タオル補正
物語が突然終わってしまった。
今はそういう気持ちです。

2021年7月4日、3期生オーディション募集開始日からちょうど5年のその日。
公式ブログ内で大園桃子さんが卒業を発表しました。

未完の物語


よろしければ、まずは2020年4月のこちらの記事をお読みください。



コロナ禍において彼女が発信したブログをきっかけに、大園桃子の「ゆいいつむに」の魅力と彼女の言葉が持つ力についてどうしても書いておきたくなったものです。


彼女は2016年夏の3期生オーディションに合格して乃木坂に加入しました。
きっかけは「高校の先輩に勧められて」だそうです。

合格発表は例の今野さんの「合格者は全員。皆さんです」。
その言葉に狼狽し目を泳がせる彼女の姿はたびたび3期生の歴史を辿る映像として流されてきました。

そしてその日、彼女は「暫定センター」に任命されます。
これ、オーディション会場でコメントをしている彼女の映像を観たことがある方なら納得だと思います。それぐらい彼女の原石感は見るものの目に明らかでした。

3期生がファンの前に初めてその姿を見せた2016年12月のお見立て会。
そこでパフォーマンスした3曲のうちの『命は美しい』ではセンターを務めます。(ちなみに残り2曲は『裸足でSummer』と『ガールズルール』。センターはそれぞれ与田祐希と山下美月)

この時の自己紹介で彼女は泣きじゃくるのですが、これ以降も泣いて泣いて泣きまくります。

2017年2月の『3人のプリンシパル』では早くも大きな挫折を味わいました。
2幕出演は15回中わずかに1回。この時点で既に明確なアンチとまでは言わなくとも、暫定センターである彼女に対する潜在的な反感のようなものがあったことがうかがわれます。

2年後の遠藤さくらも同じく16戦1勝ともがき苦しんだことを考えると、乃木坂ファンの間に根深く「運営推され」に対する拒否反応があるのでしょう。(さくちゃんは「暫定センター」と明言されてはいなかったと思いますが多くのメディアにより「エース候補」としての扱いを受けていました)

この拒否反応は、やはり生駒里奈や堀未央奈を運営が聖域扱いしてきたことによるものだと思います。それを見てきたファンとしてはどうしても身構えてしまうところがありますよね。

桃子はこのプリンシパルにおける自己PRでも「争うのは嫌」と言って泣き。
5thバスラのさいたまスーパーアリーナでも泣きじゃくりながらステージ上を彷徨い。

4月の『乃木坂工事中』初登場の3期お披露目回でもオープニングから大泣き。
小刻みに震えうつろな目であらぬところを見ながら設楽さんの「緊張してるの?」に「してません」と答える彼女の姿は、正直「大丈夫かこの子?」と思わせるものでした。

今観るとこの回は「先輩たちが3期生を紹介しつつ大いにふざける」というなかなか楽しい内容なんですけどね。
彼女と共に剣道着姿で登場した高山一実が懸命になだめながら進行するあたり、先輩の優しいお姉さんぶりも引き出す良い企画でもありました。

そのカズ先輩に「桃ちゃん、はいトマト!トマト食べていいよ!」と言われて口に運び、「おいしい…」とにっこり微笑む桃子の姿は可愛らしかったのですけれど。

さらに同時期に始まった3期冠番組の『NOGIBINGO!8』でも毎回のように泣き、企画に対して後ろ向きな姿勢を見せていました。

しかし運営は彼女を押し続けます。
同年3月、初の3期生楽曲『三番目の風』ではセンターに。
同年5月発表の3期生楽曲『思い出ファースト』でも引き続きセンター。

「暫定センター」から明確な「3期のセンター」へ。

2017年5月には3期生単独ライブも開催されました。
最近改めてこの映像を観たのですが(当時も現場で観ています)、初期の生駒里奈もかくやと思うほど桃子は「センター」を背負わされていました。

声がほとんど出ない状態での千秋楽。そして『君の名は希望』のピアノ伴奏。
その過剰とも思えるほどの「逆境」「大泣き」「周囲の支えと励ましでクリア」という流れは、やはり人によっては反感を覚えるものだったと思います。

