ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:鈴木絢音

タオル補正
2023年2月18日、公式ブログで鈴木絢音さんが卒業を発表しました。

2期生最後のひとり。

まずは彼女の歩みを振り返りましょう。

ゆっくりと咲いた花


秋田県出身。
「秋田の星」である生駒里奈の存在を通してグループを知り、2013年3月に2期生として乃木坂46に加入。
5月に『16人のプリンシパル deux』と『乃木坂って、どこ?』でお披露目。

当時の印象はやっぱり「こけしちゃん」。(すみません)
髪型も切れ長の目も化粧っ気のなさもその立ち居振る舞いもすべてが「田舎の純朴な女の子」という感じでした。

2期生の中で正規メンバーに昇格するのが最後だった、いわゆる「ボーダー組」のひとり。
昇格発表は加入から2年近くが経過した2015年2月、極寒の西武ドームでのことでした。

ちなみにずっと秋田から通いで活動していましたが、その年の5月に上京します。

なかなか注目を集める機会はありませんでしたが、加入から3年経過した2016年あたりから徐々に冠番組でも活躍し始めます。

2016年6月放送の『乃木坂工事中』。
メンバーのお父さんにインタビューという父の日企画で「娘の結婚相手に望むことは?」という問いに絢音ちゃんのお父さんは「お金」。

全力の仏頂面をする彼女。
設楽さんの「好きな人ができたらちゃんと聞ける?」という振りに弱々しい笑みを浮かべ「お金ありますか?」

同年11月、同じく『工事中』での「乃木坂イチのクールガール、鈴木絢音を笑わせろ」という企画では全面的にフィーチャーされ、彼女の独自の感性が明かされました。

さらにその翌日の『NOGIBINGO!』では伝説の「ささきとすずき」。
両冠番組で同時に「主役椅子」に座るという恐らく卒業企画を除けば乃木坂史上でも唯一であろう(調べてません)快挙を成し遂げます。

この時は短距離走タイム測定で、「位置について」の直立不動からシュバッと「用意」のポーズに入るのが面白かった。
以前も書きましたが、この時はまだ佐々木琴子の方が積極性がありました。
絢音ちゃんは笑ってしまうぐらいのサービス精神のなさ。当時「面白いけど、やる気がないって非難する人もいるだろうな」と思いました。(今改めて観直しても同じ感想でした)

今にして思いますが2016年末ということは3期生加入直後。
後輩のお披露目前に2期生の中でも前に出る機会の少なかった彼女にチャンスを与えたのではないでしょうか。

17thアンダー曲『風船は生きている』で自身初のフロント。
この時は「将来美人さんになるんだろうな感」は満載だけど、まだまだ地味で素朴な印象でした。

そのビジュアルが洗練されたのは2017年秋のアンダラ九州シリーズ(『アンダー』の時です)の頃からでしょうか。

そして翌2018年1月発売のアンダーアルバム『僕だけの君』に収録された『自惚れビーチ』で初めてセンターを務めます。
続く20thシングル『シンクロニシティ』のアンダー曲『新しい世界』でもセンターとなり、アンダラ中部シリーズの座長に。

その勢いのまま、21stシングル『ジコチューで行こう!』で遂に初選抜。
この時すでに加入から5年3ヶ月が経過していました。

そして迎えた2018年7月の6thバスラ、通称「シンクロニシティライブ」。
ここで彼女の乃木坂人生におけるひとつのハイライトが訪れます。

神宮球場と秩父宮ラグビー場で同時開催された画期的な、というか無茶苦茶なこのライブ。
だってメンバーの半分は反対の会場でパフォーマンスしてるんですよ。

基本「選抜」と「アンダー」に分かれて、会場を移動して入れ替わりながら行なわれたのですが、ここでアンダー側の座長だったのが最新アンダー曲のセンターだった鈴木絢音でした。

これ何が凄いって、選抜側のセンターが白石麻衣なんですよ。

まいやんと「同格」ではもちろんないです。ただ「並列」の状態で成立させたのは素晴らしい。オープニングのVでもそのふたりが並んで映し出され会場のファンがどよめきました。
この時期の絢音ちゃんが完成の域に達し、そのビジュアルに「説得力があった」からこその演出でした。

