タオル補正
2020年11月27日午後10時15分。

公式Youtube上で堀未央奈さんのソロ曲『冷たい水の中』のMVが公開され、その最後に彼女自身の口から卒業が発表されました。

使い古された方法論


彼女はそのスタートから「異物」でした。
いえむしろそのスタートがすべてだったのかもしれません。

『バレッタ』でのセンター抜擢。
結成当初からのファンである私からすれば最悪のタイミングでした。

デビュー曲から5作連続でセンターを務めたのは生駒里奈。その「生生星」路線は一定の評価を得つつも売り上げ的には頭打ちとなり、ここで運営は方向転換を余儀なくされます。

6thシングル『ガールズルール』のセンターは白石麻衣。
御三家をフロントにして握手人気上位の「お姉さんメンバー」を重用する、ファンの期待に素直に応える布陣。そしてほぼこの時点での最強と思われるメンバーで構成された選抜(初選抜がいない、総決算的なメンバー)でもありました。

これにより売り上げは一気に1.5倍に伸びます。
さあ、ここから乃木坂の快進撃が始まる。そんな予感で満ちていました。

そのタイミングで突然の2期生抜擢。
まだ何もない、『乃木坂って、どこ?』でお披露目されただけの2期生が。
よりによってセンターに立つ。

正直、個人的には「水を差された」としか言いようのない衝撃。
いや正確には衝撃ですらありませんでした。選抜発表前からネット上では「次のシングルのセンターは2期生の堀未央奈」という噂がまことしやかに流れていましたから。

名前を呼ばれ壇上に立つ堀ちゃん。髪型もメイクも野暮ったいままの彼女は、明らかに場違いでした。

まさに美しい世界に紛れ込んだ「異物」。
それが彼女でした。

結成以来必死に頑張って前作『ガルル』で確かな手ごたえも掴んだはずの1期生たちとそのファンがどう感じたのか。

それを端的に物語っているのが橋本奈々未が当時ブログに綴った言葉。

 発表された瞬間は、正直受け入れられませんでした。
 未央奈をではなく、大人の判断を。
 収録が終わった後、みんなで泣きました

 まだ握手会の日に控え室でしか顔を合わさない、何の経験もない
 2期生がセンター

 こんなこと言える立場じゃないのは分かってる、けど、
 何を基準で抜擢されたのか全く私たちには不明確で、悔しかった


結局、当時の運営はAKB48と同じ方法論しか持ち合わせていなかったのでしょう。

ストレートな表現をすれば「増員」と「作られたストーリー」による「炎上」。

2期生の募集自体、2012年12月。『制服のマネキン』と『君の名は希望』の間です。
そもそも結成1年ちょい、デビューしてからわずか10ヶ月の時点で早くも募集をかけているあたりにそれが窺えます。

当時乃木坂ファンの多くは増員など望んではいませんでした。
現有戦力で十分に戦える。どころか1期生34人のうち23人しか選抜を経験していないのですからまだ1期生の魅力も能力も開発途上。それなのに2期生を募集するという暴挙。単純に46人にしたかっただけという説もありますが。

まして4th『制服のマネキン』時には秋元真夏の復帰即福神が大きな批判を浴びていました。彼女自身は抜群の釣り対応で瞬く間に握手人気上位となりましたが、他メンバーファンの間には真夏さんに対する抵抗感がまだまだ根強く残っていました。
なのにそれと全く同じことを繰り返すという愚行。しかも今度はセンターで。

結果として堀ちゃんには極めて多くのアンチがつくことになります。

そしてもうひとつ、運営は「アイドルとは成長物語を見せるもの」という固定観念からも抜け切れていなかったのでしょう。

原石感の強い生駒ちゃんをセンターに固定していたのもその表れでした。ようやく圧倒的な完成度のまいやんに切り替えたのも束の間、再びまっさらの2期生。

この時点での運営は全体的に「乃木坂ファン」の嗜好を読めていなかったように感じます。
まあ少しフォローするならば、きっと御三家がもっと早くに卒業すると思っていたのでしょう。

