ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

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「独断と偏見で選ぶ!価格帯別腕時計ベストバイ2021年版」の第4弾は20~30万円のゾーンです。昨年までは10~30万円でひとくくりだったのですが、毎年このゾーンに取り上げたい時計が多いので今年から分けてみました。
対象は2021年に発売されたモデルですが、本数限定のモデルは対象外としています。

価格帯は実勢価格だとブレるので定価で区分しました。
記載の価格はいずれも記事作成時点のもので新品税込です。
また併記している実勢価格は各店舗の表示価格=ポイント還元等を含まない金額となります。

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。

20~30万円部門


シリーズエイト 870/シチズン

Ref. NA1004-87E
自動巻き。10気圧防水。SSケース+SSブレス。ケース径40.8mm

8年ぶりの復活となった、シチズン・シリーズエイト。

直線で構成され無骨ながら質感の高いケース、ラグ、ブレスに円を強調したベゼルとドレス系の顔を合わせるという実に絶妙なデザイン

まさに和製「本当に手が届くラグスポ」に仕上がっています。
そして直接の比較対象であろうモーリス・ラクロア「アイコン」が外装に全振りしているのと比べるとこちらは高精度ムーブメント+強化耐磁という高い実用性も備えており、ミドルハイ機(「ザ・シチズン」に次ぐ)として恥じるところのないスペックを備えているのが好感

こちらの時計については以前に記事にしていますのでその魅力の詳細はこちらをご覧ください。


定価:220,000円(税込、以下同じ)
実勢価格:210,000円~(楽天市場調べ、以下同じ)

基本、定価です。実勢価格がアンダー20万だったらなあ、とは思いますね。

シルバーとブルーのバリエーションも出ています。
さて、ベストバイはこちらなのですが既に記事にしている時計ですので「次点」も発表します。

20~30万円部門・次点


ドルチェヴィータ/ロンジン

Ref. L5.757.4.73.9
自動巻き。3気圧防水。SSケース+レザーベルト。ケース径27.7mm

スイスの名門、ロンジン。

かつて(10年ほど前)はオメガと共にスウォッチグループ内でのミッドレンジを担う存在でした。

しかしあれよあれよという間に価格が上がり高級時計の域に達してしまったオメガ(仕上げも非常に向上しましたが…)とは異なり、ロンジンは機械式で20万円台からクロノグラフ等でも40万円台に収まる価格帯を保っています。

腕時計価格の全体的な高騰により、当時はミッドレンジだったこの価格帯をもはやリーズナブルと感じてしまうのが悲しい。

ここまで書いてきて気づいたんですが今回のベストバイ、ものの見事にスウォッチグループのメーカーが並んでいます。

ティソハミルトン、そしてロンジン。
グループ内のメーカーをレンジ分けしていることが知られていますが、その棲み分けがきちんとされているというのを図らずも私が実証してしまいました笑

ちなみにグループ内での各レンジの呼称はスウォッチが「ベーシック」、ティソとハミルトンは「ミドル」、ロンジンは「ハイ」そしてオメガが「プレステージ・ラグジュアリ」です。

話を戻すと、ロンジンのイメージはクラシカルな正統派。
悪く言えば地味なんですが、渋くて通好みともいえますね。
近年では名門ならではの莫大なアーカイブからの復刻も積極的に行なっています。

個人的には費用対効果が高いブランドのひとつだと思います。
(知名度はそれほど高くないので「ステータス」という効果を求めるならば下がりますが)

今回取り上げるのは「ドルチェヴィータ」。

レクタンギュラー(長方形)の時計です。

個人的にはレクタンといえば「エレガント」
落ち着いた大人の時計というイメージ。なんとなく「文化系」という気もしますね。「女性が好む」というイメージもありますがきっとこれはただの偏見でしょう。

ジャガー・ルクルト「レベルソ」やカルティエ「タンク」、そしてジラールペルゴ「ヴィンテージ1945」など、歴史ある名門からそれぞれのメーカーを代表するような名作が出されています。
とはいえどれも名作だけあってそれなりのお値段。(機械式のレベルソで定価70万円台~)

