びーむ色調補正3
前の記事の最後で書いた通り本編ラストまで本当に素晴らしいライブでしたが、それでも私は物足りなさのようなものを感じていました。


もっとギラギラしなくていいのか


その理由は、私自身もそしてメンバーもライブの感想が「楽しい」だったからです。

乃木坂もアンダーも、いまこんなにピンチなのに。

「楽しい」ライブで本当にいいのか。

そう思ってしまったんです。

我ながら思い込みが激しくて恥ずかしい限りなのですが笑

どうしても初期アンダラの「何度も何度も現実に打ちのめされながらも、反骨の魂を燃やし選抜を食ってやろうと全員が懸命に闘っていた」あの頃のことが忘れられません。

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そしてこの日、これでもかとばかりに逆境が-アンダラ2ndシーズンを思わせるように-積み上げられていました。

選抜との距離。

現在のアンダーメンバーのうち、1期生全員選抜だった25thシングル『しあわせの保護色』を例外とすれば最後に選抜入りしたのは伊藤理々杏、阪口珠美、佐藤楓の3人。23rd『Sing Out!』ですからもう3年前です。

そして26th『僕は僕を好きになる』の選抜発表以降、1年半近くにわたって「選抜から落ちるメンバーがいない」状態が続いています。
その間にかつてはあんなに高かった「連続選抜」の壁を何人かのメンバーが易々と突破しました。

さらに5期生が加入し、その中から早くも中西アルノがセンターに抜擢されます。

そこからの大炎上。

抜擢センター発表からネット上は荒れに荒れまくりました。

結局、彼女の「過去の活動及び発言がファンの皆さんを混乱させ不信感を持たせてしまったため」活動自粛。
さらに「グループの活動規約に違反する行為」により同じく5期生の岡本姫奈も活動自粛。

センター不在。
そしてそれを「なかったこと」のように新曲プロモーションを行なわなければならないメンバーたち。極めて不名誉(と私は思います)な事態。

グループ全体への猛烈な逆風が吹き、ネット上に目を覆いたくなるような罵詈雑言が溢れました。

まるで、2014年10月のように。

だから私は勝手な期待を抱いてしまったのです。
アンダラ2ndの再現が観られるんじゃないか、と。

北野日奈子卒コンで本音を吐露する阪口珠美や中村麗乃の姿に、その期待は膨らみます。

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しかしこの日のライブはいわゆる「鬼気迫る」ものではありませんでした。

もちろん当時とは条件がまるで違います。
大前提として私は配信での鑑賞であり、ファンも声を出せない状況であり、会場も広かった。

この条件で「熱さ」や「気迫」を伝えるのは本当に難しいことだったでしょう。

そしてハングリーさが違うのも当たり前のこと。

やっぱり当時のメンバー、特に1期生たちは「まだ何も成し遂げていない」という感覚がどこかにあったと思うんですよね。グループは確実に大きくなっているけれど、それは自分の力によるものではないという。
それに対し3期生以降は「乃木坂に加入する」こと自体がひとつの成果ですから、同じような上昇志向を持つことはきっと難しい。(もちろん生来の性格という要素もあるでしょうが)

あの頃とは状況が違う。それは重々承知しているのですが。

乃木坂もアンダーも、今こんなにピンチなのに。

「楽しい」ライブで本当にいいのか。

もっとギラギラしなくていいのか。
もっと感情を叩きつけなくていいのか。

そう思ってしまったのです。

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2014.12.12


そんな私の勝手な思い込みをすべて覆したのは、アンコールラスト前のMC。

口火を切ったのは松尾美佑でした。

 研修生の頃の何も考えず全力でやれた気持ちがわからなくなっていた

そう言って涙を流した彼女の姿に何人かのメンバーがもらい泣きする中、和田まあやは客席を指さしてこう励まします。

 私たちにはこんな力強い味方がいる
 だから大丈夫

涙の連鎖は続きます。

伊藤理々杏
かつて連続選抜を経験しましたが今は苦しいポジションにいる彼女。

 ああ、これが一番私がやりたかったことだ

そう言って涙にくれます。

ここでやっと私は気づきました。

アンダーメンバーたちが、この日のライブにどれほどの想いをもって臨んでいたかを。

そして思い出したのです。

2014年12月の有明コロシアム、アンダラ2ndファイナル。

あの日もほぼ同じことを考えていた自分を。

乃木坂史上初の全員センター企画でアンダーメンバーたちが輝いたあの日。
本当に楽しい「100点満点で120点のライブ」でした。

でも私は10月の六本木ブルーシアターで観たヒリヒリするような、点数なんかつけられるはずもない「ただただもの凄い」ライブを追い求めていました。

紅白に落選し、グループはまだ危機的状況にある。
アンダーだってこの先どうなるかわからない。

それなのにこんなに楽しい、ニコニコ笑って観ていられるようなライブをやってていいのか。

客席でそんなことを考えていたのです。(今では「伝説の」という枕詞つきで語られるライブの現場にいたというのに!)

あの日もアンコールでメンバーたちが次々に泣き出したのを見て、ようやく気づきました。

彼女たちがどれほどのプレッシャーの中で、どれほどの覚悟をもって有明コロシアムに臨んでいたかを。

翻ってこの日。

松尾美佑が、伊藤理々杏が思いの丈を吐き出し。

気がつけば、和田まあやが綺麗なお姉さんの顔をしていました。

お見立て会のブリッジ歩きでファンを恐怖のドン底に叩き込むところから始まった乃木坂人生。
頭NO王、内輪ウケものまねなど、番組の盛り上げキャラとして活躍してきた1期生年少組の「愛されまあや」。

そんな彼女がいつしかすっかりお姉さんの顔をして、頑張った後輩たちを愛おしそうに見つめます。

そして名場面は突然にやってきました。

「終わりたくないね」
「ちょっとだけ歌わない?後で私が責任取るから」

客席の誰かが掲げたサインボードの文字を読んだのでしょう

「あ、『きっかけ』?」に起きるどよめき。

そしてアカペラで歌われた『きっかけ』。

まあやのひらめきと、誰かが掲げたサインボード。
メンバーの想い。ファンの熱気。

小さな奇跡がいくつも重なって、こんなにも美しいシーンが生まれました。


退場を促すアナウンスに負けずに続いたダブルアンコール。これも、あの日と同じ。

感激屋の林瑠奈が泣き崩れています。

画面越しにも伝わる、会場を包み込んだとても暖かい感情のうねり。
それはアンダラ黎明期からその伝説の多くに立ち会ってきた和田まあやをして、こう言わしめるほどのものでした。

 言葉にならないって、今この感じ

またひとつ、アンダラに伝説が生まれた夜でした。


続きます。

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