ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:乃木坂46

タオル補正
前の記事では与田祐希の加入から大園桃子とともに抜擢センターに選ばれたところまでを書きました。

関連記事:


当記事ではその続きを。

「よだもも」だけの偉業


『逃げ水』は初のミリオンセールスとなった17thシングル『インフルエンサー』の次という極めて重要なタイミングでのリリースでした。

しかも真夏の全国ツアー時のシングルでありライブのオープニング曲。

後に与田っちょも「体重が8kg減った」と明かしたほどのプレッシャー。
途中、ステージ上で写真集発売がアナウンスされその最初のページを撮影されるというサプライズもありました。

それでも彼女は笑顔でツアーを完走します。

ツアーファイナルとして初の東京ドーム公演。
年末には『インフルエンサー』で日本レコード大賞受賞。

凄まじい勢いで坂道を駆け上っている真っ最中の、その最前線に突然放り込まれて(しかも周囲はもはや完成の域に達している!)それでもどうにかこうにか一緒に走り抜けた。

その一点において「よだもも」は乃木坂史上において彼女たちふたりにしかわからない経験をしているし、ふたりだけの偉業を成し遂げたと言えるでしょう。


そして7年半経過した現在から改めて振り返って思うのは『逃げ水』がグループの歴史上いかに重要なシングルであったかということ。

「1期生後の世界」においても乃木坂46がトップアイドルグループとして存続できるのか否か

その最大の分岐点がここでした。

「新人に貴重なリソースを割きすぎだ」と批判されながらも一歩も引かずに彼女たちを売り出した運営。
「個性が強くて乃木坂感が薄い」と言われながらも懸命に乃木坂46として認められようとくらいついた3期生たち。
その切り込み隊長の役目を見事に果たしたよだもも。

グループの勢いを増し加えた3期生を大方のファンは受け入れます。
乃木坂ファンの間に新人を「(推しの選抜入りを脅かす)異物」ではなく「新戦力」として受け入れる土壌ができたのは間違いなくこの時の成功があったからです。


そしてもうひとつ、『逃げ水』から始まり後にグループの文化となったもの。

それは「先輩が後輩を愛で倒す(めでたおす)」こと

そもそも『逃げ水』がWセンターだったのは、加入当初からの3期センターを務め「運営推し」と目されアンチがついていた桃子を守るため1番人気の与田っちょをセットにして不満の矛先を分散させようとしたのでしょう。

さらに運営は手を打ちます。白石麻衣と西野七瀬の両エースをそれぞれ桃子と与田っちょの「後見人」としたのです。

言うまでもなく「先輩メンバーは新人を受け入れている」というのを目に見える形でファンに示すための「作られた」ペアリング。

しかしなーちゃんと与田っちょの姉妹感は思いの外はまり、なーちゃん卒業後もプライベートで一緒に旅行や食事に行く間柄になります。

もの凄く印象に残っているのが『アップトゥボーイ 2017 SEP vol.257』。

背表紙は「ディス イズ パーフェクト。みんなが見たかった乃木坂46大特集44P。」
表紙は花冠をつけたふたりのツーショットで「フレッシュ、かつ盤石。世界よ、これが乃木坂46だ。」

このあまりにも大上段に構えたキャッチコピーに苦笑しながらも大いに頷いた記憶があります。

後に「懐いてくれて嬉しかった」と語った通り、なーちゃんは与田っちょを愛でます。
それまでどちらかというと孤高の存在だった彼女が「お姉さん」している姿は新鮮かつ魅力的でした。

新人をファンに受け入れてもらうための後見人制度が、先輩の新たな魅力を引き出すという思わぬ副産物を生じさせたのです。

現在まで続く「先輩が後輩を愛で倒す」という乃木坂の文化。
後輩たちが繰り返し語る「先輩がしてくれたことを後輩にもしてあげたい」
すなわち、齋藤飛鳥が卒コンで語った「恩送り」

それが形成された理由のひとつが、このふたりの成功事例なのも間違いないでしょう。


当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。

過熱する人気


一気にスターダムに駆け上がった2017年。

年末に発売した1st写真集『日向の温度』も推定売上9万部を超える大ヒット。

当時これを超える売り上げを叩き出していたのは白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥、生田絵梨花、橋本奈々未そして衛藤美彩だけ。

