ラスサマトリミング
2022年7月に公開され、ロングヒットとなった映画『ラストサマーウォーズ』。

井上小百合が出演しているので映画館に足を運びました。

嫌なところがひとつもない


内気な小学6年生の男の子が好きな女の子のために、仲間を集めて自主映画を撮り始める。

「映画作り」映画、しかもジュブナイル。
好きな人にはたまらん設定でしょう。

あらすじはこちら。

 「ボクの映画の……ヒロインになってくれない!?」

 小学6年生の男の子・陽太(阿久津慶人)は内気な映画オタク。持っているタブレットで日々アクション映画やホラー映画を観るのが日課。クラスに友達はいなかったが、自分の世界でそれなりに楽しく生きていた。

 だが1学期の終業式の日。クラスメイトの明日香(飯尾夢奏)が、夏休み終わりに外国に引っ越してしまうことを知る。密かに明日香に想いを寄せていた陽太に、ホームルームでの担任教師・土方(井上小百合)の言葉が響く。
 「最後の夏休み。やり残したことがないかしっかり思い返して、後悔のないものにしましょう」

 陽太は思わず明日香を呼び止めると、僕の自主映画に出てほしいと言ってしまうのだった-

公式サイトより抜粋)

この後、土方先生の助言によりクルーを集め撮影に入るのですがそこで様々な困難が立ちはだかり…というまあお決まりの展開。

この映画を一言で評するなら「嫌なところがひとつもない」。

捻りも裏切りもなくて素直なハッピーエンドで、でもそこが素晴らしい

「粗」はいっぱいあるんです。
ストーリーはご都合主義だし映画の撮影シーンはかなりチープ感が漂っています。
子供キャストの演技もやや素朴に過ぎる気がするし、登場人物の心理描写は浅い。

でもね。
何かそういうのはもう全部どうでも良くて。

というか上で挙げた粗はほとんど全部「わざと」だと思います。

この映画を小学生に観て、何かを感じてほしいから。
制作サイドが本気でそう考えているからこそ、枝葉を削ぎ落しスリム化した。

テンポの良い展開も80分という短めな上映時間も、小学生という観客を飽きさせないため

子供たちの素朴な演技は、過剰な演技をしないように指導したんじゃないかという気がします(子役で十分経験のある子たちなのでなおさら)。
そして母親役の櫻井淳子さんは「わかりやすい敵キャラ」になるようにステレオタイプの演技を求められたのではないかと。

チープな撮影シーンは「リアリティ」ですよね。
子供たちの取る映像が当然ながらチープなものであることを、その映像を見せずに表現しているのだと解釈しています。

「子供を飽きさせない」映画ですが、決して「子供向け」映画ではありません。

大人の観客もセンチメタリズムを刺激されまくりです。

演技の「行間」を読んで登場人物の感情の機微に思いを馳せるもよし、随所に散りばめられた小ネタを楽しむのもまたよしです。

大切なのは、その一歩


この映画を通して子供たちが感じてくれたら嬉しいこと。

その一歩目が周りを動かす、踏み出す勇気の大切さ。

仲間と何かを作ることの楽しさ。
誰かの助けで自分一人では決してたどり着けなかった場所へと行けること。
そして異なった個性を持つメンバーを組み合わせることによってより大きなことが成し遂げられるというチームビルディングの極意笑

この映画を通して大人たちが思い出すあの頃のこと。

仲間と集まるだけでなんか強くなった気がしたこと。
変なノリが楽しくて、無駄に走って大声出して、バカみたいに笑ったこと

何かものづくりをやりたくて、でもどこから始めたらいいかわからなくて。
最初だけ作って放り出しちゃったこと。

夏休みは何でもできる気がして、でも何もできずに終わっちゃったこと。


あらゆる年齢層の観客に「なんかちょっと、頑張ろう」と思わせてくれる素敵な映画だと思います。

上映期間終了して円盤発売とか諸々のビジネス展開が一息ついた後でいいので、全国の小学校で映画鑑賞会として上映してくれないかな~。
(私の頃は体育館に全校生徒を集めての映画鑑賞会があったんですが、今もあるんでしょうかね?)

全国の子供たちがこの映画を観て何かを感じてくれたら、それはとても素晴らしいですね。

はたゆりこさんの歌う主題歌『ラストサマーフィルム』がまた爽やかで、MVも映画の素敵なダイジェストになっているのでぜひこちらもご覧ください。



そして、担任の土方先生を演じた井上小百合について。

凄く、いい役

若くてはつらつとしていて、ちょっとドジで(寝坊のシーンあり)。
かつて映画業界を志したけれど挫折した経験があり、心に棘が刺さっていて。

直接手は貸さずにちゃんと距離を取って、子供たちの自主性を尊重して。
でも「大人」という最後の壁にぶつかった時、一緒に立ち向かってくれる。

いやホントに「いい役もらったな~」という感じです。

たぶん映画を観た人でキャラクター人気投票をしたら、1位は羽鳥心彩さん演じる栗原夏音で土方先生は堂々の2位なのでは
(夏音ちゃんはクールなブレーンっぷりと、主人公に対するほのかな恋心とすら呼べないような曖昧な好意が実に良いのです)

クルーが円陣を組んで「努力と感謝と笑顔で、うちらの映画完成させよう!」と叫んだり、当たりつきアイスで主人公が「はずれ」だったりと、井上小百合ファンに向けたサービスではないかと思えるシーンもありました。
(後者は『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』のMVが思い出されますね、念のため)

余談ですが乃木坂スター誕生!LIVEの直後だったため、クライマックスでさゆが鬼の角をつけて「鬼ゾンビ」を演じるシーンでは「そういえば『乃木坂工事中』の4期生紹介で遠藤さくらを担当したなあ」という感慨にふけりました笑


最後に(やや黒い)続編予告を。

 あれから3年…あの最強クルーが帰ってきた!

 街を離れた者、別の学校に通う者。
 今はそれぞれの場所で歩んでいた彼らが中学時代最後の夏に再び集結する。

 「明日香、もう一度僕の映画のヒロインになってくれ!」

 「いいけど私…彼氏いるよ?」


うわこれ、めちゃめちゃ観たい笑



『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各記事の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

また、note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
当ブログに掲載された記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧の方にも楽しんでいただけることと思います。