ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

カテゴリ:腕時計 > クロノグラフ

2022年も既に半分が経過してしまいましたが、臆面もなく今年もこの企画をやります。

「独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ2021年版」

2020年版はこちら。


2019年版はこちらです。


対象は2021年に発売されたモデルですが、本数限定のモデルは対象外としています。

価格帯は実勢価格だとブレるので定価で区分しました。
記載の価格はいずれも記事作成時点のもので新品税込です。
また併記している実勢価格は各店舗の表示価格=ポイント還元等を含まない金額となります。

それでは価格の安い方から順に発表します。

アンダー5万円部門


GM-2100-1AJF/カシオ

クオーツ。20気圧防水。SS&樹脂ケース+樹脂バンド。ケース径44.4mm

言わずと知れた人気者、メタルカシオーク。

2019年にリリースされたG-SHOCKのGA-2100シリーズは、その特徴的な八角形ベゼルがロイヤルオークを思わせるということで「カシオーク」と呼ばれ人気を博しました。
そのベゼルカバーをステンレスにした「メタルカバード」モデルがこちらのGM-2100シリーズ、通称「メタルカシオーク」です。

こちらの時計については以前に記事にしていますのでその魅力の詳細はこちらをご覧ください。

関連記事:

一言でいうならば、カシオークのメタル化というユーザー待望の新製品をこの価格でチープにならずに仕上げたその「まとめ上げ方」が非常に優れています。

便宜上一本選ぶ必要があるため(※)ベストバイという観点から最もプレーンなシルバーダイヤル・ブラックベルトのモデルにしました。
※カシオさんのシリーズ名は非メタルを含む「GA-2100シリーズ」なため
定価:26,400円(税込、以下同じ)
実勢価格:19,980円~(楽天市場調べ、以下同じ)

発売当初は売り切れ続出でしたが現在は普通に買えるようですね。(実店舗では今でも全モデル揃っているのを見るのは珍しいですが)
それにしても2万円という実勢価格は、安い

既に様々なバリエーションが存在しますし、GM-S2100というスモールサイズ(横40.4mm)のモデルも発売されています。
さて、ベストバイはこちらなのですが既に記事にしている時計ですので「次点」も発表します。

アンダー5万円部門・次点


レコードレーベル・ツノクロノ/シチズン

Ref. AN3660-81A
クオーツ。5気圧防水。SSケース+SSブレス。ケース径38mm

実は「ド本命」ともいえるメタルカシオークとこちらとで最後まで迷いました

1970年代に販売されたシチズン初の本格クロノグラフ「チャレンジタイマー」。
公式サイトによれば「ケースの12時側に配置されたプッシュボタンがツノのように見えることで、「ツノクロノ」の愛称で呼ばれてきたアイコンモデル」。

そんなオリジナルのデザインをクオーツとして手ごろな価格で復刻したモデルです。

余談ですがセイコーにも同じく1970年代に「ツノクロノ」と呼ばれる「スピードタイマー」を出していたので、東京オリンピック開催に合わせて復刻されないか秘かに期待していました。
そして確かに「スピードタイマー」を冠するコレクションは発表されたのですが…まあ現在のセイコーさんにこんな奇抜なデザインのためにムーブメントを新規開発する甲斐性などあろうはずもなく笑、3時側にボタンが配置されたごく普通のクロノグラフでした。

話をシチズンに戻しましょう。

こちらのモデルの最大の特徴は「第一印象での再現性の高さ」

実は(機械式からクオーツになったこともあり)細かな部分は色々変わっているにもかかわらず、オリジナルのデザイン上の特徴である「ツノ」と「ポテっとしたケースデザイン」さらに横幅38mmというサイズ感を踏襲しているため、一見しての再現度が実に高く感じられます。

なんというか、実に「それっぽい」。そして「機械式じゃないのは残念だけど、この値段ならいいか」と思わせる価格設定も絶妙。

 

バリエーションはパンダダイヤルとネイビーダイヤルの2種類。それ以外にもセレクトショップとのコラボモデルがリリースされています。

個人的には圧倒的にパンダのAN3660-81Aが好みですね。

定価:26,400円
実勢価格:26,400円

このどこかレトロフューチャー感のある時計と今を時めくメタルカシオークの定価が同じというのも面白い。

ちなみに記事作成時点ではパンダダイヤルは品切れで中古もプレミアム価格でした。
ディスコンのアナウンスはされていませんのでいずれ入荷されると思いますが、見つけたら早めに決断した方が良いかもしれません。