最後まで続いた優遇


続く8thシングル『気づいたら片想い』ではフロントに留まったものの、9th以降のポジションは3列目。これは当時の堀ちゃんの握手人気からすると極めて妥当な位置。12~16番目ぐらいの完売実績ですが上位10人とは明確な格差があるという感じでした。

しかしその期間に始まったアンダーライブが熱狂的な支持を集めます。
その立役者である齋藤飛鳥、伊藤万理華、井上小百合、中元日芽香らが握手人気を高め、堀ちゃんと同等かそれ以上のスピードで完売させるようになっていきます。

彼女たちの選抜入りの機運が高まる中、入れ替え対象としてやり玉に挙げられたのが堀ちゃんでした。

そしてついに彼女は12thシングル『太陽ノック』と続く『今話したい誰かがいる』で選抜から外れます。これによってアンチは留飲を下げ、彼女に対する風当たりも少しは弱まるかと思われました。

しかしこれはさらなる「ゴリ押し」の始まりにすぎませんでした。
選抜から外れたにもかかわらず、堀ちゃんは選抜どころか福神並みの優遇を受け続けたのです。

アンダーでは当然のように2作連続でセンター。サンクエトワールというユニットまで結成してもらい、アンダー期間も変わらず冠番組には出続けます。ドキュメンタリー映画『悲しみの忘れ方』のエンディングでは彼女の挫折からの再起を露骨に予告する映像が流されました。

そして何よりファンを白けさせたのが、アンダーメンバーたちが歯を食いしばり積み上げてきた結果としてたどり着いた武道館公演の座長を堀ちゃんが務めたこと。それだけでなく、その成功という箔をつけてもらっての選抜復帰。

さらにその14th『ハルジオンが咲く頃』のMVでは卒業する深川麻衣からの「継承」をイメージさせる演出がなされます。

お膳立てされまくりにも程がある。

結局彼女がアンダーに落ちたのはアンチかわしのための一時的措置に過ぎなかったことが誰の目にも明らかになりました。

選抜復帰後はポジションも露骨にゴリ押しされはじめます。
17th『インフルエンサー』以降は、基本常にフロント。これには新人抜擢センター曲『逃げ水』『夜明けまで強がらなくてもいい』も含まれます(例外は西野七瀬と白石麻衣の卒業シングルのみ)。

平たく言うと、丸3年もの間白石西野飛鳥に次ぐポジションを与えられてきたのです。
ポジションだけ見れば生田絵梨花よりも上。まあ生ちゃんはそういう次元にはいないと思いますが。

多くの場合飛鳥とシンメ扱いされ、2013年の7thシングルの時点で単独センターを経験しているのにもかかわらずいつまでも「次世代枠」に入り続けました。

与えられたそのポジションからすれば彼女は飛鳥を支える存在になっていなければなりませんでした。にもかかわらずこのタイミングでの卒業。
率直に言って自身の経験によって得たものをグループに還元することなく卒業していく、という印象です。

 今はまだ何も無い
 センターを担う2期生・堀未央奈を皆さんが力を合わせて育てて下さい
 あなたたちの行動が
 未来の乃木坂46を作ります
 (堀未央奈センター発表時の運営からメンバーへの手紙)

 堀未央奈は「乃木坂の未来」だ
 (秋元康のコメント)

こんな言葉が今となっては空しく響きます。

そもそも生田絵梨花と同学年。星野みなみより1歳、齋藤飛鳥より2歳も年上。
その彼女を「未来」「次世代」扱いすること自体が矛盾しているのです。

秋元康の、運営の見込み違い。それが改められなかった(かに見えた)たために最後までアンチが減ることはありませんでした。

ここまで挙げてきたすべてはもちろん運営の采配であり、堀ちゃん自身が選んできたものではありません。

ただ他のメンバーを推しているファンからすれば受け入れがたい、『スラムダンク』の陵南・田岡監督でなくても「なぜそこにいるんだぁ!?」と言いたくなるレベルの優遇であったこともまた事実。

結局のところ彼女は「未来」にはなれず、ずっと「異物」のままでした。


続きます。

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