ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

タグ:3期

びーむ色調補正3
前の記事ではこの日の印象に残ったシーンを列挙しました。

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当記事では彼女たちの「ことば」に注目したいと思います。

「いい答えだね!」


この日、というかむしろ「この日もまた」3期生は数多くの印象的な言葉を残しました。

最初のMCから梅澤美波が飛ばします。
「7年目ってこんなに変わるんだ、成長できるんだと自分たちの強さだったりしっかり経験積んできた部分を見せたい」。
まさしくいい意味で圧があるコメント笑(そして短期間でこれを看破し表現した小川彩の非凡さよ!

そして「初めて私たちが先輩と一緒に歌った曲」、『設定温度』後のMC。

久保史緒里「乃木坂には一緒に泣いてくれる人がいた」。
梅澤美波「誰よりも乃木坂を愛してきた自信があります」

そこからの『世界で一番 孤独なLover』という流れもなかなかグッとくるものがありました。
やっぱり『セカラバ』って、2015年ぐらいまでの=それこそSTILL YOUNGだった頃の乃木坂を知らなければ出てこない選曲だと思うんですよ。

さらに今、最も歌うべき曲『未来の答え』

先輩が全員卒業して初めてのシングルとなる32nd『人は夢を二度見る』。
センターを任されたのはくぼした=久保史緒里と山下美月。

『三番目の風』『思い出ファースト』では大園桃子の両脇を固め、3番目の3期生期別曲『未来の答え』、そして『不眠症』でWセンターを務めたふたり。

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あの日夢見た未来が、その答えが出た今作。

だからこそ。
その曲中でくぼしたはこんなやり取りをします。

山下美月「未来の答えは出た?」
久保史緒里「7年経って、みんなで笑ってステージに立ってる!」
山下美月「いい答えだね!」

このふたりの言葉を読み解くには「お見立て会リバイバル」後のV中コメントを振り返る必要があります。

岩本蓮加は「認めてもらうのに必死でもがいていた」。
久保史緒里の「どうやったら受け入れてもらえるんだろう」。
そして再びれんたんの「単独ライブでつけた力ってスタート地点にも立てていないと思った」。(このあまりに的確な現状分析を弱冠13歳で行なえていたことにも驚愕!)

乃木坂に憧れて。
先輩たちとの間には絶望的な差があって。
「3期は乃木坂らしくない」と言われているのも知っていて。

それでも「乃木坂が好き」だから「ここにいたい」と、悩んで迷って足掻いた日々

2年前の3期ライブは、そんな彼女たちが遂に「乃木坂46になれた」と感じた記念すべき日だったのです。

あれから2年経ち、さらに状況は変わりました。
「真ん中に立つべき」大園桃子は卒業し、先輩たちも全員グループを去った。

そして今、3期生たちは先頭に立っています。
かつては乃木坂を名乗ることすらためらいがあった彼女たちが。

正直に言えば背負うものの大きさに時々不安で震えることもあるけれど、それでも今こうして「みんなで笑ってステージに」立てている。

そのこと自体が「私たちは間違ってなかった」証

アンコールラスト前のMCで山下美月が口にした「ここまで頑張ってきてよかった」という感慨は、つまりはそういうことなのだと思います。

これもまた大河。

くぼしたふたりだけでなく、3期全員の大河です。

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勲章を手にした先輩たちと


時に体育会系と評される3期生。

その熱い想いが伝わるライブでした。

2年前の方が良かったなんて言わせない
4期5期に花を持たせる気もさらさらない

もちろん彼女たちは別に「2年前を超えなければならない」とか「後輩よりいいライブをしなければならない」なんて思っていないでしょうけれど。
「2年前の方が良かった」「後輩の方が良かった」なんて言わせないよ、という自負もあるでしょう。

プライドも負けん気もあるけれど、何より感じるのは余裕

思い出すのは1期生の姿です。

2017年神宮(1公演で各期の期別+全体ライブという構成だった)の円陣で「3期と2期なんか関係ないぐらい超いいライブにしようぜ!」と叫んだ1期生たちの「いい意味での大人げなさ」。