お見立て会からわずか1年で、与田っちょは「センター候補」「フロント固定」クラスの人気メンバーへと成長したのです。

その後も彼女の人気は過熱します。

コロナ禍以降にファンになった方はもしかしたら山下美月と互角かそれ以下ぐらいの人気という認識かもしれません。

しかし私は24thシングル選抜発表の時点(2019年7月)でこんなことを書いています。

 現状、目に見える人気指標では白石麻衣と齋藤飛鳥が先頭を走り、そして与田祐希と生田絵梨花がそれを追うという構図に見える。

(中略)

 そして、最大の狙いは与田の突出を抑えること。

 正直、3期の中で人気では彼女が抜け出しつつあると思う。
 しかし与田1強状態を作ると、いよいよ本当に潰れかねない。

 だからこそ、ここで「くぼした」のWセンターである。

『2019年の乃木坂46』収録「【考察】美しい未来を見せてくれ~24thシングル選抜発表に思うこと」より)

3期の中でも人気は突出しつつある。

まあ、推しの贔屓目かもしれませんが笑

とりわけ握手人気は抜群でした。

「ちっちゃいけれど、色気はあるとよ」と「すいとーよ」という初期の2大フィニッシュブロー。
そしてくるくる変わる表情と頭の回転の速さ。

抜群のビジュアル×最高レベルの握手対応=最強

キャリアを通じて握手会、ミーグリをすべて最速で完売させたはずです。
ミーグリ開始当初には20時終了予定を22時を超えてもひとりだけまだやっていたなんてこともありました。

それだけの人気ですから、当然のごとく選抜発表のたびに取りざたされた「与田センター」。

しかし。

彼女が再びその場所に立つことはついにありませんでした。


続きます。

『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


『2019年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
こちらは総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームです。


『アンダラ伝説』 kindle版
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

タオル補正
2025年1月5日、公式ブログで与田祐希さんが卒業を発表しました。

これはもう抗えない


2016年12月14日放送の「FNS歌謡祭 第2夜」。

そこで披露されたのは乃木坂46×欅坂46コラボでの『制服のマネキン』。

イントロで生駒里奈に「乃木坂46、欅坂46、新メンバーの登場です!」と紹介され登場した乃木坂3期生とけやき坂(当時。現「日向坂」)1期生。

最初にアップになったちっちゃい子の顔が綺麗すぎて、その瞬間に心を掴まれました
その時に名前つきで紹介されたのは大園桃子、山下美月そして長濱ねる(ねるはとっくに活動を開始していましたが)でしたが、私は名前も知らない彼女に強く惹きつけられたのです。

それが与田祐希でした。

余談ですがこれ平手友梨奈の抜けに白石麻衣が映るというなかなかにレアな映像でした。

しかし当時の私は

てやんでぇ、こちとら5年以上「にやさゆ単推し(井上小百合推し)」を名乗ってきたんだ
いくら綺麗な顔しててもおいそれと靡く訳にゃあいかねえんだよ!

と無駄に荒ぶっており、お見立て会も『3人のプリンシパル』もスルーしました。

しかしライブ好きの自分を抑えきれずに行った2017年5月の3期生単独ライブ。

会場は今はなきAiiA 2.5 Theater Tokyo。

800人キャパの会場で、中央通路にはお立ち台。
私は通路から2列目の席でした。

ライブ中盤、お立ち台に立ち全力でレスをし続ける与田っちょの姿がめちゃめちゃ可愛くて「これは止むを得まい(これ以上抗えない)」と感じ、そこからずっと彼女の大ファンでした。


当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。

異次元の愛くるしさ


さて。
長い自分語りはここまでにして、彼女の乃木坂人生を振り返りましょう。

2016年9月、乃木坂46の3期生オーディションに合格。応募動機は「東京に行きたかったから」。
同年12月の日本武道館におけるお見立て会で初めてファンの前に立ちます。

そこで「一輪車で登場」「実家のペットはヤギ」「ちっちゃいけれど、色気はあるとよ」をかまし、爆発的なスタートダッシュを決めました。

当初の印象は「素朴」なのに「顔が綺麗」「タレント性が高い」

彼女のタレント性は印象に残るシーンを生み出す能力。
上のお見立て会から既に見せていたそれを、冠番組でもいかんなく発揮します。

『乃木坂工事中』スタジオ初登場は2017年4月の「先輩が3期生を全力PR」。与田っちょを担当したのは西野七瀬でした。

そこでも「小学校の全校生徒は20人」「同級生は7人いたがちょっとずつ減って卒業時は自分含めて4人」となかなかパンチのあるエピソードからスタート。

そして「通学途中にイノシシに襲われるので直角に避けて凌ぐ」と語り、なーちゃんが「日村さんイノシシやってもらえますか?」。ふたりで実演し屈辱に震える日村さん笑
さらに「特技は一輪車」では再び「コーンを用意できなかったので日村さんやってもらえますか?」。コーンに見立てた日村さんのまわりを一輪車で周りながらジロジロ見るという謎の時間。