暫定センターから3期センターといういわゆる「推されルート」。そのまま乃木坂のセンターになるのではないかという懸念。さらに大泣きして周りを振り回す一連の振る舞い。これらを受け入れがたく感じるファンも一定数いました。

上の記事で書いた通り、私も当初は彼女に対して否定的な見方をしていました。

「凄くストレートな言い方をすると、可愛い顔と泣き芸で嫌なことを回避してここまで人生乗り切ってきたタイプに見えた」んです。

ただ、今観ても彼女のセンター適性は抜群でした。
特に『命は美しい』でスイッチを切り替えた時の表情はちょっと「別格」と表現したくなるほど。プリンシパルで無双した久保史緒里や山下美月すら凌ぐ楽曲への没入度合い。(あくまでも当時は、の話です)


そして7月。
18thシングル『逃げ水』の選抜発表が行われ、ある意味予想通りに彼女はセンターに抜擢されます(与田祐希とのWセンター)。

いわゆる「3期新規」のファンの中でも多くのアンチがいた彼女。
ここで全体シングルのセンターに立ち、ありていに言えば先輩メンバーのファンまで敵に回すことになったのです。

結果、猛烈にアンチが湧きました。

そしてそのまま真夏の全国ツアーが始まり、初のツアーに選抜メンバーとして参加することになります。そこで待っていたのは(あの「死にはせん」の)与田っちょさえ後に「体重が8kg減った」と語ったプレッシャーと負荷。

桃子もボロボロになった当時のことをこう振り返っています。

「裏にいる時はずっと泣いていたけど、ステージに出た瞬間には笑ってるんです。そんな自分が怖かった」

本当に、抜擢センターには反対。
どうせ5期でもやるんでしょうけど。
与田っちょやさくちゃんが人気メンバーになったのは奇跡みたいなものです。

 

19th『いつかできるから今日できる』は映画と舞台の『あさひなぐ』出演メンバーで固められた選抜でしたのでよだもものふたりはいったん選抜から外れます。

そして20th『シンクロニシティ』では久保史緒里、山下美月も加えた「よだももくぼした」の4人が揃って選抜入り。しかし与田っちょと美月はここからフロントに定着したのに対し、桃子は2列目そして3列目へとポジションを落としていきます。

これは握手人気に対し妥当なポジションだったため「ゴリ押し」という批判の声は少しずつ減っていきます。それと同時に徐々にグループに慣れてきた彼女はのびのび活動できるようになり本来の笑顔が戻ってきた。少なくとも私にはそう見えていました。

この2018年末、乃木坂は『シンクロニシティ』でレコード大賞連覇という偉業を成し遂げます。その舞台裏でグループの暖かさと先輩たちの想いに感動した桃子は「乃木坂も悪くないなって思った」と発言し、これは映画『いつのまにか、ここにいる』のハイライトにもなりました。

このように少しずつ変化の兆しを見せていた彼女に運営も改めて期待したのではないでしょうか。
山下美月の活動休止の穴を埋めるように、23rdシングル『Sing Out!』では『逃げ水』以来となるフロント復帰。

しかし、結果的にはこれが裏目に出ます。
その夏の全ツ、さらに24thシングル期間の活動を休止。

復帰は全ツファイナルの神宮球場でした。

続く25th『しあわせの保護色』で選抜にも復帰し、27th『ごめんねFingers crossed』まで3列目2列目3列目というポジションでした。

2020年10月にはずっと「まい姉さん」と慕ってきた白石麻衣が卒業します。

ファンの間にも、まいやんの卒業で精神的支えを失い活動へのモチベーションがなくなってしまうのではないかという不安と、逆に独り立ちして成長した姿を見せてくれるのではないかという期待の両方がありました。

個人的には、涙をこらえてまいやんを見送った卒コンでの姿から期待の方が膨らんでいたのですが、

彼女が選んだのは卒業。


物語は未完に終わりました。



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