ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:伊藤万理華

びーむ色調補正3
10回目のバスラは、乃木坂史上最大となる7万人キャパの日産スタジアム。

神宮球場と秩父宮ラグビー場の二会場同時開催だったシンクロニシティライブ(6thバスラ)でさえ6万人だったのだから、よく考えるととんでもない。まあ3DAYSで合計18万人だったあの時も驚愕ですが。

英雄たちの帰還


DAY1のセットリストはこちらです。

Overture

<2012年>
01. ぐるぐるカーテン(センター:秋元真夏、齋藤飛鳥)
02. おいでシャンプー(センター:齋藤飛鳥)
03. 走れ!Bicycle(センター:樋口日奈)
04. 指望遠鏡
05. せっかちなかたつむり(秋元、樋口、鈴木、梅澤、久保、遠藤、賀喜)
06. 狼に口笛を(センター:佐藤楓)
07. 制服のマネキン(センター:生駒里奈)

<2013年>
08. でこぴん(秋元、齋藤、山下、遠藤、賀喜)
09. 他の星から(岩本、久保、佐藤楓、清宮、田村、筒井、早川)
10. バレッタ(センター:鈴木絢音、山崎怜奈)
11. 君の名は希望(センター:齋藤飛鳥)
12. ロマンティックいか焼き
13. ガールズルール(センター:山下美月)

<2014年>
14. 気づいたら片想い(センター:齋藤飛鳥)
15. 夏のFree&Easy(センター:賀喜遥香)
16. 何度目の青空か?(センター:久保史緒里)
17. ここにいる理由(センター:伊藤万理華)

<2015年>
18. 命は美しい(センター:遠藤さくら)
19. 僕がいる場所(センター:岩本蓮加)
20. 今話したい誰かがいる(センター:久保史緒里、山下美月)
21. 太陽ノック(センター:筒井あやめ)
22. 悲しみの忘れ方

<2016年>
23. ハルジオンが咲く頃(センター:梅澤美波)
24. サヨナラの意味(センター:秋元真夏)
25. 裸足でSummer
26. きっかけ

27. 絶望の一秒前

28. ごめんねFingers crossed
29. インフルエンサー(センター:齋藤飛鳥、山下美月)
30. 他人のそら似
31. I see...
32. スカイダイビング
33. 君に叱られた
34. ジコチューで行こう!

<オーケストラコーナー>
35. 夜明けまで強がらなくてもいい
36. 僕は僕を好きになる
37. Sing Out!

EN1. 会いたかったかもしれない
EN2. ハウス!
EN3. 乃木坂の詩(センター:齋藤飛鳥)


DAY1は2011年から2016年の曲を中心にしたセトリということで、デビュー当初からの歴史を辿っていきます。

例によって印象に残ったシーンを挙げていきます。

まずこの日のビジュアル仕上がってるメンは掛橋沙耶香。ちょっとハッとするレベルの仕上がり具合でしたね。久保史緒里清宮レイ、そして向井葉月も個人的に印象に残りました。

秋元真夏の挨拶からデビュー曲『ぐるぐるカーテン』へ。抜けに映る初々しい5期生たちの姿。

早くもライブが楽しくてニッコニコの遠藤さくら

『走れ!Bicycle』から激走するメンバーたち。少し体調が悪いのか辛そうな賀喜遥香

最初のMCで「初心に帰ってサイドポニー」の早川聖来。そういうの、実にバスラっぽい。

たぶん齋藤飛鳥だったと思うのですが「5期生がいっつもはじっこでずーっと同じ振り付けの練習してたの知ってるよ」という優しい言葉。「ちゃんと見ててくれたんだ」って思いますよね。

梅澤美波の白石麻衣リスペクト手紙がモニターに映し出され、当然『ガールズルール』…かと思いきゃ『せっかちなかたつむり』でした。

『狼に口笛を』でどよめく場内。

そして「イントロが流れた瞬間にいつもゾーンに入っていた」という言葉の後にモニターに映し出されたその名前。

The Origin。初代センター。生駒里奈、見参。

歌うのはもちろん自らの卒コンで「死ぬまで私の代名詞になるでしょう。そう言わせてください」とまで語ったあの曲、『制服のマネキン』。
ラスサビ前に1期生4人と輪になって微笑みを交わすのもなんだか胸が締めつけられます。
歌い終わって多くを語らず颯爽と引き上げていく生駒ちゃん。「英雄の帰還」と表現したくなるような格好良さ。

