ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:生駒里奈

タオル補正
『世界中の隣人よ』
感染拡大防止の呼び掛けを目的として作成された楽曲。新型コロナウイルス対策の活動支援を目的として配信シングルとしてリリースし、その収益を全額寄付する予定。
2020年5月25日公式Youtubeチャンネルで公開。歌唱メンバーは白石麻衣を含む全在籍メンバー、ならびに卒業生11人。

本当に大きなグループになったもんだ


イントロのリフは『羽根の記憶』にだいぶ似てますが、楽曲全体としては『悲しみの忘れ方』ですね。合唱曲っぽい、というか実際に合唱曲をイメージして作られたのでしょう。シンプルなメロディ。アレンジもピアノとストリングスを中心にした実にシンプルなもの。

『忘れ方』も名曲と評価される方が一定数おられるのは承知しているのですが、個人的には正直あまりこういう曲はピンと来ないんです。

でもそういうことじゃないですよね。

こういうチャリティーソングを乃木坂が歌うようになった。
まずそのこと自体にちょっと感慨深いものがあります。

『忘れ方』では深く傷ついた自分と目の前の彼女を励ます歌でした。
それがこの『隣人』では見知らぬ「あなた」への愛情と感謝を歌っています。

『忘れ方』はドキュメンタリー映画の主題歌で『隣人』はチャリティーソングなんだから当たり前かもしれません。

でも、この歌詞をてらいもなく歌える、歌っても恥ずかしくないグループに乃木坂がなった。

今の状況の中で世界に向けてメッセージを発信するグループになった。
本当にビッグネームになったんだな、って思いました。

予想通り、でも胸が締めつけられる


そしてMV。
やっぱり泣きそうになりました。



以下、順に好きなポイントを挙げていきます。(カッコ内はMVの時間)

公式サイトに「卒業生多数参加」「神宮球場の現在の様子」と明記されてたので心構えはできていました。

それでもやっぱり、白石麻衣で始まったAフレにそのまま西野七瀬が登場した時(0:43)はウッと来ました。予想通りなのに、胸が締めつけられる。

サビ前、星野みなみがふと外を眺めるシーン(1:21)では『羽根の記憶』で彼女が見せた同じ仕草を思い出します。彼女はこういう「ふとした」表情が本当に上手いですよね。

そして若月佑美と衛藤美彩の美形コンビ(1:38)。
さらに斉藤優里と能條愛未というグループに明るさを加えていたふたり(1:46)が続き、ソファの上に胡坐をかいてゆらゆらと揺れる生駒里奈(1:51)で1番が終わります。

ほんの少しふっくらしたように見える生駒ちゃんの、ずっと何かと闘っている感のあった彼女とは違う、穏やかで柔らかな表情。安定感がありすぎて若干影のフィクサー風味もありますが笑

1番は1期生たちでまとめられていました。

みんな大人になったなあ。
でもやっぱ今も乃木坂だな。そんなことを感じました。

間奏で描かれる人気のない東京の風景がまた切ない気分にさせ、2番に入ります。

そこでいきなり登場するのが斎藤ちはると市來玲奈の局アナコンビ(2:14)。ちょっとしたサプライズですね。

その後は2期生以降の後輩たちが登場してきます。

その中でも特に、大園桃子の彼女にしか出せない陽だまりのような表情(2:39)が素晴らしい。

ぶりっ子をする新内眞衣(2:55)を挟み、2番でサビへのブリッジを務めたのは久保史緒里のまっすぐな瞳(3:04)。

ストレッチする遠藤さくら。歯を磨く賀喜遥香。そして丼でメシを喰らう松村沙友理笑(3:15)
ビジュアルの強い3人がそれぞれの魅力全開。個人的にはここの流れが一番好きです。

伊藤かりんと相楽伊織。卒業したふたりの暖かなイメージ(3:22)。
岩本蓮加の自粛期間中も完成度が上がっているんじゃないかと思わせるビジュアル(3:27)。

立ち昇る乃木坂感


そして大間奏。

閑散とした神宮球場が映し出されます(3:53)。
そこから紫のサイリウムで埋め尽くされたライブの映像(4:21)に切り替わり、さらに無人の神宮が再び紫の海となるCG(4:33)へと。

