したんだと思います。

初代キャプテンで始まり、同じく初代センターで締めているのもいいですね。

そして締めの生駒ちゃん前で柴田柚菜が発する「乃木坂感」の強さたるや。
乃木坂の熱狂的なファンである彼女がこうしてそれを体現しているのはなんだかとても素敵なことだと思います。


離れてもみんな乃木坂。

これまで誰かの卒業を見送る時、残される側のメンバーがたびたび口にしてきた言葉です。

今回のMVはこの言葉が紛れもない真実であることを目に見える形で証明してくれたという意味でも非常に意味深いものとなりました。

乃木坂LLCの本気、見せてもらいました。


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『思い出ファースト』
乃木坂46の3rdアルバム『生まれてから初めて見た夢』収録。2017年5月24日リリース。歌唱メンバーは3期生12人、センターは大園桃子。

アンセムよりこっちが好き


3期生のアンセム、と言われればそりゃ間違いなく『三番目の風』です。

もちろん異論はありませんし自分もめちゃめちゃ好きな曲です。ライブでの盛り上がりも半端ない。

でも個人的にはこの『思い出ファースト』も負けず劣らず、いやなんならこっちの方がちょっと好きかもしれません。

その理由を考えて思い当たったことがあります。
そうか、『思い出ファースト』ってあの曲に似てるんだ。

もうタイトルの段階で書いちゃってますけど笑、この曲『走れ!Bicycle(以下、『走バイ』)』の3期生版ですよね。

ひとつ前の記事で考察した『走バイ』。その魅力をこんな文章で表現しました。

 「青春感」「通り過ぎた青春感」
 「いつか今が思い出になってしまうことに極めて自覚的」

これ、そのままこの曲にも使えちゃいます。
まあタイトルからそもそも「思い出」って入ってますからね。

歌詞の内容は一言で言ってしまえば「大切なのは最高の思い出を作ることだから喧嘩なんかしないよ」。
ちょっとわがままな彼女を甘やかして言うことを聞いてあげる主人公の心情が一人称で描かれています。まあ率直に言ってしょーもないラブソングです笑

なのになぜこんなに切なさを感じさせるのか。
その鍵は歌詞のこの部分にあります。

 思い出ファースト いつか振り向き
 最高の夏だったと…

この「いつか」の時。私にはどうしても「君」が隣にいるイメージがわきません。

なぜなら『思い出ファースト』で描かれている「君」には魅力がない、というかほとんど描写すらされていないからです。そのため永続的な関係性とは到底思えない。
何年か過ぎて、主人公がひとりで思い出し懐かしんでいる。「あの頃は若かったしバカだったけど、キラキラしてたよな…」そんな心象のように感じます。

「君」のAKB、「僕」の乃木坂


編曲も切なさを強調しています。

イントロのド頭、オルゴールみたいなシンセの音色からして実にノスタルジック。
そこから一気に盛り上がるイントロも夏っぽいしセンチメンタルだし。

でもまあ、これ自体は夏曲としてはよくあるタイプのイントロです。
AKB48の『ポニーテールとシュシュ』や『Everyday、カチューシャ』あたり、特に前者にイントロの構成は酷似していますよね。

これらAKBの夏シングルと『思い出ファースト』を比較すると興味深いことに気づきます。

歌詞は同じく「僕」の一人称ですが、AKBでは「君」の魅力を描写する表現がこれでもかと続きます。
そしてメンバーは「僕」の言葉を歌いながら、演じているのはむしろ「君」。キラキラ輝く魅力的な女の子を演じています。

「こんなにキラキラしているけれどそれは実は一瞬のことなんだ」と観る側に思わせる、アイドルの煌めきが一瞬であることと重ねて切なさを感じさせる秋元康の得意技ですね。

翻って乃木坂。

先に述べたように『思い出ファースト』の歌詞では「君」に関する描写がほぼありません。つまりメンバーが演じているのは曲中の「君」ではなく「僕」。
前の記事書いてる時点では気づいていませんでしたが『走バイ』も同じです。「君」についての描写が極端に少ない。

それがAKBと乃木坂の違いというにはサンプルが少なすぎますし、秋元康がそこまで意識的に書き分けているとは到底思えません。事実『裸足でSummer』では「僕の言葉を歌いながら君を演じて」いますしね。

ただ、その存在自体に「儚さ」「ノスタルジック」な魅力を纏っている乃木坂。
そんな彼女たちが「いつか今が思い出になってしまうことに極めて自覚的」な「僕」として歌い踊る姿が切なさを増幅させていることは間違いないでしょう。

