
2023年2月18日、公式ブログで鈴木絢音さんが卒業を発表しました。
2期生最後のひとり。
まずは彼女の歩みを振り返りましょう。
ゆっくりと咲いた花
秋田県出身。
「秋田の星」である生駒里奈の存在を通してグループを知り、2013年3月に2期生として乃木坂46に加入。
5月に『16人のプリンシパル deux』と『乃木坂って、どこ?』でお披露目。
当時の印象はやっぱり「こけしちゃん」。(すみません)
髪型も切れ長の目も化粧っ気のなさもその立ち居振る舞いもすべてが「田舎の純朴な女の子」という感じでした。
2期生の中で正規メンバーに昇格するのが最後だった、いわゆる「ボーダー組」のひとり。
昇格発表は加入から2年近くが経過した2015年2月、極寒の西武ドームでのことでした。
ちなみにずっと秋田から通いで活動していましたが、その年の5月に上京します。
なかなか注目を集める機会はありませんでしたが、加入から3年経過した2016年あたりから徐々に冠番組でも活躍し始めます。
2016年6月放送の『乃木坂工事中』。
メンバーのお父さんにインタビューという父の日企画で「娘の結婚相手に望むことは?」という問いに絢音ちゃんのお父さんは「お金」。
全力の仏頂面をする彼女。
設楽さんの「好きな人ができたらちゃんと聞ける?」という振りに弱々しい笑みを浮かべ「お金ありますか?」。
同年11月、同じく『工事中』での「乃木坂イチのクールガール、鈴木絢音を笑わせろ」という企画では全面的にフィーチャーされ、彼女の独自の感性が明かされました。
さらにその翌日の『NOGIBINGO!』では伝説の「ささきとすずき」。
両冠番組で同時に「主役椅子」に座るという恐らく卒業企画を除けば乃木坂史上でも唯一であろう(調べてません)快挙を成し遂げます。
この時は短距離走タイム測定で、「位置について」の直立不動からシュバッと「用意」のポーズに入るのが面白かった。
以前も書きましたが、この時はまだ佐々木琴子の方が積極性がありました。
絢音ちゃんは笑ってしまうぐらいのサービス精神のなさ。当時「面白いけど、やる気がないって非難する人もいるだろうな」と思いました。(今改めて観直しても同じ感想でした)
今にして思いますが2016年末ということは3期生加入直後。
後輩のお披露目前に2期生の中でも前に出る機会の少なかった彼女にチャンスを与えたのではないでしょうか。
17thアンダー曲『風船は生きている』で自身初のフロント。
この時は「将来美人さんになるんだろうな感」は満載だけど、まだまだ地味で素朴な印象でした。
そのビジュアルが洗練されたのは2017年秋のアンダラ九州シリーズ(『アンダー』の時です)の頃からでしょうか。
そして翌2018年1月発売のアンダーアルバム『僕だけの君』に収録された『自惚れビーチ』で初めてセンターを務めます。
続く20thシングル『シンクロニシティ』のアンダー曲『新しい世界』でもセンターとなり、アンダラ中部シリーズの座長に。
その勢いのまま、21stシングル『ジコチューで行こう!』で遂に初選抜。
この時すでに加入から5年3ヶ月が経過していました。
そして迎えた2018年7月の6thバスラ、通称「シンクロニシティライブ」。
ここで彼女の乃木坂人生におけるひとつのハイライトが訪れます。
神宮球場と秩父宮ラグビー場で同時開催された画期的な、というか無茶苦茶なこのライブ。
だってメンバーの半分は反対の会場でパフォーマンスしてるんですよ。
基本「選抜」と「アンダー」に分かれて、会場を移動して入れ替わりながら行なわれたのですが、ここでアンダー側の座長だったのが最新アンダー曲のセンターだった鈴木絢音でした。
これ何が凄いって、選抜側のセンターが白石麻衣なんですよ。
まいやんと「同格」ではもちろんないです。ただ「並列」の状態で成立させたのは素晴らしい。オープニングのVでもそのふたりが並んで映し出され会場のファンがどよめきました。
この時期の絢音ちゃんが完成の域に達し、そのビジュアルに「説得力があった」からこその演出でした。
