2021年はセイコーの創業140周年だそうです。
その記念限定モデルとしてキングセイコー復刻版が発売されました。

キングセイコーとは、その歴史


キングセイコー(以下「KS」)。
セイコーが1961年から1975年まで生産していたブランド。

高級時計ですが位置づけとしてはグランドセイコー(以下「GS」)に次ぐ2番手。
スマホのスペックっぽい言い方をすれば「ハイエンド」のGS、「ミドルハイ」のKSといったところでしょうか。

そして例のややこしい「諏訪だ亀戸だ」の話(製造拠点の話です)をするとGSは諏訪、KSは亀戸だったりするのでライバルっぽいのですが、これはスタート当初だけ。後に諏訪はKSを出し亀戸もGSを出すというなんだか節操のない感じになります。

今回の復刻版のデザインベースはそのセカンドモデル、通称「KSK」。
このモデルから時刻合わせの際に秒針が止まるハック機能=秒針規制機能が搭載されたため「キングセイコー規制付き」で「KSK」だそうです。

ムーブメントの番号を取って「44KS」とも呼ばれます…というかこちらの方が一般的だと思います。(個人的にはKSKという呼び名は知りませんでした)

一時期アンティーク市場でこれのオリジナルモデルを探していました。

とりあえずGSファーストに憧れて探し始めるものの、値段の高さと状態のいい個体の少なさに早々にめげてしまいました。次にGSの歴代モデルを物色するうちに「あれ?これってデザイン的にはほとんど同じじゃないか?しかも高級時計らしい…」とKSの存在に気づくという流れ。

これ、セイコーアンティークに手を出す人のあるあるじゃないかと思います。

私がKSの中でも特に気に入っていたのが今回のベースとなったセカンドモデルです。

GSではない、だがそこがいい


ちなみにKSのファーストモデルはインデックスがのっぺりして幅が広くラグもひょろっとしていて個人的にあまり好みではないのですが、KSKは高級感のある細くて高さのあるインデックスに堂々たるラグ。GSのセカンドモデル「セルフデーター(別名57GS)」にデザイン的にはかなり近い、というか正直ほぼ同じだと思います笑

それを復刻した今回のモデル。

SDKA001


最大の特徴は12時位置のインデックス。
2本のバーインデックスで山形を挟んだ「W」のような形状。そして天面に施されたギザギザ模様「ライターカット」。どちらもKSKでしか見られないぐらい独特な意匠です。(すなわち57GSとの最大の違いでもあります)


凄く細かいことを言うと、私の知る限りではこのインデックスデザインは44KSの前期型で本来はデイト表示なしかと思います(デイトありの後期型は通常の2本バーインデックス)。オリジナルとはちょっと違いますが、まあいいとこ取りということでしょう。

立体的で美しいインデックスに多面カットの太い時分針、さらに堂々としたラグ。はっきり段のついたステップベゼルも美しい。アンティークでよく見る「Seiko」ロゴの尾錠もいいですね。そして裏蓋にはオリジナルと同じ盾マークのメダリオンが黄金色に輝いています。

全体になかなかアンティークセイコー好きをくすぐるデザインになっていますし、写真で見る限りは質感も高そうです。

これ、かなりいい。

ケース、針、インデックス。
いずれも現在の技術でキレキレに仕上げられており、当時のデザイナーさんが夢見た姿の完成形という印象を受けます。


それ以外のスペックとしては、風防はボックス型サファイヤクリスタルに5気圧日常強化防水。
サイズはオリジナルより若干大きい厚さ11.4 ㎜、横38.1 ㎜、縦44.7 ㎜。

ムーブメントは6L35。プレザージュのごく一部の限定モデルにだけ搭載されてきた薄型のキャリバーでパワーリザーブは45時間です。
オリジナルは手巻きなのにこちらは自動巻きなのが惜しい。
まあ要するに現状セイコーにはミドルハイの手巻きムーブメントがないということなのでしょう。

そして3,000本の数量限定となっています。

まとめと価格



上で書いたように外装的には非常にクオリティが高く、ほぼ文句なし。
あえて言うならオリジナルを踏まえノンデイトにした方が良いかな、ぐらいかと。

あとは「キングセイコー」の名前をそのまま使ったのもいいですね。私が国産クロノグラフアニバーサリーモデルの時に文句を言った甲斐がありました。

ただ…例によって値段が笑

定価は385,000円(税込、以下同じ)。
流通限定で値引きなし。ポイント10倍で実質346,500円。

これだと機械式GSとの価格差が小さすぎなんですよね。

現行で最安値のSBGR251はメタルブレスで440,000円。
でも流通限定じゃないので2割引きで実勢352,000円。ポイント10倍で316,800円。
実勢価格で逆転してしまいます。

GSに迫るクオリティでGSよりだいぶ安い、がKSのアイデンティティであり矜持なのでは?

「この値段ならGS買うわ」と言われない値付けであるべき。
わざわざムーブメントも違うものにしているんだし、しかも精度もパワーリザーブも下位のムーブメントなわけですし。

税込297,000円とか、アンダー30万円の値付けにすればインパクトがあったのに。
せめて流通限定なしで2割引きにしておけば。

歴史的価値とかインデックスデザインのレア度という意味ではなかなか良いのですが、一般層向けとしては価格訴求力が弱いかと。

結局、KSであること自体に価値を見出す人向けのプロダクトのように思います。

個人的には好きなんですけどね。

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