タオル補正
2024年11月1日、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組内で向井葉月さんが卒業と芸能界引退を発表しました。

まずは彼女の乃木坂人生を振り返りましょう。

夢挫折希望絶望


2016年9月、乃木坂46の3期生オーディションに合格。同年12月の日本武道館におけるお見立て会で初めてファンの前に立ちます。

第一印象は「素朴」

『乃木坂工事中』の3期生紹介では齋藤飛鳥が担当。
そこでは「走り方にクセがある」ことがフィーチャーされます。

その後も「食いしん坊」とか「汗っかきで前髪がなくなる」など、当時は「面白パワー系のいじられキャラ」という印象が強かった葉月。

もちろんそれは彼女の持つ要素のひとつではあるのでしょうが、グループのパブリックイメージとはマッチしていませんでした。

大の乃木坂ファンだった彼女ですから「バラエティメンは人気が上がりにくい」という傾向も理解していたはずです。

もしかしたら先輩たちをあまりにリスペクトしていたゆえに「自分はああはなれない」と考えていたのかもしれません。だから「面白パワー系」に活路を見出してしまった。そんな気がします。

そして多士済々の3期生の中、握手人気ではやや出遅れます。
少しずつ完売部数を上げていきますが、30部フル完売には一度も到達しないうちに4期生が加入。そこからはさらに苦戦を強いられることになります。

追い打ちをかけるようにコロナ禍でのオンラインミーグリ化による完売状況の二極化、5期生の加入と逆風が続き、彼女の完売はゼロや1という状況が続きました。

そんな苦闘を続けていた時期の真っ只中に、彼女はこんなブログを投稿します。

 皆様こんにちは!向井葉月です。

 私は乃木坂に加入してから面白いけど乃木坂らしくない子だなという印象が強かったと思います

 やっぱり最初は面白くしなきゃ!目立たなきゃ!って必死になりすぎていました。

 そういうイメージのまま乃木坂にいることに本当に長い間悩みました。
 その印象やキャラを捨ててしまったら自分に何が残るんだろうとも考えました。

 そんな私の方が好きだ!って言う方も中にはいらっしゃると思います。

 でも私は本当の自分で乃木坂にいたいです。

 今までの印象を変えたくて、
 また初めから、今年乃木坂に加入した新人さんと思って少しずつ自分が出来ることを頑張っていくのでファンの方にもちゃんと見ていてほしいです。

 最近は綺麗に見せる踊り方とか表情も綺麗にうつるようにお家でたくさん研究しました。

 もちろんこれからもお仕事もライブも元気にやります!楽しいことは楽しい!面白いことは面白い!

 印象を変えることは時間がかかるし簡単なことではないけれど自分らしくいたいな〜というお話です。

 これからの私を見ていてください。
(乃木坂46 向井葉月公式ブログより引用)

「まだ蕾だけど。」というタイトルがつけられたその文章には彼女の苦悩がにじみ出ているかのようで、当時非常に驚いたのを憶えています。

投稿されたのは2021年10月。28thシングル『君に叱られた』ぐらいの時期。
すなわち加入から5年以上も経過してこんなことを書いているんです。

ちょうど同じくらいの在籍期間で1期生たちが初期キャラを黒歴史として笑い飛ばした(白石麻衣の「マヨラー星人」など)のとは全く違う、切実さ

少しずつ綺麗なお姉さんへと変わりつつあった彼女ですが、それをグループのファンの目に留めさせ、さらに「自分のファン」にするのは非常にハードルが高かった。

「自分のファン」を掴む最大のチャンスは加入から1年ぐらいの短い期間。
今でこそ乃木坂ファンの間では定説のように語られていますが、これも3期生と4期生の加入に際し起きた事象を後から分析したものです。

「期別売り」の第1世代である3期生特有の難しさを最も味わったのは彼女だったのかもしれません。

それでもじわじわと上がったミーグリ完売実績と、以前に比べ選抜が流動化したことを追い風に34th『Monopoly』で悲願の初選抜
加入から実に丸7年が経過していました。

続く35th『チャンスは平等』でも山下美月卒業に伴い3期全員選抜だったこともあり連続選抜となります。

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いいやつ。


彼女の活動の中で印象に残っているのはやはり『乃木坂工事中』での活躍です。

バブル相撲では足腰最強の高山一実を真っ向勝負で打ち破ったり。
バナナマンのツアー密着企画でカメラの前に出てくるもうまく話せず「番組に貢献したい」と泣いたり。
飼っているカエルをスタジオに持ち込んでメンバーを恐怖のドン底に陥れたり。
近所の公園で知らない小学生とキャッチボールしたエピソードも面白かった。

ドタバタ地団駄
不器用でスタイリッシュじゃなくて、でも真摯
そして何よりも、いいやつ

そんな愛されキャラでした。

上で引用した「今までの印象を変えたい」というブログを考えれば、私のこのような印象はご本人にとって不服かもしれません。
でも同ブログから1年ちょっと経過した2022-23年の年越しCDTVで発表した抱負が「地団駄を踏まない」でしたから、きっと自分の持ち味を徐々に認めて愛せるようになっていたのではないでしょうか。

卒コンや卒セレでは先輩に愛でられるシーンを数多く残しました。

松村沙友理の卒コンで「白石さんが卒業したら松村さん寂しくなっちゃうと思うから、私が沢山話しかけます!」と声をかけてくれた後輩に「まいやんのポジションに入ってほしいと思いました」と紹介された『でこぴん』。

憧れのみなみちゃんと「キラーン!」をやった星野みなみ卒業セレモニーでの『ロマンティックいか焼き』。

もうひとつ忘れてはいけないのが2023年11月に放送された『乃木坂工事中』の「お歳暮グランプリ」。
5期生からお世話になっている先輩へ贈る、要するにバレンタイン企画のお歳暮バージョン。

そこで中西アルノが選んだのが葉月でした。

理由を聞かれ「初期の初期に大変だった時期に爬虫類カフェに連れて行ってくれたりして…それが凄い嬉しかった」と涙ぐむアルさん。

「初期の初期」。もちろんアルノ事変のことでしょう。

多くのファンから「乃木坂の破壊者」と受け止められたアルさん。私も当時は強い拒否感を覚えました。

もちろん勝手な想像ですが、大の乃木坂ファンである葉月に何も思うところがなかったとは考えにくい。
まして自分は加入から5年半もの間ずっとアンダーなのに、アルさんは全部飛び越えてお披露目即センター。

それでも、葉月は手を差し伸べます。

それは彼女がこよなく愛した星野みなみイズムでした。
「招かれざる者」とされてしまったメンバー、秋元真夏や堀未央奈に真っ先に手を差し伸べたみなみちゃん。

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もしかしたらアルさん自身が、あるいはそれを見ていた後輩の誰かが。
きっと次の「手を差し伸べる人」になるのでしょう。

そうやって我々の好きな乃木坂は続いてゆくのです。


35th選抜発表の時の記事で3期生の功績として「グループのカルチャーとして根付いた継続の意志」を挙げましたが、葉月はまさにそれを形作り体現したメンバーのひとりでした。

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乃木坂である喜びと、同じくらいの迷いや悩みや苦しみ。
彼女にとってはそのふたつが同居した8年間だったかもしれません。

それでも、後輩たちは口々にこう言っています。

「葉月さんが今後も乃木坂を好きでいられるように頑張る」

そう思わせただけでも彼女の8年間には大きな意味があった。

私にはそう思えます。


向井葉月さん、8年間お疲れさまでした。



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「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


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