ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:生田絵梨花

タオル補正

前の記事では頼もしくなった3期生たちをピックアップしました。

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この記事では引き続き印象に残ったメンバーを挙げていきます。

「安心感」の田村真佑、「かかりっぱなし」の北野日奈子、そして「無我」の中田花奈


田村真佑
凄く、凄く大人の信頼が厚いのがわかります。秋元真夏や梅澤美波が既に「真佑ちゃんに振っておけば大丈夫」という感覚を持っているのも見て取れます。彼女のキャリアを考えるとこれは驚異的。

とにかく物怖じしない。振られれば何かコメントを発する。しかも出しゃばらない。ついでに声が可愛い。和田まあやとおバカを争っていた時にはここまで有能な人物だとは夢にも思いませんでした笑

電視台でゲテモノ食べさせられても涙目になりながらやり切ったのも良かった。あれで泣いてしまうとまた違った空気になるところでした。


北野日奈子
46時間ずっと「かかりっぱなし」だった彼女。
久保史緒里の2ショットトークでは「さゆまい(=松村沙友理と白石麻衣)」を彷彿とさせるバカップルっぷりを見せつつ両者号泣。久保チャンネルでもイチャイチャし、2期生企画では本当の修学旅行生のようにとにかく声がデカかった笑
もうメンバーに会えて嬉しくてしかたがないのがダダ漏れで非常に微笑ましかったです。

正直彼女をそれほど好きでない人からは反感を買うんじゃないかと思うぐらいのハイテンション。そのまま最後まで走り切ったのは見事でした。

前回の46時間TVの時は活動休止中だったきいちゃん。メンバーがちぎり絵アートを作成するコーナーでフラッと現れた彼女を優しく迎えた星野みなみと相楽伊織。あれは僅か2年ちょっと前のことです。それを思うと今彼女がこんな楽しそうに活動しているのが本当に嬉しいですね。


中田花奈
これ、もう完全に受け取り手である私の主観なんですが、「落ち着いたなあ」と思いました。

3期バレンタイン企画でガンガン立候補して(2期生の時にガンガン立候補して振られまくった結果跳ねた齋藤飛鳥を真似して)批判を浴びていた彼女はもういません。

今回の46時間TVを通じて、後輩たちを愛でている彼女はなんだか子供の成長に目を細める母親のように見えました。

先日ある番組で「本当はもう卒業しているはずだった」というコメントもありましたが、今の彼女はもはや「無我」の境地に達しているのかもしれません…ってどんなアイドルやねん笑

自身の電視台「カナリナティカード」ではやりたいことやりつつちゃんと甘噛みしまくってビリビリペンのリアクションも松村沙友理に負けるというオチまで綺麗についていて良かったです。


「至宝」生田絵梨花の涙


最後に触れたいのは生田絵梨花です。

電視台の企画は2ヶ月で「触ったこともない」ヴァイオリンの生演奏をするというものでした。

曲は『帰り道は遠回りしたくなる』。
背後で流れるのは生ちゃんのソロ歌唱。オリジナルでは抑えめに歌われているこの曲を非常にドラマチックに歌っていて素晴らしかったです。ボーカリストとしての彼女の魅力が堪能できました。

逆に言えば演奏はそんなにピンときませんでした。自分はヴァイオリンを演奏できませんので2ヶ月であそこまで演奏することの難易度はまったくわかりません。それでもついこちらも「生ちゃんなら」ということでハードルを上げてしまう。良くないですね。

さらに企画は続きます。「実はギターも並行してイチから練習していました」。
うわこれ、また「ヴァイオリンをなめるな」とか言い出す輩がいそうだな…と心配になります。

しかし演奏後のコメント中、彼女がふいに目を潤ませた瞬間にすべてが変わりました。

直前に生ちゃんの口をついたのは「自分のモチベーションを保つ意味でも」という言葉。

ハッとさせられました。
あの「モチベーションおばけ」の生田絵梨花が、モチベーションを失っていたんだ。

コロナ禍により大きな仕事が飛びました。

『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』は開幕直前に感染が拡大し初日が3度も延期されます。そして3月20日から27日(いわゆる「奇跡の1週間」ですね)だけの公演。4月に予定されていた公演はすべて中止。