…と言ってみたものの、私の当日のメモには「2018年の夏頃みたいだ」と書かれていました笑

4期生が2015年なら、3期生は2018年夏ぐらいの雰囲気があるんですよ。
あの6thバスラ「シンクロニシティライブ」の頃。

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ジコチュープロデュース企画でいろいろ遊んでいたあの頃の先輩たちと、楽曲を再解釈して自分たちの色を載せているこの日の3期生たちにどこか相通ずるものを感じました。

上で書いた2017年神宮の後、乃木坂は初の東京ドームそしてレコード大賞受賞と一気に坂道を駆け上がります。(思えば3期生はその姿を、デビュー1年にも満たないよちよち歩きの状態で羨望の眼差しで眺めていたわけです)

そして明け2018年の乃木坂。頂点に上り詰めた後の乃木坂。

あの頃の先輩たちのように分かりやすい勲章を手にしたわけではない。
同じほどの「スター軍団感」も正直、ないと思う。(これはそもそも人数が違うのでしょうがない)

それでもこの日の3期生が見せた、観客を巻き込む力。
あんなに気合が入っているのに、決して力んではいないこと。
その根底にある揺るぎないもの自信

それはやはり、既に多くの勲章を手にしていた2018年頃の先輩たちを思わせるのです。

この日、メンバーから一番多く出た言葉は「楽しい」。
岩本蓮加と山下美月がずっとニコニコしていたのが印象的でした。

きっと3期生は、ようやく自分たちを認めることができたのでしょう。

 乃木坂の看板を、背負ってもいいんだよ

そう自分たちに向かって言えるほどに。


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びーむ色調補正3

あれを超えられるのか


2年前、9thバスラでの3期生ライブ。


私はそれを「完成されたアイドルの姿」「まさに彼女たちの4年半の総決算」と表現しました。

アイドルとして脂がのり切っていた彼女たち。
デビュー当初以来となる4年ぶりの期別ライブ。
そして大園桃子の卒業が見え隠れし、メンバーもファンも「12人での最後のライブだろう」と薄々感じていたというシチュエーション。

開演前からもの凄い期待感が充満し、そしてそれを易々と超えてみせたあの日

あれから2年が経ち、太陽たる大園桃子はグループを去りました。

あれを超えられるのか。
身勝手な観客である私はついそんなことを考えてしまうのです。

そしてこうも思っていたのです。
桃子がいないというその一点において、超えられるはずがない。


セットリストはこちら。

Overture

01. 僕は僕を好きになる
02. 空扉
03. 三番目の風(センター:与田祐希)
04. トキトキメキメキ
05. 自分じゃない感じ

<ユニットコーナー>
06. 嫉妬の権利(向井葉月、山下美月、与田祐希)
07. Threefold choice(佐藤楓、梅澤美波、吉田綾乃クリスティー)
08. 大人への近道(阪口珠美、中村麗乃、久保史緒里)
09. 心のモノローグ(伊藤理々杏、岩本蓮加)

10. 失いたくないから
11. 別れ際、もっと好きになる(センター:吉田綾乃クリスティー)
12. 錆びたコンパス(センター:中村麗乃)

<お見立て会リバイバル>
13. 命は美しい(センター:向井葉月)
14. 裸足でSummer(センター:与田祐希)
15. ガールズルール(センター:山下美月)

16. 設定温度(センター:吉田綾乃クリスティー)
17. 世界で一番 孤独なLover(センター:佐藤楓)
18. 欲望のリインカーネーション(センター:阪口珠美)

