ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:乃木坂46

びーむ色調補正3
「銀河系軍団」

サッカースペイン1部リーグの超名門、レアル・マドリー。
強大な資金力を背景に綺羅星のごときスター選手(各国代表のそれも主力選手)ばかりを集めた超豪華布陣を指して使われたものです。

この日のライブを観て私の頭をよぎったのはその言葉でした。

似ていないはずなのに


既にアリーナクラスでの期別ライブを経験している5期生たちが行なう、少人数の箱でのライブ。3期や4期にはなかったパターンです。

小箱。そして味も素っ気もないステージセット。
すなわち初期アンダラや3期初単独と似たシチュエーション。

熱量やがむしゃらさがダイレクトに客席に伝わる。
それこそが小箱の良さであり、先達もそうやって観る者の心を動かしてきました。

ただ5期生の場合、そうはいきません。

誤解を恐れずに言えば、「がむしゃらさ」「必死さ」は拙さとセットになった時にその威力を発揮します。

しかし今年のバスラ5期ライブの記事でも書きましたが、素質に恵まれた「持てる者」であるゆえに彼女たちの想いや努力は見えにくい。

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さらに表題センター経験者2人、福神経験者7人、選抜経験者8人、アンダーセンター経験者1人。
この数字だけ見ても、もはや「新人」ではなく「堂々たる戦力」
むしろこれまで彼女たちは先輩たちと並んでも拙さを感じさせまいと懸命に努力してきたはずです。

そう考えると、決して5期生と相性がいいとは思えないこの舞台設定。

そこで彼女たちは何を見せてくれるのか。

この日、私はそこに注目していました。

オープニング直後のMCで早くもその答えが判明します。

井上和がこう言い放ったのです。

 5期生11人で作る「乃木坂46のライブ」見届けてください

凄いこと言うなあ。

新人ライブとか期別ライブとかそんなくくりじゃない、いわゆる「本体のライブ」「全体ライブ」と思って観てくれと言っているんです。

そして彼女たちはその言葉通りにやってのけました。

5期生が見せたのは「クラス感」
小箱だろうが味も素っ気もないステージセットだろうが委細構わず捻じ伏せる、そのダダもれのスター性。

まさに「銀河系軍団」

例えるなら飾り気のない映画館のスクリーンの前で舞台挨拶をしてもスター性を見せつける俳優のように。

そしてそれは、今では考えられないぐらい安っぽい衣装とステージセットでもそのビジュアルの説得力で「クラス感」を感じさせたかつての1期生たちの姿とも重なります。

それは千秋楽Wアンコールの選曲にも表れていました。

櫻坂と日向坂はそれぞれ欅坂とけやき坂の、つまりルーツとなるグループの楽曲をもってきて「継承というストーリー」をラストで強烈に印象づけました。

では乃木坂は何を?

『君の名は希望』も『乃木坂の詩』もこの日既にやった。
『左胸の勇気』もアンダラでやった。『きっかけ』?それも『MUSIC BLOOD』でやっている。

選ばれたのは『I see…』でした。

ストーリーも何もない、ただ「楽しく笑顔で終わる」Wアンコール

それは実に乃木坂46的で。

「作られたシナリオ」と「仕込まれたサプライズ」のダイナミズムが売りだったAKB48に対するアンチテーゼとしての乃木坂46を、「物語がないのが物語」「物語なんて後から勝手についてくる」という乃木坂イズムを強く感じさせるものでした。

正直、5期生を観ながらこんなにも1期生を思い出すとは考えてもみませんでした。

これ以上は蛇足かとも思いますがもうひとつ。
『考えないようにする』のパフォーマンスを観ながら私がメモしたのは「乃木坂的な美しさ」

伝家の宝刀、杉山楽曲
そして『シンクロニシティ』以降の乃木坂の特徴のひとつでもある、指先までしなやかな腕の振りを特徴とする「舞う」ダンス。振り付けもSeishiroさんですね。

それを束ねるセンター冨里奈央の儚さ

MVのどこかソフトフォーカスで木漏れ日のような光の処理がされた映像も、過去楽曲で何度も見た表現。
そして『バンドエイド剥がすような別れ方』で「敢えてやらなかった」であろう手法でもあります。