そして世界初演で気合が入りまくっていたであろう『四月は君の嘘』も7月から8月まで全公演が中止。

どちらもまるまる2か月に及ぶロングラン、そして全国ツアーありの舞台でした。

そこに本来であれば5月に白石麻衣の卒コン、恐らくは乃木坂真夏の全国ツアーも重なり、夏の終わりまで彼女は舞台と乃木坂コンサートの同時進行で一心不乱に駆け抜けるはずでした。

気がつけばそのすべてが白紙に。


高すぎるハードルを設定して、それを私のような凡人では想像することすら及ばない努力により乗り越え続けてきた彼女。何かに憑りつかれたかのようにステージに上がり続け、その姿で我々に勇気を与えてきた彼女。

そんな彼女の溢れる情熱を叩きつける場所が、自分が努力してもどうにもならない「感染症」という敵によって理不尽に奪い去られた。

それがショックだったのではないでしょうか。

ここ何年も常軌を逸したスピードで走り続けてきた彼女が立ちすくみ、途方に暮れた。
初めて経験する「本当にどうすればいいのかわからない」状態は、生ちゃんにとって非常に苦しく辛いものだったんだと思います。

だからこそ今回、2ヶ月で「触ったこともない」ヴァイオリンとギターの生演奏をするという無理難題を自らに課し、懸命になんとか自分を奮い立たせようとした。

感受性の強い岩本蓮加はそれを敏感に感じ取ったのでしょう。
ポロポロと大粒の涙をこぼし、それを見た生ちゃんもついに堪えきれずに泣き出します。

誰かが卒業するたびに泣きじゃくる心優しき彼女ですが、こと「自分のこと」となるとほとんど涙を見せない印象があります。(すぐに思い出せるのは『おいでシャンプー』の選抜発表ぐらいです)

「少しでも誰かに届いたのかな…」

そう言いながら彼女が見せた涙は、観る者の心を打つものでした。

止まることができないのかのようにいつも猛スピードで走り続ける生ちゃん。
個人的には現在のような状況ぐらいはゆっくり休んでほしいという思いも正直あるのですが。

既に彼女はまた走り出しています。

本当にすごいな、この人は。


続きます。

この記事の続き:



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びーむ色調補正3
乃木坂46バースデイライブ、通称バスラ。

これまでに発表された全曲を披露するというクレイジー極まりない笑レギュレーションを自らに課す荒行ですが、その中で様々な名場面や伝説が生まれてきました。個人的にも忘れえぬ思い出がいくつもあります。

今年の舞台はナゴヤドーム。4DAYSの初日のみ何とかチケットを確保して行ってきました。

初日は生田絵梨花リサイタル


1日だけなので自分の好きな曲をやってくれるかドキドキだったのですが、こんなセットリストでした。

Overture
01. 夜明けまで強がらなくていい
02. 夏のFree&Easy(堀センター)
03. ハウス!
04. Against(星野センター)
05. ボーダー
06. 思い出ファースト
07. Tender days(遠藤センター)

08. あなたのために弾きたい
09. 命の真実(生田・高山)
10. 雲になればいい(生田・純奈・久保)
11. 新しい花粉(生田・久保)
12. ぼっち党(生田・久保)
13. ここじゃないどこか(生田・星野)
14. 満月が消えた(生田・星野)
15. ショパンの嘘つき(生田・松村)
16. 低体温のキス

17. 知りたいこと
18. なぞの落書き
19. Am I Loving?
20. 告白の順番(秋元・中田)
21. Rewindあの日(遠藤・賀喜・筒井)

22. 新しい世界
23. 風船は生きている
24. 月の大きさ
25. ダンケシェーン
26. 僕の思い込み
27. 設定温度
28. 今、話したい誰かがいる(高山・新内センター)

29. 曖昧
30. 三角の空き地
31. 言霊砲
32. 僕の衝動
33. 2度目のキスから(秋元・鈴木・渡辺)
34. 無表情
35. 初恋の人を今でも
36. 私のために誰かのために(高山・純奈・久保・中村・賀喜)
37. Another Ghost(飛鳥)

38. 不眠症
39. バレッタ
40. アンダー(北野センター)
41. あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
42. 自惚れビーチ

43. おいでシャンプー(飛鳥センター)
44. 13日の金曜日(樋口センター)
45. 転がった鐘を鳴らせ!
46. 僕のこと、知ってる?
47. 何度目の青空か?