そして3DAYSの初日、「聖地」神宮のオープニングを任されたのはアンダーメンバー。
曲は絢音ちゃんの代名詞である『自惚れビーチ』でした。

しかし、この先の道のりも平らかなものではありませんでした。

22nd『帰り道は遠回りしたくなる』では選抜から外れます。
23rd『Sing Out!』で復帰するものの24thで再びアンダーに。

超選抜の厚い壁に跳ね返され、三番目の風と4番目の光の勢いに飲み込まれそうになりながらも歩み続けた彼女。

27th『君に𠮟られた』で2年3ヶ月ぶりに選抜復帰するとそこから4作連続の選抜入り。最終シングルとなった『ここにはないもの』では初めて福神にもなりました。

『ゆっくりと咲く花』を地で行くような乃木坂人生でした。


同期の中で最後までグループに残り、ほぼすべての先輩を見送った絢音ちゃん。

思い出すのが舞台『墓場、女子高生』のラストシーン

彼女が演じるジモは最後にたったひとり舞台に残り。
遠くに行ってしまったヒノチ(伊藤万理華)の声を風の中に聴くのです。

何年もの時を経て、現実と作品がリンクする。古参の醍醐味ですね笑

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。


行間が生む魅力


加入からちょうど10年。

それだけの期間グループにいたのに、彼女はずっとミステリアスな雰囲気を纏っていました。

冠番組などで見せる姿と普段の姿が違うというのは2期生メンバーからの証言でもわかります。ただ普段の「明るくて口数が多い絢音ちゃん」というのが一体どういう状態なのかどうにも想像がつきません笑

そしてずっと疑問だったのが、本人が素の自分を見せたいのか見せたくないのか。

この記事を書くにあたり調べてみたところ、『君に𠮟られた』の時のインタビューで彼女自身がこう答えていました。

 本当はかっこいい自分や、良い自分だけを見せていきたいのですが、私は器用な人間じゃなかったんです。でも、かっこ悪い自分を見せたくないという気持ちを取り払ったら、楽しんで活動できるようになりました

 元々アイドルが好きいろいろなアイドルを見てきたこともあって「こういうアイドルさんになりたい」「こういうパフォーマンスがしたい」など自分の理想の姿を明確にしすぎてしまったのかもしれない

 夢をかなえる秘訣は「素の自分を愛すこと」です

「キラキラな笑顔」のいわゆる王道アイドルに憧れ、そうありたいと思いながらもカメラの前ではうまく笑えなかった。そんな自分をふがいなく思っていたけれど、時と共に愛せるようになった。

そう語っているのです。

「素の自分」「目指す自分」「カメラに映る自分」

大なり小なりどのメンバーもそのギャップを抱えているでしょう。

しかし鈴木絢音のそれはとりわけ大きく、そのギャップによって生まれた「行間」をファンは「ミステリアス」と感じた。

そして、そこにこそ彼女の魅力はあったのです。

不器用な自分を不器用なままでそこに在る姿は、もしかしたらアイドルとしては未熟なのかもしれません。
でもそんな彼女が10年も在籍できて、その魅力を届けることができたのはやっぱり乃木坂ならではだったのだと思います。


最後にこれからの彼女について。

卒業後の予定は「全く決まっていません」とのこと。
でも在籍中から様々な舞台やドラマに出演してきたので、きっと演技の道に進むのでしょう。

そんな彼女にしか出せない空気を活かせる役柄に巡り合えることを願っています。

鈴木絢音さん、10年間お疲れさまでした。



『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各記事の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

また、note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。



びーむ色調補正3
聖地・神宮での全ツファイナル3DAYS。

2022年8月30日に行なわれたそのDAY2を視聴しましたのでレポします。

鈴木絢音の感慨と実感


セットリストはこちらです。

Overture
01. 好きというのはロックだぜ!
02. 夏のFree&Easy(センター:与田祐希)
03. おいでシャンプー(センター:賀喜遥香)
04. ガールズルール(センター:山下美月)
05. 裸足でSummer

<期別コーナー>
06. 絶望の一秒前
07. バンドエイド剥がすような別れ方
08. 猫舌カモミールティー
09. ジャンピングジョーカーフラッシュ
10. 僕の衝動
11. 僕が手を叩く方へ
12. 海流の島よ

13. 会いたかったのかもしれない
14. ロマンスのスタート

<シャッフルコーナー>
15. 君の名は希望(センター:秋元真夏)
16. 涙がまだ悲しみだった頃(センター:山下美月)
17. 設定温度(センター:久保史緒里)
18. 13日の金曜日(センター:清宮レイ)
19. マシンガンレイン(センター:遠藤さくら)

20. 泣いたっていいじゃないか?(センター:賀喜遥香)
21. ひと夏の長さより…

22. 自由の彼方(センター:和田まあや)
23. Under’s Love(センター:和田まあや)

