タオル補正

物語の終わり


前の記事では3期生加入から24th『夜明けまで強がらなくてもいい』までの3年間を振り返りました。

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その24th選抜発表の記事で私は抜擢センターに大反対し「くぼしたのWセンターにすべきだった」と書きました。(遠藤さくらに、ではなく抜擢センターという大量のアンチを生む采配自体に大反対)

そこで「よだもも」と「くぼした」についてこう記述しています。

 無垢の天才vsストイックなエリートという構図。
 これ、『ガラスの仮面』ですね。

 よだももは北島マヤ、くぼしたが姫川亜弓。

 圧倒的な完成度で先を進んでいた(『3人のプリンシパル』)はずのエリートが覚醒した天才に逆転(『逃げ水』)される。エリートの挫折。しかし諦めることなく泥臭くストイックに歩みを続けたエリートは2年の時を経て再び天才と並び立つ。(余談ですが、大人になるとマヤよりも亜弓さんに感情移入するようになります笑)

『2019年の乃木坂46』「【考察】美しい未来を見せてくれ~24thシングル選抜発表に思うこと」より)

この中でも暗に認めていますが、4人は決して横並びではありませんでした。

そりゃそうだ。

加入時に「将来の四天王」と目されたメンバーがその均衡を保ったまま成長していく、なんて単なる夢物語です。

齋藤飛鳥と星野みなみだって並び立たなかった。

でも前の記事で書いた『言霊砲』でのあまりに強い煌めきに、そんな夢が実現する可能性を見てしまったんです。

実際には最初期から握手人気では与田祐希と山下美月が突出していました。
異次元の愛くるしさを振りまく与田っちょと、「スーパープロフェッショナルアイドル」の美月。

西野七瀬や白石麻衣、生田絵梨花と齋藤飛鳥に次ぐほどの超人気メンバーとなったふたり。
『シンクロニシティ』から『Sing Out!』までフロントに立ち続けた(美月の休業中を除く)のですから、文字通りレジェンドたちの間に割って入った形です。

それに対し久保史緒里は初選抜の直後というタイミングで体調を崩し活動を休止。
大園桃子はどうしてもアイドル活動になじめない状態が続いていました。

そして迎えた2020年。

年明けにアイコン白石麻衣が卒業を発表。
卒業シングルとなる25th『しあわせの保護色』は福神にすべて1期生を並べ、後輩は全員3列目でした。

その後、世界はCOVID-19に覆われます。

まいやん卒業後、最初のシングルとなる26thの選抜が発表されたのはその年の11月。


その両脇を固めたのは久保史緒里と梅澤美波。

実は久保ちゃんにとってこれが初のフロントでした。

しかし私はこの時「これで久保ちゃんは完全にセンター候補ではなくなった」と感じました。

早い時期から「支える側」としての働きを期待されてそれに応えてきた梅ちゃんとシンメ。
「新時代のセンター候補を3人並べた」フロントではなく「新時代の旗手たるべき山下美月とそれを支える同期ふたり」という絵面に見えたのです。

シングルが発売されたのは翌2021年の1月。

この26th期間に美月は新センターとしてメディア露出攻勢をかけます。
シングルの売上自体はコロナ禍の影響をもろに受けて激減。それでも彼女は逆風に飲み込まれず自身の商品価値を上げてみせました。

さらに同年1月に発売された美月の写真集『忘れられない人』が推定売上19万部超、3月発売の与田っちょ『無口な時間』は21万部超という大ヒット。
乃木坂史上でも白石麻衣『パスポート』生田絵梨花『インターミッション』に次ぐ3番目と4番目という驚異の部数を叩き出し、ふたりはその人気を数字でも裏づけます。

ここにおいて、完全に3期は与田っちょと美月の2強になったのです。

そして2021年9月。

大園桃子が卒業。
ナチュラルボーン・アイドルは幻想を残して芸能界を去り、よだももとくぼしたの物語は終わりました。

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大河


物語が終わった27thシングルから31stまでの5作中4枚で、フロントは飛鳥美月与田遠藤賀喜の5人。例外の1枚は中西アルノ抜擢センターだった『Actually...』ですから、2年近くこの5人が固定だったわけです。

美月はグループの顔のひとりとしてエース・齋藤飛鳥とシンメになる場面が増え、「朝ドラ女優」の称号まで勝ち取ります。

それに対し「それ以外」の部分での活躍が目立つようになった久保ちゃん。

新内眞衣からオールナイトニッポンを引き継ぎ、のぎ動画「久保チャンネル」で後輩を紹介。3期曲では直近の3回中2度もセンターを任されました。2001年組の『価値あるもの』をはじめとしてユニット曲も多く与えられそのほとんどでセンター。

私にはこのすべてが、彼女が表題センターに立つ可能性が「低い」ことを示しているように見えました。

ありていに言えば「表題センターにするつもりはないけど実力も貢献も高く評価しているからそれ以外の場所でいっぱい活躍の場を与えるよ」という運営からのメッセージだと。

それでも久保ちゃんはドラマ、舞台、映画に立て続けに出演し、ついに「大河ドラマ出演」という勲章を手にします。

そして2023年。

ついに1期2期が全員卒業し、最上級生となった3期生。
「最前線に立つ」。もうとっくにその覚悟は決めていた。でも、本当にその日が来てしまった。

ここで運営が選択したのはくぼしたWセンターでした。

「5期生がひとり立ちするその時まで、どうか乃木坂を頼む」

キャプテン梅ちゃん、アンダーセンター伊藤理々杏と合わせて、3期生に対するそんな期待と信頼と感謝を感じさせる采配ですね。


選抜発表後に久保ちゃんはブログにこう綴りました。

 加入してまだ一年にも満たない頃、
 先輩方に囲まれる中、
 共に真ん中に立ってくれたあの時から、
 遂に、同期と後輩だけになろうとしています。
 時が経ちましたね。
 あなたの隣に立つのに相応しい人になりたくて
 6年半、走って追いかけてきたことは、
 悔しいけれど事実です。
 ただそれは、
 あなたが頑張り続けてきてくれたからこそ、
 出来たこと。
 ありったけのありがとう。
 これからは、
 一緒に、乗り越えて行きたい。
 背中合わせもいいけど、
 どうかこの期間は共に前を見させてください。

(「32枚目シングル」:乃木坂46久保史緒里公式ブログ 2023.02.20)

「3期の中心に立つのはやっぱり桃子」と思っていた久保ちゃん。
お見立て会でセンターに選ばれなかった久保ちゃん。
人気という面では美月と与田っちょの後塵を拝した久保ちゃん。
一度歩みを止めてしまった久保ちゃん。

それでも諦められなかった久保ちゃん

その彼女がこうして乃木坂の真ん中に立っている。

そして隣には他でもない山下美月

「プリンシパル」での真っ向勝負。
そして『三番目の風』以降、常にペアでありシンメでありライバルだったふたり。

大河ですね。


「よだももとくぼしたの物語」は終わっても、「くぼしたの物語」は続いていました。

あの日に思い描いた未来とは違ったけれど。
思ったよりずっと時間もかかったけれど。

ちゃんと3期生は乃木坂の屋台骨を支えるところまで来ました

32ndシングル『人は夢を二度見る』。

私はその歌詞を「夢の形は変わってもいい」という意味だと捉えています。

だとすればこの歌を歌うべきなのはやはり、久保史緒里なのでしょう。


続きます。


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