その点こちらのドルチェヴィータは20万円台前半。

こういうクラシカルなデザインを安っぽくなく作るのって難しい…かどうかは知りませんが笑、まあそれを実現しているメーカーって少ないんですよ。そういう意味でロンジンは非常に貴重な存在だと思います。

 

デザインも好きですね。

多くの直線で区切られたいわゆるアールデコ調のダイヤル。クラシカルなフォントのアラビアインデックスにブルースチール針。中ほどにリングをかませたリューズ(呼び方はあるのでしょうか?)もエレガント。

サイズは厚さ10.1 ㎜、横27.7 ㎜、縦43.8 ㎜。
スペックは自動巻きでパワーリザーブ約45時間。サファイヤクリスタル風防で3気圧防水となっています。

定価:229,900円
実勢価格:229,900円

このダイヤルデザインではベルト違いで3種類のバリエーションがあります。
ブラックレザー、ブルーレザー、そしてメタルブレス。個人的にはブルーレザーが一番好きですが、使い勝手という意味では限定されますね。なぜかメタルブレスでも同価格なのでコスパ重視ならそれもありです。

ダイヤル違いではローマンインデックスのモデルもあります。

 

まあレベルソとかタンクを何のためらいもなく買える金銭感覚をお持ちの方はあちらを買えばいいんですよ。

でもこの価格帯に抑えて、クラシカルな時計をきちっと作り上げているロンジンは素晴らしいと思います。



シリーズエイトとは


かつてシチズンが展開していた「シリーズエイト」。

あるサイトによれば「全てのパーツを美しく仕上げる為の8ピースの構造のケース。シリーズ8という名前もその構造に由来」とのことです。

その複雑なケース形状が最大の特徴。

私が時計沼にはまったのが2013年頃でしたのでまだ現行でした。

凄く攻めたデザインで好きだったんですけど、とにかくデカい。
正確な数値は見つかりませんでしたが幅45mmオーバーとかだったと記憶しています。

厚さもなかなか(ケースをレイヤードしているためでしょうか?)で全体として「コロンとした印象なのにソリッドな質感」という独特な個性がありました。

位置づけとしては最高級機「ザ・シチズン」とはベクトルの違うスポーティなミドルハイ機というところ。セイコーでいえば「グランドセイコー」に対する「ブライツ・アナンタ」のようなものです。余談ですがアナンタもいろいろ面白いモデルがあって好きでした。

その攻めすぎたデザインが原因でしょうか。スタートが2008年で2013年にディスコンですから、先代はわずか5年という短命に終わりました。

現在探してみても圧倒的に中古のタマが少ない。
たぶん売れなかったんだろうな…と思わせます笑

しかし2021年、8年ぶりの復活。
しかも当時と同じエコ・ドライブではなく今回は機械式。

こりゃ気になると某家電量販店で実物を見てきました。

武骨+ドレス系×質感



第1弾としてリリースされたのは「870」「830」「831」の3種類、計8モデル。
私のお目当ては最も廉価な831だったのですが…正直、圧倒的に870がいい。

ということで当記事では主に870を取り上げます。

870を一言で表現するならば、高い実用性を備えた和製「本当に手が届くラグスポ」。

パテック・フィリップ「ノーチラス」やオーデマ・ピゲ「ロイヤルオーク」が既に神格化笑された昨今、「本当に手が届くラグスポ」として登場し絶大な支持を集めたモーリス・ラクロアの「アイコン」。

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その大ヒットに触発されたか様々なメーカーが以前よりも堂々と「ラグスポ調」のモデルを発売するようになりました。個人的には正直「タガが外れた」ような印象を受けますが笑

このシリーズエイトも八角形を意識させるケース、それと一体化したラグというラグスポの特徴を備えています。

ベゼル、ケースからブレスまでほぼ全面サテン(斜面のみポリッシュ)で仕上げられた無骨さ。直線的なケースに丸いベゼルの対比。しかも2体構造のツートンベゼルのため、より「円」が強調されています。