『でこぴん』デコ出しで登場した賀喜遥香。この時点でもまだ大汗をかいていてかなり辛そうで心配になります。
腕を組む齋藤飛鳥山下美月秋元真夏遠藤さくら賀喜遥香は3人で手をつないでいちゃいちゃ。
前髪を上げておでこを出す振り付けをちゃんとやっていたのは飛鳥とさくちゃんでした。

『他の星から』。憧れの西野七瀬ポジをやる佐藤楓
2021年の全ツでは与田祐希でした。この日欠場の彼女以外は全員同じメンバーだったので恐らく代打なのでしょう。それでも「嬉しいだろうな、良かったな」と思わせます。

『バレッタ』のセンターはやはり鈴木絢音山崎怜奈

『ロマンティックいか焼き』でバズーカを撃てずにオロオロする遠藤さくら。楽しそうにニコニコ笑いながら走る掛橋沙耶香

『何度目の青空か?』が終わり焚かれるスモーク。
「あ、これは卒業生来るな」からあのかっちょいいイントロ。
縦1列から左右に展開していくメンバーたち。その最後にいたのは-

伊藤万理華

沸き上がる歓声。

彼女が前に進み出ると再び何とも言えないどよめきが広がります。

そのスタンスからすれば「一番こういう日に来なさそう」な彼女の登場に、さすがにTVの前の私も鳥肌が立ちました。そして素直に「綺麗になったなあ」とも思いました。
万理華の後ろで必死に涙をこらえている向井葉月の姿がまたグッときます。



夢から醒めないで


『命は美しい』。
ひとりで登場する遠藤さくら
床スクリーンの映像に合わせて舞う、西野七瀬が2017年東京ドームでやったのと同じ演出。

『僕がいる場所』、センターは岩本蓮加
今彼女がこの曲を歌うとどうしても宝田明さんのことを考えてしまいます。
最後に澄んだ微笑みを浮かべるれんたん。

そして『太陽ノック』で真ん中に立ったのは筒井あやめでした。
5期生の加入により「最年少キャラ」から乃木坂の主要メンバーへ飛躍が期待される彼女。
また定義が曖昧な言葉を使ってしまいますが「驚くほどセンター適性あるなあ」と感じました。

『悲しみの忘れ方』で涙を流す賀喜遥香

清宮レイの「先輩と一緒に乃木坂でいられることが本当に嬉しい」という言葉。

『ハルジオンが咲く頃』『サヨナラの意味』で見事に統一されたサイリウム。

『裸足でSummer』にVTRで登場の与田祐希
この日のサンダル脱ぎ捨て隊は岩本蓮加清宮レイ田村真佑という「なんだかいい」3人。

齋藤飛鳥のソロダンスから始まった『きっかけ』。
ソロ歌唱でつないでいきます。岩本蓮加賀喜遥香の歌に好感。

そしてDフレ前半を任されたのは柴田柚菜でした。
『乃木坂スター誕生』で評価を上げ、選抜までたどり着いた彼女の晴れ舞台。

後半はもちろん久保史緒里
「あの人」の後を担わなければいけない、彼女の恍惚と不安。
比べてしまえば声量も余裕もまだまだだけれど、それでも心に響く
それが久保史緒里の歌。

「今日はここまで」。
いや6年間を26曲で振り返るというのは駆け足にも程があるのでは笑

そして5期生登場。
『絶望の一秒前』。Aフレの井上和の画力の強さたるや。冨里奈央もビジュアル良いな~。

『ごめんねFingers crossed』で松村沙友理ポジ=裏センターを堂々と務めた鈴木絢音
この曲、そして続く『インフルエンサー』での乱れ髪が美しい掛橋沙耶香

『I see...』のイントロでどよめく客席。

さらに『スカイダイビング』!この曲好き!
佐藤璃果の肩を抱き寄せる久保史緒里
同じ東北出身で同い年で、でも憧れの先輩で。そんな近くて遠いふたりの関係性。
それをグッと引き寄せる久保ちゃんの腕の力強さと、心底嬉しそうなさとりかの笑顔。

