
2019年7月8日、公式サイト上で乃木坂46キャプテン、桜井玲香さんの卒業が発表されました。
まずはこれまでの歩みを振り返ってみましょう。
いつしか消えたアンチ
彼女は2012年2月のデビュー直前に冠番組内で暫定キャプテンに、そしてその6月に正式にキャプテンとして任命されます。メンバーの投票による選出だったと言われています。
はっきりした顔立ちとハキハキ喋る姿。幼稚園から私立の女子校という経歴。そして漂うお嬢様感。いい意味で「大人受けのいい」彼女。
結成当初「公立共学校」のAKB48対し「私立女子校」のイメージと評された乃木坂のキャプテンとしてはうってつけの人材だったのでしょう。
しかし、これは弱冠18歳の彼女にとってとても重い荷でした。
AKB48高橋みなみの強烈なリーダーシップと比較され「何もやっていない」と容赦ない批判を浴びせられたのです。
そして、年齢、人気、ポジションが自分より上であるメンバーが何人もいる状態。
当時をご存じない方は驚かれるかもしれませんが、初期の彼女は特にアンチが多いメンバーのひとりでした。
当初はなかなか握手人気が上がらなかったこともあり、キャプテンという役職による選抜聖域呼ばわりをされていたのです。
デビューシングル『ぐるぐるカーテン』こそ3列目でしたが、2nd『おいでシャンプー』ではフロント。さらに続く『走れ!Bicycle』もフロントだったのですが、なぜか福神からは外れるという謎の采配。(フロントで福神でなかったのはこの時の桜井玲香と『バレッタ』センター堀未央奈がなぜか福神扱いでなかった2例だけです)
このあたりのモヤモヤがファン心理に与えた影響は決して小さくありませんでした。2作連続フロントという状況で臨んだ最初のプリンシパルでは全公演2幕出演するものの、ほとんどトランプ役(観客投票で9位以下)と非常に苦戦します。
そして彼女がフロントに立ったのはこの『走れ!Bicycle』が最後になりました。
4thから12thまではずっと2列目で福神。
唯一の例外は福神の人数をフロントの5名だけに絞った8th『気づいたら片想い』でした。
この時の選抜発表で、彼女はずっと抱えていた胸の内をこぼします。
「キャプテンだからずっと福神に入れてるんだって言われる、それが悔しい」
6thシングルあたりからは握手人気も向上し、完売かそれに準ずる売上を出すようになります。しかし御三家の厚い壁、西野七瀬の躍進、交換留学生松井玲奈のフロント固定などの状況が絡み合い、彼女を再びフロントへという機運が高まることはありませんでした。
この頃から、彼女は演技の道に活躍の場を見出します。
2014年10月の『Mr.カミナリ』を皮切りに舞台へのに出演を積み重ね、現在ではグループ内でも屈指の舞台メンという評価を不動のものとしています。
13thから18thは2列目と3列目をいったりきたり。
19th以降はまた24thまでずっと2列目で福神。
人気・ポジションとも選抜メンバーの中間あたりの位置を保ち続けます。
この時期は、その立場ゆえか一歩引いた場所からグループ全体を眺めていた印象です。
「メンバーと一緒の撮影だと無意識のうちに引いてしまう」と語っていたこともありました。
ふと気がつけばあんなにいたアンチはほとんど見かけなくなりました。
彼女のポジションと人気のバランスが取れてきたことも、もちろんあるでしょう。
ビジュアルとパフォーマンスのレベルの高さに多くの人が気づいた、それもあります。
しかし何よりも、乃木坂の魅力である雰囲気の良さの一端を間違いなく桜井玲香の穏やかなキャプテンシーが担っていることを、多くのファンが認めるようになったからではないでしょうか。
たとえ時が戻せたとしても
かつてインタビューで彼女はこう語っています。
「キャプテンという重みは、思いのほかズシンとあるんです。考え方から何から、何をしていてもキャプテンということを意識してしまいます」
自分の発言がグループの意見と受け取られる怖ろしさ。そして時には自分の思いとは違うことをキャプテンとして言わなければならない場面もあったことでしょう。
同じ記事で、キャプテンを辞めたいと思ったことは?と問われた時の答え。
「あります。やりたい、やりたくない……の繰り返しで。本当に紙一重。常に葛藤しながらです」
そして最後にこうつけ加えています。
「時々思うんです。もしキャプテンじゃなかったら、どんな乃木坂46人生になってたかなって」
もしキャプテンという枷がなかったら彼女がどれほどの輝きを放ったか。それを見てみたかったという気持ちは確かにあります。
でも、彼女がキャプテンではなかった場合の乃木坂を見たいとは思いません。
キャプテン、桜井玲香。
それが間違いなく正解だったと確信しているから。
続きます。
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