2022年にはスターウォーズとのコラボモデルもリリースされます(9月発売予定)。

「独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ2020年版」の第4弾は50~70万円のゾーンです。
対象は2020年に発売されたモデルですが、本数限定のモデルは対象外としています。

価格帯は実勢価格だとブレるので定価で区分しました。
記載の価格はいずれも記事作成時点のもので新品税込です。
また併記している実勢価格は各店舗の表示価格=ポイント還元等を含まない金額となります。

50~70万円部門


カレラ キャリバー ホイヤー02 スポーツクロノグラフ/タグ・ホイヤー

Ref.CBN2A1B.BA0643
自動巻き。100m防水。SSケース+SSブレス。ケース径44mm

タグ・ホイヤーのフラッグシップ、カレラ。

ただ「カレラ」という名前を持つモデルは現行機だけでも大量にあり、シンプルな3針からゴリゴリのスケルトンクロノグラフまでデザイン的にはかなり多くのバリエーションを持つ、わりと節操のないシリーズ笑です。ちなみにレディースモデルやクオーツもあります。

ただその本流は1963年のオリジナルから続くレーシングクロノグラフ。
ムーブメントも自社開発の「ホイヤー02」を搭載しているのが上位モデルです。

そして2020年に登場したこちらのモデルは王道のレーシングクロノデザイン。まあ「デイトナ系」とも言いますが笑

サーキュラーサテン処理の施されたダイヤル。サーキュラー=circulerでしょうから同心円状のサテン処理ということですね。光沢は抑えめでありながら表情のあるダイヤルに堂々としたバーインデックス。そのインデックスと時分針にはたっぷりの夜光。

ド直球。ど真ん中のストレート。
何て言うんですかね、普通に素直に格好いい笑

そもそも1963年の初代カレラのデザイン上の特徴は「内側をえぐったラグ」と「フランジつまりダイヤル外周の傾斜(=チャプターリングでしょうか)上に印字されたタキメーター」。

すなわちラグとベゼルの両方が細身であるために、レーシングウォッチでありながらもドレッシーな外観を備えていたわけです。公式サイトではそれを「腕元のレースカー用ダッシュボード」そして「エレガントなスタイル」と表現しています。

このモデルはタキメーターこそベゼル上にありますがラグはしっかり継承しており、スポーティに振れ過ぎずエレガントさを感じさせます。



高い質感にセラミックベゼル。タグ・ホイヤーお得意の人間工学に基づくH型ブレス。
そして80時間というかなりのロングパワーリザーブに100m防水。裏蓋スケルトン。

サイズは横径44mmで細腕さんにはちと大きいのですが、カレラにしてはラグが短めなので縦径は49.5mmに留まっています。

バリエーションはブルー、グリーン、ブラック&ゴールド。

定価:676,500円(税込、以下同じ)
実勢価格:446,800円~513,000円(楽天市場調べ)

実勢では30~50万円のベストバイに挙げたブラックベイフィフティエイトとほぼ同じですね笑
ほとんど欠点らしい欠点のないモデルだと思います。
デイトナ以外で王道のレーシングクロノが欲しければ非常にいい選択肢ではないでしょうか。

まあデイトナ買える人はデイトナ買えばいいんです。でも記事作成時点で中古でも300万以上の値がついていますからね。

ちなみに同時期にオリジナルの復刻版(Ref.CBK221B)も1,860本限定で出ています。
またプレーンベゼルでタキメーターなしのオリジナルに近いイメージのモデル(Ref.CBN2010他)も存在しています。
前者が39mm、後者は42mmとやや小ぶりのサイズですのでこちらを好まれる方もおられるでしょう。


関連記事:
独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ① アンダー5万円部門【2020年版】
独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ② 5~10万円部門【2020年版】
独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ③ 10~30万円&30~50万円部門【2020年版】
独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ⑤ 70~100万円部門【2020年版】

独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ(インデックス)【2019年版】



前の記事ではオメガ・スピードマスターのごく簡単な歴史と、ひとつめの弱点「人とかぶる」ことについて書きました。

以下の記事内ではスピードマスターを「スピマス」、手巻きスピマスのスピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルを「スピマスプロ」と表記しています。

俺とスピマス 後編


前編でスピマスプロ以外のスピマスでは「スピマス欲しい気分」が満たされないと書きました。
しかしだからと言って即「よっしゃスピマスプロ買うか」とはなりません。ここで個人的に思うスピマスのふたつめの弱点、「値段の割に高級感がない」ことが壁になってくるのです。