個人的に非常に良いと感じたのが文字盤。
公式サイトでトップに掲載されている=メーカー一押しであろうブラックダイヤルモデル。

これが指を乗せたら沈んでいきそうな「ぬめっ」とした艶のある黒なんです。
瞬間的に思いました「GSっぽい」と。

ラグスポ調でありがちなのがロイヤルオークのイメージを踏襲するパターンの刻まれたダイヤルと細めの針。
しかしシチズンはそちらに走らずに、艶のあるダイヤルに太い針とインデックスというドレス系のデザインを合わせてきました。とても好感が持てますね。



直線で構成され無骨ながら質感の高いケース、ラグ、ブレス。
そこに円を強調したベゼルとドレス系の顔。

実に絶妙なデザインだと思います。
ちなみに事前に写真を見ていた時は正直ブラックモデルのツートンベゼルを「やっちまったな…」と思っていましたが、現物を見ると意外と気にならないというかむしろ悪くない。色味が黒ではなくグレーであり、かつ強めのサテンが当たっているのであまりコントラストが強くないですね。

ブレスの装着感も良好でした。

サイズは厚さ 10.9 ㎜、横 40.8 ㎜。縦はデータなし。
横幅40mmオーバーですがベゼルが太いため大きく見えません。ラグもかなり短く切られているのでむしろ締まったサイズ感と感じます。

スペックはパワーリザーブ50時間、日差−5~+10秒という高精度のキャリバー0950。さらに耐磁2種(強化耐磁)に10気圧防水。

この時計の最大のストロングポイントが外装なのは疑いの余地がありませんが、実用性の面でもかなり優秀です。

バリエーションは3種類。

NA1004-87E

ブラック文字盤、シルバーとグレーのツートンベゼル。



NA1000-88A

オールシルバー。



NA1005-17L

ブルー文字盤、シルバーとブルーのミックスベゼル、ブルーのウレタンベルト。


価格とまとめ


定価220,000円(税込、以下同じ)。値引きなし。ポイント10倍還元で実質価格は198,000円。
ウレタンベルトのモデルは定価209,000円で実勢同じの実質188,100円となっています。

結論としては、いい時計だと思います。

いや正直、すごく気に入りました笑
タイトルにも書いた通り、アイコン同様に「本当に手が届くラグスポ」であり、かつ顔とダイヤルの質感はグランドセイコーを思わせるドレッシーさ。

こういう言い方はシチズンさんが嫌がるでしょうけど、まさに「アイコンとGSのハイブリッド」

アイコンの対抗馬になりうる存在です。
若いデザインのあちらに対し、こちらはスポーティでありながら落ち着きも感じさせます。もちろんオンオフ問わず使えるでしょう。

アイコンの実勢価格がこなれてきたのでシリーズエイトももう一声安ければなとは思いますが、実用性ではこちらが優位にあります。

敢えて不満を書くならば、シリーズエイト8年ぶりに復活!の割にはほとんど先代との共通点が見られないことですね。せっかく名前を引き継ぐならもう少しデザインコードも残せばよかったのに…とはちょっと思います。

個人的に1本選ぶならやはりブラックダイヤルのNA1004-87E。
いや本当に艶感のあるダイヤルが良いので、気になった方はぜひ一度現物を手に取っていただきたいです。

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最後に同時に発表された他のラインナップも紹介します。

「830」はリューズガードありのオクタゴンケースで、ベゼルもそのケースより内側に収まっているため八角形を強調したデザイン。
そして白蝶貝の上に格子柄のプレートを重ねるという攻めまくったダイヤル。

サイズは厚さ 11.7 ㎜、横 40.0 ㎜。
スペックは870と同じです。

定価190,000円。値引きなし。ポイント10倍還元で実質価格は178,200円。
グレーPVD加工モデルは定価209,000円で実勢同じの実質188,100円となっています。

サイズは厚さ 10.1 ㎜、横 40.0 ㎜。
パワーリザーブ42時間、日差−10~+20秒のキャリバー9051にダウングレードしている分、安くなっています。耐磁と防水性能は同じなのが嬉しいところ。

定価132,000円。値引きなし。ポイント10倍還元で実質価格は118,000円です。

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