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上の記事では『バンドエイド』を「乃木坂感が、あるけどない」と評しましたが、この日の5期生はその「乃木坂感」を早くも引き出しのひとつとして纏い始めているように感じました。

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いついかなる時も可愛い


最後に、この日何度も繰り返し思ったことを書きます。

 小川彩は、破格だなあ

最初のMCを彼女が仕切り出した。そのことにまず驚きました。

だって、それができるメンバーはいっぱいいるじゃないですか。
菅原咲月や中西アルノ、井上和。たぶん一ノ瀬美空も。
なのに敢えて最年少の彼女にやらせて、それをごく自然にこなしている。

もうこの時点で私は「破格だなあ」と感じていました。

そしてこの日も小川彩は、いつものように自身の魅力と能力を我々に見せてくれました。

いついかなる時も可愛いそのビジュアル
独特なざらつきのある優れた声質とアタックのある歌唱
どこか阪口珠美を思わせる、その滑らかなダンス

別にこの銀河系軍団の中でもさらに抜けた存在だとか言うつもりはないんです。
そこはまだ、正直わからない。ですが個人的にはその可能性すらあるスケール感を感じています。

よく齋藤飛鳥と比較される彼女ですが、私はむしろ生田絵梨花に通じるものを感じます

『君の名は希望』のピアノ伴奏や『無表情』に引きずられているかもしれません。
でもその底知れなさ、そして影の努力をおくびにも出さずにただステージ上で見せるものだけで勝負しようという矜持

やっぱり、生田絵梨花だと思うんですよね。


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びーむ色調補正3
この先2度とないであろう、キャパ900という小箱での5期生ライブ。
当然のごとくチケットは全落でしたので最終日を配信で観ました。

「新参者」なんて言わせない


セットリストはこちら。

Overture

01. 絶望の一秒前
02. 制服のマネキン(センター:中西アルノ)
03. ガールズルール(センター:一ノ瀬美空)
04. 裸足でSummer(センター:五百城茉央)

<ユニットコーナー>
05. 銭湯ラプソディー(池田、岡本、川﨑、菅原、冨里)
06. 革命の馬(五百城、井上、奥田、中西)
07. 無表情(一ノ瀬、小川)

<おひとりさまコーナー>
08. 羽根の記憶(五百城)
09. マシンガンレイン(中西)

10. いつの日にか、あの歌を…
11. 初恋の人を今でも
12. 君の名は希望

13. 心にもないこと
14. 考えないようにする
15. インフルエンサー(センター:一ノ瀬美空、井上和)
16. Actually…
17. 17分間
18. バンドエイド剥がすような別れ方
19. おひとりさま天国

EN
EN1. ロマンスのスタート
EN2. Sing Out!(センター:菅原咲月)
EN3. 人は夢を二度見る(センター:岡本姫奈、奥田いろは)
EN4. 乃木坂の詩

WEN
WEN1. I see…


オープニングからブチ上げ曲を続け、ユニットコーナーを挟んでバラードコーナーでクールダウン。そこから本編ラストに向けて一気に盛り上げていく。
後述するオープニングでの井上和の宣言通り、この日のライブはいわゆる全体ライブのフォーマットでした。

基本生歌(一部被せかも)。そして5期生曲全部フルコーラスなのが良いですね。

印象に残ったシーンを挙げていきます。

オープニングは井上和のアカペラが鳥肌ものの『絶望の一秒前』。
ラストで彼女は薄く笑ってみせます。

そして

 5期生11人で作る「乃木坂46のライブ」見届けてください

ある意味「新参者」のコンセプト全否定笑

そこから畳み掛ける『制服のマネキン』。
言わずと知れた乃木坂の代名詞のひとつ。中西アルノセンターは少し意外。
しっかりウインクを決める菅原咲月。この後も数えきれないくらい決めるのですが。
大間奏の巻き取る振りの回転が異様に早い一ノ瀬美空

『裸足でSummer』サビ前、五百城茉央の「いっくで~!」という煽り。

井上和のMCでの「表情に注目してほしい」「配信なんで良く見えるじゃないですか」という発言。これ凄い自信だよなあ。
小川彩に褒められて「何急に~?」と照れる五百城茉央。「私も褒めてほしい」と拗ねる一ノ瀬美空

ユニットコーナーは何と驚きの『銭湯ラプソディ―』から。楽しそうな川﨑桜

『革命の馬』。白に柄という大胆なライダースを着こなしてしまう井上和。個人的にはこれ見覚えがないのですが、既存衣装でしたっけ?

