ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:山下美月

タオル補正
前の記事では見事な実績を積み上げた山下美月の乃木坂人生を振り返りました。

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今回はそんな彼女の心の内に分け入ってみたいと思います。(『英雄たちの選択』ですね笑)

アイドルを演じ切った


スーパープロフェッショナルアイドル

個人的に彼女のことをそう呼んでいました。

いきなり凄く失礼な言い方になるんですが、美月はどちらかと言えば髪型やメイクに「注文がつく」タイプでした。

2017年10月『見殺し姫』と2018年6月と9月の『ミュージカル セーラームーン』という村内舞台。
どちらも変なカツラをかぶらされて、まあ今だから言えますがなかなか大変なことになっていました。
正直、スタイルも決していいわけではありません。

にもかかわらず、乃木坂の活動において(変なカツラさえなければ)常に「ちゃんと可愛かった」

そこが凄いと思うんですよ。

自分がどうすれば可愛く見えるのか必死に研究してそれを見つけ、少しずつビジュアルが変化していく年齢においてもずっとアジャストし続けた。

まさにプロフェッショナル。

「釣り師」にして「小悪魔」でもありました。
(同期から「控室で壁にゴンゴン頭をぶつけながら落ち込んでいる」ことをばらされるネガティブキャラだというのに!)

例えば2017年11月放送の『乃木坂工事中』内「恋愛模擬テスト」。
メンバーが恋愛のシチュエーションに関するテストに回答し、それを婚活のスペシャリストの先生が採点するという企画。岩本蓮加が「じゃーん!」で世界のハートを鷲掴みにしたやつですね笑

美月はそこで高得点を連発し「小悪魔」「恋愛マスター」という称号を得ます。

私の勝手な思い込みですが、「釣り師」って秋元真夏をはじめとしてどちらかと言えば親しみやすいルックスのメンバーが多いじゃないですか。

「近寄りがたい美人なのに気さく」は白石麻衣がいましたが、美月は「近寄りがたい美人で釣り師」でした。

でも、彼女感はなかった。
初期はともかく、20歳を超えたあたりからはガチ恋製造機ではなかったと思います。

1st写真集発売時のインタビューで彼女は「アイドルを極めたい」そして「アイドルって疑似恋愛」という発言をしています。

私はこの言葉をこう理解しています。

山下美月は目の前のファンに対し全力で「私を好きになってほしい」と思っていたし、自分でも目の前のファンを全力で好きになろうとした

明らかに作っているけれど、それと同時に間違いなく全力を尽くしている。
そんな信頼感に基づくある種の共犯関係にファンを引きずり込んだのが彼女の凄さ。

これもまた、プロフェッショナルです。

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貫き通した負けず嫌い


私の山下美月観を決定づけたひとつの記事があります。

『BRODY』誌2017年10月号に掲載された彼女のインタビュー。
2017年の夏、すなわち『逃げ水』の夏です。

「近寄りがたいイメージを持たれがちなので、普通の人間として見られようと努力してきた」
「自分はこういうアイドルになりたいという理想になりきろうとしている自分が、本当の自分
「アイドルって人間性を好きになってもらわないと続かない」
「先輩たちの空いた席に座るんじゃなくて、横にもうひとつ新しい席を増やさなきゃいけない」
「ファンの人から見たら、私が自分で必死に這いあがっていく姿の方が面白い
「つねに明るくてニコニコしていて、芯の強い人が理想。そんなアイドル像にどれだけ自分が近づけるかの戦い」

(この号、美月ファンの方は古本屋で探しても読んでいただきたいぐらい必読の内容です)

当時18歳だった彼女はもの凄く「わかっている感」を出していました。
私にはそれが「賢しら」であり「懸命に背伸びしている」ように見えました。

しかし今回改めてその記事を読み直して感じたのは、空恐ろしさ

7年近く前。加入してまだ1年にも満たない頃。
普通、この年齢の時に考えていたことなんてどんどん変わっていくものです。(我々ファンはついそれを忘れて「前に言っていたのと違う」などと思いがちなのですが)

そして自身もグループも凄い勢いで変動していたのですからなおのこと。

しかし彼女の場合、ほとんど「現在の山下美月の言葉」として呼んでも違和感がありません

ちょっと異常です。

グループ加入当初から持っていた自分の目指す姿を、美学を。
山下美月は貫き通したのです。

さらにこの記事の最後、彼女はこう語ってインタビュアーを驚かせます。

「今日のインタビューはアイドル・山下美月としてしゃべっているのですべてアイドルとしての発言だと思っています」

そして「リアルな山下美月の本心は?」に

 う~ん…本当に…負けたくない

 (なにに対して?)