本編最終ブロック前のMC。
田村真佑の「1,500ぐらいの力で」が微笑ましい。

そして「もう涙が出ちゃうんですけど~」と話し始めた賀喜遥香。彼女を優しくさする岩本蓮加

「なんて人生だ!」そして「夢が醒めそうで怖い」というかっきーの言葉。
既に乃木坂のエース格のひとりにまで成長し、写真集も爆売れ予定の彼女。
そんな彼女をして現実感を失わせるほどのスケール(=会場の規模も観客の数も、そして卒業生含めた10周年の歴史も!)がこの日のライブにはあったということでしょう。

オーケストラ演奏による『夜明けまで強がらなくてもいい』。
何度書いてきたかわかりませんが、遠藤さくらの「弱さと儚さ越しにある強さ」。本当に凄い。

『僕は僕を好きになる』でめちゃめちゃ笑顔の早川聖来。たぶん田村真佑と笑い合っていたものと思われます。

アンコール。再び登場した生駒里奈伊藤万理華。その前を走る5期生たち。

交わるはずのなかった過去と未来が現在で交錯する瞬間。
ちょっと時空が歪んだかのような不思議な感覚。

『ハウス!』でしっかりコケる秋元真夏

5月8日にコロナ感染が判明しこの日は欠場となった与田祐希。
そのポジションを埋めたのは(恐らく)佐藤楓阪口珠美向井葉月といった3期生たち。
同期の頼もしさみたいなものを勝手に感じました。


続きます。

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タオル補正
『走れ!Bicycle』
乃木坂46、3rdシングル。2012年8月22日リリース。センターは生駒里奈。

ついに出た正解


フォーメーションは以下の通り。

3列目:斉藤優里、若月佑美、井上小百合、市來玲奈、伊藤万理華、深川麻衣
2列目:中田花奈、橋本奈々未、白石麻衣、松村沙友理、西野七瀬、高山一実
1列目:生田絵梨花、生駒里奈、星野みなみ、桜井玲香

個人的には『乃木坂って、どこ?』で選抜が発表された時のことが忘れられません。

選抜メンバー16人が並んだ画面を観て「全員可愛い!何だこのグループ!」と思いました。

1stから3rdまでの選抜は13人固定で残り3枠をローテーションしていましたが、その枠にこれ以降一度も選抜から外れることのなかった深川麻衣と若月佑美が入り、ラスト1枠も伊藤万理華。ほぼ当時の人気上位16人だと思います。

これ言うとみさ先輩推しの方をはじめ他メンのファンに怒られそうですが「ついに正解が出た」と友人に話した覚えがあります。個人的には他にも選抜入りしてほしいメンバーはいましたが(当時中元日芽香や柏幸奈のビジュアルを高く評価していました)、そういう好みはさておき「まあ客観的に見てこれだろうな」と。

スターティングメンバーによる「超初期型」乃木坂46の完成形と言っていいでしょう。

まあ次の4枚目『制服のマネキン』では初のダンスチューン、作曲家・杉山勝彦登場、そして秋元真夏の復帰即福神という激動が待っているわけですが、それはまた別のお話。



センチメンタルがこみあげる


この曲の魅力は、言葉にするとこっぱずかしいんですが「青春感」ってことに尽きます。
それも「通り過ぎた青春感」ですね。

疾走感があって爽やかな夏曲なんですけど、季節は盛夏じゃなくて夏の終わり。

そして大間奏から一気にこみあげるセンチメンタリズム。

 言葉にできない心の独り言
 誰もが見過ごして 大事なその人失うんだ

 走れ!Bicycle 終わる夏 太陽は知っている
 出遅れた愛しさは 君に追いつけるかな

それまで現在進行形のラブソングだったのに、この数行だけふいに視点が俯瞰になります。
大人になった主人公が過去を懐かしんでいるような。
いつか今が思い出になってしまうことに極めて自覚的であるというか。

おっさんになると、こういうのが沁みるんですよね笑

おっさんの話はさておき、もしかしたらリリースのタイミングも関係しているのかもしれません。

2012年の夏ということは白石麻衣と松村沙友理がちょうど20歳になる頃。
そして最大勢力の94年組(当時9人!)にとっては高校生活最後の夏でした。

意識的にか無意識かはともかく、10代の終わりあるいは高校時代の終わりを迎えているメンバーが多かったこの時期だったことが、この曲の持つセンチメンタリズムを加速させているように思います。

「儚げ」で「ノスタルジック」な乃木坂らしさと絶妙にマッチした、というよりむしろそのイメージを決定づけた名曲だと思います。


3期生や4期生が乃木坂の入口だったファンの方には、もしかしたらあまり馴染みのない楽曲かもしれませんが、まだコールさえあまりなかった初期の乃木坂ライブで早々にコールが確定したド定番の曲でした。