そして3DAYSの初日、「聖地」神宮のオープニングを任されたのはアンダーメンバー。
曲は絢音ちゃんの代名詞である『自惚れビーチ』でした。
しかし、この先の道のりも平らかなものではありませんでした。
22nd『帰り道は遠回りしたくなる』では選抜から外れます。
23rd『Sing Out!』で復帰するものの24thで再びアンダーに。
超選抜の厚い壁に跳ね返され、三番目の風と4番目の光の勢いに飲み込まれそうになりながらも歩み続けた彼女。
27th『君に𠮟られた』で2年3ヶ月ぶりに選抜復帰するとそこから4作連続の選抜入り。最終シングルとなった『ここにはないもの』では初めて福神にもなりました。
『ゆっくりと咲く花』を地で行くような乃木坂人生でした。
同期の中で最後までグループに残り、ほぼすべての先輩を見送った絢音ちゃん。
思い出すのが舞台『墓場、女子高生』のラストシーン。
彼女が演じるジモは最後にたったひとり舞台に残り。
遠くに行ってしまったヒノチ(伊藤万理華)の声を風の中に聴くのです。
何年もの時を経て、現実と作品がリンクする。古参の醍醐味ですね笑
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行間が生む魅力
加入からちょうど10年。
それだけの期間グループにいたのに、彼女はずっとミステリアスな雰囲気を纏っていました。
冠番組などで見せる姿と普段の姿が違うというのは2期生メンバーからの証言でもわかります。ただ普段の「明るくて口数が多い絢音ちゃん」というのが一体どういう状態なのかどうにも想像がつきません笑
そしてずっと疑問だったのが、本人が素の自分を見せたいのか見せたくないのか。
この記事を書くにあたり調べてみたところ、『君に𠮟られた』の時のインタビューで彼女自身がこう答えていました。
本当はかっこいい自分や、良い自分だけを見せていきたいのですが、私は器用な人間じゃなかったんです。でも、かっこ悪い自分を見せたくないという気持ちを取り払ったら、楽しんで活動できるようになりました
元々アイドルが好きいろいろなアイドルを見てきたこともあって「こういうアイドルさんになりたい」「こういうパフォーマンスがしたい」など自分の理想の姿を明確にしすぎてしまったのかもしれない
夢をかなえる秘訣は「素の自分を愛すこと」です
「キラキラな笑顔」のいわゆる王道アイドルに憧れ、そうありたいと思いながらもカメラの前ではうまく笑えなかった。そんな自分をふがいなく思っていたけれど、時と共に愛せるようになった。
そう語っているのです。
「素の自分」「目指す自分」「カメラに映る自分」
大なり小なりどのメンバーもそのギャップを抱えているでしょう。
しかし鈴木絢音のそれはとりわけ大きく、そのギャップによって生まれた「行間」をファンは「ミステリアス」と感じた。
そして、そこにこそ彼女の魅力はあったのです。
不器用な自分を不器用なままでそこに在る姿は、もしかしたらアイドルとしては未熟なのかもしれません。
でもそんな彼女が10年も在籍できて、その魅力を届けることができたのはやっぱり乃木坂ならではだったのだと思います。
最後にこれからの彼女について。
卒業後の予定は「全く決まっていません」とのこと。
でも在籍中から様々な舞台やドラマに出演してきたので、きっと演技の道に進むのでしょう。
2022年46時間TVの電視台「狂気的な彼女」で見せた「美しくて不穏な静けさ」。
そんな彼女にしか出せない空気を活かせる役柄に巡り合えることを願っています。
鈴木絢音さん、10年間お疲れさまでした。
◇
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「今にして思うこと」は各記事の末尾に「追記」という形で新たに文章を加え、さらに書き下ろしとして4期生の初冠番組であった『乃木坂どこへ』を振り返っています。
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