EN
EN1. 人はなぜ走るのか?
EN2. 生まれたままで
EN3. コウモリよ
EN4. ぐるぐるカーテン(星野センター)

全51曲の超絶ボリューム。なんてお得。

すごくざっくり書くと、オープニング3曲でぶち上げて、そこから各期1曲ずつ。
続いて怒涛の生田絵梨花リサイタル。さらにユニットコーナーと集団曲を2セット。
そこからエンディングへ、そしてアンコールという流れでした。

欠席は白石麻衣と佐々木琴子のふたり。

ライブ直後の感想は「セトリ地味!なのにめちゃめちゃ楽しい!」でしたが、今改めてセトリを見るとそんなに地味じゃない気がしてきました。

『ハウス!』『ダンケシェーン』や『おいでシャンプー』という沸き曲はやってますしね。

『他の星から』『三番目の風』『あらかじめ語られるロマンス』や『きっかけ』あたりの定番曲がこの日に披露されなかったのが「地味」という印象の原因かもしれません。

この日は大前提として唯一の生田絵梨花参加日ということで、上にも書いた通り「生ちゃんリサイタル」の様相でした。ジャイアンばりです笑

まあ全曲披露ですからこうなりますよね。個人的には生ちゃん好きなのでまったく問題ありません。

そして白石麻衣がDAY3と4の参加なので『ガールズルール』『インフルエンサー』『シンクロニシティ』といった彼女のセンター曲もこの日は外れています。大好きな『立ち直り中』を聴けなかったのは残念ですが。

シングル24枚を4日で割るので各日6曲。実際には最終日に25枚目シングル『しあわせの保護色』が披露されたので初日だけ7曲でした。


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選抜メンバー中心の構成


過去のバスラとちょっと違うと感じたのがポジション。

バスラは極力オリジナルメンバー&オリジナルポジション重視で卒業生の部分は後輩が埋めるのが原則でした。そして基本的にオリメンのスライドはなし。(齋藤飛鳥だけ例外的に好ポジへスライドしますが)

前年の7thバスラでは相対的に持ち歌の少ない(=選抜常連ではない)3期生メンバーが卒業した1期生のポジションをうまく埋めていた印象があります。

しかし今回はどちらかというと真夏の全国ツアー的に「その時点での選抜メンバーを基本とする」スタイルでした。

大人数での曲は24thの選抜がメイン。
これはいよいよオリメンとポジの空きが多すぎてまかなえなくなってきたことを意味しているのでしょう。

そこを例えば4期生たちに埋めてもらおうとすると新たに振り入れする部分が多すぎるし全体のバランスも不安が残る。かといって周囲と合わせるための時間も限られている。

であればむしろ直近のライブでその楽曲をパフォーマンスしたメンバー=選抜にそのままのポジションでやってもらう方が短時間で対応できる。こんな判断だったのだと思います。

ただ結果としてこれまで以上にメンバー間の出番に差がついてしまったように感じました。

ここはファンとしても(恐らく運営にとっても)ジレンマですね。

全曲披露という無謀なチャレンジを毎年続けてくれていることには心から敬意を表したいです。できることなら続けてほしい。

でももちろん特定のメンバーの負担が増えすぎて故障したりパンクする姿は見たくない。

現在の乃木坂のスケジュールで200曲のライブを行なうということ自体がそもそも奇跡的なんだよなあ、と改めて感じました。


続きます。

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キレイトリミング2
この記事は舞台『キレイ − 神様と待ち合わせした女 − 』の内容に関するネタバレを含みます。

現実も舞台の上も時は流れる


キャストの皆さんについて印象に残ったことを書きます。

まあそもそも個性的な役者さんばかり。しかもそこに超強烈なキャラクターをかぶせられているのでなんならもう全員印象的なのですが、客演の男性陣数人をピックアップします。

まずは青年ハリコナの小池徹平さん。

5年前の前回再演時では少年時代のハリコナを演じた小池さん。それが時を経て青年ハリコナになったのですから前回も観劇された方には嬉しいキャスティングでしょう。
その表情、ポーズ、立ち居振る舞いすべてが実にイカレたキザ男かつゲイでお見事。常に流し目なのが特に良かったです。あれ疲れるんじゃないかな。
そして頭脳明晰になったのにそこはかとなく見え隠れする愚かしさがまたなんとも彼の中にいる少年ハリコナを感じさせて愛おしい笑