そしてこれが元祖「曲中の一瞬の静寂にオタが推しの名を叫ぶ」曲ですね。この後に『ここにいる理由』と『逃げ水』が続きます。(正確には『逃げ水』には静寂ないですけど)

忘れてはいけないのが伊藤万理華が9thシングル『夏のFree&Easy』の個人PVで披露したこの曲のボイパ。
彼女独特の「不安定な歌声(誉め言葉)」を堪能できます。特に裏メロディが絶妙に不安定で秀逸。あれ観るとこの曲とまりっかの良さ、両方を再認識しますよ。(下のリンクは「予告編」なのでさわりだけです)

なんでかわかりませんが私はこの曲を最初から思い出そうとするとどうしても頭の中に『おいでシャンプー』のイントロが流れてきて、なおかつ『走れ!Bicycle』のAメロに着地します。
同士の方いますかね?笑




若くて未熟でひたむきな日々の記憶


もうひとつ、この曲と分かちがたく結びついている記憶があります。

デビューからちょうど半年、そして結成からもちょうど1年後に早くもリリースされた3rdシングル。今の感覚からすると凄いハイペースですね。

そんな慌ただしい毎日を駆け抜けてきた彼女たちの前に突然現れた、地獄。
初めて直面した地獄。

そう、第1回の『16人のプリンシパル』です。

『走れ!Bicycle』はその時の最新シングルであり、テーマソングのような位置づけでした。一幕の結果発表の時にメンバーが着ていたのがこの曲の歌唱衣装だったこともその印象を強めています。

毎日毎日、目の前のファンに順位をつけられる。
「ファンの目の前で」じゃない。「目の前のファンに」です。

『deux』からは役に立候補するシステムになりましたが、最初のプリンシパルは頭から順位をつけてそれによって役が割り当てられるというもの。グループ全体における自分の立ち位置を突きつけられたような気になったとしても無理はありません。実際にはあくまでもその日の観客の主観にすぎないのですが。

今さらだけど、ほんと地獄ですよね。

バックヤードで発生した松村沙友理と生駒里奈の口論。狼狽える橋本奈々未。
記者会見からの逃走。
初めて1位になって泣き崩れた白石麻衣。
意気込みを語りながら腰が抜けて倒れこんだ生駒里奈。

結果が出ずに心をへし折られ、解決策が見いだせないままそれでも毎日PARCO劇場に通わなければならなかったあの日々。

今観れば笑っちゃうほど拙い自己PRですが、当時はどのメンバーも本当に必死でした。

まだ坂道を上りだしたばかりの、まだまだ無我夢中で本当に何者でもなかった彼女たち。
若くて未熟で拙くてみっともなくて、でもそのひたむきな姿に胸を打たれた。

そんなセピア色の記憶が蘇ります。

正直シングル曲の中では影が薄い方だと思いますけれど、自分にとっては特別な曲のひとつです。


こちらの楽曲は音楽配信サイト「レコチョク」でも購入できます>>>
『走れ!Bicycle』/乃木坂46



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タオル補正

壮絶で濃密で劇的にして怒涛の2週間


始まったアンダーライブ2ndシーズン。
アンダー曲『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』のセンターを任された井上小百合は座長として臨みました。

しかし、15日間18公演という過酷なスケジュール。
全員出ずっぱり、踊りっぱなしのハードなセットリスト。
以前から痛めていた彼女の膝は限界を超え、ついに欠場という判断が下されます。

そしてその同じ夜、ネット上を駆け巡ったのがあのスキャンダルでした。

未曽有のバッシング。まさに乃木坂史上最大の危機。

凄まじい逆風が吹き荒れる中で迎えた10月11日、昼の部のこと。

六本木ブルーシアターに傷だらけの天使が舞い降ります。

両膝をガチガチにテーピングで固めながら、鬼神のごときパフォーマンスを繰り広げる井上小百合。大切なものを守るため、ボロボロになりながら立ち上がるアンダーメンバーたちの姿は観る者の心を震わせました。

