タオル補正
2022年1月31日、公式ブログで北野日奈子さんが卒業を発表しました。

彼女がそのブログでポジションについて書いていたのがとても印象に残りました。

ずっと自分のポジションに翻弄され、だからこそ最後までポジションにこだわっていた彼女。

その歩みを振り返ります。

乃木坂の歴史でたったふたり


ボーダーメン。

乃木坂において、選抜とアンダーのボーダーライン上にいるメンバーを指して使われる言葉です。

私もこのブログ内で便宜上使うことがありますが、本当はこの言葉が好きではありません。

どこか揶揄する響きがあること、そして自分の推しである井上小百合もそう呼ばれていたことがその理由です。(もちろん私が使う時は揶揄する気持ちは一切ありません)

実際には選抜固定メンなのに相対的に握手人気が低いためにそう呼ばれたり(さゆがそのタイプでした)、ずっとアンダーでも選抜発表のたびにファンの間で俎上に載せられるメンバーをこう呼んだりと色々なパターンがあります。

でも個人的には本当の意味でボーダーメンと呼べるのは、乃木坂の歴史でたったふたり。

中元日芽香と北野日奈子だけだと思っています。

初期から選抜硬直化が顕著だった乃木坂。それがさらにガッチガチになったのが11thシングルから12thシングルにかけての期間でした。

いわゆる「お試し選抜」が10thまでで全員完了。超選抜に対するアンチテーゼだったアンダーライブからもその立役者である伊藤万理華と齋藤飛鳥が11thで、井上小百合は12thで選抜復帰し以降は選抜固定メンに。同時期には生駒里奈と松井玲奈の交換留学も解除されました。

これをもって初期乃木坂=1期生と2期生の世界はほぼ完成を見ます。

私は以前に『羽根の記憶』の楽曲考察でこれとほぼ同じことを書いていました。

 こと「1期生」というくくりでは全員のビジュアルがひと通り洗練され完成の域に達したのはこの頃

 乃木坂を乃木坂たらしめたのは間違いなく1期生たちで
 そんな彼女たちの作り上げた世界の完成形こそ、この頃から翌2016年6月にまいまいが卒業するまでの1年にも満たない期間



当時の選抜メンバーを並べるとそれが良くわかります。

白石麻衣、橋本奈々未、松村沙友理
生駒里奈、生田絵梨花、星野みなみ
西野七瀬、桜井玲香、若月佑美
衛藤美彩、高山一実、秋元真夏
伊藤万理華、井上小百合
齋藤飛鳥、堀未央奈
深川麻衣

ここまでで既に17人。

当時の乃木坂は選抜が16~18人で構成されていたことを思えば、これは選抜に全く空きがないに等しい状態でした。

この絶望的ともいえる状況下で「どうすれば選抜に入れるんだろう」と悩み迷い苦しんだアンダーメンバーたち。

そしてこの17人に最も肉薄したのがひめたんときいちゃんでした。
ここでいったん話を戻し、彼女の経歴をざっと振り返りましょう。

2013年3月、2期生として乃木坂46に加入。5月に『16人のプリンシパル deux』と『乃木坂って、どこ?』でお披露目。

堀未央奈に続く2期生のNo.2として8thシングル『気づいたら片想い』で初選抜。
もちろん単独抜擢センターだった堀ちゃんからはとても離れた2番手ではありました。

そしてその8th期間中に彼女は打ちのめされます。

加速度的に洗練の度合いを高めていた当時の1期生たちの中で、メイクもダンスも素人感満載だった彼女は(堀ちゃんもですが)浮いていました。
正直、全然ついていけていなかった印象です。歌番組で表情を作れずにこわばった顔で踊る姿を強烈に憶えています。

当然のように続く9thで彼女は選抜から外れました。
2期生抜擢第3弾もなし。「自分がダメだったから続かなかったんだ」当時そう思ったと後にきいちゃんは語っています。