24. ごめんねFingers crossed
25. Actually…
26. 深読み
27. 太陽ノック(センター:遠藤さくら)
28. 空扉
29. ジコチューで行こう!
30. 君に叱られた

EN1 好きになってみた
EN2 自惚れビーチ
EN3 乃木坂の詩

例によって印象に残ったシーンを挙げていきます。

まあこの日はとにかく、雨

2016年神宮4thバスラを思い出させるほどの土砂降りでした。

まずオープニングはスモークが凄くて全くメンバーが見えずに、やむを得ずカメラは客席を映すという斬新なスタート。そこへさらに放水という暴挙笑

スモークが晴れるまで雨が降っていることにすら気づかないぐらいでした。

『おいでシャンプー』で賀喜遥香の髪の香りをかぐ齋藤飛鳥山下美月
「ダメダメダメ」のところで後方にいるのにきっちりカメラ目線で決めてみせたのもさすがの山下プロ。

『ガールズルール』でまた放水し、笑っちゃってる齋藤飛鳥

その彼女が「なんでこんな降ってるの~!?」と叫んで始まった『裸足でSummer』。
しかしそのラストでまたも放水。

最初のMCで「飛鳥さんみたいにとお願いして髪巻いたのに、いつもと一緒になっちゃいました」と笑顔で嘆く遠藤さくら

期別コーナーは5期生から。髪やメイクを直す間もなく出てきた彼女たち。
にもかかわらず小川彩の完成度は際立っているなあ。
菅原咲月の素早くカメラを見つけてニコッと微笑むところも好感度高い。

そして4期生のJJF!(『ジャンピングジョーカーフラッシュ』)この曲好き。
かきさく(=賀喜遥香遠藤さくら)の飛車角感よ。

3期生はこの日から復帰した伊藤理々杏センターの『僕の衝動』。
『乃木坂工事中』の「キメ顔グランプリ」効果で観客が完全に「待ち」の体勢にある中で堂々と決めて拍手を浴びる理々杏。

続く3期曲は『僕が手を叩く方へ』。
個人的には3期生が輪になってお互いを笑顔で見交わすだけでウルっときちゃうんです。
そこへ客席からのクラップが重なって、なんかもう。

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。
1期2期5人の「後輩のためにできることを考えた」という言葉から始まったシャッフルコーナー。期も選抜もアンダーもシャッフルする、融合と継承の試み。

山下美月と『涙がまだ悲しみだった頃』という組み合わせは意外。

『13日の金曜日』、清宮レイの『ザンビ』コントが微笑ましい。
この曲で(いつも捕獲される側の)与田祐希が弓木奈於を捕獲するという珍しい光景も見られました。
その後、花道をキョンシーポーズを取りながら走る与田っちょ。自由で良い笑

『マシンガンレイン』でビシッとセンターを張ってからのコントという遠藤さくらの落差
「いきますよ~」から自己紹介するというのは、何ともひめスパイア(中元日芽香インスパイア系)。

この日のハイライトのひとつ、キャンプファイヤーコーナー。

『泣いたっていいじゃないか』。
歌メン揃いの中、嬉しそうにふたりで一緒に歌う久保史緒里佐藤璃果

MC企画「1分トーク」では小川彩に「いい意味で圧がある」と言われたと嘆く梅澤美波

『ごめんねFingers crossed』。
前年ツアーのリード曲だったのに、相次ぐ卒業や離脱によりソロ歌唱となってしまったパートが多くてふと切なくなります。
ラスト寸前で不敵な笑みを浮かべる山下美月

『太陽ノック』でべらぼうに可愛い投げキスをする遠藤さくら

『ジコチューで行こう!』、齋藤飛鳥にまとわりつくよだやま(与田祐希山下美月)。
与田っちょは大間奏で飛鳥から首を絞められなぜかガッツポーズ。

アンコールでオチに使われた筒井あやめの「飛鳥さん、私まだ汚れていいキャラじゃないと思うんですけど」というコメント。

鈴木絢音の「あの頃の乃木坂良かったな~」という感慨と「今の乃木坂も最高だな」という実感。

この日の仕上がってるメンは与田祐希久保史緒里阪口珠美筒井あやめも目を引かれました。



『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各記事の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

また、note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
当ブログに掲載された記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧の方にも楽しんでいただけることと思います。



 


