頑なさの鎧
①の記事では堀未央奈のポジションにずっと「異物感」を覚えていたことについて書きましたが、彼女自身のキャラクターもそれを増幅するものでした。
その特徴である、飄々とした…というかすっとぼけた態度。
かつて橋本奈々未に「未央奈は『え?何ですか?』で注目を集めようとしている」と指摘されたあれ。設楽さんからも「ワタス顔」と言われるやつですね。
あれも彼女のファンでない人からすればわざとらしくて腹が立つというか神経を逆なでされるのですが笑、どうも元々本人の持ち味のようです。身近な人からも「何考えてるのかよくわからない」と言われるそうですし。
想像にすぎませんが、突然のセンター抜擢から毎週TVに出るようになる中で必死にやっていたら、自分の素の部分のうちそこが面白がられた。なので多少デフォルメして強調するようになったのではないでしょうか。
「美容番長」でもありました。
これ、女子受けはいいのでしょうが男オタからは「化粧が濃い」とか言われがちですよね…
4期生の掛橋沙耶香や林瑠奈が堀ちゃんリスペクトなのでもちろん間違いではないのですが、これで女性の新規ファンを開拓したかというと微妙な気が。
ただグループに何人かはいてほしいタイプではありますね。
個人的にはずっと3期生をライバル視しているような印象も受けました。
まあ無理もありません。同期で選抜に定着しているのが自分と新内眞衣のふたりしかいないのに3期生はあっという間に5人が定着し、多い時には8人も選抜入りしてきたのですから。
ただ、彼女が2期生不遇を語れば語るほど「いやお前は優遇されてただろ」というツッコミが入る悪循環に陥っていました。
3期4期は曲ごとにセンターが変わっていますが、2期生曲は最後まで堀ちゃんセンター固定。
これも完全に運営側の話なんですけれどね。
同じく「ゴリ押し」と呼ばれ強烈なアンチがついた生駒里奈が徐々にポジションを下げ、13th以降はいくつか例外はあるものの3列目に落ち着いたのとは対照的です。(生駒ちゃんが卒業発表時に功労者として再評価されたのはそれもあったと思います)
そして改めて彼女のこれまでを振り返ってみると、全体に「わからないやつにわかってもらおうなんて思わない」という頑固さのようなものを感じます。
それは彼女自身の「アイドルとは弱みを見せないもの」という美学によるものでしょうが、やはりスタート地点で訳も分からないうちに大量のアンチがついたというのも大きかったでしょう。大いに同情の余地があります。
ただその「頑なさ」が彼女に与えられた主要メンバーという地位にそぐわなかったこと、そしてグループ全体のパブリックイメージとも合っていなかったことは事実だと思います。
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カウンターがあることの強さ
こうして言葉を並べてきて思うのは「結局、ポジションだけが間違っていたんだな」ってことです。
彼女自身の持ち味からすれば本来は秋元真夏的な立ち位置が良かったのでしょう。
乃木坂のメインストリームに対するカウンター。
センターやフロントなど前面に出てくるのはグループのイメージを体現する「乃木坂感」溢れるメンバーが望ましい。
ただそれだけだと外番組では盛り上がらないことこのうえない。西野七瀬が20人いてもMCは困っちゃいます笑
そこで必要になるのが「異物」。
いわゆる「バラエティメン」ではなく、アイドル性をキープしながらも「ズレ」を生めるメンバー。言い換えればMCに対してフックのあるメンバー。
外番組ではこういう人が重宝されるんですよね。
高山一実しかり。松村沙友理もその範疇に入ります。生田絵梨花もそうなのでしょうが彼女はもはやいろいろ突き抜けちゃっててこういう評価軸では語れません。
余談ですが、今の山下美月は乃木坂感を残しつつもフックがあるスーパーエースへと脱皮しつつあるような気がしています(と、彼女がマイペースで激辛料理を食べている番組を観ながら思いました)。
『アメトーーク!』や『バズリズム』で見せたように外番組でもすっとぼけたキャラを物怖じせずにできる堀ちゃんは、このカウンターとして存分に機能していました。
「異物感」って重要です。
乃木坂に憧れて入ってきたメンバーが多い3期4期が多数派となった現在、どうしても同質性が高くなる傾向にあります。それは乃木坂が結成当初から持っていた強みでもあります。「スカートの裾が揃っていた衣装デザイン」なんてのもありました。