観る側が切なさを感じるAKBに対し、切なさを感じながら演じている乃木坂。

そんな比較ができるかもしれません。

3年前の記憶


そして『走バイ』と最初のプリンシパルとがそうであるように、この曲と分かちがたく結びついている記憶があります。

2017年5月9日から14日の3期生単独ライブ。

たった3年前のことなんですね。
そのわずか3年の間にも色々なことがありました。
会場となったAiiA Theater Tokyoも既に閉館しています。

そして3期生もそれぞれ様々な浮き沈みを経ながら堂々たる乃木坂の主力へと成長しました。

この3期単独ライブについては以前に4期ライブの記事の中で詳しく書いたのでよろしければそちらもご覧ください。



ナチュラルボーン・センター大園桃子を中心に山下美月と久保史緒里が脇を固める『三番目の風』と同じ布陣。

3期新規のファンの方が多かったのでしょうか。コールもあまり定着していなく、アンコールも途切れがちで。まだメンバーもファンも手探りだった印象があります。

ここでも『走バイ』の考察で初めてのプリンシパルに挑んだ1期生たちについて書いた文章がそのまま当てはまります。

 まだ坂道を上りだしたばかりの、まだまだ無我夢中で本当に何者でもなかった彼女たち。
 若くて未熟で拙くてみっともなくて、でもそのひたむきな姿に胸を打たれた。

そんな3期単独ライブ。与田祐希が「3期の青春みたいな日々」と振り返った日々。
その本編ラストで使われ、エンディングテーマとして鳴り響いていたのがこの『思い出ファースト』でした。

 ラララララ… ラララララ…

ここが夏の終わり感を醸し出しすぎです。3期単独は5月だったのに笑

汗だくになった3期生たちが輝くばかりの笑顔でお互いを見交わしながら歌う姿がもうなんだか青春過ぎて。

忘れられない記憶です。


そして今。

3年経って、まだ全員残っていて。
現在の彼女たちが視線を交わしながら歌う時に去来する思いはいかばかりか。「よくまあここまで俺たちきたもんだな」ってとこでしょうか。(最近ずっと観ていた『LIVE-GYM』の影響です笑)

そんなことを考えながら観ているとまた涙腺が緩みそうです。

おかしな文章かもしれませんが、特別な思い出のある曲なのにいまいち定番化していないあたりがなんかこう逆に儚さとか切なさを深めているというか…そんな気がします。

アンセム『三番目の風』の陰に隠れてはいますが、乃木坂の、そして3期生の魅力が詰まった大好きな曲です。ライブでこの曲のイントロがかかるとひとりでめちゃめちゃ盛り上がります笑


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『思い出ファースト』/乃木坂46


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『走れ!Bicycle』
乃木坂46、3rdシングル。2012年8月22日リリース。センターは生駒里奈。

ついに出た正解


フォーメーションは以下の通り。

3列目:斉藤優里、若月佑美、井上小百合、市來玲奈、伊藤万理華、深川麻衣
2列目:中田花奈、橋本奈々未、白石麻衣、松村沙友理、西野七瀬、高山一実
1列目:生田絵梨花、生駒里奈、星野みなみ、桜井玲香

個人的には『乃木坂って、どこ?』で選抜が発表された時のことが忘れられません。

選抜メンバー16人が並んだ画面を観て「全員可愛い!何だこのグループ!」と思いました。

1stから3rdまでの選抜は13人固定で残り3枠をローテーションしていましたが、その枠にこれ以降一度も選抜から外れることのなかった深川麻衣と若月佑美が入り、ラスト1枠も伊藤万理華。ほぼ当時の人気上位16人だと思います。

これ言うとみさ先輩推しの方をはじめ他メンのファンに怒られそうですが「ついに正解が出た」と友人に話した覚えがあります。個人的には他にも選抜入りしてほしいメンバーはいましたが(当時中元日芽香や柏幸奈のビジュアルを高く評価していました)、そういう好みはさておき「まあ客観的に見てこれだろうな」と。

スターティングメンバーによる「超初期型」乃木坂46の完成形と言っていいでしょう。

まあ次の4枚目『制服のマネキン』では初のダンスチューン、作曲家・杉山勝彦登場、そして秋元真夏の復帰即福神という激動が待っているわけですが、それはまた別のお話。



センチメンタルがこみあげる


この曲の魅力は、言葉にするとこっぱずかしいんですが「青春感」ってことに尽きます。
それも「通り過ぎた青春感」ですね。

疾走感があって爽やかな夏曲なんですけど、季節は盛夏じゃなくて夏の終わり。

そして大間奏から一気にこみあげるセンチメンタリズム。

 言葉にできない心の独り言
 誰もが見過ごして 大事なその人失うんだ

 走れ!Bicycle 終わる夏 太陽は知っている
 出遅れた愛しさは 君に追いつけるかな

それまで現在進行形のラブソングだったのに、この数行だけふいに視点が俯瞰になります。
大人になった主人公が過去を懐かしんでいるような。
いつか今が思い出になってしまうことに極めて自覚的であるというか。