タオル補正
前の記事では5期生のお見立て会について書きました。

あらかじめ語られるトラジディー


楽しかった46時間TVのフィナーレ、スペシャルライブ。

その最終盤で行なわれた29thシングルセンター発表。
空虚なキャッチコピーの後に表示された「中西アルノ」の文字。

それはあらかじめ予想された悲劇でした。


そこからずっと耐ショック姿勢を固めてきたので「あ~はいはいそうだろうと思ってましたよ」という感じ(もちろん落胆はしましたが)。

ただ直後の歌披露は、まるで悪い夢を見ているようでした。

サビ前まではほとんど中西さんのソロ歌唱。1番のラストまでほとんど歌いっぱなし。
彼女にだけフォーカスした振り付けとカメラワーク。

それ以外のメンバーでカメラに抜かれるのは齋藤飛鳥と山下美月ぐらい。
与田祐希、遠藤さくら、賀喜遥香ですらほとんど映りません。

「もう決まったことだから仕方がない」と中西さんのセンターを受け入れようと構えていたところにあの一本かぶりの歌割と演出。

 そりゃねえだろ
 乃木坂は中西アルノのバックダンサーじゃねえぞ

さすがに顔から血の気が引く思いでした。

事前リークを知っていたファンの方で私と同じ感想を抱いた人も多いのではないでしょうか。

この後からの大荒れは29thシングルについての記事で別途扱うとして、46時間TVの記事として書いておきたいことがあります。

それは現在の乃木坂の顔であるメンバーたちの電視台。

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。


乃木坂を甘く見るな


齋藤飛鳥のタップダンス。
山下美月の殺陣。
賀喜遥香は46時間でメンバー全員のイラスト完成。
遠藤さくらのハウスダンス。
そして与田祐希の『逃げ水』ギター弾き語り。

どれも生披露でした。

表題曲センター経験者。
既にグループ内で確固たる地位を確立し、もはや何かを証明する必要のない彼女たち。
そんな5人が、奇しくも全員「チャレンジングな課題を」「生披露する」ことを選んだその意味。

いや、これはきっと「奇しくも」ではない。

メンバーのコメントからすると46時間TVの準備期間は2~3週間。(発表は1ヶ月前でした)

29thシングル選抜発表は一説によれば1月8日と言われていますから、中西さんの抜擢センターを知ってから電視台で何をやるのか決めたと考えるのが自然でしょう。恐らくはあの一本かぶりの歌割とダンスフォーメーションも知った上で。

そう思うと、彼女たち5人の電視台にはこんなメッセージが込められているように思えてなりません。

 乃木坂を甘く見るなよ

 その真ん中に立つってのは、そんな簡単なことじゃねえぞ

誰に対して?

中西アルノに。
秋元康に。
今野さんに。
今回の決定に関わった大人たちに。

そしてそこにはきっと、我々ファンに対するメッセージも込められていたのではないでしょうか。

元々は電視台でチャレンジングな課題に挑むメンバーはそれほど多くありません。
前回で言えば生田絵梨花、渡辺みり愛、金川紗耶ぐらいでしょうか。前々回はほぼゼロです。

それなのに今回、センター経験者が揃ってその選択をした。

さらに言えば、乃木坂愛では人後に落ちない久保史緒里が「乃木坂のピアノの文化を終わらせちゃいけない」とピアノの生演奏。(個人的には『羽根の記憶』という選曲にも「継承」の意志を感じました)

関連記事:


筒井あやめは書道パフォーマンス生披露。
そしてキャプテン秋元真夏も事前収録でしたが一輪車での演技。

つまり『Actually…』のフロントと2列目のほぼ全員が何らかのチャレンジをしていたのです。
(そんな中、副キャプテン梅澤美波が唯一ただの食べロケというのがなんか逆に面白かった笑)

久保ちゃんは「もうちょっと自分を追い込みたい」と譜面の難易度を上げ、飛鳥ちゃんはタップダンス披露後に倒れこみながら「チャレンジするのが乃木坂」と言い放ちました。

私にはそれらが単なる偶然とは思えません。

恐らくメンバーたちも予期していたのではないでしょうか。
今回のセンターとフォーメーションが大きな論争を巻き起こし「乃木坂終わった」というような意見が出ることを。
そしてファンからも「こんなの乃木坂じゃない」という声が(これまでの乃木坂を大切に思うあまりに)上がることも。

