
前の記事では印象に残ったシーンを列挙しました。
関連記事:
こちらではライブの中心となったふたりのセンター、伊藤理々杏と林瑠奈についてです。
支える先輩、向き合う後輩
この日、本編ラストの座長MCを務めたのは4期生の林瑠奈。
Wセンターのもうひとりである伊藤理々杏はこの場面に限らず、この日ずっと後輩である林ちゃんに花を持たせている感じがありました。
そしてその姿は非常に好感の持てるものでした。
自分の役割は初の4期生センターを支えること。そしてパフォーマンスで中心となること。
そのふたつにしっかりと集中できていた感じです。
理々杏自身、初のアンダーセンターでした。
相当、期するところがあったはずです。
まして33枚目シングルで選抜入りした際に「アンダーセンターは選抜入りへのラストチャンスだと思っていた」と語った彼女。
その認識がありながら、それでも理々杏はしっかりと後輩を立ててみせました。
彼女が自らその境地に達したのか誰かに言われてなのかはわかりません。
だとしてもまだ20歳の彼女がそれを受け入れるのは決して簡単なことではなかったでしょう。
それを単純に美談として語るのは違う気がしますが、ただただ「立派だな」と思います。
そんな「一歩引いた」印象でありながら、パフォーマンスではちゃんと存在感をアピールしていたのも見事でした。
そして林瑠奈。
ド迫力だった『ショパンの噓つき』。
シャンソン歌手のようなイメージの衣装と演出。
こういうの=宝塚やシャンソン歌手のような演出って基本アイドルは「パロディ」としてやるじゃないですか。
そしてそれは別に悪いことではないと思うんですよ。観客に「ゴージャス」を直感的に伝えることができますから。
それこそ例えば仮に生田絵梨花がこれをやっていてもやはり「パロディ」だったと思います。
それは歌唱力がどうとか演技力がどうのとかいう話ではなく、生ちゃんが持つコメディエンヌとしての資質と「陽」の力が強いから。そして「アイドル」自体が生田絵梨花のひとつの側面であって全体像ではないからです。
しかしこの日の林瑠奈は、真っ向からそして生真面目にその演出に向き合いました。
「パロディ」や「学芸会」にならないそのビジュアルと歌唱、それ以上に「佇まい」の説得力たるや。
「重厚」かつ「耽美的」と表現したくなるような素晴らしいパフォーマンスでした。
彼女には「湿度」があるのだと思います。
観る者を引きずり込むような、一種の緊張を強いる独特な雰囲気。
個人的には舞台での演技を観てみたいと思いました。
当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。

正解はそのうちわかる
もうひとつ、32ndアンダーについて語るなら触れずにはいられないことがあります。
4月7日放送の『ミュージックステーション』で披露された『人は夢を二度見る』。
大河ドラマの撮影で欠席する久保史緒里に代わり、山下美月とWセンターを務めたのは林瑠奈でした。
井上小百合推しの自分としては地上波生放送の歌番組でアンダーセンターが代打を務めるというだけでグッときてしまいます。
大間奏。
メンバーたちが作った輪の中心で美月とハイタッチをする林ちゃん。
乃木坂ドリーム、とでも言えばいいのでしょうか。
8thバスラで挨拶をした直後にコロナ禍が始まり、握手会もライブも知らずにいた「新4期生」。
彼女たちが初めてファンと直接交流したのは26thシングル『僕は僕を好きになる』のミーグリ。既に加入から約1年が経過していました。
「初動」で躓いた影響は大きく、ミーグリ人気はなかなか上がりませんでした。
林ちゃんもほんの1年前(『Actually…』の時)まで完売はひとつかふたつの枠だけ。
そんな彼女が今、グループの顔のひとりである美月と笑顔でハイタッチを交わしている。
最高にかっこ良く、痺れる瞬間でした。
しかしアンダラ閉幕後から体調不良でミーグリの欠席が目立ち始めた林ちゃんは6月に活動休止を発表します。
この1年で本当に大きな変化を経験した彼女。
大学に入学し。
バナナマン設楽さんに『乃木坂工事中』の「キメ顔グランプリ」で10thバスラの姿を「アイドルがステージで輝いているのを絵に描いたみたい」と褒められ。
ミーグリの完売が少しずつ増え。
ひとりで外番組に出演するようになり。
『ここにはないもの』で初選抜。
同シングルのカップリング『アトノマツリ』MVの編集を行い。
次作では「特別な想いを持っている場所」アンダーセンターに。
「いつか」と思っていた目標が、手を伸ばせば届く距離にあることに気づいてしまった。
選抜入りした時の素直に喜べない姿。
アンダラの舞台裏で見せた不安気な表情。
今にして思えば、突然広がった自分の可能性に戸惑い混乱し怯えていたように見えます。
それでも、いわゆる「古参オタ」である私は思ってしまうのです。
林瑠奈なら。
伊藤万理華のように、アンダラを再び「今一番熱いライブ」へと押し上げ。
その先に開ける道を、待望の(齋藤飛鳥以来誕生していない)「叩き上げのスター」への道を歩んでくれるのではないか、と。
ずっと乃木坂を見てきた運営も、彼女にその可能性を感じたから。
4期生で最初にアンダーセンターとして選んだ。
生放送での代打センターとして選んだ。
私にはそう思えます。
ここまでおっさんオタの勝手な期待を書いてきてしまいましたが、
林瑠奈さんがご自分のペースでゆっくりとお身体を癒されることを心から願っています。
◇
note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。
『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
当ブログに掲載された記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧の方にも楽しんでいただけることと思います。