 いろんなことに、です笑

超ド級の、負けず嫌い。


これまで私はずっと「よだもも」と「くぼした」、無垢の天才vsエリートという図式でこの4人のことを語ってきました。

美月はずっとよだももという「ナチュラルボーン・アイドル」に対して「敵わねえなあ」と思っていたように見えました。

そして(これまで敢えて書かずにきましたが)「くぼした」としてくくられる久保史緒里に対しても、本当はずっと「敵わねえ」と強い劣等感を抱いてきたように思います。

久保ちゃんの歌唱力、舞台度胸、儚さ。
そんな彼女に対し自分は「持たざる者」だと。
あなたはこちら側のつもりかもしれないけど違うよ、と。

でも、だからこそ美月は誰よりも自分を追いこみ続けることができたのではないでしょうか。

しかしグループ内での序列が上がるにつれ、彼女を突き動かしてきたそんな劣等感も薄らいでゆきます。

2022年の頭ぐらいからでしょうか、弛緩した…は言い過ぎですが目じりが緩んだ表情が多くなったように思います。
齋藤飛鳥と並ぶ位置に来て、彼女を突き動かしてきた負けず嫌いのガソリンがなくなったように見えました。そしてそれは何というか、素敵なことでした。

その飛鳥に「船長」と言われてしまったことも決定的でした。

まあ、あの飛鳥ちゃんが「コンプレックスこそが山下美月のガソリン」であることに気づいていないはずはありません。

それでもなお「船長」と言ったのは、恐らくこういうことなのでしょう。

 どうせ卒業したら芸能界の荒波にもまれてまたコンプレックスまみれになるんだから、卒業するまでの残り時間ぐらいはそういうの抜きにした時間を過ごしてみなよ。

私はちょっと齋藤飛鳥を信頼しすぎているかもしれませんが笑

いずれにせよ尊敬する先輩から「乃木坂丸の舵を頼んだよ」と言われちゃったので、さすがにそこから1年はグループに留まります。
その2023年に残ったふたつの宿題「飛鳥さんを見送る」「久保との物語に落とし前をつける」を済ませて。

いよいよ本当に「やりたいことがなくなった」のではないでしょうか。

本当に、本当にやり切っての卒業でした。


卒業後の彼女は間違いなく俳優として歩んでいくでしょう。

3年後、5年後、10年後。

「なんかいろんなドラマでしょっちゅう見るよね、あの眼力強い女優さん」

そう言われているに違いありません。

山下美月さん、8年近くもの間、本当にお疲れさまでした。


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過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

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2024年2月17日、公式ブログで山下美月さんが卒業を発表しました。

やり切ったよな

最初に思ったのはそれでした。

まずは彼女の歩みを振り返りましょう。

レジェンドたちのただ中で


2016年9月、乃木坂46の3期生メンバーとして加入。

その日から3期生の、そして未来の乃木坂エースの座をめぐる「よだももとくぼしたの物語」が始まりました。

活動初期から様々な紆余曲折を経てくぼしたWセンターへと至る4人の物語については33rdシングル『人は夢を二度見る』の記事で詳しく書いていますので、よろしければまずこちらの記事をご一読ください。

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3期生の中でも美月は初期から目立っていました。
その完成されたビジュアル、そして積極的に爪痕を残しにいく姿勢によって。

