
2023年1月7日、公式ブログで秋元真夏さんが卒業を発表しました。
まずは彼女の歩みを振り返りましょう。
理解不能
2011年8月21日、すなわち乃木坂46結成日。
その日に暫定選抜メンバーのフロント(センターの隣)として写真に写っていた彼女ですが「学業都合」によりそのまま活動を休止します。
次に我々の前に現れたのは1年と少し後、2012年10月に放送された『乃木坂って、どこ?』。
その日は4thシングルの選抜発表でした。
まず行なわれた、それまでの「七福神」が「八福神」になるという説明にざわつくメンバーたち。
そして最初に発表された3列目の端は、高山一実。
衝撃が走ります。
乃木坂46が見た最初の地獄『16人のプリンシパル』。
そこで「覇王」生田絵梨花に次ぐ結果を残したかずみんが3列目の端。
つまり、あのもがき苦しんだ日々が何らポジションに反映されていない。
そう感じたメンバーが多かったといいます。
発表は続きます。
なぜか後ろから前にではなく、3列目、フロント、そして最後に2列目を発表するという違和感のある流れ。
フロントは生駒里奈、生田絵梨花、星野みなみの「生生星」。
そして2列目はキャプテン桜井玲香に白石麻衣、橋本奈々未、松村沙友理の御三家が並びます。
残すは2列目一番右。そして福神最後のひとり。
可能性の高そうなメンバー、特に中田花奈が繰り返しカメラに抜かれる中で読み上げられた名前は。
秋元真夏
「は?」
メンバーの間に声にならないその叫びが響きます。
理解不能。
次にカメラが抜いたのは、番組収録を見学していた私服姿の真夏さんでした。
その時から既にノースリーブでミニのワンピースというのがさすがというか笑
レッスンにはこれ以前から参加していたのでメンバーたちにとって「見知らぬ人」ではありません。
でも結成から1年以上休業しデビュー当初の厳しい状況も知らず、プリンシパルという地獄も味わっていない彼女が、いきなり福神?
選抜もアンダーも、誰もがこわばった表情のままでした。
わざわざ「八福神」などというポジションを用意し、発表の順番を最後に回してまで祭り上げる。
初期の運営が何度も繰り返した悪しき習慣、AKB的な残酷ショー。
そのダシに使われた中田花奈は収録後に泣き叫び、あおりを食って福神から外れた西野七瀬はスタッフに「大阪に帰ります」と告げたそうです。
この時に生まれたなーちゃんとの確執は2014年2月の2ndバスラでの「真夏、おかえり」まで1年4ヶ月も引きずることになるのです。
さらにそのすぐ後の『乃木どこ』。
真夏さんをフィーチャーするために行なわれたのはなんと真夏vs選抜全員、1対15の対決企画でした。
これも今にして思うととんでもない企画ですね。
もちろん「茶番」であり「台本ありのバラエティ」。
松村沙友理「日村さんのいいところ山手線ゲーム」、井上小百合「わんこうどん早食い」、生駒里奈「水中息止め」と敢えて自分の苦手なことを対決にして「いやそれお前勝つ気ないだろ!」と設楽さんに突っ込まれます。
最終対決で生駒ちゃんが1秒で顔を上げ「苦しかった…」。
真夏さんが8勝7敗で勝利。
それでも、画面から終始伝わってくるのは隠し切れないピリピリしたムードでした。
西野七瀬とはこの時「手押し相撲」で対決したのですが、至近距離で押し合いをしながら一度もふたりの視線は交わらなかったそうです。

完璧な答え
今にして思えば、秋元真夏は乃木坂のメンバーとファンが初めて経験する「異物」だったのです。
もちろんファンは猛反発しました。
真夏さんが凄いのはここからです。
選抜発表の放送直後(なんと0時28分!)に初のブログ更新を行い「今日から復帰することになりました」「がんばります」とコメントしていた彼女。
しかし放送を観たファンからの猛烈な拒否反応を目にし、その翌日に再びブログをアップするのです。
その内容がこちら。
発表から1日
4thシングルの選抜メンバーの発表から1日が経ち、いろんな方の気持ちや意見もたくさんたくさん伝わってきました。
また改めて、いきなりこのポジションに立たせていただいていることがあらゆる人に迷惑をかけてしまったり悲しませてしまっているんだということもわかりました。
じゃあこの場にいる私はどうするべきなのか?と何回も何回も真剣に考えました。
私なんかがいつまでもクヨクヨしてる場合じゃないんです。
今はチャンスを与えていただいた。
だからメンバーや、メンバーのことを応援してくださっている方々の色々な気持ちを背負って、今の状況に決して甘えないで一生懸命全力で進んで行かなきゃいけないんです。
もらったチャンスは、チャンスのままにしておいちゃいけないと思うんです。
いただいたチャンスの中で一生懸命努力して、いつか自分の持っている力と結びついたとき、そのときがみなさんに認めていただける時なんじゃないかなと感じています。
なので今は賛否両論すべてを受け止めて、一歩一歩前に進みながら一生懸命取り組んでいこうと思います。
最後にたくさんのコメントをくださった方々、ありがとうございました(/ _ ; )
応援してる!とかこれから頑張ってね!って言ってもらえたことがすごく嬉しくて元気がでました。
これから私は乃木坂46で頑張って行きます。
(引用元:「あれから1日」乃木坂46秋元真夏公式ブログ 2012.10.09)
いや正直今回この記事を書くにあたって初めてこのブログを読んだんですよ。(私も当時真夏さんの抜擢に反発を覚えていたのでブログをチェックしていなかった)
衝撃ですね。
わずか1日でこれを書ける。
その後に「異物」となってしまった堀未央奈や中西アルノはもとより、現在に至るまで数多くの乃木坂メンバーが苦しんできた「抜擢」「初選抜」「初センター」というポジションの重み。「私なんかがここにいていいのか」という問いかけ。
それに対する完璧な答えがここにあります。(「賛否両論すべてを受け止め」る必要はないと思いますけど)
「チャンスを活かすことこそがチャンスを与えられた者の使命であり、それこそが与えた者たち(=運営)と与えられなかった者たち(=メンバー)に対する礼儀である」
このグループアイドルにおける真理-ただわかってはいてもなかなかそう発言するのも実践するのも難しい-に彼女はこの時点で到達しているのです。
もの凄い。空恐ろしいと言ってもいいくらい。
いわゆる「メンタルの強さ」とは異質なもののように思います。
むしろ自分自身を理屈で納得させて無理矢理にでも前に進ませる力というか。
この「クレバーさ」と「我慢強さ」が合わさった結果である、一種の「自己実現力」。
この彼女の最大の武器が、期せずしてアイドル人生の第一歩で花開くことになったのです。
まだ復帰までしか書けていないのですが笑、長くなりましたので続きます。
◇
note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。
『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。
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