(この記事を書くにあたり見直してみたらひな壇の大園桃子が例の「ペコちゃん舌」をしていてほっこりしました)

2017年5月、3期生番組『NOGIBINGO!8』の「乃木坂46田舎っペNo.1決定戦」で東京常識クイズに開始2問連続不正解。
MCのイジリー岡田さんに「1問も正解してない人?」と言われ手を挙げたら自分と先輩ゲストとして参加していた斉藤優里だけということに気づき「大ピンチ」。(ちなみにゆったんは「やったー」と喜んでいました笑)

2017年9月『乃木坂工事中』での「将来こうなって総選挙」。
無記名のメンバー投票で「将来こうなりそう」なのは誰かを決める企画。
そこで「将来お金に困りそう」部門で見事11票=自分以外の3期生全員を獲得し1位になります。

設楽さんに「お金、割と使っちゃう?」と尋ねられ「いや…」と容疑を否認。
部屋に貯金箱が3つあり「出来るだけ使わない」「いざとなるまで使わない」「絶対使わない」に分けているけど「3つめまで使っちゃう」

「3万円ぐらいの美容品を間違えて買っちゃったと軽く言っていたのには驚いた」というタレコミに「全然軽くない!けどキャンセル料がかかる」と反論。設楽さんに「キャンセル料の方が安いんじゃない?」と正論を言われテヘヘと笑いながら「確かに…」

あまりの愛らしさに日村さんが即ハートを掴まれ「ドンマイ!ドンマイ!」と甘やかしていました。

まさに、異次元の愛くるしさ

2017年3月の初の3期生楽曲『三番目の風』と続く『思い出ファースト』のポジションこそセンター大園桃子、両サイドの山下美月、久保史緒里に次ぐ4番手扱いでしたが、当初から3期の中でも一二を争う人気という雰囲気がありました。

そして2017年の7月10日に行なわれた18thシングルの選抜発表。

彼女は大園桃子とともに抜擢センターに選ばれます。


続きます。

『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


『2019年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
こちらは総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームです。


『アンダラ伝説』 kindle版
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

びーむ色調補正3
前の記事では座長・冨里奈央について書きました。

関連記事:


当記事では副キャプテン・菅原咲月について。

それでも力になりたい


千秋楽の座長挨拶で冨里奈央は「プレッシャーとか責任とかで押しつぶされそうになった時に、いつも必ず誰かがそばにいてくれた」と語りました。だから自分も挫けずにいられたと。

同じ言葉を我々はこれまで何度も耳にしてきました。

座長としてアンダラ横浜アリーナ2DAYSを控えた松尾美佑は「乃木坂はひとりにしてくれない場所」。
齋藤飛鳥も自身の卒コンで「いつかどこかで誰かが助けてくれる、だってそれが乃木坂だもん」。

今回、「ひとりにされなかった」メンバーがなおなお以外にもうひとりいました。

それは菅原咲月

37thアンダラのさっちゃんは本当に苦しい立場でした。

2024年12月の「乃木坂46 大感謝祭2024」で発表された彼女の副キャプテン就任。

まだお披露目から2年10ヶ月後輩も加入する前の段階グループで3番目に若いメンバーです。

これがいかに異例のことであるか、他の期に当てはめるとよくわかります。

4期生でいえば『君に叱られた』の頃に柴田柚菜が副キャプテンになるようなもの。
3期生は2年違いで既に4期生が加入していましたのでちょっと状況が違うのですが、時期としては秋元真夏がキャプテン就任してすぐの頃の阪口珠美
2期生はさらに極端で最初の紅白出場というか初の46時間TVの頃(『ハルジオンが咲く頃』の選抜発表ぐらいの伊藤純奈です。

実際に梅澤美波が副キャプテンに就任したのはまさに上で書いた『君に叱られた』期間中でした。

そこから秋元真夏を齋藤飛鳥を山下美月を送り出し「私たちが乃木坂46です」と宣言した。
個人的にはこれをゆんちゃんがやっている姿は全くイメージできない。というか、4期の誰であっても考えられない。