『無表情』。令和版からあげ姉妹のビジュアルの強さよ!
しっかりガニ股をするのが可愛い小川彩。ここぞとばかりにキスを強要する一ノ瀬美空

おひとりさま(ソロ)コーナー。
五百城茉央の『羽根の記憶』。
かなり力んでリズムも走っていたので本人は終わった後で納得いっていない表情を浮かべていましたが、とりわけファルセットの時には彼女のイノセンスがその場を埋め尽くします。

中西アルノの「センターの方の存在感に圧倒された」というコメントから齋藤飛鳥のことかな?と思っていたら『マシンガンレイン』。
寺田蘭世か!よくぞこれをもってきた、というチョイス

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ずっと受け継がれてきたもの


MCで「10年後もご飯とか行こうね」と言って目を潤ませながら微笑む五百城茉央

『いつの日にか、あの歌を…』のポジションに入った時に客席から届いた「あーや~!」の叫びはきっと弓木奈於であろう。

カフェオーレ(五百城茉央奥田いろは)のギター伴奏で何をやる?と思ったら『初恋の人を今でも』!アンダラ2ndシーズンの本編ラスト曲じゃないですか!
ラスサビを歌う冨里奈央のなんとも菊池桃子なこと。これまたイノセンス。

この日のハイライトのひとつ、「乃木坂46の歴史にとってとてもとても大切な曲」からの『君の名は希望』。

3期初単独ライブでの梅澤美波の「この曲を嫌いだったら乃木坂じゃないよね」。
『乃木坂どこへ』内での賀喜遥香の「先輩方が絶対この曲が一番大切って言うから…」。
そうやってずっと受け継がれてきたものそして今、5期生が

小川彩のピアノ伴奏。生田絵梨花が、大園桃子が思い出されます。
ひとりずつ歌い継ぐ演出に多くのメンバーが緊張する中、揺るがない奥田いろは井上和中西アルノの3人。
サビ前のフィルを弾きながらメンバーに微笑みかける小川彩。ラスサビのハモり。

ガッツリ衣装替えで舞台上に誰もいない時間を作るという斬新さ。

『心にもないこと』。このあたりから本格的に楽しくなってきちゃった川﨑桜

『考えないようにする』で私が感じたのは「乃木坂的な美しさ」
これについては次の記事で書きます。

『インフルエンサー』は井上和一ノ瀬美空のWセンター。
ラスサビで伝統の裏センターの位置に立つ岡本姫奈

『17分間』。楽しすぎてもはやタレまゆになってしまう川﨑桜

アンコール、小川彩の煽りから始まる『ロマンスのスタート』。

『Sing Out!』のソロダンス、笑顔で舞いながら泣く菅原咲月

Wアンコールは何を持ってくるのかと思えば『I see…』。これは良い判断でしたね。

この日のビジュアル仕上がってるメンは、やっぱり小川彩
巻き髪の冨里奈央も凄く可愛かったですね。


続きます。

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びーむ色調補正3
そして別れの日がやってきました。

齋藤飛鳥、卒業コンサート。
幸いにもDAY2のチケットが当選したので東京ドームに行ってきました。

ちなみにこの記事を公開する時点で既に円盤が発売されていますが、すべて現地で観た感想です。

いつも通り


セットリストはこちら。

Overture

01. ジコチューで行こう!
02. インフルエンサー
03. シンクロニシティ
04. ハウス!
05. ダンケシェーン

<期別曲コーナー>
06. 絶望の一秒前
07. I see…
08. トキトキメキメキ

09. 扇風機
10. Against

<ユニットコーナー>
11. ファンタスティック3色パン
12. なぞの落書き(飛鳥、岩本、筒井)
13. 他の星から(飛鳥、遠藤)
14. 制服を脱いでサヨナラを…(飛鳥、理々杏、中村、賀喜、金川、柴田)
15. あらかじめ語られるロマンス(飛鳥、久保、阪口、清宮、田村)

16. ロマンティックいか焼き
17. ガールズルール

18. Route 246
19. ありがちな恋愛
20. 地球が丸いなら
21. 人は夢を二度見る
22. 帰り道は遠回りしたくなる
23. サヨナラの意味
24. 裸足でSummer
25. Sing Out!
26. ここにはないもの

EN
EN1. 硬い殻のように抱きしめたい
EN2. 僕だけの光
EN3. ロマンスのスタート
EN4. おいでシャンプー
EN5. ジコチューで行こう!