『乃木坂工事中』初登場時の自己PRではサンシャイン池崎の「ジャスティス!」をコピー。これは賀喜遥香、五百城茉央へと受け継がれていくことになります。

一部では「完成され過ぎていてつまらない」などという声もありましたが、白石麻衣を筆頭に「アイドルは成長過程を見せるもの」という定説を覆してきた乃木坂というグループに入ったことも彼女にとって幸運だったのかもしれません。

抜群の握手対応であっという間に3期生どころかグループ内でも屈指の握手人気メンへと成長します。

2018年4月発売の20thシングル『シンクロニシティ』で初選抜と同時に堂々のフロント入り。
以降、今回の35th『チャンスは平等』まで丸6年に渡り、基本的にはフロントに立ち続けます。
※例外はやや特殊なフロント構成だった24th『夜明けまで強がらなくてもいい』(4期生3人同時抜擢フロント)と25th『しあわせの保護色』(白石麻衣卒業で1期生全員福神=2列目まですべて1期生)そして不参加だった23rd『Sing Out!』

丸6年というだけで十分凄いですが、これの何が凄いって20thシングルには白石麻衣も西野七瀬も齋藤飛鳥も生田絵梨花もいたこと。
そこに割って入る形でフロントに立ち、その地位を確立したのは美月と与田祐希のふたりだけです。

まして2018年ですから、こと「ダイナミズム」という意味ではグループがひとつのピークを迎えていた時期です。

2年連続レコード大賞受賞。神宮球場と秩父宮ラグビー場での2場同時開催で6万人×3DAYSの18万人を動員した6thバスラ「シンクロニシティライブ」。そして現時点でグループ史上最高の売上枚数を誇る22ndシングル『帰り道は遠回りしたくなる』。

その真っ只中で、デビュー1年ちょいのまだまだ新人であるふたりがフロントに立ち続けた。

今になってそれがいかに偉業であったかがわかります

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非の打ち所がない実績


そこから先の活躍は皆さんご存じの通りです。

同じ2018年にはファッション誌『CanCam』の専属モデルに。

翌2019年からは演技の仕事に注力。
3本のテレビドラマに相次ぎ出演し、映画デビューも果たしました。
この時期にあまりのハードスケジュールから23rdシングル『Sing Out!』の活動には不参加という判断を下されるものの、同年の真夏の全国ツアーから復帰。

以降は大量の外仕事をこなしつつ、ほとんど(全く?)ライブも欠席せずに走り抜けます。

余談になりますが、外仕事を抱えながらグループの活動に執着するという面では生田絵梨花級でした。

「どんな無茶をしても絶対に1日は出る」生田絵梨花に対し、「ギリギリまでなにひとつ諦めない」山下美月というスタンスの違いも興味深いですね。

このふたり、似ているようで表と裏だと思います。(書き出すと長くなるので今回は止めておきます)

2022年10月『舞いあがれ!』から2024年3月『Eye Love You』まで6クール連続=1年半にもわたってTVドラマ出演を続けてきました。

これまた、乃木坂46在籍中のメンバーとしては空前絶後の偉業です。

主演やヒロインもできるけれど、むしろキャストの5~10番手という役の方が多かった。
初のグループ外での演技仕事である映画『日日是好日』からしてそうでした。

初めから彼女が「アイドルが演技もやってみました」ではなく「俳優」としての将来を見据えていたことをうかがわせます(そして運営もそれを理解し後押ししていたことを)。

2020年1月発売の1st写真集『忘れられない人』は推定売上19万部超というメガヒット

同時期にドラマ『映像研には手を出すな!』での共演から齋藤飛鳥との距離がぐっと縮まり、飛鳥が後輩に気を許しているという珍しい姿を見せるようになります。

2021年1月発売の26thシングル『僕は僕を好きになる』で悲願の初センター
白石麻衣卒業後最初のシングルですから、明らかに「託された」形でした。

そしてこの後ぐらいからでしょうか、飛鳥のシンメが必要な状況ではそれを美月が務めるケースが多く見られるようになります。

2022年末には、その飛鳥から『乃木坂工事中』における飛鳥自身の卒業企画で「目バキ船長」と呼ばれ「乃木坂丸の舵、とってくださいね」。
ここでも後を託されついに「乃木坂の顔」へと上り詰めます。