しかし彼女がアンダーに合流した9thシングルは伊藤万理華率いるアンダーライブ・ファーストシーズンの時期でした。
さらに伝説のアンダラ2ndの激動の日々もくぐり抜け、アンダラ黎明期の熱気を体感したきいちゃんは大きく成長します。

個人的には3rdシーズンを観に行った時に、以前はとにかく「踊れない」印象だった彼女が笑顔で楽しそうにダンスする姿に感心したことを憶えています。

その後「アンダーのキャプテン」永島聖羅の卒コンでは「らりんさん、卒業許しません!」と叫んだり、初期アンダラの妹キャラとしてファンからもメンバーからも愛されました。

そしてついに扉は開きます。
待望の選抜復帰は15th『裸足でSummer』。そこから17th『インフルエンサー』まで3作連続選抜入りを果たしました。

しかし18th『逃げ水』でアンダーへ。19thでは選抜復帰するも20thは活動休止。21stのアンダー曲『三角の空き地』から限定的に活動を再開。

そして22ndアンダー曲『日常』ではセンターを務め、これが彼女の代表作となります。

23rdで選抜復帰するとここから25thまで3作連続で選抜入り。
しかし26th、27thはまたアンダーに。28thは選抜入り。

彼女の歩みを列挙すると下のようになります。

 8th 選抜、9th アンダー、10th アンダー、11th アンダー、
 12th アンダー、13th アンダー、14th アンダー、
 15th 選抜、16th 選抜、17th 選抜、
 18th アンダー(Wセンター)、19th 選抜、20th 活動休止、
 21st アンダー、22nd アンダー(センター)、23rd 選抜、
 24th 選抜、25th 選抜、26th アンダー、27th アンダー、28th 選抜、
 29th 卒業

20枚のシングル表題曲に参加し、選抜9回、アンダー11回。そして活動休止1回。

彼女自身が述べた通り「選抜アンダーと繰り返し、自分のポジションと向き合ってきた9年間」でした。

15thシングル『裸足でSummer』。盟友ひめたんと共に選抜復帰。堀ちゃんを加えた3人での「サンダル脱ぎ捨て隊」はフレッシュな印象を残します。
しかしそこで選抜から外れたのは伊藤万理華と井上小百合というアンダラの立役者ふたりでした。
握手会の完売実績だけを見れば生駒里奈や星野みなみ、松村沙友理や高山一実も大差はなかった。それでも落とされたのは「さゆまり」のふたり。

この事実にアンダーメンバーのファンは突きつけられます。

選抜聖域メンの牙城は決して崩せない。
所詮はアンダー同士での潰し合いだ。

別にそのせいだとは言いませんが、中元日芽香は17thシングルで活動を休止します。
きいちゃんも18thシングル『逃げ水』で組まれた「新人抜擢センターをその時点の最強メンバー支える布陣」からは漏れます。

そのふたりがWセンターとして歌った18thシングルアンダー曲が『アンダー』。

当時、人はこんなにも無神経になれるのかと怒りを覚えました。秋元康に対し。運営に対し。

そこで歌われたのはアンダーメンバーはスポットライトが当たらなくてもステージを支える存在であると、そして「まだ咲いていない花」であるというあまりにも雑な慰めの言葉でした。

そもそも劇場を持たない乃木坂のアンダーに対し「ステージを支えてる」という言葉を用いること自体、彼女たちの状況に一切関心のないことが透けて見えます。

アンダーメンバーの心を破壊したと言われ、当時「魔曲」とまで呼ばれたこの曲。

これを最後に中元日芽香は卒業します。

そしてひめたんにとって最後のアンダラとなった九州シリーズ。

しかしWセンターのふたりが共に体調不良でどちらかが欠場という状態が続きます。必死にそれを支えた樋口日奈をはじめとするメンバーたち。
そしてふたりが揃った福岡公演最終日。

ついにWセンターで披露した『アンダー』。
イントロで抱き合うふたりのシルエット。
ラスサビでひめたんの頬をつたった涙。

あまりにも残酷で
悲しいほどに美しい
忘れられない名シーンです。


続きます。


note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。