19. 大人たちには指示されない
20. 未来の答え
21. 毎日がBrand new day
22. 僕の衝動
23. 僕が手を叩く方へ

EN
EN1 そんなバカな…
EN2 転がった鐘を鳴らせ!
EN3 思い出ファースト
EN4 三番目の風


印象に残ったシーンを挙げていきます。

この日のビジュアル仕上がってんなあメンは与田祐希阪口珠美梅澤美波も印象に残りました。

1曲目に選ばれたのは『僕は僕を好きになる』。
白石麻衣卒業後の一発目。3期生3人のフロント。

最初から煽りまくるメンバーたち。

MCで客席からの声援に喜び「あ~素晴らしい人々~」とほのぼのする阪口珠美
「すっごい楽しいれんか~」と興奮を抑えられない岩本蓮加

『Threefold choice』。お姉さん組3人が全力でぶりっ子。

『大人への近道』は新・中3トリオ。
「私たちこんなに大人になったね」という感慨と「憧れたこの曲をやれる」喜びと。
3人だけどサンエトポーズ。

りりれん=伊藤理々杏岩本蓮加による『心のモノローグ』。
私はここでやっと年齢別のユニットであることに気づきました笑
伸びやかなれんたんの歌声が良いですね。個人的に彼女はもっと歌メンとして前に出てほしい。

岩本蓮加向井葉月がギターの準備をし「あの曲をやります」って言うから2年前と同じ『僕だけの光』だと思っていたら違いました。
譜面に目を落とすれんたんの横顔の美しさたるや。まさに超彫刻

『錆びたコンパス』で客席が黄色に染まらなかったのはちょっと残念。

ライブ中盤では「お見立て会リバイバル」と題して6年半前にやった3曲を再現するコーナー。

『命は美しい』では大園桃子に代わり向井葉月がセンター。
この曲の山下美月の肩の入れ方が異様にかっこよかった。

その美月、『ガールズルール』ではド迫力の煽り。

「初めて私たちが先輩と一緒に歌った曲」、『設定温度』。

久保史緒里のボーカルの安心感。
サビでは全員のリズムが走ってしまっているのすら「気持ちが入りすぎたため」と思わせます。
そしてラスト、モニターに映し出される3期生の初期アー写。

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『世界で一番 孤独なLover』!

そして『欲望のリインカーネーション』。
オリジナルバージョンは胸を強調した振り付けに目隠しで好きじゃないのですが、この日は振り付けを変えて変ないやらしさがなくなっていました。なんだ、いい曲じゃん笑

そして初披露時に「欅かよ」と書いた『大人たちには指示されない』も「ちゃんと乃木坂の曲に」なっていました。

このあたり楽曲を再解釈して自分たちのものにするという3期生の地力を感じさせます。

そしてここで「今、最も歌うべき曲」のイントロが流れます。
『未来の答え』。これについては別途書きます。

『僕の衝動』。
目がバキバキの久保史緒里。その場にいる全員に期待されているという状況の中でしっかりキメ切る貫録の伊藤理々杏

本編ラストは『僕が手を叩く方へ』。
モニターに映し出される3期生たちのメッセージ、山下美月は「全員まとめて愛してるよ」。
さすが美月。最高だな。

ラスサビ、会場全体のクラップ。みんな泣く。
普段泣かない与田祐希が凄く泣いています。

アンコール『そんなバカな…』。山下美月の「バカになれ~!」という煽り。
バズーカを撃てないのが可愛い伊藤理々杏
みんながインする中でひとりだけTシャツの後ろを出すという違う着こなしの岩本蓮加
そのれんたん、バズーカ撃って「おおっ!?」という驚愕の表情。

アンコールラストは『思い出ファースト』。フルサイズ!
外周を歩きながら笑い転げるれんたま(岩本蓮加阪口珠美)。

エンディングで「みんな本当に大好き!」と叫ぶ梅澤美波

その間にこっそりスタッフさんに了解を取りに行っていた山下美月が梅ちゃんに耳打ちし、予定外のもう1曲。

はじまりの曲、『三番目の風』。


一言でいうと「分厚い」ライブでした。

言い換えれば、幅が広い。
感情の幅。表現の幅。そしてキャラクターの幅。

なんかやっぱり「さすがは最上級生」という感じ。

最初に書いた「2年前を超えられるか」なんて、どうでもいいことだと思わせるだけの満足感でした。


続きます。

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びーむ色調補正3

乃木坂46になりたい


この日のキーワードはやっぱり「憧れ」だったと思うんですよ。

加入から4年半の月日が過ぎ、現在では堂々たる乃木坂の主力へと成長した3期生たち。

それでも今なお、彼女たちは恋焦がれ憧れ続けているのです。

「乃木坂46」に。

自分たちは4年半をかけて憧れにどれほど近づけたのか。
この日のライブはそれを他の誰でもない自分たち自身に対し証明する場だったのだと思います。(ファンや関係者や世間に、ではなく)