15枚のシングルに参加し単独センター2回、Wセンター1回。それ以外のフロント10回。2列目と3列目が1回ずつ。

4期生の加入、コロナ禍、そして相次ぐレジェンドたちの卒業というグループの激動期を支え、常にセンター候補であり続けました

非の打ち所がない実績を積み上げての卒業です。


続きます。


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2024年2月19日、『乃木坂工事中』内で35thシングルの選抜メンバーが発表されました。

2度やることじゃないのでは。

というのが、私の偽らざる気持ちです。

『保護色』と同じ


今作のセンターはこのシングルをもって卒業する山下美月。
彼女の貢献度を考えれば卒業センターは極めて妥当。

しかし物議を醸したのが「3期生全員選抜」だったこと

同じような状況だったのが白石麻衣の卒業シングルであり、ちょうど10枚前になる25th『しあわせの保護色』。
この時は1期生全員選抜かつ全員福神。つまりフロントと2列目が全員1期生だったわけです。

これも賛否両論でした。
個人的には当時からポジティブに評価していましたし、今でもそれは変わりません。

そんな私でも今回のこれは素直に肯定できないですね。

「1期生と3期生を同じ扱いするのは違うのでは」とか「当時の1期はその多くが選抜固定メンだった」とか「これやるつもりならここ数作の思い出選抜枠を3期に使ったのはどうなのか」とかいろいろ思うところはあるのですが。

最大の理由は『保護色』期間には、どうしても「停滞」というイメージがつきまとうことです。

エンタテインメントの灯が消えてしまった2020年。
全部コロナのせいなのも、業界全体(というか世界中)が同じだったこともわかってます。
大大大功労者である白石麻衣の卒業シングルに対して使う言葉ではないのもわかっています。

それでもやっぱりあの時期は前に進んでいる感覚がありませんでした。

ちょうどコロナ禍が始まったまさにそのタイミングだった8thバスラでの初披露、そして1ヶ月後に発売。

そこから次作『僕は僕を好きになる』までに空いた期間は実に10ヶ月。
恐らく既定路線であったろう山下美月の、3期生初の単独センターは翌年に持ち越され、2020年は表面的には「白石麻衣が卒業しただけの年」になってしまいました。
(あくまでも「表面的には」です。実際は多くの種がまかれた年でした)

そしてあそこまで「お疲れさま、1期生」な感じを出してしまうと他に使い道がないのでしょう、白石麻衣卒業後のライブではほとんど披露されていません。
…と書いていたら先日の12thバスラDAY3のラストで披露されたようなのですが笑

あの時期の停滞感、そして楽曲としての使い勝手の悪さ。

そんなネガティブなイメージが残ってしまっている『保護色』と重なる采配を、わざわざやる必要はなかったんじゃないでしょうか。

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最大限の敬意


まあでも、運営はそういった声が上がるのも承知で3期全員選抜を選択したのでしょう。

たびたび感じることですが、運営は3期が好き。
そして、申し訳なさのようなものも感じているのではないでしょうか。

それはなんか、わかる気がするんです。部外者ではありますが笑

「期別売り」の第1世代そして「トップアイドルとしての乃木坂」に初めて加入してきた世代でもあります。

スタッフでさえ手探りだったであろうあの頃。
期別売りに対する反感(リソースを割かれる)も、今では想像もできないほど強かった。
それでも必死にくらいつき、新たな風を吹き込み、新規のファンを連れてきた彼女たち

乃木坂をミリオンセラーへ、ドームへと押し上げたラストピース。
さらに1期生の去った世界で乃木坂を体現するブリッジとなりました。

乃木坂という「優しい世界」を引き継ぎ、未来へとつなぐ。
加入してまだ2年の5期生たちでさえそう公言するほど、グループのカルチャーとして根付いた「継続の意志」

それを形作ったのも3期生です。

そんな乃木坂にとって非常に大切な役割を果たした彼女たち。
なのに「3期生の時代」は、なかった。

いや、これは語弊がありますね。
今後「4期生の時代」も「5期生の時代」も訪れないでしょう。
そもそもそんな「ひとつの期がすべてを背負う」状況を生まないように、計画的に「のりしろのある」世代交代を進めているのですから。