菅原咲月はそんな極めて早いタイミングで副キャプテンに任命されたのです。
彼女が感じているプレッシャーはいかばかりか。我々には想像することしかできません。

しかもそれがグループ内に発表されたのは37th選抜発表と同じタイミングでした。
副キャプテンになる不安と選抜から外れた悔しさ。それが同時に襲いかかる言いようのない感情を味わったことでしょう。

そして悪意はなくとも一部のファンから「でも君はいずれ選抜固定なんでしょ?」という目が向けられるであろう(そしてそれは無理もないであろう)ことも分かっていたでしょう。

迷いや悩みや不安。そんなマイナスの感情もライブにぶつけて昇華したい。
でも、もしかしたらその日の客席はアウェイかもしれない

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得ておりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。

そんな中で始まった今回のアンダラ。

DAY1のソロ歌唱コーナーで『何もできずにそばにいる』を選び、その理由を「この曲の歌詞に何度も救われてきたから、これからは自分が乃木坂の力になりたい」と語ったさっちゃん。

正直、個人的には「そこまで抱え込まないでほしい」と感じました。
副キャプテンだけど、まだ下から3番目の年少メンバーなんだから。

そして千秋楽。

序盤は素晴らしくしなやかなダンスをしていた彼女が本編ラスト前のブチ上げコーナーでは髪を振り乱して一心不乱に踊ります。
「ライブ映えする」という自身の長所を堂々と観る者に印象づけました。

それでも最後の『乃木坂の詩』前のMCでとうとう溢れ出した感情

副キャプテン就任から複雑な思いを抱えて色んなことを考えてプレッシャーを感じて苦しかったこと、それでも「このライブでは自分の立場とかを気にせずにいることができた」と。

そんな彼女にこう語りかけたのは吉田綾乃クリスティー。
「せめてここにいる時ぐらいはその重圧から解放されてほしい」。

言葉に詰まり涙を流すさっちゃん
その身体を隣でずっと優しくさするあやてぃー
ふたりの様子を微笑みながら見つめるメンバーたち

乃木坂の暖かさに満ちた素敵なシーンでした。


菅原咲月が最後に涙を流せたこと。
おかしな表現かもしれませんが、これは本当に「良かった」。

年末から何度も梅澤美波の隣に立っていたさっちゃん。
2025年はきっとさらにその機会が増えるでしょう。
彼女がいちプレイヤーとしていられる場面はこの先どれほどあるのだろうとか考えると胸が苦しくなります。

それでも。

キャプテンや副キャプテンの重圧を知ることはできなくても。
選抜聖域と見られることの苦しさを知ることはできなくても。

「それでも力になりたい」と思ってくれる人が乃木坂にはいる

さっちゃんはこの日、改めてそのことを実感できたのではないでしょうか。


『アンダラ伝説』 kindle版
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。


『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


『2019年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
こちらは総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームです。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。


 


びーむ色調補正3
前の記事ではこの日のライブがそれぞれの良さを存分に発揮するものだったことと、それを支えた3期生について書きました。

関連記事:


当記事では座長・冨里奈央について。

「私はアイドルになってよかったです」


前作『チートデイ』で、冨里奈央は最も目につく人気指標であるミーグリ完売状況において堂々の3次完売(しかも4作連続)を叩き出します。
彼女より完売速度が速かったのは一ノ瀬美空と井上和のふたりしかいませんでした。(それ以外にいわゆる「免除メン」がいるわけですが)

それでも選抜には入れなかった。

ボーダーラインに並んだ時、押し出されるのは自分なんだ

そう感じてしまったとしても無理はないでしょう。

そして彼女は今回の座長に指名されます。
心中に期するものとプレッシャーの両方があったのは想像に難くありません。

迎えたアンダラ3DAYS。
そのセトリは座長・冨里奈央に「寄り添った」ものでした。

ベースとなるアンダー曲は要所で使われていますし、個人にスポットを当てるソロ歌唱コーナーもアンダラならでは。
それでも終演後真っ先に感じたのは「アンダラでこんなに表題曲や期別曲をやるのは珍しい」でした。

まず本編ラストを期別曲『考えないようにする』(=なおなおにとってとても大切な楽曲)で締めたというのが異例。

さらに。
グループの歴史においてかなりアイコニックな楽曲を、彼女をセンターに据えてパフォーマンスしたのです。

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得ておりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。