印象に残ったシーンを少しだけ挙げます。

この日のビジュアル仕上がってんなあメンは与田祐希
岩本蓮加筒井あやめという「最年少の系譜」ふたりも可愛かった。

今野さんと菊池さんによる影ナレ。
たびたび見かける、我々ファンに負けず劣らず運営サイドも乃木坂が大好きで強い思い入れがあると感じられる瞬間。

『他の星から』。2019年夏の記憶。
歌い終えしっかりと抱き合った飛鳥と遠藤さくら

『人は夢を二度見る』に加わり、つい観ているこちらも「これが完成形じゃん」と思わされてしまう飛鳥の存在感。(そしてきっと、久保史緒里と山下美月ならちゃんとそれを悔しがってくれるでしょう)

アンコールラスト、ゴンドラで上空に消える飛鳥。
これも彼女の思惑通りまんまと「橋本奈々未じゃん」と思わされました。


さて、こんな乃木坂の歴史において重要なライブの現場に行っておきながら半年もレポを書かなかったのには理由があります。

それは「泣かなかったから」

2017年の初ドームは花道を歩きながら肩を組む中3トリオ(生田絵梨花、斎藤ちはる、中元日芽香)に恥ずかしながら号泣した私。
この日も、正直ぐちゃぐちゃに泣くんじゃないかと思っていました。

結成当初からの乃木坂ファンですから、当然1期生には並々ならぬ思い入れがあります。
ましてや「乃木坂のすべてを知る者」にして「奇跡の中の奇跡」、齋藤飛鳥。

関連記事:


その卒コンですから泣かないはずはなかろう…そう思っていたのですが。
いくつか胸を締めつけられるシーンはあったものの、涙は流れませんでした。

その理由を考えて言葉にするのに時間がかかってしまったというのが正直なところです。

そして辿り着いた結論。

 いつも通りだったから。

これだと思うんですよね。

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飛鳥真夏体制


その理由を説明するには、ここ数年の乃木坂の活動を振り返る必要があります。

今から3年半前、2019年2月のバスラで西野七瀬が卒業。その夏の神宮における初代キャプテン桜井玲香の卒業を経て白石麻衣卒業シングル『しあわせの保護色』を初披露した2020年2月のナゴヤドーム8thバスラ。

このあたりの乃木坂は「移行期間」でした。

しかしその直後からコロナ禍が始まり、すべてのシナリオが大きく、大きくズレていきます。(もちろんそれは社会全体も同じなのですが)

新時代の旗手たる山下美月をセンターにするタイミングも恐らく半年遅れた。
そして未来を担うべきひとりであったはずの大園桃子も「在宅期間中に色々考えて」卒業を決意します。

『保護色』選抜発表に関する記事の中で私はこんなことを書いていました。

 『君の名は希望』までの生生星時代
 『ガールズルール』からの白石西野時代
 『裸足でSummer』からの白石西野飛鳥時代

 26thからは新たな時代である。
 まだ現時点では「飛鳥3期4期時代」としか表現できない。

 ポイントは誰が飛鳥に並び立つのか。

(『2020年の乃木坂46』収録 「【考察】旅立ちのフィエスタを歌え~乃木坂25thシングル選抜発表に思うこと」より)

