タオル補正

『じょしらく弐』が切ない


個人的に忘れられない場面があります。

2016年5月に行なわれた舞台『じょしらく弐 〜時かけそば〜』。
そのクライマックスで彼女演じる防波亭手寅(ぼうはてい・てとら)がひとり残されて、コールドスリープする仲間たちをずっと見守るというシーンがありました。
それを見た時に「ああ、桜井玲香は最後のひとりになるまで残って、キャプテンとしてみんなの卒業を見届けるつもりなんだ」と勝手に思って勝手に感動したのを思い出します。

あの舞台ではアイドルグループの解散ライブをメンバーたちが演じていたのも印象的でした。
蕪羅亭魔梨威(ぶらてい・まりい)を演じた井上小百合の「悲しいこともつらいこともいっぱいあったけど、皆さんのおかげでここまで来れました」という台詞に、やがて訪れるであろうその日を思って目頭が熱くなったのは内緒です笑

コメディなのに、アイドルという職業の儚さを痛切に感じさせる内容でした。

最近CSで放送されていましたが、今観るとその内容と当時から今に至るまでの乃木坂に起きた出来事とが色々とリンクしてとても切ないです。あとひめたんがやたらと可愛くて、それがまた切ない。


この舞台の後から桜井玲香は体調を崩して療養します。

体調不良により真夏の全国ツアー2016を全欠席。
そしてツアーの最後は乃木坂の聖地・神宮球場でのバスラ3Daysでした。

初日のオープニング映像で「桜井」と書かれたマイクを握る誰かの姿がモニターに流れ、巻き起こる大歓声。

あの時、よくぞ戻ってきてくれた。今改めてそう思います。


それ以降でしょうか。徐々にスポークスマンとしての役割は減っていきます。それまで対外的な発表の場には桜井がいることがほとんどでしたが、外番組で経験を積んで喋れるようになってきた秋元真夏や高山一実がその役割を担うことが増えました。


別れの時が近づいて


東京ドームの前ぐらいからだと思いますが、少しずつグループの未来に対して前向きな発言が目立つようになります。

特に3期生に対する信頼を繰り返し言い表す彼女の言葉は、後輩たちにとって大きな支えになったことでしょう。

今にして思えば、これも自身の卒業への準備だったのかもしれません。


2018年には盟友との別れがありました。

生駒里奈と若月佑美。
キャプテン桜井玲香を両脇で支えてきたふたりでした。

生駒ちゃんとの絆。
初代センターとキャプテン。誰も答えを知らずに手探り状態の活動初期に、重い責任を課せられた者同士の熱い信頼関係。
本来は強いことを言えるタイプではないふたりが協力してメンバーに向かって真摯に語りかけ、グループの空気を引き締めたことは多くの証言があります。

そして「若桜」「れかつき」と呼ばれファンにも親しまれた若とのコンビ。
大好きで楽屋でもプライベートでも仲が良くて、グループ内でのポジションも近くて、『犬』や『松子』で同じ舞台を経験して。とてもとても特別な存在の「相方」。

それまではメンバーの卒業を最後は笑顔で見送ってきた桜井が、このふたりの卒コンだけははっきり違う表情を浮かべていました。

嫌だ

映画館のスクリーンで大写しになったその表情は、観る者の胸を締めつけるものでした。


ずっと前から


どこからどう見ても美人で、抜群の歌唱力と魅力的な声を持っていて。ダンスはしなやかかつ切れがあり、演技までできちゃう。
個人的にはビジュアルもパフォーマンスも、全方位でグループトップクラスだと思います。

でもお高く留まったところが全くなく、むしろ「ポンコツ」なんて呼ばれて親しまれていました。ポンコツといってもちょっと天然で勘違いとか言い間違いが多いというだけなのですが。

完璧すぎるスペックだと嫌味になるので、ちょっと隙を残しているところが逆に完璧ですよね笑


当初の生真面目な印象が和らぎ、いつからか肩の力が抜けた姿をファンにも見せるようになってきた彼女。

『乃木中』で誰よりも大きく口を開けて豪快に笑う姿が好きでした。
普通なら下品になりそうなのに決してそうならない。

11thシングルのペアPVを撮った小泉監督が語った「可愛く撮られなくても気にしないっていうスタンスの方」というコメントが彼女の素晴らしさを端的に表していると思います。


卒業発表のブログはこう締めくくられています。

「グループの更なる成長のためにも、未来の新たな仲間のためにも、何より私自身のためにも。早く一人前になって、この人、乃木坂46の初代キャプテンだったんだよ!とみんなの自慢になれる様に頑張らなきゃな!!」


気づいてなかったんですか?

あなたは、ずっと前から自慢のキャプテンでした。


8年間、本当にお疲れさまでした。


そして、新キャプテンに任命された秋元真夏さん。

偉大な前任者の後を継ぐプレッシャー。1期生の卒業が相次ぎ激動の真っただ中にあるグループ。今キャプテンになることは火中の栗を拾うようなものかもしれません。
聡い真夏さん、ましてや「女子校カルテット」として桜井玲香の苦労を間近で見てきた彼女が感じる不安は相当なものでしょう。

それでも、大切なものを守るためにキャプテンを引き受けてくれた。

その漢気は素敵です。


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