こうしてアンダラ2ndシーズンは伝説となり、かつて「無職」と呼ばれたアンダーの存在価値は格段に向上します。

アンダーライブ2ndシーズンを題材にした小説をnoteで公開しています。
有料記事ですが全14話中の第4話までは無料で読めますので、よろしければこちらもどうぞ。


伊藤万理華との「さゆまり」さらに中元日芽香を加えた「温泉トリオ」。この日々を共に戦ったアンダラセンター3代は、戦友として特別な絆で結ばれることになります。

さゆまり、その闘いと挫折


その後、12thシングルで選抜復帰した彼女。
しかしこの先も決して順風満帆とはいきませんでした。

乃木坂の選抜はさらに硬直化が進んでいました。

星野みなみ、衛藤美彩、齋藤飛鳥とさゆまり。この5人が新たに選抜固定になり、前の記事で書いた「16人中13人固定」から「16人固定」へ。アンチかわしのため一時的に選抜落ちしていた堀未央奈を加えれば「17人固定」。「思い出選抜」枠もなくなり、もはや選抜に空きがないに等しい状況でした。

結果的にアンダーメンバーのファンの敵意は相対的に握手人気が劣っていた生駒里奈、万理華、さゆに向かいます。


そして15thシングル『裸足でSummer』。

運営にとってもこれ以上硬直した状態が続くとアンダーメンバーのモチベーションが保てないという苦渋の決断だったのでしょう。

選抜から落ちたのは、さゆまりでした。

結局、ふたりは運営に「便利屋」としていいように使われていた感があります。それは裏返せば信頼感の表れかもしれません。

ずっと選抜落ちしていないメンバーを落とすとモチベーションが心配だけれど、さゆまりならアンダーでもしっかりやってくれる。そんな計算があったのではないでしょうか。

歌番組で選抜メンバーの代打を務め、アンダーライブを成功させ、『じょしらく』『すべての犬は天国へ行く』『墓場、女子高生』とグループ内の舞台を牽引する。どこにいてもモチベーションとスキルの双方を高く保ち、結果を残し続けたふたりに対する甘え。今となってはそう感じられます。

一説によれば、万理華が卒業を決意したのはこの時でした。


罪滅ぼしのつもりか、ふたりにはユニット曲とMVが用意されます。

それが『行くあてのない僕たち』。

タイトルと歌詞を見たふたりは「何年も必死で頑張ってきたのに、まだ私たちには行くあてがないのか」と号泣したといいます。

それでもこの曲で観せた「背中合わせの相棒」感溢れるふたりのパフォーマンスは強烈な印象を残し、いつしか『行くあて』は名曲と呼ばれるようになります。

2016年神宮。アンダラ中国シリーズ。そして2017年さいたまスーパーアリーナ。どれも忘れられません。


そして2017年10月、伊藤万理華は躍進する3期生たちに道を譲るように卒業を発表。

彼女らしい、潔い引き際でした。


『逃げ水』のMVでスケバンニートに扮したふたりがセグウェイを転がして去っていくシーン。

今観るとなんだか切なくなります。

変わりゆく景色の中で


話をさゆのキャリアに戻します。

16thシングルで万理華とともに選抜復帰し、これ以降は活動休止した24thを除きすべて選抜入り。それでも3期生加入など厚みを増した乃木坂において、「選抜ボーダーメン」のそしりを受け、アンチの激しい攻撃は続きました。

ずっと目標にしていた福神入りは19thシングルたった1回でした。それも盟友・万理華の卒業福神と一緒だったのでまた「抱き合わせ」だの「記念福神」だのとバッシングされます。

握手人気がずっと選抜ボーダーラインあたりだったのも事実です。初期に高い握手人気を誇ったメンバーが早々にいわゆる「握手免除」になり、同じ土俵で勝負できなくなってしまったのも厳しかったように思います。

釣り対応ができないので握手人気が爆発するということもない。いわゆる「勘がいい」タイプではないしボキャブラリーもない(結果ちょいちょい炎上する)のであまり番組では活躍できない。そのため推し変・推し増しもそれほど期待できない。
(これ書いていて気づいたんですが、秋元真夏と真逆のスペックですね笑)

急速に大きくなるグループ。メンバーもファンも入れ替わり新しいものがもてはやされる中、地道に少しずつ少しずつファンを増やし一定の人気を保ち続けたのはむしろ称賛に値するのかもしれません。


2017年には温泉トリオのふたりが相次いで卒業します。

それ以降、常に「次はさゆではないか」という憶測が飛び交っていました。

本人からもいつしかギラギラしたコメントは影を潜め、グループとメンバーへの愛着、そして後輩たちへの信頼を公言するようになります。今にして思えば、自らの引き際を考え始めた多くの1期生と同じように。