その少年ハリコナは神木隆之介さん。

言わずと知れた超絶売れっ子ですが、これが初舞台だそうです。
個人的には天真爛漫に見えて企んでいる役のイメージが強いのですが、ハリコナはド天真爛漫。『俺よりバカがいた』を歌う姿の楽しそうなことったら。
でも出征前夜にケガレにプロポーズするシーンでは幼くて優しい繊細な愛の形を表現していてさすがという感じでした。

そしてダイズ丸。

いや、恥ずかしながら観ている間はずっと流れ星のちゅうえいさんが演じていると思ってました。「すげえな、ちゅうえいってこんなに演技できるんだ」って。マジです。
帰宅後に確認したら橋本じゅんさんという劇団☆新感線の看板俳優さんだったのですね…大変失礼しました。

戦場で目をまん丸く見開いてドタバタをやる姿が凄くちゅうえいっぽかったんですよね。そこから昏睡状態に陥ったケガレをかいがいしく看病する姿、そして大往生前の最終形態での悟り切った表情。
「さっさと食べられたい」以外何もなかったダイズ丸が「ケガレのお世話をしたい」という意志を持ち、子孫を残したいという欲(欲望ではなく)を持ち、ダイズ兵では誰も感じたことのない充足感を覚える。そんな3形態の移ろいをごく自然に演じ分けられていて素晴らしかったです。

ケガレがキレイに変わる瞬間


そして主人公のケガレを演じた我らが生ちゃん、生田絵梨花。

ケガレは映画『道』のジェルソミーナのような「聖なる愚者」ではなく「すべてわかっていたけれどあまりに辛すぎるので記憶を閉じ込めるために別人格を作り上げた」パターンです。いわゆる内在性解離でしょうか。

肝となるのは落差。

どれほどピュアに「何も知らないケガレ」を演じられるか。
そして記憶を取り戻した(取り戻してしまった)瞬間の表情。
その切り替え、その落差こそがこの役のほとんどすべてだと思います。

そのために重要なのが一幕。
いかに純真無垢で観る者に「可愛い」「微笑ましい」という印象を強烈に与えつつ、どこか狂気や危うさを感じさせることができるかがポイントになります。

そして、さすがは生田絵梨花。

見事に「純真無垢でありながらクレイジーさがにじみ出る」ケガレでした。

彼女自身、普段から「なんで?なんで?」と聞きたがっていつもメンバーを当惑させるらしいので、好奇心旺盛な演技はある意味自然体でいけたように思います。
また『乃木坂って、どこ?』『乃木坂工事中』で何度もバナナマンに対して繰り出してきた「すっとぼけた表情」も糧になったに違いありません笑

そしてクライマックスでのシリアスな演技。ずっと少女だったケガレが大人の女性のキレイに変わった時の、美しくて逞しい表情。
これまで数多くの作品で様々な女性を演じてきた生ちゃんは「自分を愛してやることに決めた」女性の顔を凄く自然に、そして堂々と見せていました。

ただ、井上小百合もこういうの超得意なんですけど笑

『夜曲』で演じたサヨちゃんがかなり近い、というか上の文章(ピュア→記憶を取り戻した表情の落差)だけ見ればほぼ同じですね。

…とこれは余談です。

話を戻すと、生ちゃん得意のコミカルな演技+本人の持つ愛くるしさ+ミュージカル仕込みの運命的な女性の顔がうまくマッチした当たり役だったと思います。

大人計画という新たなフィールドにまで活躍の幅を拡げた生田絵梨花。

期待にたがわぬ主演女優ぶりでした。


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キレイトリミング2
の記事は舞台『キレイ − 神様と待ち合わせした女 − 』の内容に関するネタバレを含みます。

2019年12月、Bunkamuraシアターコクーンで行われた『キレイ』を観劇してきましたのでレポートします。

嫌悪感とメッセージと


大人計画大好き人間である井上小百合が、その中でもトップクラスに好きな作品とのこと。

「いつかケガレを演じたい」とまで言われりゃ、そりゃ観てみようかなという気になりますよね。チケット取るのがめちゃめちゃ大変でしたが笑

あらすじ


三つの国に分かれ、100年もの間、民族紛争が続く“もう一つの日本”。
その争いのさなか、民族解放軍を名乗るグループに誘拐され、監禁されていた少女(生田絵梨花)が、10年ぶりにソトの世界に脱出する。

