前の記事では全体の感想を書きました。
当記事ではこの日がラストライブとなった寺田蘭世について。
そう言って彼女は笑った
まず触れておきたいのが寺田蘭世の表現力。
まあ正直個人的には「表現力」って言葉自体あんまり好きじゃないんですけど。
大園桃子の時に書いた「アイドル性」とか「センター適性」と同じで正解がないし、ほとんどの場合は推しの贔屓目というか好みの問題だと思ってます。
もっと言えば一般人に伝わるのが表現力なのかプロを唸らせるのがいいのか。
素人には感銘を与えても同業者から一顧だにされないとしたらそれは稚拙な表現なのではないか。でも一般大衆に伝わっていなければそれは果たして「表現」として成功していると言えるのか。ましてやマスに乗っている芸能人で。
とかゴチャゴチャ考えるとよくわからなくなるんですよ笑
とりあえず「好みの問題」の範疇として読んでいただきたいのですが、私はこの日のライブを観て「やっぱ蘭世は表現力があるなあ」と思いました。
彼女のそれは、言うなれば「静」。
苦しげに顔を歪めたり髪を振り乱したり胸を掻きむしったりという表現(まあわかりやすく言えば欅坂的な)とは対極のスタイル。
それが顕著に表れるのが彼女のセンター曲の多くを占めるクール系の楽曲です。
凛とした表情を浮かべ、まったくそれを崩さない蘭世。それなのに目から溢れる感情が伝わってくる。
「気合の入った無表情」とでも言えばいいのか。
この「クールな表情で目に感情を乗せる」パフォーマンスこそが彼女の真骨頂だと思います。
しかし、個人的にこの日さらに印象的だったのは彼女が見せた微笑みでした。
『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』のラスサビ。
もしもやり直せるなら
寺田蘭世はそう言って笑うのです。
わかってる。
やり直せるはずなんてない。
それでもやり直せたらと考えてしまう愚かな自分が愛おしい。
私には彼女がそう語りかけているように見えました。
オリジナルの井上小百合をはじめ、多くの場合『咄嗟』のセンターは凛とした表情でパフォーマンスし曲が終わったその刹那に微笑むというスタイル。
それを見慣れていた私にとって、曲中で微笑んだこの日の蘭世はとても鮮烈な印象を残しました。
苦さと悔恨と諦観。
そこにほんの少し、過ぎ去りし日々への愛惜と現在の自分へのプライドが入り交じる。
そんな『咄嗟』の持つ切なくて儚くて、それなのにどこか前向きな雰囲気。
それを寺田蘭世はその微笑みで見事に表現してくれました。
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蘭世だなあ。
最後の最後、山崎怜奈が手紙の中で「人から求められる寺田蘭世像を守り続けてきた優しいあなた」という表現を使っていましたが、この日の蘭世はまさにその通りの姿を見せました。
まず座長としてビシッとアンダラを成立させる。
ウェットになりすぎない、そもそも卒業する本人が泣かない。
3時間超とかのロングランではなくスパッと終わらせる。
すごく、蘭世っぽい。
セレモニーの挨拶での「悔いが何ひとつない」。
『気づいたら片想い』でセンターに立つという願いをかなえて「夢は実現するもんですよ、みなさん」。
最後の最後、『ボーダー』。
その曲紹介ではさすがの彼女も頬を膨らませて涙をこらえ、こう語りました。
「今も大事だけど過去も愛してほしい」だから「この曲を歌い継いでほしい」。
この日も最後まで「寺田蘭世」を貫く彼女は格好良かったです。
そして彼女は11月8日付の公式ブログで芸能界からの引退を表明します。
蘭世なら、そうだろうな。
卒業発表時の記事で彼女のこれからについて「正直、想像がつかない」と書いていた私は素直にそう思いました。
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