だから彼女たちは、乃木坂を愛するファンに向けてこう言いたかったのだと思います。

 乃木坂を甘く見るなよ

 こんぐらいで終わるわけねえだろ

なんて男前。

その下にあるもの


そしてもうひとつ、鈴木絢音の電視台。

事前の予告では「狂気的な彼女」というタイトルが明かされていました。
実際に電視台が始まった時に画面に表示された文字は

「真っ白いものを汚したい」。

この時点で思いました。まんま欅じゃん。
欅坂46のファーストアルバム『真っ白なものは汚したくなる』を直接的に想起させるサブタイトル。

控えめな音量でBGM(これも自作)が流れる中、真っ白な服を纏った絢音ちゃんが真っ白な壁と向き合います。

そして無言のままそこに色とりどりのペンキをぶちまけて汚していきます。

ただひたすらに。
ほとんどカメラに背を向けたまま。

美しくて不穏な静けさ、とでも表現すればいいのでしょうか。
鈴木絢音にしか出せない空気でその場が満たされます。

そしてそれは突然に終わりました。
満足したのか、ペンキが尽きたのか。私には「飽きた」ように見えました。

その後にMCのメンバーと会話をしながら「実は…」と真っ白に見えた壁に貼られていたシールをはがしていきます。

そこに現れたのは

 Effort Thanks Smile

言わずと知れた、乃木坂の基本精神でした。


ひとりだけにフォーカスした演出が欅坂的、もっと言えば『不協和音』以降の瓦解への道を進み始めた欅坂を思わせる『Actually…』。

その初披露を観た後に私が思い出したのは、絢音ちゃんがこの電視台につけた「真っ白いものを汚したい」というサブタイトルでした。

本人は「真っ白なものを汚してみたかったの~」とケラケラ笑いながら語っていましたが、こちらはどうしても勘ぐってしまいます。

不遇の2期と言われてきた。彼女自身も「実は29thが初めての連続選抜」。
そして抜擢センターとして強烈な反感を買った堀未央奈を同期として友人としてずっと見てきました。

関連記事:


そこへ今回発表された堀未央奈以来となる、単独での新人抜擢センター。

それに対し鈴木絢音が何も思わないはずがないし、ましてや鋭い言語感覚を持つ彼女が何の考えもなくこの言葉をチョイスしたとはちょっと考えにくい。

もちろん真っ白いもの=乃木坂です。

 たとえ表面的にはどんなに汚されたとしても

 その下にはちゃんと「努力、感謝、笑顔」がある

 乃木坂の10年間の歴史をなめるなよ

 私たちは汚されたりなんかしない

鈴木絢音はそう言いたかったのではないでしょうか。

そう考えるとなんだか「狂気的な彼女」も「欅的な彼女」のダブルミーニングな気がしてきました…まあこれはさすがに考えすぎですね笑


『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各記事の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

また、note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。



びーむ色調補正3

3度目の正直


本来は2020年5月に白石麻衣卒コンとして行なわれる予定でした。
2021年9月開催と発表されるも直前にまた延期。

そして3度目の正直で立つ、2度目の東京ドーム。

セットリストはこちらです。

Overture
01. ごめんねFingers crossed
02. ジコチューで行こう!
03. 太陽ノック(センター:生田絵梨花)
04. おいでシャンプー(センター:山下美月)
05. シンクロニシティ(センター:梅澤美波)

06. ざぶんざざぶん
07. ファンタスティック3食パン
08. 自惚れビーチ
09. ひと夏の長さより…(センター:秋元真夏、賀喜遥香)
10. 何度目の青空か?
11. 日常
12. 裸足でSummer
13. 空扉

<期別コーナー>
14. ぐるぐるカーテン
15. ゆっくりと咲く花
16. 毎日がBrand new day
17. I see…

18. Route 246
19. 僕は僕を好きになる
20. インフルエンサー(センター:山下美月、与田祐希)

21. きっかけ
22. Sing Out!
23. 夏のFree&Easy(センター:与田祐希)
24. ガールズルール(センター:山下美月)
25. 君に叱られた
26. 他人のそら似

EN1. 最後のTight Hug
EN2. 僕だけの光
EN3. ダンケシェーン
EN4. 乃木坂の詩

印象に残ったシーンを挙げていきます。

まず思ったのが「最初から凄い走るな~」でした。

齋藤飛鳥の「やっぱすごいかも東京ドーム」というコメント。これについては後でまた触れます。
秋元真夏の「バトン渡した感じもある」という言葉にはちょっとドキッとしました。

誕生日当日だった掛橋沙耶香。バースデーケーキでお祝いされて挙動不審になるのもロウソクに「ふ~」する姿も可愛い。

『ファンタスティック3食パン』では「今日は罰ゲームやらないのね」と思いました笑

『自惚れビーチ』、アカペラのオープニングで楽しそうなメンバーたちの中ひとり緊張した面持ちの鈴木絢音

『ひと夏の長さより…』は(センターである)松村沙友理の卒業を機に楽曲の良さが多くのファンに認識されてスタンダードになった感じ。あとこのところの賀喜遥香は本当に一段と可愛い。