スピマスプロのロマンは「変わらない」からこそ。しかしそれは同時に「パッと見が1960年代の時計」ということです。ましてや元々その実用性こそがNASAに評価されて採用になったわけですから、ラグジュアリー感など皆無。

マットな黒文字盤に白い夜光のインデックスと針という視認性を最大限に高めるデザインには煌めきも艶やかさもありません。(このあたり、Sinn103の記事で書いたことと共通していますね)

書いていて気づきましたが、グランドセイコーの真逆。
GSの特徴である立体感あるインデックスも多面カットの針も深みのある光沢をたたえた文字盤も、すべてスピマスプロに加えたら単なる蛇足であり原理主義者の逆鱗に触れます。

当然オメガもその辺りは承知していてずっとデザインは変えていない(高級感はスピマスの別シリーズで追及している)のですが、ここでひとつ問題が。

腕時計全体の価格帯が上昇を続けているのです。

私はさんざんセイコーダイバーの価格上昇について文句を書いてきましたが、正直スイス(やドイツ)製の時計に比べれば微々たるもんです。
ユーザーにとっては悲しいことに、腕時計はとても高価になりました。メーカー曰く「原材料費の高騰のため」。ですがまあ要するにそれでも買うどこぞのマネーの人たちがいるからですよね。

せめてもの罪滅ぼしか、各メーカーは自社プロダクトに高級感を与えるリファインを加えてきました。加工技術自体の向上と相まって素晴らしい仕上げの時計が増えたのも事実ではあります。

ロレックス・サブマリーナデイトがセラミックベゼルを採用したRef. LV116610LNあたりからラグジュアリー感を高め今ではすっかり顔も値段も(そして入手しにくさまで!)高級時計になってしまったのがいい例ですね。

当然のようにスピマスプロも値段は他メーカー同様に上げます。でもデザインは変えられない…ということでオメガはケースの仕上げ精度やブレスの質感を上げるに留めてきました。(それに加えて収納ボックスを豪華にしたりストラップ等の付属品をつけたりもしていますが)

同じ歴史的デザインを踏襲するモデルでも基本デザインを変えずに素材・仕上げ・細部のリファインを重ねることにより高級化に成功したサブ。それに対し今なおNASA公式時計であるためヘサライト風防を捨てることさえ許されない(バリエーションとしてサファイヤクリスタル風防のモデルはありますが)スピマスプロは、ユーザーに伝わりやすい高級化を遂げることが事実上不可能だったわけです。
まあサブとは元々定価でふた回り、並行価格では半分以下ぐらいの差がありましたから並べて論ずるものではないのですが。

結果的に私にとってスピマスプロは「ロマンも歴史的価値もわかるけど、高い」という印象でした。

時計沼にはまりだした頃の現行機はまだRef. 3570.50で、ちょうどそのすぐ後ぐらいにRef. 311.30.42.30.01.005にモデルチェンジして定価が約10万円上昇したのもそう感じる理由のひとつではあるのですが。

マイ・ベスト・オブ・スピマス


さて。
長すぎる前置きが終わり、ここでようやく登場です。

ファーストオメガインスペース(Ref. 311.32.40.30.01.001)
長いので以下「インスペース」と略します。

発売は2012年。
オメガの公式サイトはこのモデルについてこう説明しています。

 宇宙を旅した初のオメガ ウォッチ「スピードマスターCK 2998」。1962年、マーキュリー計画の「シグマ7」ミッションで、宇宙飛行士ウォルター・シラーがプライベートで購入して身に付けた時計です。
 シラーの歴史的なミッションから50年。オメガの時計が初めて宇宙へ行ったことを記念して、新しいモデルが誕生しました。敬意を込めて、わずかなデザイン変更を施した21世紀仕様の最新ムーンウォッチ。

CK2998=スピードマスターの2ndモデルです。
NASAに正式採用されるより前に初めて宇宙に出たオメガの時計なのでまさしく「ファーストオメガインスペース」。(それに「ムーンウォッチ」も冠するのはいかがなものかという気もしますが笑)

こいつのどこが私の琴線に触れるかというと、「スピマスプロのデザイン上の不満を解消」していながら「単なるデザインバリエーションではなく歴史的モデルの復刻」でありしかも「人とかぶらない」ところ。

