タオル補正
2021年9月17日、公式Youtubeに公開された『Documentary of Ranze Terada』予告編内で寺田蘭世さんが卒業を発表しました。

「革命の旗を掲げたジャンヌ・ダルク」。

それが彼女に対する私のイメージです。

まるで夏の夕立のように


彼女の経歴の序盤は以前に書いた伊藤純奈渡辺みり愛とほぼ重なります。

2013年3月、2期生として乃木坂46に加入。5月に『16人のプリンシパル deux』と『乃木坂って、どこ?』でお披露目。

当時の印象は「小学生」。
本当に細くて小っちゃくて子供、という感じでした。

2期生の中で正規メンバーに昇格するのが最後だった、いわゆる「ボーダー組」のひとりであり同曲のセンター。昇格発表は加入から2年近くが経過した2015年2月、極寒の西武ドームでのことでした。

初選抜はそこからさらに2年後。2017年の17thシングル『インフルエンサー』。
その次に選抜入りしたのは1年後の20thシングル『シンクロニシティ』。そしてこれが最後となりました。(2曲ともレコード大賞受賞曲なので一部では「レコ大請負人」なんて呼ばれていました)

前述の『ボーダー』ではセンターでしたから、「ボーダー組」6人の中では運営から最も期待されていたのだと思います。実際に2期生の中ではずっと堀未央奈、北野日奈子、新内眞衣に次ぐ位置にいたという印象です。

初選抜以前からサンクエトワール、さゆりんご軍団とふたつのユニットに所属して参加楽曲もありました。

そして2016年、その後の蘭世のイメージを決定づける出来事が起こります。

11月発売の16thシングル『サヨナラの意味』に収録されたアンダー楽曲『ブランコ』において初のアンダーセンター。
初期アンダラを支えた温泉トリオ(伊藤万理華、井上小百合、中元日芽香)も2期トップ3(北野日奈子、新内眞衣、堀未央奈)もいないアンダーでしたが、同年末の武道館公演を座長として見事に成功させます。

その座長挨拶で彼女は「1+1=2なんて誰が決めた」と言い放ったのです。
(余談ですがこれ結構よく言われる台詞なんですけど誰がオリジナルなんでしょうね?)

『ブランコ』の衣装やMVと相まって彼女は「下剋上」イメージを纏い、「反骨の炎を燃やす」アンダーセンターの系譜に名を連ねることになりました。


握手人気はずっと、まさに選抜ボーダーライン上でした。

ただ一時期、16th『サヨナラの意味』から18th『逃げ水』の期間は選抜常連メンバーに肉薄…というかその一部を凌ぐ速度で完売してみせます。

しかし彼女は選抜に定着することができませんでした。

アンダーセンターとしてインパクトを残し、満を持して選抜入り。そのシングルでも上位の速度で完売させたのにそれでも『逃げ水』で残れなかった。

ここがまさに分水嶺だったのでしょう。

ちょうどその頃から握手会に参加した3期生たちの幾人かが一気にグループ屈指の完売速度を叩き出します。

結果だけ見れば、三番目の風に飲み込まれた。

20th『シンクロニシティ』で選抜復帰するものの、21st以降はさらに勢いを増す3期生や初選抜を勝ち取る同期たちに囲まれさらに厳しい状況が続きます。

その間も彼女は一定の握手人気を保ち続ます。
28thシングルではついに「握手免除」(既にミーグリになっていましたが)になるのですが、これはいわゆる「選抜固定メン」以外では初の快挙でした。


しかしその後も4期生の合流や白石麻衣卒業シングルでの1期生全員選抜、コロナ禍によるリリース減少など様々な要素が絡み合い、彼女が選抜入りすることはありませんでした。


10%の強がり


そもそもちょっと癖のあるキャラクターでした。

ネガティブ思考でワードセンスが荒く、ちょっととっつきにくい印象。

2017年9月に『乃木坂工事中』内のメンバー投票企画「ずっと独身でいそう選挙」において、井上小百合や齋藤飛鳥という強豪笑を抑えて見事1位を獲得。
その際のコメント「変なので…この人間を拾えるもんなら拾ってみろって感じなんですよ」とか。
推薦者の相楽伊織も「気が強すぎて誰も勝てないし、そのくせ言い返してくれる人じゃないとイヤがるので結婚は無理」と言っていましたね。

同番組内で自分のことを「ゲロブス」と評したこともありました。

「チャッス」等の独特な家庭内ワードや弟さんの趣味で信号機を買った等の家族エピソードはほっこりするものが多かったんですけどね。

個人的に一番好きなのはひな壇で無邪気にニコニコ笑いながら「わぁ~」と拍手してる姿。

勝手な推測ですけれど、彼女の普段はこっちなんじゃないかと思います。

見た目は弱っちそうで折れちゃいそうなヒョロヒョロのちびっ子。
ただ心の中では熱く血をたぎらせていて、時々それが出てきてしまう。
そんなめんどくさいやつ。でも好きになってしまえばそれこそが蘭世の魅力でした。

そして彼女はいくつもの名場面を残してきました。

2017年5thバスラSSAの『君に贈る花がない』で手に書いた「ひめたん大好き」のメッセージ。
『インフルエンサー』ヒット祈願での氷瀑登り。
『滑走路』センターで再び座長となった、わずか10人という史上最少構成での横浜アリーナでのアンダラ。

余談ですが、私の推しである井上小百合とはミュージカル『セーラームーン』で共演して仲良くなったようです。なぜかさゆのことを「サユリスト」(これ本来は井上小百合ファンの愛称です)と呼んでいたらしい笑

『セラミュ』は正直心配だったんです。さゆりんご軍団の替え歌で聴く彼女の歌声はへにょへにょだったので。

でも舞台上では炎の戦士セーラーマーズとして凛々しい姿を見せるとともにそれにふさわしい歌声を出していて感心したのを憶えています。


「乃木坂のセンターになりたい」

彼女が加入当初から口にしていた目標。
その夢はかなわなかったけれど、結果だけ見ればそれは大言壮語だったのかもしれないけれど、それを口にできる心意気。

北野日奈子は『Documentary of Ranze Terada』内で蘭世のこんな言葉を紹介しています。

 自分たちは「いいとこどりの乃木坂人生」を歩んできたんだ
 乃木坂46の歩みの多くの部分を、1期と共に作り上げてきたところから現在の大きなグループになるまでの景色を見てこれた。だからこの8年間で凄くいい経験をしてきた

そして卒業発表後最初のブログで彼女はこう書きました。

 私はここまで乃木坂46 2期生として
 かっこよく生きてこれた事を誇りに思っています。

「かっこよく生きてこれた」。そう自分について語ってみせたのです。

「自分らしさ」にこだわって、いやむしろ囚われて。
それはとても青臭いことで、でもそんなところが実に寺田蘭世で。

強い信念と、10%の強がり。

私にはそう見えます。
そしてとても好もしく思うのです。


最後に、彼女のこれからについて。

正直、想像つかないな~笑

その華奢なスタイルとビジュアル、そしてステージ上での存在感を考えるとアイドルが天職だったように思います。

どのような道を歩むにせよ、この先もかっこよく生きていかれることを願っています。


寺田蘭世さん、8年半お疲れさまでした。


note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
当ブログに掲載された記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧の方にも楽しんでいただけることと思います。