3期は全体としてタレント性の高いメンバーが揃っておりそもそもの乃木坂感は低めでしたが、彼女たち自身が乃木坂ファンであるために同質性を高める方向に進んでいます。梅澤美波が阪口珠美のギャル言葉を叱るなんていうのもそれを端的に示していますね。
これ自体は結成当初からの古参オタからすると正直、嬉しいことです。
でも同質性の高い組織って、強度は上がりますが折れやすくなるリスクもあるんですよね。
その点、現在の乃木坂には1期2期がキャリアを重ねる中で培ってきたしなやかさや打たれ強さのようなものが備わっています。
しかしこの先、グループが小さかった頃を知らない3期4期だけになった時にしなやかさをもたらせる人材は誰なのか。
そこで再び3期生たちが自分の個性に目覚めるのかもしれませんし、堀ちゃんのような異物感を醸し出す後輩が現れるのかもしれません。
異物感を継ぐとしたら、今いるメンバーの中では林瑠奈じゃないかと思っています。エキセントリック度合いとしてはちょっと抜けた存在ですよね。
もうひとりの堀チルドレン掛橋沙耶香もいいんですが、乃木坂メンバーとしては極めて珍しく上昇志向を隠そうとしない彼女はどちらかというと衛藤美彩を彷彿とさせますね。
最後に、卒業後の彼女について。
既に本人が明確に女優と言っていますね。
これまでは現役アイドルとしてヒロイン的な要素を求められる部分がありましたが彼女の本質はそこにはありません。その枷が外れたこれからの方が幅広い役柄をこなせそうで、むしろ期待できます。
『遊戯みたいにいかない。』とかカップスターの『毎月劇場』でわかる通り、オークラさんの脚本、というか東京03角田さんを傷つける台詞を吐く役が異常に似合うのですがそれはさておき笑
サスペンスドラマの容疑者役にぴったりですね。
犯人役でもいいし、やたらと怪しくて引っ掻き回すけれど犯人じゃない役もできる。あとは他人に無関心で不愛想なんだけど実は主人公の一番の理解者とかも似合う(これはサスペンスに限らずどんな物語でもよいですね)。
犯人役といえば『猿に会う』での演技が印象に残っています。あのドラマ全体に通底する不穏な空気の体現者でもありました。
個人的には「個性派女優」として活躍してほしいし、その方向で10年後も生き残っている可能性があると思います。
乃木坂の看板を下ろしたこれからの彼女がどんな演技を見せるのか楽しみです。
堀未央奈さん、約8年間お疲れさまでした。
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コメント
コメント一覧 (2)
1から順に興味深く読ませていただきました。堀未央奈の考察・描写は全くその通りだと思います。彼女は最初でひん曲がってしまったんでしょうね。頑張れば頑張るほど悪循環に陥るルートを選択させられたと言うか。アンチに対する変な警戒感というか反射はなかなか抜けないかも。
面白い場面も多かったですが、個人的にはやり過ぎ感が鼻について乗れない時もありました。バナナマンだからわざとらしい事やってもうまく拾ってくれるような気がします。グアムのグルグルバットの逆走とか、第二回頭NO王の二期生予選最下位とか。46時間TVのケータリングバトルで答えを合わせようって言う出題なのに突飛なこと書いて川村真洋は半ギレ、Wエンジンからはブーイング、次の出題はしょげた様子で答えを合わせてきたのを見て色々と大変だなぁと思いました。
SoL
がしました
①は非常に良かったです。②は殆ど不要で、③は半分ほどに端的に書かれた方が良かったです。
①は客観性が高かったのが良かったのかなと思います。
②は運営に対する不満から主観を強く滲ませてしまったのかなと感じました。
筆者と私は思考的によく似ています。
でも主観的な部分は殆ど共感しませんでした。
どこか一点でもピッタリと感情がシンクロできなければ共感なんて得られないのだとよく分かります。
『ふたりでひとつになれちゃうことを気持ちいいと思ううちに』
『少しのズレも許せない せこい人間になってたよ』
部分的に共感することは頻繁にありますが全てを共感するというのは奇跡なのかもしれません。
そしてそれを求めるのは傲慢になってしまう。
多くの人の共感を得るには最大限客観的な文章を書かなければいけないのだと我が身を振り返り学ばせて頂きました。
総評としては乃木坂ファンとして参考になるとても良い文章でした。ありがとうございました。
SoL
がしました