そりゃ色んなこと思い出して、もう二度とこんな日が来ないかもしれないとも思って胸が締めつけられますよ。

 ララララ ラララララ…

いつかまた。その願いが空へと羽ばたきます(5:09)。

そして一番心を揺さぶられたのは5:22からのメンバー連打。

桜井玲香能條愛未北川悠理伊藤理々杏早川聖来衛藤美彩市來玲奈矢久保美緒林瑠奈伊藤かりん掛橋沙耶香金川沙耶黒見明香弓木奈於松尾美佑斉藤優里相楽伊織中村麗乃阪口珠美佐藤璃果若月佑美斎藤ちはる吉田綾乃クリスティー田村真佑佐藤楓柴田柚菜生駒里奈

1期も2期も3期も4期も新4期も卒業生も。

16歳から27歳までいて。入りたての新人から局アナからレジェンド(そして人妻)までいて。ビジュアルもキャラクターも表情もそれぞれで。

さらに言ってしまえば卒業生を除けば主にここまでのシーンで取り上げられていなかった、比較的地味なメンバーたちで。

それでも皆が醸し出す、驚くほどの乃木坂感。

以前24th選抜に関する記事でこんな文章を書きました。

 私の思う乃木坂は眩いほどの純白ではなく、生成り。

 『シンクロニシティ』のMVを思い出してください。メンバーたちが着ていた衣装は確かに純白でした。しかしその撮影場所はスポットライトに照らされたステージではありませんでした。窓から差し込む木漏れ日を背に踊る彼女たち。その姿は柔らかな色味を纏っていました。



そして今回の『隣人』。
屋内での撮影。多くのメンバーは恐らく自宅なのでしょう。カーテンや壁の前で歌っているため、全体の色味は柔らかなアイボリー。生成り。

そして彼女たちから立ち昇る「乃木坂感」。

生駒ちゃんが『シンクロニシティ』のMVを観た時に言ったのと同じ台詞が頭に浮かびます。

 ああ…乃木坂だ

こんな状況でも、ここには確かに乃木坂があって、今も「やっぱ乃木坂だな!」と思わせてくれる。

きっと私はこの僅か14秒の間にそのことを感じて感動したんだと思います。

初代キャプテンで始まり、同じく初代センターで締めているのもいいですね。

そして締めの生駒ちゃん前で柴田柚菜が発する「乃木坂感」の強さたるや。
乃木坂の熱狂的なファンである彼女がこうしてそれを体現しているのはなんだかとても素敵なことだと思います。


離れてもみんな乃木坂。

これまで誰かの卒業を見送る時、残される側のメンバーがたびたび口にしてきた言葉です。

今回のMVはこの言葉が紛れもない真実であることを目に見える形で証明してくれたという意味でも非常に意味深いものとなりました。

乃木坂LLCの本気、見せてもらいました。


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タオル補正
『走れ!Bicycle』
乃木坂46、3rdシングル。2012年8月22日リリース。センターは生駒里奈。

ついに出た正解


フォーメーションは以下の通り。

3列目:斉藤優里、若月佑美、井上小百合、市來玲奈、伊藤万理華、深川麻衣
2列目:中田花奈、橋本奈々未、白石麻衣、松村沙友理、西野七瀬、高山一実
1列目:生田絵梨花、生駒里奈、星野みなみ、桜井玲香

個人的には『乃木坂って、どこ?』で選抜が発表された時のことが忘れられません。

選抜メンバー16人が並んだ画面を観て「全員可愛い!何だこのグループ!」と思いました。

1stから3rdまでの選抜は13人固定で残り3枠をローテーションしていましたが、その枠にこれ以降一度も選抜から外れることのなかった深川麻衣と若月佑美が入り、ラスト1枠も伊藤万理華。ほぼ当時の人気上位16人だと思います。

これ言うとみさ先輩推しの方をはじめ他メンのファンに怒られそうですが「ついに正解が出た」と友人に話した覚えがあります。個人的には他にも選抜入りしてほしいメンバーはいましたが(当時中元日芽香や柏幸奈のビジュアルを高く評価していました)、そういう好みはさておき「まあ客観的に見てこれだろうな」と。

スターティングメンバーによる「超初期型」乃木坂46の完成形と言っていいでしょう。

まあ次の4枚目『制服のマネキン』では初のダンスチューン、作曲家・杉山勝彦登場、そして秋元真夏の復帰即福神という激動が待っているわけですが、それはまた別のお話。



センチメンタルがこみあげる


この曲の魅力は、言葉にするとこっぱずかしいんですが「青春感」ってことに尽きます。
それも「通り過ぎた青春感」ですね。

疾走感があって爽やかな夏曲なんですけど、季節は盛夏じゃなくて夏の終わり。

そして大間奏から一気にこみあげるセンチメンタリズム。

 言葉にできない心の独り言
 誰もが見過ごして 大事なその人失うんだ

 走れ!Bicycle 終わる夏 太陽は知っている
 出遅れた愛しさは 君に追いつけるかな

それまで現在進行形のラブソングだったのに、この数行だけふいに視点が俯瞰になります。
大人になった主人公が過去を懐かしんでいるような。
いつか今が思い出になってしまうことに極めて自覚的であるというか。