デザイン上のスピマスプロとの相違点はまず何と言ってもアルファ針。
時分針、そしてインダイヤルの秒針にも採用されています。
現在まで受け継がれるおなじみのバトンハンドは次の3rdモデルから。1stはブロードアローですのでこのアルファハンドは2ndだけの意匠なのです。

そしてスッと伸びたラグと、リューズガードのない左右対称のケース。さらに12時位置のオメガマークがアプライド。NASA正式採用前なので「PROFESSIONAL」の文字もありません。そこに白いステッチの入ったブラウンレザーのベルトを合わせています。
リューズガードはNASAの要望によるものなので4thから。ちなみに「PROFESSIONAL」も同じく4thからです。

ラグやケースサイドの仕上げの質感もかなり良いですし、スピマスプロより2mmちょい小ぶりな横39.7mmというサイズも嬉しい。

クラシカルかつスポーティでありながらどこかドレッシー。

まぎれもなくスピマスでありながら、そこにドレス系の要素が違和感なく融合した端正な顔立ち。「高級感」まではさすがに言い過ぎかもしれませんが、個人的に凄く好みです。
オメガ公式にあるJBカラーのNATOベルトに換装した写真が超絶格好いいですよね。

風防はヘサライトではなくサファイヤクリスタル。個人的にはこの方がむしろ嬉しいし、「完全復刻」を謳っていないので正しい判断だと思います。
敢えて言えば防水性能が50mなのが残念ですが、まあ正直スペックを云々するレベルの時計ではないと思います。

繰り返しになりますがもう一度まとめると、

1861搭載の手巻きスピマスでなおかつ人とかぶらず、無骨さ一辺倒ではない綺麗な顔立ちでしかも歴史的デザインの復刻。

まさにマイ・ベスト・オブ・スピマス。


さて、発売後9年も経過したこの時計を今回取り上げたのには理由があります。

2021年1月、年明け早々にスピマス界隈にビッグニュースが流れました。

スピマスプロ、7年ぶりのモデルチェンジ。
しかも24年ぶりに新型ムーブメント「3861」へ変更。

これにより1861搭載の現行スピードマスターは生産終了となる可能性が高まりました。

記事作成時点で既にインスペースはほとんど市場になさそうです。

定価は583,000円(税込、以下同じ)ですが2021年3月20日楽天市場調べでは中古で468,000円~、新品は569,800円でした。

ちなみにスピマスプロも新品はかなり市場から消えています。元々の流通量が多いので中古にはまだ品がありますがやはり値段は上昇している模様。

まあ来年2022年でインスペース発売10周年。すなわちシラー60周年なので3861搭載のニュー・インスペースが出る予感でいっぱいですが。果たしていくらになることやら笑
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スピードマスターとは、その歴史(を語り出すとものすごく長くなるのでごく簡単に)


オメガ・スピードマスター(以下「スピマス」)。
時計好きなら知らぬ者はいない、ビッグネーム。

オメガのアイコン。そして世界一有名なクロノグラフではないでしょうか。
知名度だけならロレックス・デイトナと互角以上ではないかと。

伝説に彩られたその歴史。

NASAが大気圏外の船外活動での利用を認定した唯一の時計であり、月面着陸プロジェクトで正式採用され、人類初の月面着陸したアポロ11号の船員が月面で装着。映画にもなったアポロ13号の生還劇においても重要な役割を果たした時計です。

その当時から変わらぬ基本デザインとムーブメント設計を保ち続ける手巻きスピードマスターにオメガは「プロフェッショナル」を冠し「ムーンウォッチ」と呼んでいます。
公式サイト上では「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」という表記ですが「スピマスプロ」という略し方が一般的かと思います。オメガブティックに行くと店員さんは「ムーンウォッチ」って言いますね笑

スピマスと名のつくシリーズには膨大なバリエーションがありますが、このスピマスプロこと手巻きスピマスこそがまごうことなきフラッグシップ機です。

俺とスピマス 前編


いきなりですが、元々私にとってスピマスは「興味のない時計」でした。

なぜなら 1.人とかぶる 2.値段の割に高級感がない ため。

まず「人とかぶる」について。

そもそも私はロスジェネの悲しい性として「人と同じが大嫌い」なんですよ笑
noteの記事でその辺を書いているのでよろしければそちらもどうぞ)

