前の記事では印象に残ったシーンを挙げていきました。
でも実を言うと、私がこの日最も強い印象を抱いたのは北野日奈子と後輩たちのやり取りでした。
たまちゃんが感情を吐き出した
ライブの最終盤、阪口珠美からの送る言葉。
日奈子ちゃん
そう呼びかけたことにまず驚きました。
(すぐ後に「日奈子ちゃんって呼んでいいよって言ってくださった」と説明していましたね)
そしてこう続けます。
このラストライブをアンダーメンバーと一緒にやってくれるって選んでくださって本当に有難いです
きいちゃんが選んだんだ。そして選抜メンバーのサプライズ出演がないのもきっと彼女の意志なんだ。
きいちゃんが望めば、それこそ齋藤飛鳥だって来たでしょう。
でも、彼女は最後のステージをアンダーメンバーとだけ行なうことを選んだ。
もうそれだけで私はグッときました。
ポジションにこだわり続けたきいちゃん。
ずっと「選抜メンバーを目指すことがあるべき姿だと」考えてきたきいちゃん。
自信を失って、それでもあきらめきれない向井葉月に「選抜を目指してもいいんだよ」と語りかけたきいちゃん。
それでもアンダラに誇りと思い入れを持ち続けたきいちゃん。
そんな彼女が最後に共演することを望んだのが、今まさにポジションで辛い思いをしているアンダーメンバーたち。
さらに言葉をつなぐたまちゃん。
私は辛くても表に出す自信もなくて勇気もないけど、
私たちアンダーメンバーも今この場所で自信を持って頑張れば良いんだって思えるようになったのは日奈子ちゃんのおかげです
確かにその言葉通り、めったに感情を表に出さない印象のたまちゃん。
そんな彼女が表情を乱し泣きながら絞り出した言葉の重み。
そんな彼女にきいちゃんはこう答えます。
立場上、ポジション的にも凄く苦しい場面が今までもこれからもあるかもしれない
「立場上」。
もはや先頭を走らねばならない3期生たち。
加入6年目でふたつ下の代の後輩ができる。これはまさにかつて=2017年当時の1期生の立場です。
「ポジション的に」。
ダンススキルが高く、代打での歌番組出演はある。
選抜もアンダーセンターも経験し、一定の人気もある。
それでも目に見える人気指標であるミーグリの完売実績において、選抜入り当確というところには至っていない。
「凄く苦しい場面が今までもこれからもあるかもしれない」。
後輩に抜かれるのではないか。
自分は便利屋として使われているだけではないか。
もう選抜には入れないんじゃないか。
そんな不安や葛藤、そして恐怖。
私の勝手な(そして大変失礼な)推測ですが、かつて中田花奈や斉藤優里が感じていたかもしれない感情。
そしてもしかしたら、26th『僕は僕を好きになる』で選抜落ちした時のきいちゃん自身も。
だから彼女はこう言います。
でも乃木坂を好きな気持ちを大切にしてね
辛くても苦しくても、乃木坂が好きでいられるのならここにいればいいんだよ。
たとえ選抜が遠くても、この場所を愛し活動を続けた先輩たちのように。
安易な慰めではなくリアルな、でもとても暖かいメッセージ。
この日の最後、きいちゃんはもう一度後輩たちに語りかけます。
自分の心を大切に
大事な人を大切に
元気で楽しく
もがき苦しんで心が折れて、それでも今笑って卒業していく彼女だから言える言葉でした。
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観なければきっと後悔する
この日、苦しさを吐露したのはたまちゃんだけではありませんでした。
序盤のMCでの中村麗乃。
頑張ることがわからなかった時期に
日奈子さんがめちゃくちゃリハーサルで頑張ってるのを見て
こうやって頑張るんだ、って思えた
その顔を隣でじっと見ながら目を潤ませる北川悠理。
きっと彼女にだって思うところはあって。
5期生の加入。そして中西アルノの抜擢センター。
そんな状況で現在のアンダーメンバーたちが抱える不安を受け止めてきた北野日奈子が卒業してしまう。
だからこそ。
この日のライブ序盤できいちゃんはファンにこう語りかけたのです。
アンダラに来ない乃木坂ファンにアンダーの魅力を伝えてほしい
思えば初期アンダラもそうでした。
超選抜メンバーのファンの多くはアンダラに全く興味がありませんでした。
さらに悪いことに一部にはアンダラを「アンダーメンバーのガス抜き企画」と揶揄する人たちさえいました。
そんなアンダラが瞬く間にファンの支持を集めたのは、メンバーの熱気とそれを観たファンの口コミによるもの。
2ndシーズンで大きなムーブメントになり、翌年には武道館に到達。
最少最弱と言われた17thアンダラ東京体育館も成功させ、東京近郊では1万人キャパの会場で行なわれることが当たり前になって。
アンダーの地位はかつてとは比べ物にならないくらい向上しました。
しかし、メンバーが大きく入れ替わりファンも入れ替わった現在。
再びアンダラ黎明期と同じように「超選抜メンバーのファン」のアンダーに対する関心が低くなっているように思います。
かくいう私もアンダラの会場に行ったのは2018年末の武蔵野の森が最後。
コロナ禍以降の配信も毎回観ているわけではありませんし、この翌日からのアンダラも正直迷っていました。
私は今も初期アンダラの反骨の炎が燃え盛った、切羽詰まりまくった空気が忘れられずにいます。
そのためアンダーメンバーにも色々な仕事があるという現在の状況を嬉しく思いながらも、どこか物足りなさのようなものを感じていたのも事実です。
そのためアンダーメンバーにも色々な仕事があるという現在の状況を嬉しく思いながらも、どこか物足りなさのようなものを感じていたのも事実です。
でも。
この日のメンバーたちの姿、そしてきいちゃんの言葉に背中を押されて配信チケットを購入しました。
観なければきっと後悔する。
そんな予感めいたものがありました。
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