それでもいまだに梅澤美波が「3期生はみんな自信がない」と語るほど自分たちを認められない彼女たちに対し、運営はどこか申し訳なさのようなものを感じている。

だからこそ最大限の敬意を込めて「白石麻衣卒業時と同じ布陣」という判断をしたのではないでしょうか。

『保護色』選抜発表時の記事に書いた言葉を、改めてここで記しておきます。

 今回不満に思っておられるファンの方もいつか自分の推しが卒業する時に気づくだろう。

 時に情に流される判断をする、そんな運営でよかったと


続きます。


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びーむ色調補正3
前の記事では印象に残ったシーンを挙げました。

関連記事:


この記事では、ちょっとな異様なぐらい気合の入っていた3期生たちについて。

3期の青春


一番最初のMCから声が上ずり、明らかにテンションがおかしい梅澤美波
梅ちゃんのこんな状態を見るのは珍しい。

加入当初から3期のまとめ役として先輩との、そして大人との間に立つ状況も多かったであろう彼女。いわばずっと中間管理職だったわけです。

そして先輩がいなくなった現在。課長から部長になったような感じでしょうか。
後輩に目を配り、大人との間に立ち、さらにファンやもしかしたら「世間」との間にも立たなければいけない

桜井玲香も秋元真夏も経験してきた「自分の発言がグループの意志と捉えられる」重圧にも直面したことでしょう。

そんな梅ちゃんのMCにメンバーは全力の「イエーイ!」で応えます。

思い出すのは29thアンダラ。座長は『届かなくたって…』の佐藤楓でした。
その時の記事で私はこんなことを書いています。

 なんとかして盛り上げたい、みんなで支え合っていきたい、恥ずかしがってる場合じゃない。そんな気持ちが感じられる

その記事では「全体ライブではMC中にそんなに全力でイエーイはいかないじゃないですか」とも書いたのですが、この日はその時を彷彿とさせる「全力のイエーイ」。

このライブを成功させたい。キャプテンを支えたい。そんなメンバーの気持ちが音圧になって伝わります。

『僕は僕を好きになる』。
明らかに一段階上の気合入った表情をする山下美月。その後ろで岩本蓮加も同じ表情を浮かべます。
そしてDフレを歌う3期5人(山下久保梅澤与田岩本)。
やっぱり白石麻衣卒業後の乃木坂新章開幕を告げる、3期生にとって特別な曲だったのだと思わせます。

「箸休め三姉妹」のMCでの山下美月
「みんなのためにぃ~可愛くお化粧してるの」「のめり込ませてね、私たちのこと」という酔っぱらってんじゃないかスレスレの怪しげなテンションがなんというか、やっぱりさすが美月。

『三番目の風』。センターは与田祐希。伝統の「神宮、騒げ~!!」。

『設定温度』。
3期生がたびたび口にする「特別な曲」。彼女たちが先輩たちと初めて一緒に歌った歌であり、あの2017年神宮の全体ライブ1曲目に選ばれた曲でもあります。
6年もの時が流れて最上級生になって、同じ場所で歌う彼女たちの心境はいかばかりか。涙を流す与田祐希

『逃げ水』はここのところ定番となった「よだれん」=与田祐希岩本蓮加センターでした。
手をつないで歩く花道。もちろん思い出すのは2021年大園桃子卒業ライブ。曲終わりには肩を組むふたり。

『僕が手を叩く方へ』。
これまたあまり見ないぐらい力んでいる久保史緒里
バックステージから花道を走る途中でどんどん合流し、最後に全員揃ってメインステージで肩を寄せ合う。3期の青春。

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ようやく語られた理由


本編最後のMCでも、ずっと感情が抑えきれずに声が上ずったままの梅澤美波

そしてアンコール。『人は夢を二度見る』の前に山下美月が座長っぽいMC。

この日の3期生たちのあまりに高いテンションの理由が「3期の青春が終わりに近づいていること」のような気がしていたので、正直卒業発表しそうで怖かった。
幸いにもそれは杞憂に終わりました。