初代センター生駒里奈の代名詞にして初東京ドームのオープニング曲に選ばれた『制服のマネキン』
レコ大連覇達成したグループの代表曲のひとつ『シンクロニシティ』
アイコン西野七瀬の卒業ソングにしてグループ史上最高売り上げ『帰り道は遠回りしたくなる』

そしてソロ歌唱コーナーで選んだのは史上最強選抜のひとつ『今、話したい誰かがいる』

「全曲センター」の卒コンを別にすれば、このすべてをひとつのライブでセンターを務めたメンバーって恐らくいない。
いたとしても遠藤さくらぐらいでしょう。それもバスラで複数の日に跨ってではないかと。

このセトリになった経緯はわかりませんが、いずれにせよ最終的にゴーを出した運営は冨里奈央に期待しているのでしょう。あるいは彼女には「運営に期待させるだけの何かがある」と言うべきか。

そしてなおなおは「違和感なく」やってのけました。

やはり彼女には乃木坂感がある
なおなおのそれは「儚さ」そして誤解を恐れずに言えば「どこか不幸の影があること」。

あのくるっとした瞳を潤ませて上目遣いでこちらを見るのがシグネチャームーブ。
『超・乃木坂スター誕生!』で奥田いろはが自作曲『恋々』のMVで多用したあれです。

でも乃木坂感は儚さだけではありません。「儚さの中にある強さ」こそが真骨頂。

今回のアンダラで冨里奈央はその萌芽を見せてくれました。

私がこの日の彼女から感じていたのは深川麻衣の面影
「聖母」まいまい。間違いなく乃木坂46という優しい世界の源流のひとつ

アンコールでの『帰り道は遠回りしたくなる』。
なおなおがカメラを手にメンバーたちの写真を撮っていくというセンチメンタル全開の演出。(センターがマイクを持たないというのも斬新!)

そしてラスサビ。

 風のように 風のように
 思うままに 生きてみよう

そう歌うメンバーたちを背に彼女が見せたのは、

「強くなりたい」

そんな意志を込めた未来へのまなざし

私の頭をよぎったのは『ハルジオンが咲く頃』のジャケット写真。
自らの卒業センター曲での優しく穏やかな、でも強い意志を湛えたあのまいまいの表情とどこか重なるものでした。


続きます。

『アンダラ伝説』 kindle版
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。


『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


『2019年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
こちらは総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームです。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。


 


びーむ色調補正3
前の記事では印象に残ったシーンを列挙しました。

関連記事:


当記事ではなぜこの日のライブがあれほど素晴らしかったのか考察してみます。

目の前のことを精一杯


ライブから10日ほど考え続けてたどり着いた結論は「それぞれの良さが存分に発揮されたライブだったから」でした。

めちゃめちゃ普通ですいません笑

でも37thアンダラ自体、特別な事情のない「普通の」ものでしたよね。

やっぱりシチュエーションって大事、というか観ている我々は往々にしてそれに引っ張られるじゃないですか。
後に「伝説」と呼ばれるようなライブってやっぱりそれも込みという部分が大きいわけで。

例えば2014年のアンダラ2ndシーズンはシチュエーションとメンバーの想いとファンの想いが(そして恐らくスタッフさんの想いも)全部揃った奇跡的な状況でした。まあこれも今だから言えることで当時は「悪夢のような」状況でしたけれど。

2015年日本武道館は「最初に描いた夢の実現」、アンダーレジェンド集結。
2017年東京体育館は「最少最弱」、ダブルダブルアンコール。
2018年武蔵野の森は「久保史緒里復活と川後陽菜卒業」、アンセム『日常』の誕生。
2024年有明(35th)は「筒井あやめ座長と盟友清宮レイ卒業の一期一会」、最初と最後の『ジャンピングジョーカーフラッシュ』。

関連記事:



いずれもなんらかの「事情」がありました。
だからこそメンバーも己を燃やしたしファンも燃え上がったという側面があったのは間違いないでしょう。

翻って今回。
特段の事情は「なかった」

もちろんミーグリ完売実績では上位でありながらまたも選抜から外れた冨里奈央と菅原咲月のふたりをはじめ、それぞれのメンバーには思うところがあったでしょう。

とはいえアンダーメンバー誰かの卒業が発表されていたわけでも、グループに猛烈な逆風が吹いていたわけでもありません。

いわば「いつもの」「恒例の」アンダーライブだったのです。

それなのになぜ、あんなにも私の気持ちは揺り動かされたのか。

それはきっと「目の前のお客さん(配信視聴者含む)に最高のライブを届けたい」だから「自分にできることを精一杯やる」というメンバーの気持ちと、それにバチッとはまった選曲であり演出でありパフォーマンスだったから。