おっさんになると、こういうのが沁みるんですよね笑

おっさんの話はさておき、もしかしたらリリースのタイミングも関係しているのかもしれません。

2012年の夏ということは白石麻衣と松村沙友理がちょうど20歳になる頃。
そして最大勢力の94年組(当時9人!)にとっては高校生活最後の夏でした。

意識的にか無意識かはともかく、10代の終わりあるいは高校時代の終わりを迎えているメンバーが多かったこの時期だったことが、この曲の持つセンチメンタリズムを加速させているように思います。

「儚げ」で「ノスタルジック」な乃木坂らしさと絶妙にマッチした、というよりむしろそのイメージを決定づけた名曲だと思います。


3期生や4期生が乃木坂の入口だったファンの方には、もしかしたらあまり馴染みのない楽曲かもしれませんが、まだコールさえあまりなかった初期の乃木坂ライブで早々にコールが確定したド定番の曲でした。

そしてこれが元祖「曲中の一瞬の静寂にオタが推しの名を叫ぶ」曲ですね。この後に『ここにいる理由』と『逃げ水』が続きます。(正確には『逃げ水』には静寂ないですけど)

忘れてはいけないのが伊藤万理華が9thシングル『夏のFree&Easy』の個人PVで披露したこの曲のボイパ。
彼女独特の「不安定な歌声(誉め言葉)」を堪能できます。特に裏メロディが絶妙に不安定で秀逸。あれ観るとこの曲とまりっかの良さ、両方を再認識しますよ。(下のリンクは「予告編」なのでさわりだけです)

なんでかわかりませんが私はこの曲を最初から思い出そうとするとどうしても頭の中に『おいでシャンプー』のイントロが流れてきて、なおかつ『走れ!Bicycle』のAメロに着地します。
同士の方いますかね?笑




若くて未熟でひたむきな日々の記憶


もうひとつ、この曲と分かちがたく結びついている記憶があります。

デビューからちょうど半年、そして結成からもちょうど1年後に早くもリリースされた3rdシングル。今の感覚からすると凄いハイペースですね。

そんな慌ただしい毎日を駆け抜けてきた彼女たちの前に突然現れた、地獄。
初めて直面した地獄。

そう、第1回の『16人のプリンシパル』です。

『走れ!Bicycle』はその時の最新シングルであり、テーマソングのような位置づけでした。一幕の結果発表の時にメンバーが着ていたのがこの曲の歌唱衣装だったこともその印象を強めています。

毎日毎日、目の前のファンに順位をつけられる。
「ファンの目の前で」じゃない。「目の前のファンに」です。

『deux』からは役に立候補するシステムになりましたが、最初のプリンシパルは頭から順位をつけてそれによって役が割り当てられるというもの。グループ全体における自分の立ち位置を突きつけられたような気になったとしても無理はありません。実際にはあくまでもその日の観客の主観にすぎないのですが。

今さらだけど、ほんと地獄ですよね。

バックヤードで発生した松村沙友理と生駒里奈の口論。狼狽える橋本奈々未。
記者会見からの逃走。
初めて1位になって泣き崩れた白石麻衣。
意気込みを語りながら腰が抜けて倒れこんだ生駒里奈。

結果が出ずに心をへし折られ、解決策が見いだせないままそれでも毎日PARCO劇場に通わなければならなかったあの日々。

今観れば笑っちゃうほど拙い自己PRですが、当時はどのメンバーも本当に必死でした。

まだ坂道を上りだしたばかりの、まだまだ無我夢中で本当に何者でもなかった彼女たち。
若くて未熟で拙くてみっともなくて、でもそのひたむきな姿に胸を打たれた。

そんなセピア色の記憶が蘇ります。

正直シングル曲の中では影が薄い方だと思いますけれど、自分にとっては特別な曲のひとつです。


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『走れ!Bicycle』/乃木坂46



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『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
当ブログに掲載された記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧の方にも楽しんでいただけることと思います。



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