『乃木坂の詩』も終わり、梅澤美波最後の挨拶。

そこでようやくこの日の3期生たちの気合もしくは気負いの理由が語られます。

それは1期2期の去った世界へのプレッシャーでした。

 私たちでも4日間乗り越えられました
 ツアー16公演、神宮4日間を乗り越えることが、今の私たちにとって、とても大きな試練でした

そして

 今、先輩たちの後をしっかり受け継げたと証明できたと思います
 私たちが乃木坂46です!

正直言っていいですか。

私からすればまだ3期生がこれほど苦しんでいるそのこと自体が意外でした。
先輩を超えるとか超えないとかそういうのはもう乗り越えたんじゃないか。勝手にそう思っていました。

去年の全ツだって1期2期は既に5人しかいなかったし(飛鳥、真夏、樋口、和田、絢音)、飛鳥はともかく他の4人はやや引いた立ち位置にいましたし。

そもそもなんで今年神宮が4DAYSなのか疑問だったんですよね。

バスラのように全曲披露でも期別ライブでもなく、大筋同じセットリストの全体ライブを4日間続ける。

これはどれだけ誉めても「自分たちはよくやっている」ということをどうしても認められない3期生たちのために運営が用意した「先輩もやっていないこと」=新たな歴史、だったんですね。

こんな零細ブログで何を言っても彼女たちに届きはしないでしょうけれど、私も言いたいです。

君たちは、よくやっている

偉そうですね笑
結成当初から乃木坂ファンの私ですが、8年半もの間単推しした井上小百合が卒業しても、そこから3年半も経った今も、ちゃんと乃木坂が好きですよ。


「私たちが乃木坂46です!」が注目されましたけれど、個人的には「過去も今も未来も全部まとめて愛して、みんなで前に進んで行きます」という言葉にグッときました。


梅ちゃんがこの言葉を聞いていたか、頭に残っていたかはわかりませんけれど。

「毎日最高値を更新していく」とか「いつだって今が一番楽しい」というポジティブな考え方もいいと思います。本気でそう思えるのならば。

でも「過去も最高だったけど、今もそして未来も最高でありたい」と願う方が美しい。
そして、乃木坂らしい。

儚いのに決して刹那的ではない

そういうところが実に乃木坂46だと思うし、素敵だなと思うのです。


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びーむ色調補正3
前の記事ではこの日の印象に残ったシーンを列挙しました。

関連記事:


当記事では彼女たちの「ことば」に注目したいと思います。

「いい答えだね!」


この日、というかむしろ「この日もまた」3期生は数多くの印象的な言葉を残しました。

最初のMCから梅澤美波が飛ばします。
「7年目ってこんなに変わるんだ、成長できるんだと自分たちの強さだったりしっかり経験積んできた部分を見せたい」。
まさしくいい意味で圧があるコメント笑(そして短期間でこれを看破し表現した小川彩の非凡さよ!

そして「初めて私たちが先輩と一緒に歌った曲」、『設定温度』後のMC。

久保史緒里「乃木坂には一緒に泣いてくれる人がいた」。
梅澤美波「誰よりも乃木坂を愛してきた自信があります」

そこからの『世界で一番 孤独なLover』という流れもなかなかグッとくるものがありました。
やっぱり『セカラバ』って、2015年ぐらいまでの=それこそSTILL YOUNGだった頃の乃木坂を知らなければ出てこない選曲だと思うんですよ。

さらに今、最も歌うべき曲『未来の答え』

先輩が全員卒業して初めてのシングルとなる32nd『人は夢を二度見る』。
センターを任されたのはくぼした=久保史緒里と山下美月。

『三番目の風』『思い出ファースト』では大園桃子の両脇を固め、3番目の3期生期別曲『未来の答え』、そして『不眠症』でWセンターを務めたふたり。

関連記事:


あの日夢見た未来が、その答えが出た今作。

だからこそ。
その曲中でくぼしたはこんなやり取りをします。

山下美月「未来の答えは出た?」
久保史緒里「7年経って、みんなで笑ってステージに立ってる!」
山下美月「いい答えだね!」

このふたりの言葉を読み解くには「お見立て会リバイバル」後のV中コメントを振り返る必要があります。

岩本蓮加は「認めてもらうのに必死でもがいていた」。
久保史緒里の「どうやったら受け入れてもらえるんだろう」。
そして再びれんたんの「単独ライブでつけた力ってスタート地点にも立てていないと思った」。(このあまりに的確な現状分析を弱冠13歳で行なえていたことにも驚愕!)

