前の記事では「掛橋沙耶香 卒業セレモニー」について書きました。
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当記事では私の思う彼女の独特な魅力について。
「自我を持った素体」
不思議な人でした。
掛橋沙耶香の名シーンって、ない。
「ちばけとったら、おえんで!」ぐらい。
個人的に「かなり好きな部類に入るメンバー」なのに、その感情に見合うだけの名シーンが思い出せないのです。
それは彼女の持つ一種独特な「現実感のなさ」に起因するのではないでしょうか。
別の言葉にすると「儚さ」なのかもしれません。
でも西野七瀬的な、あるいは遠藤さくら的な儚さとは明らかに異質な何か。
なんというか、腹の底が見えない感じ。
なんでも笑顔でこなすけれど、胸の内では明確に好き嫌いがありそうな。
個人的に彼女を見ていると「プレーン」とか「ニュートラル」「ユニセックス」、もっと言えば「アノニマス」という単語が頭に浮かびます。
全部ひっくるめて無理矢理言語化するならば「自我を持った素体」とでも言いましょうか。
そして、それこそが彼女の魅力を深めていました。
あんなにクセのない綺麗な顔立ちなのに、観る者の心を波立たせる。
変な表現かもしれませんが「日常に潜む闇」の「日常」側も「闇」側もシームレスに演じられる俳優になる可能性があったと思います。
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そんな彼女は「クリエイターのイマジネーションを刺激するタイプ」だったのではないでしょうか。
個人PVはどれも彼女の魅力を引き出すものでした。
『拾ってください』(23rdシングル特典映像)では無邪気風あざと釣り師。
『KICK THE CRAFTY』(26th特典映像)はシリアスと悪ガキの振り幅。
中でも白眉だったのが『マチアワセ』(27th特典映像)。
「(画面のこちら側の)彼」との待ち合わせに遅刻してくる彼女。
タイムリープしている描写があり、どんどん遅刻の時間が長くなります。
途中彼女は何かと闘っているような様子が挟まれます。しかしその敵も倒したようなのにその後も長くなり続ける待ち時間。疲れて心ここにあらずという彼女。
とうとう1,000時間を超え「実はね、こんなに遅れた理由はね…」。
最後にモノローグで明かされる悲しい真実。
彼が「止まった時間の中に捕らわれている」のを救うためにずっと奮闘してきたこと。
彼を捕らえた敵(あるいはタイムリープ警察?)を倒したはずなのに時間は動き出さないこと。
彼を助ける方法がわからなくて途方に暮れながらも、諦めずにタイムリープを続けていること。
彼に気取られまいと嘘をついてちょっぴりドジな彼女を演じる序盤。
取り繕えなくなって疲弊していく中盤。
もう一度自分を奮い立たせて彼と向き合うラスト。
掛ちゃんはまさしくシームレスに演じています。
そして、おわかりでしょう。
私は久しぶりにこれを観て「止まった時間の中にいる彼」を、あの事故からずっと姿を見せなかった掛ちゃんと重ねてしまいました。
いわゆる「現実と作品の残酷なリンク」が起きてしまったと。
しかし、彼女の卒業に関する記事を書いているうちに考えが変わりました。
ずっと掛ちゃんを待ち続けて止まった時間の中にいたのは我々ファンの方だ。
その時計の針を動かすためにこそ、掛橋沙耶香は卒業セレモニーで姿を現してくれたのだと。
さて。
既に彼女は別の道を歩き始めたのですから、この文章もそろそろ終わりにしましょう。
最後にこの言葉を送ります。
さよなら、さよなら!
別れがこんなに甘く切ないなら、
朝が来るまでおやすみを言うわ。
掛橋沙耶香さん、6年間本当にお疲れさまでした。
どうか、どうかあなたのこれからに幸あらんことを。
◇
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総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。
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