そこからの3年半は確かに「飛鳥3期4期時代」でした。

しかしその実態は「飛鳥真夏時代」、より正確に表現するのであれば飛鳥真夏「体制」だったのだと思います。

その目的はただひとつ。
大人数アイドル史上、まだどのグループも成し遂げていない「世代交代」を成功させること

1期生2期生たちは自身の卒業を見据えつつ、パフォーマンスや言動を通して「これまでの乃木坂」を伝え。
後輩たちはそれを受け取りながら「これからの乃木坂」を描く。

そんな困難なミッションを、しかも卒業生ひとりひとり手厚く送り出しながら果たそうとしてきたのです。

2022年の全ツで設けられた、期も選抜もアンダーもシャッフルする「シャッフルコーナー」。
MCでは1期2期が「後輩のためにできることを考えた」と語っていました。

しかし個人的には、同様の試みは2019年夏の全ツから既に始まっていたと思います。

それぞれの期別曲を3期4期合同で行ない、アンダー曲をアンダー経験のないメンバー(生田絵梨花、桜井玲香、与田祐希など)も交えて行なう。
そして期を跨いだユニットによる「ミュージアムコーナー」。

時間をかけて融合と継承が進められたのです。

そしてもうひとつ、エース格の確立。

上で引用した記事で私は「ポイントは誰が飛鳥に並び立つのか」と書きましたが、運営が下した判断は「誰も並び立たせない」でした。(もちろん成り行き上…という部分もあるでしょうが)
飛鳥と誰かではなく、「ネクスト飛鳥(=与田山下遠藤賀喜)」同士を並び立たせた。
これにより「エース候補」が「エース格」へと成長し、新たな大エースひとりではなくエース格4人を揃えることができたのです。

そして5期生として井上和をはじめとする新たなエース候補たちが加入してくれました。

そんな飛鳥真夏体制の歩みと、その中で行なわれたライブの多くを観てきた私からすると、この日のライブは少し極端な表現になりますが「いつも通り」でした。

出ずっぱりの飛鳥が後輩みんなと絡む姿は、ここ数年の全ツで何度も見た光景。
だから私は飛鳥が卒業しても「飛鳥がいないだけ」なのだと思うことができました。

もちろん齋藤飛鳥がいなくなることはとてつもなく大きいでもそれ以上じゃない

そうなるように、飛鳥が、秋元真夏が、そしてメンバーみんなが頑張ってきたから。
飛鳥真夏体制で3年かけて築いてきたものがちゃんとあるから。
だから私はメンバーたちが思うほどこの日以降の乃木坂を心配していませんでした。

「乃木坂をよろしくね」

泣きながらその言葉に頷いた後輩たちはこの夏、1期2期のいない初めての全ツを見事成功させてみせました。

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最後にもうひとつ。

飛鳥はこの日、「乃木坂とは何か」をこんな言葉で表現してくれました。

 しんどいときは まわりを頼ろう
 とにかく頼って甘えまくろう

 ひとりじゃないんだし 絶対に絶対に
 いつかどこかで誰かが助けてくれる!
 だってそれが乃木坂だもん

これまでも、これからも

それが乃木坂46。



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だぽ
前の記事では全体の感想を書きました。

関連記事:


こちらではキャストの皆さんについて。

ヴィヴァ!


最初に挙げたいのがアントニオ・サリエリ役の相葉裕樹さん。
やっぱり『ヴィヴァ!イタリア』の歌唱が超絶。素晴らしく心地よい音圧。
派手めな顔立ちでボリューミーなヘアスタイルもゴージャスな衣装も凄く似合っていました。
悪役にされがちなサリエリ先生をコミカルな憎めないキャラとして演じていたのも好感。

個人的に初めて観る役者さんなので後から調べたら『レ・ミゼラブル』も出演されている方なのですね。そりゃ上手いはずだわと納得。

ナンシーとオルソラの2役を演じた田村芽実さん。

なんとまだ24歳。若い!
2011年8月にハロー!プロジェクトのアイドルグループ「スマイレージ」(現「アンジュルム」)に加入ですから、井上小百合と少し重なる部分がありますね。

彼女は2016年5月にグループを卒業。
その時点から目標として明言していたミュージカル俳優としてのキャリアを着実に積まれている印象です。

特に良いなと思ったのが演技も歌唱も振り幅があるところ。
老婆ナンシーでのコミカルな演技、自責の念にさいなまれるオルソラのシリアスな演技。
そして老ナンシーでの太い歌声とオルソラでの哀切な歌声。
どちらも非常に良かったです。(もちろん若ナンシーのキュートさも)

モーツァルト役の平間壮一さん。

「当てはない、ツテもない」だから「自由だ!」と歌うモーツァルト。
なんと素晴らしい発想の転換笑

なんというか「音楽の妖精」みたいな。そんな浮世離れした素軽い演技が非常に印象的でした。

そして主演の海宝直人さん。

まあ今さら私なんぞがどうこう言うのもはばかられるぐらいのキャリアで『レミゼ』だの『ミス・サイゴン』だの『ジャージー・ボーイズ』だの『アラジン』だの『ライオン・キング』だのビッグタイトルに数多く出演されてきたビッグネームです。

私が観劇したプレビュー公演は調子がいまいちだったのか出の音がブレていることがあったのですが、一瞬で立て直すその鋼の声!