氷のような悲しみをたたえたメンバーたち、そこからサビで北野日奈子が激情を炸裂させる『日常』も見事。

『空扉』で生田絵梨花とおでこをくっつけて嬉しそうな遠藤さくら
そしてカメラを見つけたのにタイミングを失ってアピールできないのが可愛い佐藤楓

鈴木絢音がMCで「数年後にまた戻ってこれたら」とコメント。同期がどんどん卒業していく中でこの前向きな発言は嬉しいですね。

期別コーナーに入り、1期『ぐるぐるカーテン』で和田まあやと顔を見合わせた瞬間に涙ぐむ樋口日奈
『ゆっくりと咲く花』で登場した2期生がたった4人であることに気づいた時にこみあげる寂しさ。四方からセンターステージに歩み寄り「2」のポーズで全員泣き、一瞬後に鈴木絢音は笑ってみせます。
次の『毎日がBrand new day』で出て来た岩本蓮加は泣いていました。恐らく2期生たちの姿に感極まっていたのしょう。

『僕は僕を好きになる』で山下美月が登場した瞬間の眩いスター感。

終盤のMCでは1期生が10年の重さを感じさせる言葉を発します。
生田絵梨花の「どれもひとりではかなえられなかった夢」。
齋藤飛鳥は「人生そのもの」。

そこから円陣を組み、『きっかけ』。
ドームでこの曲をやることの意味。花道を歩きながらAフレを歌い出した齋藤飛鳥の声が震えていたのは緊張のためだけではないでしょう。

短くソロ歌唱をつないでいく演出。
ひとりひとりが乃木坂であること。歌い継いでいくことへの意思表示。その両方を感じさせました。

完全に余談ですが、なぜか私はDフレ前に残りは生田絵梨花だけと思い込み「Dフレ全部生ちゃんか!」と思っていました。そしてその一瞬後に「おお!俺たちにはまだ久保史緒里がいた!」さらに生ちゃんの圧倒的貫録の歌唱の前に「この人は桁が違う」と激しく感情が揺れ動きました笑

『ガールズルール』の煽り一発でノドを壊す山下美月。そして久保史緒里にキスする遠藤さくら

『君に叱られた』のイントロに起きたどよめき。フルサイズなのも良かった。

アンコールはこれが初披露となる生田絵梨花の卒業曲『最後のTight Hug』から。
それが終わり次の『僕だけの光』でひとりひっそりと泣く秋元真夏

生田絵梨花高山一実と3人で抱き合い「こんなに楽しいんだから生ちゃんずっといればいいのにねえ」と冗談めかして本音を言う齋藤飛鳥

『ダンケシェーン』のラスト「やっぱかずみんだな!」に(予想できたであろうに笑)異様に喜ぶ高山一実

そのかずみんが『乃木坂の詩』の後に語った「サイリウムが最初はただのガラスの棒、その前は割りばしだった…」というコメントに、彼女たちが上ってきた坂道の途方もない長さが偲ばれます。

この日のビジュアル仕上がってるメンは岩本蓮加
観ていて「凄みすら感じる美しさ」と感じましたが、その後に明かされた通り体調不良をおしての出演でした(それを私は「凄み」と受け取ってしまったのだと思います)。どうか無理をせずお大事になさってください。

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。



区切りではない自然体のドーム


全体の印象を率直に言えば、4年前の東京ドーム公演と比べて焦点がぼやけていた感が否めません。

でも、それは当たり前のことだとも思います。

そもそも東京ドームこそ4年ぶりですが、2018年の全ツはスタジアムツアー(野球場やサッカー場)で2019年はドームツアー(東京のみ神宮)。

つまりいわゆる新4期の5人を除けば全員がドームでのライブは経験しているのです。

やっぱり「到達点」という感覚があった4年前。
当時は燃え尽きによるその後の大量卒業がファンの間で懸念されていました。(実際はそうでもありませんでしたが)

前回はセットリストも集大成という印象の強いものでした。
それが端的に表れていたのがアンダーコーナー。

ひとりひとり名前を呼ばれて登場するアンダーメンバーたち。
そして齋藤飛鳥や衛藤美彩、伊藤万理華や井上小百合といった「アンダーレジェンド」までステージに上がります。