乃木坂に憧れて。
先輩たちとの間には絶望的な差があって。
「3期は乃木坂らしくない」と言われているのも知っていて。

それでも「乃木坂が好き」だから「ここにいたい」と、悩んで迷って足掻いた日々

2年前の3期ライブは、そんな彼女たちが遂に「乃木坂46になれた」と感じた記念すべき日だったのです。

あれから2年経ち、さらに状況は変わりました。
「真ん中に立つべき」大園桃子は卒業し、先輩たちも全員グループを去った。

そして今、3期生たちは先頭に立っています。
かつては乃木坂を名乗ることすらためらいがあった彼女たちが。

正直に言えば背負うものの大きさに時々不安で震えることもあるけれど、それでも今こうして「みんなで笑ってステージに」立てている。

そのこと自体が「私たちは間違ってなかった」証

アンコールラスト前のMCで山下美月が口にした「ここまで頑張ってきてよかった」という感慨は、つまりはそういうことなのだと思います。

これもまた大河。

くぼしたふたりだけでなく、3期全員の大河です。

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勲章を手にした先輩たちと


時に体育会系と評される3期生。

その熱い想いが伝わるライブでした。

2年前の方が良かったなんて言わせない
4期5期に花を持たせる気もさらさらない

もちろん彼女たちは別に「2年前を超えなければならない」とか「後輩よりいいライブをしなければならない」なんて思っていないでしょうけれど。
「2年前の方が良かった」「後輩の方が良かった」なんて言わせないよ、という自負もあるでしょう。

プライドも負けん気もあるけれど、何より感じるのは余裕

思い出すのは1期生の姿です。

2017年神宮(1公演で各期の期別+全体ライブという構成だった)の円陣で「3期と2期なんか関係ないぐらい超いいライブにしようぜ!」と叫んだ1期生たちの「いい意味での大人げなさ」。

…と言ってみたものの、私の当日のメモには「2018年の夏頃みたいだ」と書かれていました笑

4期生が2015年なら、3期生は2018年夏ぐらいの雰囲気があるんですよ。
あの6thバスラ「シンクロニシティライブ」の頃。

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ジコチュープロデュース企画でいろいろ遊んでいたあの頃の先輩たちと、楽曲を再解釈して自分たちの色を載せているこの日の3期生たちにどこか相通ずるものを感じました。

上で書いた2017年神宮の後、乃木坂は初の東京ドームそしてレコード大賞受賞と一気に坂道を駆け上がります。(思えば3期生はその姿を、デビュー1年にも満たないよちよち歩きの状態で羨望の眼差しで眺めていたわけです)

そして明け2018年の乃木坂。頂点に上り詰めた後の乃木坂。

あの頃の先輩たちのように分かりやすい勲章を手にしたわけではない。
同じほどの「スター軍団感」も正直、ないと思う。(これはそもそも人数が違うのでしょうがない)

それでもこの日の3期生が見せた、観客を巻き込む力。
あんなに気合が入っているのに、決して力んではいないこと。
その根底にある揺るぎないもの自信

それはやはり、既に多くの勲章を手にしていた2018年頃の先輩たちを思わせるのです。

この日、メンバーから一番多く出た言葉は「楽しい」。
岩本蓮加と山下美月がずっとニコニコしていたのが印象的でした。

きっと3期生は、ようやく自分たちを認めることができたのでしょう。

 乃木坂の看板を、背負ってもいいんだよ

そう自分たちに向かって言えるほどに。


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