白眉はやはり『ドン・ジョヴァンニ』の歌唱。
「胸を張って地獄の炎に飛び込もう」は鳥肌ものでした。

強くて儚くてやっぱり強い


ここまで挙げた皆さんはいずれもミュージカルで実績十分な強者たち。

その中で我らが井上小百合はどうだったかというと。

歌上手くなってた。(偉そうな言い方ですいません笑)

上で挙げた皆さんと遜色ないとまでは言いませんけれど、『ヴィヴァ!イタリア』でサリエリ先生に負けじと野太くヴィヴァ!するさゆは最高でした。
『コジ・ファン・トゥッテ』でも良い高音を鳴らしていましたね。

ソロ歌唱の『街角の女の子』がさゆのキーの美味しいところと合ってなかったし曲自体も重かったのがちょっと残念でしたが。

さゆ史上最大であろうボリューミーなウィッグもなかなかのインパクト。

だいぶ前からずっと思ってたんですけど、さゆの「濃くない美人顔」って大抵のウィッグをつけこなせるので舞台俳優として大きな武器ですよね。
かつて『ミュージカル セーラームーン』で月野うさぎという超高難度の髪型をこなした実績もありますし。

そして今回演じたフェラレーゼ。

難しい役でした。
「歌はそこそこだが演技は大根」の役を演じる、ってなんだか謎かけのようですね笑

「男を掌の上で転がしているつもりがただ単に遊ばれているだけの女」と周囲に軽蔑されていて、でも彼女自身もそんなことは百も承知で。
「女を武器にしている自分」のことを嫌悪しながらも、自分ぐらいは愛してやらなきゃいけないと思っている。

ただそんな自分の心を押し殺すような生活を続けているうちに、いつしか「自分の心」なんてもの自体失ってしまった-そしてそれゆえに「上手いだけで人の心を動かせない、つまらない歌い手」になってしまった-ことにも気づいていた。

ただひとり、ダ・ポンテを除いて。
彼女の声に「サンマルコ広場で歌っていた女の子」の欠片を感じ取ったダ・ポンテの心だけは動かすことができた。

そんな彼と一緒にいる時間は、きっと「昔の自分に戻れるかもしれない」という希望と「戻れるわけなんかない」という哀しみが交互に訪れたことでしょう。

そんなふたりの別れのシーンは素晴らしかった。

ダ・ポンテは失脚し、夢から醒めなければならない時が来て。

『街角の女の子』を歌い終わったほんの一瞬だけ、フェラレーゼは微笑みを浮かべるのです

そして再び彼女は同情も感傷も拒絶する氷のような表情に戻り「さよなら」。
振り向かずに歩き去ります。

この先も一緒に歩けたらどれほど良いか。
でも、そんなのただのセンチメンタリズム。
私は絶対、自己憐憫に溺れたりしない。

「でも心が痛い」

そんな強くて儚くて、やっぱり強い女性の背中を井上小百合は見せてくれました。


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だぽ
2023年6月から7月にかけて東名阪で上演された音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』。

北千住シアター1010でのプレビュー公演と池袋東京建物 Brillia HALLの本公演をそれぞれ1回観劇しましたのでレポートします。

いくつものカタルシス


公式によるあらすじはこちら。

 1826年ニューヨーク。年老いたロレンツォ・ダ・ポンテ(海宝直人)が回想録を出したことがきっかけで、若かりし頃を思い出すところから物語は始まる。

 1781年ウィーン。女好きで詐欺師のダ・ポンテは、ある事件を起こし、故郷ヴェネツィアを追われ、その才覚と手練手管でウィーンの宮廷劇場詩人の座までのぼり詰める。しかし、宮廷作曲家アントニオ・サリエリ(相葉裕樹)に言われるがままに書いたオペラの処女作を酷評され、行き場を失っていた。
そんなダ・ポンテの前に現れた、作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(平間壮一)。彼もまたあふれる才能を持て余していた。二人は意気投合し、革新的なオペラを作ることを決意する――。