そこから6曲連続でアンダー曲を披露。
温泉トリオのセンター曲を4曲続けて黎明期の立役者に敬意を表し(伊藤万理華と中元日芽香のラストステージということもありました)つつ、残りの2曲は直近アンダー曲である『アンダー』『My rule』。
これもアンダーメンバーの苦闘を「過去の美談」ではなく現在進行形のものとして提示する意図が感じられます。

 アンダーはもうひとつの乃木坂の歴史である

それを明確に打ち出す演出でした。


それに対しこの日。

期別コーナーこそあったものの、明確なユニットコーナーもアンダーコーナーもなく2ブロック目がそれらをミックスした形。(もちろん最新アンダー曲センターの寺田蘭世が不参加という事情もあったでしょうが)

現在グループとして進めている各期そして選抜とアンダーの垣根を低くする「融合」。
それを色濃く反映した内容だったと思います。そしてそれ自体は卒業者が相次ぐ中で乃木坂の空気感を守っていくための重要なトライです。

ただ結果としてこの日のセトリは真夏の全国ツアーの延長線上のもの。
福岡公演2DAYSをともに視聴していたこともあり個人的には物足りない印象が残りました。ましてその両日が結成10周年と大園桃子卒コンという特別なライブだっただけに余計に。

…とここまでやや否定的なことを書いてきましたが、それでも私はこの日のライブは大きな意味を持つものであったと考えています。

鍵となるのは冒頭で述べた飛鳥ちゃんの「やっぱすごいかも東京ドーム」。

ここから想像するにやはりメンバーにとっても東京ドームのシンボリックな意義は「ある」。
(もちろん東京での大会場として乃木坂には「聖地」神宮球場があり東京ドームを使う機会が少ないというのも影響しているでしょうが)

であれば5期生加入直前というこのタイミングで現在のメンバーたちがそれを経験しておくことには計り知れない価値があるのではないでしょうか。

彼女たちとって、再び東京ドームに立つというのが特別なことでなくなる。
言い換えれば東京ドームが「悲願」ではなく現状と地続きの「未来」になる。

これ凄く大事なことだと思うんですよね。

すでにいくつもの坂を上った乃木坂。
メンバーの活動歴も年齢層も幅広くなった現状では、初の東京ドームのように全員が同じ熱量で追い求められる目標はもうない。

それでもそれぞれが「前回との差」で自分の成長を感じることができる。

それを今回一番実感したのは3期生たちでしょう。
前回は19th『いつかできるから今日できる』の時ですから、まだ大園桃子と与田祐希しか選抜を経験していないタイミングでした。
4年前は先輩たちに手を引かれてよちよち歩きでその場所に立った彼女たちが、今回は堂々たるグループの主力として帰ってきた。

きっと深い感慨があったことと思います。

そして次は4期生たちが同じように感じるはずです。


その意味で、2021年の東京ドームは未来へとつながるものでした。


『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各記事の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

また、note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。



びーむ色調補正3
乃木坂黎明期にグループを牽引した「御三家」最後のひとり、松村沙友理。
ついにその卒業コンサートの日が来てしまいました。

その第1部は悲願のさゆりんご軍団ライブ。
なぜ卒業「コンサート」なのに軍団は「ライブ」なのだろうかと思わなくもありませんが笑

しんどい、でも素晴らしい


セットリストはこちら。

Overture(鼻歌Ver.)
01. ぐんぐん軍団
02. 白米様

替え歌コーナー
03. さゆりんごが咲く頃
04. 何度目の軍団か?
05. ライス!
06. りんごのパクリから(with秋元真夏、鈴木絢音)

07. 大嫌いなはずだった。(with秋元真夏、鈴木絢音)
08. 働き方改革
09. さゆりんご募集中

例によって印象に残ったシーンを挙げていきます。

そもそも『Overture』の替え歌を鼻歌でやるというのが既にまっつんイズム全開。

オープニングは軍団の自己紹介ソング『ぐんぐん軍団』。

伊藤かりん、佐々木琴子、中田花奈という卒業生たちが当たり前のように出てきますが、そもそも卒業生が乃木坂のライブに出ること自体が異例中の異例。ましてや琴子は他事務所だし。私の記憶が確かなら2ndバスラのアンコールに岩瀬佑美子と宮沢成良が登場して以来ではないでしょうか。(あれは出演ではなく飛び入りでしたし)

それにしても琴子美人だな~どうにか乃木坂で活かす方法はなかったのかと、いまだにしつこく思ってしまいます笑

少し大人っぽくなった印象の彼女。
こんなにしっかり歌声を聴いたのは初めてな気がします。さゆりんご軍団以外でソロ歌唱パートってありましたっけ?

そしてキラーチューン『白米様』はフルコーラス!