おっさんになると、こういうのが沁みるんですよね笑

おっさんの話はさておき、もしかしたらリリースのタイミングも関係しているのかもしれません。

2012年の夏ということは白石麻衣と松村沙友理がちょうど20歳になる頃。
そして最大勢力の94年組(当時9人!)にとっては高校生活最後の夏でした。

意識的にか無意識かはともかく、10代の終わりあるいは高校時代の終わりを迎えているメンバーが多かったこの時期だったことが、この曲の持つセンチメンタリズムを加速させているように思います。

「儚げ」で「ノスタルジック」な乃木坂らしさと絶妙にマッチした、というよりむしろそのイメージを決定づけた名曲だと思います。


3期生や4期生が乃木坂の入口だったファンの方には、もしかしたらあまり馴染みのない楽曲かもしれませんが、まだコールさえあまりなかった初期の乃木坂ライブで早々にコールが確定したド定番の曲でした。

そしてこれが元祖「曲中の一瞬の静寂にオタが推しの名を叫ぶ」曲ですね。この後に『ここにいる理由』と『逃げ水』が続きます。(正確には『逃げ水』には静寂ないですけど)

忘れてはいけないのが伊藤万理華が9thシングル『夏のFree&Easy』の個人PVで披露したこの曲のボイパ。
彼女独特の「不安定な歌声(誉め言葉)」を堪能できます。特に裏メロディが絶妙に不安定で秀逸。あれ観るとこの曲とまりっかの良さ、両方を再認識しますよ。(下のリンクは「予告編」なのでさわりだけです)

なんでかわかりませんが私はこの曲を最初から思い出そうとするとどうしても頭の中に『おいでシャンプー』のイントロが流れてきて、なおかつ『走れ!Bicycle』のAメロに着地します。
同士の方いますかね?笑



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若くて未熟でひたむきな日々の記憶


もうひとつ、この曲と分かちがたく結びついている記憶があります。

デビューからちょうど半年、そして結成からもちょうど1年後に早くもリリースされた3rdシングル。今の感覚からすると凄いハイペースですね。

そんな慌ただしい毎日を駆け抜けてきた彼女たちの前に突然現れた、地獄。
初めて直面した地獄。

そう、第1回の『16人のプリンシパル』です。

『走れ!Bicycle』はその時の最新シングルであり、テーマソングのような位置づけでした。一幕の結果発表の時にメンバーが着ていたのがこの曲の歌唱衣装だったこともその印象を強めています。

毎日毎日、目の前のファンに順位をつけられる。
「ファンの目の前で」じゃない。「目の前のファンに」です。

『deux』からは役に立候補するシステムになりましたが、最初のプリンシパルは頭から順位をつけてそれによって役が割り当てられるというもの。グループ全体における自分の立ち位置を突きつけられたような気になったとしても無理はありません。実際にはあくまでもその日の観客の主観にすぎないのですが。

今さらだけど、ほんと地獄ですよね。

バックヤードで発生した松村沙友理と生駒里奈の口論。狼狽える橋本奈々未。
記者会見からの逃走。
初めて1位になって泣き崩れた白石麻衣。
意気込みを語りながら腰が抜けて倒れこんだ生駒里奈。

結果が出ずに心をへし折られ、解決策が見いだせないままそれでも毎日PARCO劇場に通わなければならなかったあの日々。

今観れば笑っちゃうほど拙い自己PRですが、当時はどのメンバーも本当に必死でした。

まだ坂道を上りだしたばかりの、まだまだ無我夢中で本当に何者でもなかった彼女たち。
若くて未熟で拙くてみっともなくて、でもそのひたむきな姿に胸を打たれた。

そんなセピア色の記憶が蘇ります。

正直シングル曲の中では影が薄い方だと思いますけれど、自分にとっては特別な曲のひとつです。


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『毎日がBrand new day』
乃木坂46、25thシングル『しあわせの保護色』のカップリング。歌唱メンバーは3期生12人。

明日も必ず日は昇る


前回の記事で「今、日本を元気にしている曲」と紹介した4期生曲『I see…』。
この『毎日がBrand new day』のMVはその翌日に公開されました。

公式YouTubeにMVが公開されたその日のうちに「SMAP感」というワードとともにバズった『I see…』と比べれば、正直陰に隠れている感は否めません。

でも、この曲を初めて聴いた時も私は涙が出そうになりました。

MVはセンター久保史緒里の美しい横顔のカットから始まります。

『未来の答え』で山下美月とのWセンターはありましたが、単独センターは意外にも初。
これまで色々なメンバーがセンターを務めてきた3期生曲ですが、満を持しての登場です。