公式サイトより引用)

モーツァルトではなく、彼のオペラの台本を書いたダ・ポンテを主人公にした物語。
『アマデウス』などモーツァルトものでは定番である、彼の死をミステリーとして扱うことはせず普通の病死(恐らくはこちらが史実通りなのですが)としています。

ふたりが組んだ作品は1786年『フィガロの結婚』、1787年『ドン・ジョヴァンニ』、そして1790年の『コジ・ファン・トゥッテ』。

一言でまとめてしまえば、ふたつの才能が巡り合って特別な作品を生み出し、そして離れていくまでの物語です。

上演時間2時間半にも及ぶ作品ですが、それでもやや消化不良な部分がある印象。

『コジ・ファン・トゥッテ』について回想録に詳しく書かなかった理由はなんかいまいちよくわからない。
あとサリエリ先生の人物像、というか行動原理がブレている気がする。これはオチ要員とシリアスな役割(ダ・ポンテに最後通牒を突き付ける)を同じキャラにやらせたのが原因かな。

…など、ところどころ「惜しい」感はあるものの個人的にはこの作品嫌いじゃないです。

その最大の理由はいくつものカタルシス溢れるシーン。

自分ひとりでは決してたどり着けない場所へ、こいつと一緒なら
そんなバディを見つけた瞬間の愉悦。

『フィガロの結婚』で浴びた万雷の拍手。
『ドン・ジョヴァンニ』のド迫力のラストシーン。

そしてなんといっても、この舞台自体のクライマックスでもある『コジ・ファン・トゥッテ』。

音楽のマジック


コジ・ファン・トゥッテ。

訳せば「女はみんなこうしたもの」。
でも転じて「人生万事こんなもんさ」と言っているように私には思えました。

 思い通りになんていかない
 理屈じゃ説明できない
 間違いばっかりで後悔ばっかりで

そんなもんだろ?

 自分の魂の欠片のような、特別な相棒とさえすれ違って袂を分かってしまう
 本当に運命の人と出会っていたのに、気づくことができずに別れてしまう
 絶対に手放しちゃいけないものだったのに、この手から滑り落ちてしまった

人生なんてそんなもんだろ?

でも、
だからこそ素晴らしいんだろう?

 あれは所詮、人生における一瞬の花火かもしれない
 それでも、あの輝きがあったからこうして今日を生きてゆける

舞台上にキャストがずらりと並び、朗々と歌い上げられるそれは、どこか「第九(『歓喜の歌』)」のようでした。

『レキシアター』や『キレイ』のレポでも書きましたが、好きなんですよ人間賛歌。

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素晴らしい大団円感。

本当は大団円なんかじゃないんです。
実際にはこの上演後に不評でダ・ポンテはウィーンを追われモーツァルトとも袂を分かち没落していくのですから。

ここではたと思い当たるのが、上で「よくわからない」と書いた『コジ・ファン・トゥッテ』について回想録に詳しく書かなかった理由。

それはもしかしたら上演当初は「不評だった失敗作」でしかなかった同作が、この後の人生において自分の背中を支えてくれたからではないでしょうか。

「あろうことか自身の作品に励まされて今を生きている」。
天才詩人にして天才詐欺師であるこのダ・ポンテ様がそんなことこっ恥ずかしくて書けるかよ!という照れくささ、気恥ずかしさ。

ミュージシャンは時々「楽曲が作り手である自分たちの手を離れ、時の流れと共にファンの方の人生で大きな意味を持つものとなった」と言いますが、きっとダ・ポンテの場合はそれが自分の作品によって引き起こされたのです。

語り部が年老いた後の彼だからこそ、この曲がフィナーレとして高らかに鳴り響く。

そんな音楽の力音楽のマジック
その素晴らしさと美しさ。

クライマックスの『コジ・ファン・トゥッテ』を浴びながら、私はそんなことを考えていました。


続きます。


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