すべての過去を忘れた少女は自ら“ケガレ”と名乗り、ダイズでできている兵士“ダイズ兵”の死体回収業で生計を立てているキネコ(皆川猿時)たち“カネコ組”と出会い仲間に加わる。回収されたダイズ兵を食用として加工するダイダイ食品の社長令嬢・カスミ(鈴木杏)と奇妙な友情で結ばれていくケガレ。戦場をうろつき、死体を拾って小銭を稼ぐ、そんな健気なケガレを見守るのは成人したケガレ=ミソギ(麻生久美子)だった。

死ぬことに憧れつつもなかなか死ねないダイズ兵のダイズ丸(橋本じゅん)、頭は弱いが枯れ木に花を咲かせる能力を持つハリコナ(神木隆之介、成人後:小池徹平)、誘拐・監禁することでしか女性と一緒にいられないマジシャン(阿部サダヲ)らと出会い、過去、現在、未来が交錯する時間のなかで、ケガレは忘れたはずの忌まわしい過去と対決することになる。
公式サイトより引用)


とてつもなく露悪的。

個人的には設定も描写も生理的に受けつけない部分がいくつかありました。

大枠では反戦なのでしょう。

死んだ兵士を食用にするという行為を「ダイズ兵」というナンセンスでちょっとだけオブラートに包んで(いや包めてないですけど)戦争という極限状況における人間を描いたのかな、と思います。

単なる兵器兼食料だったダイズ兵のひとつに冗談で生殖機能をつけたら自我を持ち、徐々に人間らしさを身に着ける。さらにそのダイズ丸と主人公のミソギが子をなす。
この展開も正直嫌悪感を覚えます。

ただこれも、戦争において個人などというものは存在せずに敵を滅ぼすための道具とされてしまうが、そんな中でも家庭を持ち子をなし生命をつなぐことによって人は人たりうる、というメッセージのような気もします。


大人計画の舞台を観たのは初めてで、松尾スズキさんがどれほど作品にメッセージを込める方でどういう創作方法なのかは知らないので、的外れな見方かもしれません。

明確に伝えたいことがあってそのための装置として物語を用いるのか
物語のアウトラインを思いついてそこに肉付けしていくのか
なにかキーワードやビジュアルイメージのようなものが閃いてそこから物語を生むのか

その辺りが気になってご本人のインタビューをいくつか見ましたが「こだわっているのは笑い」と煙に巻いておられました。

「兵器として生み出された悲しい存在」というモチーフは割とよく見ますが、どうやったらそれを「ダイズ兵」にしようなんて思いつくんでしょうね。不思議。

ゼロがいい ゼロになろう


もうひとつ、全体を通して提示されていたのは「全てはプラマイゼロ」という視点でした。

ダイダイ食品の社長令嬢でありながらダイズ兵の食用加工反対運動を支援するカスミ。

盲目だったジュッテン(岩井秀人)が目が見えるようになった瞬間に徴兵されて戦場に連れていかれたり。

ハリコナは頭に銃弾を受け頭脳明晰なゲイに変貌。しかしそれと同時に純粋さも花を咲かせる能力も、かつてケガレと心が通じ合った理由をすべて失ってしまう。
それにも関わらず彼とミソギは結婚する。

さらに最後には宇宙で蜂に刺され再び昔の彼に戻るが、そこで咲かせた花は自分の命を散らす花火。それを見て美しいと思うミソギ。

幸福と不幸が猛烈な勢いですれ違う、考えられないほどの皮肉の連続。

そしてケガレ=ミソギ自身もまた、忌まわしいく消し去りたい過去と向き合ったことにより深く深く傷つきますが、同時にそれによって新しい生きる力を得るのです。


毒々しくて猥雑で悪意に満ちていて、そこにある救いもほんのちょっと。
個人的な趣味からすると、ネガティブの量に対してポジティブ少なすぎだなあとは思います。

でも、なんかやっぱり最後は感動しちゃいました。

人間賛歌。

私の大好きな『レキシアター』と通底するものは一緒ですね。

関連記事:
【井上小百合舞台レポ】笑いとシリアス、余韻と感動。もの凄い地力の力業 ~愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」①

まあ「どんなちっぽけでささやかでみっともなくても人生は美しい」の『レキシアター』に対し、『キレイ』は「どんなに汚辱にまみれた人生であっても、それでも生きることは最高だ」ぐらいの違いはありますけれど。


続きます。

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