そんな観点からすればスピマスなんて真っ先に選択肢から外れます。なんで何十万も出して職場のあの人と同じ時計をしなきゃいかんのだ、って話ですよ。

まあそれを言い出したらロレックスもタグ・ホイヤーもグランドセイコーも怪しいのですが、スピマスは特にその傾向が強い。

なぜなら、シリーズの中でも圧倒的にスピマスプロが人気だから。

個人的な経験から言えば「全く同じデザインの時計をしている人を見る確率」はロレックス・サブマリーナデイト、同じくエクスプローラ1、そしてスピマスプロが高いように思います。

しかし。

時計沼にはまってその奥深さを体感していくうちに、時計の好みって変わる…というか広がるじゃないですか。

ドレス系に惹かれていたのが気づけばミリタリーが1本欲しくなったり、ダイバーズもいいなとかやっぱりクロノグラフは男のロマンだよなとか。

私も時計沼にはまって3周ぐらい回ったところで「あ~、やっぱスピマスってかっこいいよな」とか思うようになりました。


とはいえ人とかぶることに変わりはない。そこでムーンウォッチ以外のスピマスを物色し始めるわけです。

ただ暴論を承知で言えばスピマスプロ以外のスピマスって「ただのかっこいいクロノグラフ」なんですよね。

いや、これはそもそも逆でスピマスだけが特殊。
「宇宙に行ったのと同じ時計」というロマン込みでお金を払っている部分がある気がするんです。

歴史的モデルの完全復刻はちょいちょいありますが、ほぼそのままの形、しかもムーブメントの基本設計まで同じで何十年も生産され続けてきたというのはちょっとスピマス以外に見当たらない。現在に至るまで風防がヘサライト(強化プラスチック)なぐらいですし(※)。
※衝撃を受けると亀裂が入る=割れて飛散しないという性質により無重力下での安全性が高いため採用されている

すごく変な文章になりますが、スピマスプロ以外のスピマスは、スピマス内ではなく他のクロノグラフと比較すべきだと思うんですよ。

CK2998の限定モデル(Ref. 311.32.40.30.02.001)とかダークサイドオブザムーン(Ref. 311.92.44.51.01.003)とかめちゃめちゃ格好いいですけども。個人的にはどこか「これだったらスピマスでなくてもいいじゃん」という気持ちが頭をよぎるんです。いちクロノグラフとしてゼニスやブライトリングやタグ・ホイヤーと比べた結果として買うべきものだよな、というか。

スピマスを1本欲しくて検討していたはずなのに気がつけば違う場所に来てしまった感覚になるんですよね。
歴史的デザイン、という意味ではファーストレプリカ(Ref. 3594.50)とか同デザインの50周年記念(Ref. 321.10.42.50.01.001)、あるいはデザインコード的には引き継いでいる’57コーアクシャルのブロードアロー仕様(Ref. 331.10.42.51.01.002)もかっちょいい。ただこの辺も「歴史はあるけど宇宙には行っていない」というエクスキューズがつくんですよね。
まあファースト系でいえばトリロジー(Ref. 311.10.39.30.01.001)は横径38.6mmというサイズ感にトロピカルダイヤルで凄く惹かれますね。ずっとプレミアム価格が続いていましたが記事作成時点では中古で70万円ぐらいまでは下がってきていました。
(それにしてもなぜにオメガのリファレンスナンバーはこんなにも長いのでしょう。バリエーションが多いからか)


…ここまで書いた時点で結構な文字数になってしまいました。

まだ本題である「ファースト オメガ イン スペース」にたどり着いていないのですが笑、記事を分けます。


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ジンとは、その歴史


個人的に好きなメーカーのひとつ、ジン。

ドイツの腕時計メーカーで創業は1961年。ドイツ空軍パイロットで飛行教官、さらに自動車ラリーのドライバーでもあったヘルムート・ジンが創設。1994年には名門IWC出身のローター・シュミットが経営権を引き継いでいます。

正式名称はSinn Spezialuhren=ジン特殊時計会社。

社名に「特殊」って入れてる時点でもうファッションアイテムじゃなく計器として時計をとらえている感じですよね。

実際にドイツの税関犯罪局や連邦刑事局、消防レスキュー部隊、対テロ特殊部隊GSG9などでも採用されており「プロフェッショナルのための道具」を超えてまさに「スペシャリストのための道具」。自らスペツィアルなんたらを名乗ってるのは伊達じゃねえぞ、と言わんばかりのガチ感。そういうとこ好きです笑

