タオル補正
『I see…』
乃木坂46、25thシングル『しあわせの保護色』のカップリング。歌唱メンバーは4期生11人(4期追加メンバーは参加せず)。

思い出すのは『オリジナル スマイル』


3月17日に公式YouTubeにMVが公開され、その日のうちにバズりました。
「SMAP感」というワードとともに。

カラフルでハッピーなパーティチューン。
チョッパーベースやギターのカッティングに派手なブラスとシンセ。サビで入ってくる合いの手まで、確かにSMAPっぽい。

メロディやアレンジが似ている曲は他にあるのかもしれませんが、この曲を聴いて私が思い出したのは『オリジナル スマイル』でした。

1994年6月にリリースされたSMAP13枚目のシングル。
しかし、今では東日本大震災の時に人々を勇気づけた曲として広く知られています。

一瞬で数えきれないほどの命が失われたあの日。
灯りの消えた街を眺めて呆然と立ちすくんだあの夜。

9年前と現在の状況は決して比べられないし比べるべきでもないと思います。
あの日感じた絶望と現在の閉塞感は全く違う種類のものです。

それでもやっぱり思い出してしまうんです。

平凡な日常が失われ、お店の棚から商品が消え、そして音楽が聴こえなくなった日々のことを。

あの時は哀悼の意と節電の必要性という両面から自粛が叫ばれ、たくさんのライブが中止になりました。
多くのミュージシャンが音楽なんかやっていていいのか、そう自問自答したといいます。スピッツの草野マサムネさんは急性ストレス障害で倒れました。

それでも人間には音楽が必要で。
少しずつ街に音楽が流れ始めます。

そこで多くの人の心に灯りをともした歌のひとつがSMAPの『オリジナル スマイル』でした。

震災1週間後に木村拓哉が自身のラジオで被災地への思いとともにこの曲を流し、その年の8月にはファン投票で収録曲を決定したアルバム「SMAP AID」において1位に選ばれます。

余談ですが乃木坂46が結成されたのもちょうどその頃のことです。

そしてその年の大晦日、この曲は紅白歌合戦の大トリで歌われます。

自分本来の笑顔を取り戻そうという前向きな、言ってしまえば平凡なメッセージのシンプルな歌。
でも、大きく手を振りながら笑顔満開で歌う5人の姿を観ていたらなぜか涙が出そうになりました。個人的にはSMAPの担っている役割の大きさを初めて実感した瞬間だったように思います。

今回この『I see…』のMVを観ていて思い出したのはその時の紅白でした。

自分の力ではどうにもならないことが起きて打ちのめされて苦しくて、それでも立ち上がりたい時。

こういうバカみたいに明るい曲の方が逆に胸にしみて、わけもなく涙が出てくる。

頑張ろうって思わせてくれる。

そんな音楽の力、そして笑顔の持つ力を改めて感じました。

素直で前向きなメッセージをはじける笑顔で届ける。
「人を笑顔にする仕事」と言われるアイドルだからできることって、これなんだと思います。

そして現在。
9年経って新たな危機が訪れました。SMAPはもういません。

別に運命とか特別な意味なんてない。全部単なる巡り合わせに過ぎないけれど、東日本大震災の年、その夏に結成された乃木坂46がSMAP感溢れる楽曲で人々に笑顔を届ける。

現在の乃木坂46はもちろん当時のSMAPの存在には及ぶべくもありません。ましてや『I see…』を歌っているのは4期生。世間的には全く無名のメンバーたちです。

でもそんな彼女たちが、4番目の光と名付けられた彼女たちが、笑顔でこの世界を照らしている。

それはなんだかちょっと感動的で。
そしてただただ嬉しいです。

私はきっと何年か先に思い出すでしょう。
コロナウイルスという暗闇に覆われた世界の中で、彼女たちの笑顔に励まされたことを。

ささやかな奇跡


YouTubeの乃木坂46公式チャンネルは通常、シングル発売日の正午にMVをフルバージョンから短縮版へ変更してしまいます。

『I see…』も3月25日の正午をもって短縮版になる予定でした。

YouTubeのコメント欄にはそれを知っているファンの「この曲はフルで残さねばならない」という悲鳴にも似た叫びが並びます。

タイムリミットである3月25日の12時直前で214万回を超える再生回数、10,000件のコメント、いいね5.4万件。

そして運営はフルバージョン公開延長の決断を下しました。

コメント欄にはもうひとつ、多くの人が同じことを書いています。
「フルバージョンが無理でも、このコメント欄だけは残してほしい」

誰もがギスギスしてイライラしている現在の日本において、別世界のような平和なコメント欄。

そこではSMAP感のワードに惹かれて来たSMAPファンの方々と乃木坂ファンが、お互いを尊重しお互いの推しを認め合うという暖かな交流がなされていました。

様々なヘイトがまき散らされ、誰かを貶めることによってしか自分(の推し)の価値を見出せないかのような言葉が多く見られるネット社会において、『I see…』のコメント欄自体がちょっとした奇跡のように思います。


今、日本を元気にしているのはこの曲です。

なにはともあれ、観てください。
ちょっと元気が出て、ちょっと泣きそうになります笑



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『I see...』/乃木坂46


MVについても書きたいので、もうちょっと続きます。

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