続く替え歌コーナーで改めて思い知らされます。
やっぱ俺、まっつんのセンス好きだな~。

『ライス!』の「炊く前 米 米 米よ 炊けたら メシ メシ メシよ~」とか抜群じゃないですか。

『さゆりんごマジョリティー』やらんのかとはちょっと思いました。

『りんごのパクリから』での秋元真夏との茶番が微笑ましいというか涙が出そうになるというか。そして真夏さんリスペクト軍団も既にもう真夏さんと鈴木絢音の2人しか残っていないという事実に切なさがこみ上げます。

軍団でハワイ旅行したいねトークの中での
松村「お金出すよ!」
琴子「じゃあ振り込んどいてください」
松村「それは話が違う」のやり取りも面白かった。

JAの人、前に積まれている唐揚げの量多すぎじゃないですかね?

ラストの『さゆりんご募集中』もフルコーラスだったのが良かった。

そして50年後の武道館はちょっと私は無理っぽいのでもう少し早めに実現していただけると助かります。

当サイトはアフィリエイトプログラムで雀の涙未満の微々たる収益を得てはおりますが、本文の内容は100%私の個人的な意見であり忖度は一切ございません。



とまあつらつらと書いてきましたが、個人的に最も印象に残ったのはクライマックスの『大嫌いなはずだった。』。

この日が初披露だったそうです。

そもそも個人的にはボカロをまったく聴かないのでHoneyWorksさんも知りませんでしたし、この曲も初めて聴きました。

正直、甘酸っぱい青春ストーリーの断片をひたすら積み上げたようなこの曲の歌詞はおっさんには…まあ少なくとも私にはしんどかった。
冠番組でやる妄想シチュエーション系とか懐かしの「乃木恋リアル」のような気恥しさを1曲通して見せられ続ける感覚というか。

ですが、これがまた良かったんですわ。
いや、しんどかったんですよ。最後までずっと「この歌詞はおっさんにはしんどいな~」と思いながら聴いていて、なのに終わった時の感想は「でもすげえ良かったな」でした。

その理由として思い当たるのは、この軍団ライブで唯一のシリアスな楽曲だったという点。

そう、我々は初めて「さゆりんご軍団(with真夏さんリスペクト軍団)の本気」を目にしたのです。

基本的に「まっつんが面白いと思ったことをやる」というコンセプトで進んできたさゆりんご軍団。でもそれは結果的に軍団員のアイドル性(※)の高さを笑いというオブラートにくるんでしまっていたのではないか!それは天才・松村沙友理とは思えない失策だったのではないか!などと今さらにも程がある感情がこみ上げてきて我ながら始末に負えないです笑
※この記事における「アイドル性」は「萌え」とか「胸キュン」させる能力、ぐらいの表層的な意味で使っています

まあ軍団に限らず、乃木坂って基本「ゴリゴリのアイドル」やらないじゃないですか。
上で書いた妄想シチュエーションや乃木恋リアルもあくまでも「演じています」「ファンサービスです」というスタイルでやって、その後照れるところまでがワンセットですよね。

ファンも概ね「ナチュラル」であることを是としているように思います。
それこそ真夏さんやまっつんは「ぶりっ子」だけど、そのふたりでさえそうでない部分を特に隠そうとしない。あくまでも引き出しのひとつという位置づけです。

普段グループでは使っていないアイドル性。
しかしこの曲で私が目にしたのは寺田蘭世や鈴木絢音、そして佐々木琴子が本気でアイドルをやり切った時の破壊力でした。

だとすると天才・松村沙友理はそのラストステージで我々にこう言いたかったのかもしれません。

「普段やってないだけで、乃木坂ちゃんが本気出したらめっちゃアイドルなんやで!」



前へ    次へ
1/3ページ


『2020年の乃木坂46』 kindle版
過去に当ブログに掲載した記事を再構成し加筆したもの。
総文字数84,000文字、加筆部分だけでも10,000文字以上のボリュームでブログをご覧になった方にも楽しんでいただけることと思います。

「今にして思うこと」は各記事の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。


Kindle本が読み放題になる Kindle Unlimited の新規登録は こちら から。 
初めてご利用の方は30日間の無料体験が可能。期間終了後は月額980円です。

また、note上で乃木坂46に関する有料記事を公開しています。どちらも無料で読める部分がありますのでぜひご覧ください。

『アンダラ伝説』¥300
伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

マガジン「2019年の乃木坂46」¥200
当ブログに掲載された記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧の方にも楽しんでいただけることと思います。



このページのトップヘ