2019年7月、全国ツアーへの不参加と24thシングルの活動休止が相次いで発表されました。これまで殺人的なスケジュールを押して参加し続けてきた彼女の不参加に、ファンはいよいよかと覚悟を迫られます。

そして、その日はやって来ました。

アンダラ2ndシーズンの初日から、ちょうど5年後のことでした。


続きます。

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deux補正2
この記事は舞台『SLANG』の内容に関するネタバレを含みます。

オーバーラップする『墓場、女子高生』


井上小百合の舞台を観るといつも思うのが「過去に演じた役柄がさゆの中で息づいている」ということです。

オネムには『レキシアター』のくノ一さんの経験が活きていました。どちらも「夢の国」でよいこのみんなに世界の理を伝えるMC。声の張り方、内面の葛藤の隠し方など、共通点が多かったように思います。

裁判のシーンはなんか『大人のカフェ』での「嘘じゃ、ない」を思い出しました。あれ好き笑

そして、伊都を演じている彼女を観てどうしようもなく思い出されたのが、『墓場、女子高生』のにっしーでした。


最初は楽しげな雰囲気だったんです。
さゆの役名が「オネム」って当て書きじゃん!とかニヤニヤしながら観てました。

でもムネオがフォエバしちゃってブラーンとぶら下がった時点(本当はメズの時点で)でさゆ推しとしては当然『墓場』のあのシーンが強烈にフラッシュバックします。
このあたりから「生きるって何だ」「自分って何だ」「真実って何だ」「現実って何だ」とか色んなことを考えさせられて、最終的には心になんかズーンと重たいものが残る作品でした。

さゆ自身も「観終わった時に頭抱えてう~ってなる感じ」と言っていましたが、まさにそれ。『墓場』そして『すべての犬は天国へ行く』を観た時の感覚が甦りました。正直、こういうの大好物です笑

これらの作品と今回の『SLANG』に通底しているテーマ。

それは「腐った世界との向き合い方(『犬』ではそれが「狂った村」でした)」ではないでしょうか。


万理華さん観てますか


そう考えると『SLANG』の登場人物に『墓場』のそれが重なります。

腐った世界に真正面から向き合って傷つき絶望した櫂。
美しい想像の世界に逃げ込んだ自分には薄っぺらい言葉しかないことに気づいた紡。

櫂=ヒノチ、紡=ヒノチが生きていた頃のにっしー、ですよね。

伊都は、極端にはしるふたりに危うさを感じながらも、微笑ましく見守り世界との接点の役割を果たすバランサーでした。
オネムも「腐った世界の残酷な現実」を細心の注意を払って言葉を選ぶことにより良い子のみんなに伝えていました。
これは、やがて向き合わねばならない現実への備えをさせていたんですね。

真正面から向き合って絶望に墜ちるのとも、そこから顔を背けて自分の世界だけで生きるのとも違う方法。

そんな伊都の姿が垣間見えた平穏な日常での紡との会話が印象的でした。
ほんの短いシーンでしたが、母性すら感じさせたさゆの演技。
『帝一の國』の美美子ちゃんも母性的なキャラクターでしたが、無自覚に振りまいていた美美子ちゃんに対し、伊都はより理性的で深い「すべてわかった上での」ものに感じました。これもまた彼女の新境地と言っていいのではないでしょうか。

「聞く話によると、どうやら世の中は腐っているらしいじゃないのさ」
『墓場』のとても印象的な、そして重要なにっしーの台詞です。

そう語った彼女が、ヒノチの死を受け入れ、自分だけの美しい世界からも出て、腐った世の中で懸命に、でもしなやかに生きている。
伊都は、成長した何年後かのにっしーのように見えました。

この姿をヒノチに見せたかった。
「なんだよ、にっしー頑張ったじゃん」って笑いながら小突いてくれそうな気がします。

もし伊藤万理華がこの舞台を観てくれていたら、なんだかとても嬉しいです。


「にっしー、お前は今でも美しいよ」

「だよね!」

あー、もう一度『墓場』観たいなあ!笑


少し邪道な見方なのかもしれませんが、『墓場』と重ね合わせることによって『SLANG』をより深く味わうことができたような気がします。

井上小百合というひとりの演者を追いかけてきたことの醍醐味を感じました。

もう一度結論言います。

すげぇ良かった。

誰かと語りたくなる良い脚本、良い舞台でした。


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