「銀河系軍団」。
サッカースペイン1部リーグの超名門、レアル・マドリー。
強大な資金力を背景に綺羅星のごときスター選手(各国代表のそれも主力選手)ばかりを集めた超豪華布陣を指して使われたものです。
この日のライブを観て私の頭をよぎったのはその言葉でした。
似ていないはずなのに
既にアリーナクラスでの期別ライブを経験している5期生たちが行なう、少人数の箱でのライブ。3期や4期にはなかったパターンです。
小箱。そして味も素っ気もないステージセット。
すなわち初期アンダラや3期初単独と似たシチュエーション。
熱量やがむしゃらさがダイレクトに客席に伝わる。
それこそが小箱の良さであり、先達もそうやって観る者の心を動かしてきました。
ただ5期生の場合、そうはいきません。
誤解を恐れずに言えば、「がむしゃらさ」「必死さ」は拙さとセットになった時にその威力を発揮します。
しかし今年のバスラ5期ライブの記事でも書きましたが、素質に恵まれた「持てる者」であるゆえに彼女たちの想いや努力は見えにくい。
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さらに表題センター経験者2人、福神経験者7人、選抜経験者8人、アンダーセンター経験者1人。
この数字だけ見ても、もはや「新人」ではなく「堂々たる戦力」。
むしろこれまで彼女たちは先輩たちと並んでも拙さを感じさせまいと懸命に努力してきたはずです。
そう考えると、決して5期生と相性がいいとは思えないこの舞台設定。
そこで彼女たちは何を見せてくれるのか。
この日、私はそこに注目していました。
オープニング直後のMCで早くもその答えが判明します。
井上和がこう言い放ったのです。
5期生11人で作る「乃木坂46のライブ」見届けてください
凄いこと言うなあ。
新人ライブとか期別ライブとかそんなくくりじゃない、いわゆる「本体のライブ」「全体ライブ」と思って観てくれと言っているんです。
そして彼女たちはその言葉通りにやってのけました。
5期生が見せたのは「クラス感」。
小箱だろうが味も素っ気もないステージセットだろうが委細構わず捻じ伏せる、そのダダもれのスター性。
まさに「銀河系軍団」。
例えるなら飾り気のない映画館のスクリーンの前で舞台挨拶をしてもスター性を見せつける俳優のように。
そしてそれは、今では考えられないぐらい安っぽい衣装とステージセットでもそのビジュアルの説得力で「クラス感」を感じさせたかつての1期生たちの姿とも重なります。
それは千秋楽Wアンコールの選曲にも表れていました。
櫻坂と日向坂はそれぞれ欅坂とけやき坂の、つまりルーツとなるグループの楽曲をもってきて「継承というストーリー」をラストで強烈に印象づけました。
では乃木坂は何を?
『君の名は希望』も『乃木坂の詩』もこの日既にやった。
『左胸の勇気』もアンダラでやった。『きっかけ』?それも『MUSIC BLOOD』でやっている。
選ばれたのは『I see…』でした。
ストーリーも何もない、ただ「楽しく笑顔で終わる」Wアンコール。
それは実に乃木坂46的で。
「作られたシナリオ」と「仕込まれたサプライズ」のダイナミズムが売りだったAKB48に対するアンチテーゼとしての乃木坂46を、「物語がないのが物語」「物語なんて後から勝手についてくる」という乃木坂イズムを強く感じさせるものでした。
正直、5期生を観ながらこんなにも1期生を思い出すとは考えてもみませんでした。
これ以上は蛇足かとも思いますがもうひとつ。
『考えないようにする』のパフォーマンスを観ながら私がメモしたのは「乃木坂的な美しさ」。
伝家の宝刀、杉山楽曲。
そして『シンクロニシティ』以降の乃木坂の特徴のひとつでもある、指先までしなやかな腕の振りを特徴とする「舞う」ダンス。振り付けもSeishiroさんですね。
それを束ねるセンター冨里奈央の儚さ。
MVのどこかソフトフォーカスで木漏れ日のような光の処理がされた映像も、過去楽曲で何度も見た表現。
そして『バンドエイド剥がすような別れ方』で「敢えてやらなかった」であろう手法でもあります。
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上の記事では『バンドエイド』を「乃木坂感が、あるけどない」と評しましたが、この日の5期生はその「乃木坂感」を早くも引き出しのひとつとして纏い始めているように感じました。
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いついかなる時も可愛い
最後に、この日何度も繰り返し思ったことを書きます。
小川彩は、破格だなあ。
最初のMCを彼女が仕切り出した。そのことにまず驚きました。
だって、それができるメンバーはいっぱいいるじゃないですか。
菅原咲月や中西アルノ、井上和。たぶん一ノ瀬美空も。
なのに敢えて最年少の彼女にやらせて、それをごく自然にこなしている。
もうこの時点で私は「破格だなあ」と感じていました。
そしてこの日も小川彩は、いつものように自身の魅力と能力を我々に見せてくれました。
いついかなる時も可愛いそのビジュアル。
独特なざらつきのある優れた声質とアタックのある歌唱。
どこか阪口珠美を思わせる、その滑らかなダンス。
別にこの銀河系軍団の中でもさらに抜けた存在だとか言うつもりはないんです。
そこはまだ、正直わからない。ですが個人的にはその可能性すらあるスケール感を感じています。
よく齋藤飛鳥と比較される彼女ですが、私はむしろ生田絵梨花に通じるものを感じます。
『君の名は希望』のピアノ伴奏や『無表情』に引きずられているかもしれません。
でもその底知れなさ、そして影の努力をおくびにも出さずにただステージ上で見せるものだけで勝負しようという矜持。
やっぱり、生田絵梨花だと思うんですよね。
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「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。
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こちらは総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームです。
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