すなわち「それぞれの良さが存分に発揮されたライブだったから」。

柴田柚菜の『Wilderness world』。

彼女の歌唱力を活かす。そこにとどまらず「伸びやかな歌声」というストロングポイントを使い切るにはどうするかを考えた。
そこで「フェイクを任せる」しかも「スタンドマイクで強調する」という演出が加えられ、ゆんちゃんはそれを実に堂々とやってのけました。

『狼に口笛を』のメガホン伊藤理々杏

でっかい瞳に小さな身体、そしてツインテール。2.5次元的…というかもはや2次元。
いい意味で「漫画チック」で「デフォルメされた存在」である彼女がメガホン片手に踊り歌う姿の何とも非日常な感じ。そして床に置いたり拾い上げたりする姿の愛くるしさ
ちゃんと顔が見えるように左上に向けた状態をキープしているのもさすが。
こういう飛び道具が使えるのももちろんベースの歌唱力があるからです。

そして「他の期がセンターをやる期別曲コーナー」もセンターの持ち味が発揮されていました。

岡本姫奈と『Out of the blue』の「陽×陽」。
35thアンダラでもユニットコーナーでやっていたので好きな曲なのでしょう。
ライブを本当に楽しめている様子の彼女と実に良くマッチしていました。

佐藤璃果の『自分じゃない感じ』。
「アイドルとしての自分」にこだわる彼女にオリジナルの山下美月の姿が透けて見えます。

佐藤楓の『心にもないこと』。長い手足でしなやかに大きく踊るのが彼女ならでは。

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得ておりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。

女帝にして帝劇女優


そしてもうひとつ。

私はライブ中ずっと漠然と「クオリティ高いなあ」と感じていました。

それはやっぱり3期生がしっかりと支えていたからだと思うんですよね。

個人的に「前回の」=比較対象となるアンダーライブは35th。

どちらがいいとか悪いとかではなく、それぞれの素晴らしさがありました。

35thは山下美月卒業に伴う3期全員選抜という特殊事情。それにより生じた初の4期5期だけでのアンダラ。
センターはエリートコースを歩んでいたため初めてのアンダラ参加となった筒井あやめ。
結果として刹那感、青春感が炸裂した感動的なライブになりました。

それに対し今回の37thは完成度…という言葉は少し違う気がしますがパッケージとして素晴らしかった。
がむしゃらな人(5期生)も実力を見せつける人(3、4期生)もそれぞれがやるべきことをやっていたことがその理由でしょう。

特に感じたのが3期生の「底支え力」
堂々たる貫録でビシッとライブを締め、後輩の座長を支えていました。
かつて中田花奈や樋口日奈が。そして伊藤かりんや伊藤純奈、渡辺みり愛がそうしていたように。

とりわけ強い印象を残したのは中村麗乃
千秋楽を観た人の多くが「今日のMVPだ」と思ったのではないでしょうか。

『悪い成分』でレーザーをかきわけて登場する彼女。
まさに「女帝感」。客席の8割以上がこの言葉を思い浮かべたに違いありません。
こんな日常生活に存在しない単語を瞬時に思わせる彼女の凄味。幕張メッセを「ドミネイト」していました。

そして千秋楽のソロ歌唱コーナー。

この日の彼女はデコ出しの髪型と薄めの眉。
私には「アイドルメイクではない」ように見えました。
もっとストレートに言えば「帝劇女優として出てきたな」と。

選んだのは『歳月の轍』。

生田絵梨花の卒業ソング。
グループにおける立ち位置は違うけれど、それでも「在籍中に帝国劇場に立った」共通点を持つ偉大な先輩への憧れとシンパシー。

「中村麗乃(乃木坂46)」ではなく「中村麗乃」として単独で『MUSIC FAIR』に出演するところまで来たれのちゃんの矜持

 8年半経って、こんな私になれましたよ

彼女はそう伝えているようでした。

力みも気負いも一切なく、ただ感謝と共に。


続きます。

『アンダラ伝説』 kindle版
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。


『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各章の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


『2019年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
こちらは総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームです。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。


 


このページのトップヘ