公式サイトでも「視認性、機能性を最重要視したプロユースで堅牢な作り」「身に着ける人が生涯信頼できる極限的状況でも最高の精度を保証する時計」と謳われています。

ジンのアイコン


そんなジンの中でもアイコニックなモデルがこの103。
メーカー自らが「まさにジンの基本精神を表す」と言い切っています。

アビエーションウォッチと呼ぶのかパイロットウォッチなのかわかりませんが、要するに飛行機乗りの時計ですね。
さらに細かくカテゴライズするとエアロダイバーズというんでしょうか、ブレゲのアエロナバルなどと同じように回転ベゼルと防水性能を備えたモデルになります。(防水は海軍の航空隊向けという成り立ちのためと思われます)

実際に60年代にドイツ空軍クロノグラフとして採用されたモデル155の伝統を踏襲しています。

その特徴は優れた視認性と堅牢さ。

こんもり厚く盛られた夜光プリントのアラビアインデックス。夜光ニードルハンド(先に針状の突起がある注射器のような形状)の素っ気ない針。マットなダイヤル。角ばったラグ。
ムーブメントは標準的なETA7750。横幅41mm。20気圧防水。

ここまでが共通仕様です。



基本モデルの103.B.AUTO(以下「無印」)はほぼフラットなアルミベゼルとそこからボコッと盛り上がったボックス型の強化アクリル風防が特徴。



103.B.SA.AUTO(以下「SA」)はステンレスベゼルとサファイヤクリスタル風防。ボックス型ではなくベゼルからひと続きになだらかなカーブを描くドーム型。現行ではリューズだけでなくプッシュボタンまでねじ込み式になっていますね。そしてシースルーバック。

それ以外にも特殊機能を搭載したモデルや限定モデルなどのバリエーションがあります。





既に述べたベゼルの傾斜に加え、無印はベゼルエッジまで黒いのに対し、SAその他はエッジがシルバーなのでちょっと見た目の印象が違います。全体的に基本モデルの方がクラシカルでミリタリー感強め。

これぞジン、って感じなのが前者で合わせやすいのは後者ですね。

ガシガシ使えるツール感


成り立ちはかなりクセが強いですが、実は使い勝手が良いのもこの103の特徴。

シンプルなデザインとマットなカラー、程よいサイズ感でどんな服装とも相性いいです。
無印はちょいとミリタリー感強すぎな気もしますがSAはスーツとの相性もバッチリ。(業種・職種による向き不向きはもちろんありますが)
無印で15.5mm、SAは17mmと意外に厚みのある時計ですが、装着感も悪くありません。

堅牢性と防水性能、そして少々傷がついてもそれが無骨さを増して味になるというキャラクターもあいまってガシガシ使えちゃいます。

このように男心をくすぐるモデルですが、41mmというサイズなので女性がつけても格好いいと思います。
実は一度だけこの103をしている女性を電車の中で見たことありますが、非常にクールでした。



記事作成時点での価格帯は以下の通りです。

無印はレザーベルトで定価319,000円(税込、以下同じ)。並行店での新品実勢価格は20万ちょいぐらいから。
SAのメタルブレスだと定価454,000円、実勢28万台半ばぐらい。
中古ならばSAでも20万円以下からありますがそれほど数は多くありませんでした。
以前はかなりの本数が流通していたんですけどね。

ただちょっと前の中古はキズキズな状態(その分値段も安かった)のものが多かったです。
マイナーな頃にジンを購入するユーザーは「キズも味で格好いい」という考えの人が多かったのかもしれません。

ちなみに500本限定でリリースされた103 Klassik という3カウンター逆パンダダイヤルの超絶かっこいいモデルがあるのですが、中古市場ではほぼ見かけませんね。

まとめ


パッと見、定価で30万を超える時計には見えないかもしれません。

見た目は1980年代のデビューから変わらず。
ラグジュアリー感を身に纏ったブライトリングやファッショナブルなベル&ロスとは違い本当に「そのまんま」。

だがそこがいいい。

ここまで触れてきませんでしたが、ジンの技術力は高いんです。様々な新技術を導入(公式サイト「ジン・テクノロジー」参照)してきました。

でもそのすべてが堅牢性・耐久性・メンテナンス性を上げるためのもの。
持てる技術力のすべてを実用面に投入するというストイックさ。

そこにシビれる!あこがれるゥ!ってなもんです。

「使うためだけの時計」というジンの哲学を腕に乗せる喜びと高い実用性を兼ね備えた優秀なモデル。

それがこのSinn 103です。


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