
前の記事では与田祐希の加入から大園桃子とともに抜擢センターに選ばれたところまでを書きました。
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当記事ではその続きを。
「よだもも」だけの偉業
『逃げ水』は初のミリオンセールスとなった17thシングル『インフルエンサー』の次という極めて重要なタイミングでのリリースでした。
しかも真夏の全国ツアー時のシングルでありライブのオープニング曲。
後に与田っちょも「体重が8kg減った」と明かしたほどのプレッシャー。
途中、ステージ上で写真集発売がアナウンスされその最初のページを撮影されるというサプライズもありました。
それでも彼女は笑顔でツアーを完走します。
ツアーファイナルとして初の東京ドーム公演。
年末には『インフルエンサー』で日本レコード大賞受賞。
凄まじい勢いで坂道を駆け上っている真っ最中の、その最前線に突然放り込まれて(しかも周囲はもはや完成の域に達している!)それでもどうにかこうにか一緒に走り抜けた。
その一点において「よだもも」は乃木坂史上において彼女たちふたりにしかわからない経験をしているし、ふたりだけの偉業を成し遂げたと言えるでしょう。
そして7年半経過した現在から改めて振り返って思うのは『逃げ水』がグループの歴史上いかに重要なシングルであったかということ。
「1期生後の世界」においても乃木坂46がトップアイドルグループとして存続できるのか否か。
その最大の分岐点がここでした。
「新人に貴重なリソースを割きすぎだ」と批判されながらも一歩も引かずに彼女たちを売り出した運営。
「個性が強くて乃木坂感が薄い」と言われながらも懸命に乃木坂46として認められようとくらいついた3期生たち。
その切り込み隊長の役目を見事に果たしたよだもも。
グループの勢いを増し加えた3期生を大方のファンは受け入れます。
乃木坂ファンの間に新人を「(推しの選抜入りを脅かす)異物」ではなく「新戦力」として受け入れる土壌ができたのは間違いなくこの時の成功があったからです。
そしてもうひとつ、『逃げ水』から始まり後にグループの文化となったもの。
それは「先輩が後輩を愛で倒す(めでたおす)」こと。
そもそも『逃げ水』がWセンターだったのは、加入当初からの3期センターを務め「運営推し」と目されアンチがついていた桃子を守るため1番人気の与田っちょをセットにして不満の矛先を分散させようとしたのでしょう。
さらに運営は手を打ちます。白石麻衣と西野七瀬の両エースをそれぞれ桃子と与田っちょの「後見人」としたのです。
言うまでもなく「先輩メンバーは新人を受け入れている」というのを目に見える形でファンに示すための「作られた」ペアリング。
しかしなーちゃんと与田っちょの姉妹感は思いの外はまり、なーちゃん卒業後もプライベートで一緒に旅行や食事に行く間柄になります。
もの凄く印象に残っているのが『アップトゥボーイ 2017 SEP vol.257』。
背表紙は「ディス イズ パーフェクト。みんなが見たかった乃木坂46大特集44P。」
表紙は花冠をつけたふたりのツーショットで「フレッシュ、かつ盤石。世界よ、これが乃木坂46だ。」
このあまりにも大上段に構えたキャッチコピーに苦笑しながらも大いに頷いた記憶があります。
後に「懐いてくれて嬉しかった」と語った通り、なーちゃんは与田っちょを愛でます。
それまでどちらかというと孤高の存在だった彼女が「お姉さん」している姿は新鮮かつ魅力的でした。
新人をファンに受け入れてもらうための後見人制度が、先輩の新たな魅力を引き出すという思わぬ副産物を生じさせたのです。
現在まで続く「先輩が後輩を愛で倒す」という乃木坂の文化。
後輩たちが繰り返し語る「先輩がしてくれたことを後輩にもしてあげたい」。
すなわち、齋藤飛鳥が卒コンで語った「恩送り」。
それが形成された理由のひとつが、このふたりの成功事例なのも間違いないでしょう。
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過熱する人気
一気にスターダムに駆け上がった2017年。
年末に発売した1st写真集『日向の温度』も推定売上9万部を超える大ヒット。
当時これを超える売り上げを叩き出していたのは白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥、生田絵梨花、橋本奈々未そして衛藤美彩だけ。
お見立て会からわずか1年で、与田っちょは「センター候補」「フロント固定」クラスの人気メンバーへと成長したのです。
その後も彼女の人気は過熱します。
コロナ禍以降にファンになった方はもしかしたら山下美月と互角かそれ以下ぐらいの人気という認識かもしれません。
しかし私は24thシングル選抜発表の時点(2019年7月)でこんなことを書いています。
現状、目に見える人気指標では白石麻衣と齋藤飛鳥が先頭を走り、そして与田祐希と生田絵梨花がそれを追うという構図に見える。
(中略)
そして、最大の狙いは与田の突出を抑えること。
正直、3期の中で人気では彼女が抜け出しつつあると思う。
しかし与田1強状態を作ると、いよいよ本当に潰れかねない。
だからこそ、ここで「くぼした」のWセンターである。
(『2019年の乃木坂46』収録「【考察】美しい未来を見せてくれ~24thシングル選抜発表に思うこと」より)
3期の中でも人気は突出しつつある。
まあ、推しの贔屓目かもしれませんが笑
とりわけ握手人気は抜群でした。
「ちっちゃいけれど、色気はあるとよ」と「すいとーよ」という初期の2大フィニッシュブロー。
そしてくるくる変わる表情と頭の回転の速さ。
抜群のビジュアル×最高レベルの握手対応=最強。
キャリアを通じて握手会、ミーグリをすべて最速で完売させたはずです。
ミーグリ開始当初には20時終了予定を22時を超えてもひとりだけまだやっていたなんてこともありました。
それだけの人気ですから、当然のごとく選抜発表のたびに取りざたされた「与田センター」。
しかし。
彼女が再びその場所に立つことはついにありませんでした。
続きます。
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過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。
「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。
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『2019年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
こちらは総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームです。
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