昔のフィルム映画をイメージしたのであろう、一見フルサイズだが画面の周辺が黒くぼやけた映像。最後のホワイトアウトの演出もそうですね。

そんなノスタルジックな映像の中で流れ出すのは、「まんま『Stand By Me』じゃん」と言われるイントロから始まるR&B調のナンバー。

心地よいリズムに乗せて穏やかに、でも力強く歌われるのは喜び。

明日も必ず朝が来て日が昇ること、それを信じて夜眠りにつけることへの根源的な喜びと、再生への希望。

世界がこんなふうになってしまった今、とても大切でどうしても必要なもの。
それがこの曲、そしてMVでは表現されているように思います。

アースカラーの民族衣装っぽい格好で自然の中で歌い踊るメンバーたち。
自然児のよだももは撮影の合間に川べりに行って遊んでいたというエピソードが微笑ましいですね笑

その衣装やシンプルで大きな動きの振り付けも相まって、プリミティブな感謝や祈りの舞いのように見えます。

この曲にも音楽の力と笑顔の力が溢れていて、今の私たちを力づけてくれます。

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3期生たちが纏った乃木坂感


私がこのMVに心を揺さぶられた理由はもうひとつあります。

それは3期生の姿に「乃木坂感」を感じたことです。

私は以前「3期生は乃木坂感という意味では薄め」と書きました。それは彼女たちひとりひとりの個性、言い換えればタレント性が強いからです。そして乃木坂感の強い4期と個性の3期の対比でこの先の乃木坂は進んでいくのだろうと。

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3期と4期に対してのその印象は今でも変わりません。

それでもこのMVでの3期生たちは、穏やかでノスタルジックでガツガツしていなくて。
これって、乃木坂そのものじゃないですか。

「今回のMVは本当に楽しい撮影だった」とメンバーは口を揃えて言います。

ジェンガをやりながら無邪気にはしゃいだり(いつもながら後ろにいる大園桃子の表情が抜群!笑)、2番のサビで座ってキャンプファイヤーを囲みながら踊るシーンでは互いに目を見合わせ笑顔になったり。

ソロショットでのキメ顔(これがまた貫録すら感じさせる美しさ!)とは違う、心を許した仲間とだから出せる暖かい笑顔。幸せな時間。

それはいつか見た光景に似ていて。

私がたびたび引き合いに出す2017年神宮ライブの期別コーナー、バックヤードで円陣を組んだ1期生が「1期!1期!」と叫ぶシーン。

あそこに至るまで、結成から6年近い時が流れていました。
それまで決して仲良しこよしでやってきたわけではない彼女たち1期生がたどり着いたグループ愛、メンバーへの愛。

このMVでの3期生の姿に、私はあの時の1期生たちと近しいものを感じました。


3期生も加入から3年半が経ちます。

決して平らな道ではありませんでした。横一列で一緒に進んできたわけでもありません。
同期全員での現場はほぼなくなり、それぞれ個人での仕事が増えました。
久保ちゃん、山下美月、大園桃子が相次いで一時活動を休止したこともありました。

率直に言えばグループ内での立ち位置に明確な差もついて。
それでも同期って特別で。集まるとやっぱり安心して、自然と笑顔になって。
そして誰ひとり欠けることなく今もこうして12人全員揃っている。

3年半経った今だからこそ出せる、彼女たちの空気感。

変な文章ですが、乃木坂感薄めだった彼女たちがいつしか乃木坂感を身に纏っていた。
そのことが、なんだかとても得難くてとても嬉しいです。



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『毎日がBrand new day』/乃木坂46


最後に蛇足で恐縮ですが、分からない人には全く分からない例えを書いておきます笑

『I see…』は高校野球の県大会で全員1年生のチームが並み居る強豪を倒しながら大旋風を巻き起こしている感じ。
マンガ『おおきく振りかぶって』で主人公のいる西浦高校みたいな感じですね。

それに対し『毎日がBrand new day』は全員3年生のチーム。中には1年からレギュラーだった選手もいて、道のりはそれぞれだったけれど3年の夏にひとつにまとまって勝ち進んでいく。

同じ『おお振り』で探せば全員3年生ではありませんが武蔵野第一高校でしょうか。榛名という才能に恵まれた絶対的な存在がいながらチームとしてまとまりがあり、皆が互いをリスペクトしながら同じ方向を向いているイメージ。
現実世界では松坂大輔3年の夏の横浜高校かな。って高校野球史上最強チームのひとつじゃないですか!笑

まあ要するにどっちも素晴らしいってことです。


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