そう考えればオープニングから6曲ノンストップの理由もわかります。
彼女たちはもう一度原点から、4年前の3期ライブからスタートしたかったのでしょう。

4年前、会場はキャパ800の今はなきAiiA Theater Tokyo。
だからなのでしょう。そのフォーマットは初期アンダラのそれでした。
ノンストップで踊りまくる。ひとりMC企画。中央通路に設置されたお立ち台。

3期生は自分たちの原点であるあの場所にもういちど立とうとしたのです。

最初のMCの時点で早くも汗だくになって髪もグチャグチャで息も絶え絶えで、それでもなんか笑っちゃってた12人。

そうそうこれ!あの日もこんな感じだったよね、と。
(あの日ほど若くないからさすがにしんどいわ、のメンバーもいたかもしれませんが笑)

そもそも始まる前からみんな「かかりまくってた」じゃないですか。

多くのメンバーがブログやモバメやSHOWROOMで「絶対に観てほしい」と語っていました。そして必ずそこには同期への愛が溢れまくった言葉も添えられていました。

中でも最高だったのが山下美月が開演直前にアップしたブログ。

 ついに3期生ライブ当日になりました!
 私はお家でリハーサル動画を5時間くらい見て
 あー3期生好きと思いながら一昨日も泣いて昨日も泣いてしまいました笑

 今回のライブ各期によって雰囲気が全然違うと思うのですが
 私たちは王道の継承なのではないかなと思っています

 3期が入ってから乃木坂は~という声ももちろん聞いてきました
 それでもずっと乃木坂にこだわり続けてきた私達だからこそできるライブにしたいです

 仲間であり"戦友"
 変わらずにいてくれる皆が大好きです
 3期生のこと褒めてばっかりで申し訳ないのですが
 私にとってはみんなヒーローでキラキラしててかっこいい最強の11人です

 

「王道継承」「それでもずっと乃木坂にこだわり続けてきた」と、3期生をずっと「乃木坂感薄めの個性派」と表現してきた私からすると少し申し訳なくなるような言葉が並んでいます。

そして3期の吟遊詩人こと久保史緒里もライブ中にいくつも示唆的な言葉を述べました。

「1期生は原点であり頂点」と知りながらなお「追いつくのが使命」

4年前のライブでは「絶対に追いつけない」と言っていたんです。
でも、もうそんなことを言っている場合ではない。
先輩たちの築いた大好きな乃木坂を存続させるためには、自分たちが追いつかなければならない。

だから「歌い継ぐことを辞めちゃいけない」

これもまた、堂々たる「王道継承」宣言だと思いませんか。

私もグループ結成当初からのファンのひとりとして、3期生の乃木坂愛に溢れた、それゆえにもがき苦しんだ歩みを見てきました。

7thバスラから明らかに表面化してきた「卒業生のポジションを埋める覚悟」
『毎日がBrand new day』のMVで見せた「乃木坂感」
46時間TVでの「乃木坂の太い幹」としての存在感
『僕は僕を好きになる』の3期フロントで見せた「乃木坂を背負う覚悟」

その全てが結実したのがこの日のライブでした。

決して先輩たちの真似ではなく、自分たちの強みである個性を残しながらも時の経過とともに少しづつグループの空気感を纏い洗練や品や風格が備わり始めた。

凄く語弊がある言い方かもしれませんが、
乃木坂感薄めだった彼女たちが(乃木坂感は相変わらず薄いままなのに)、こんなにも乃木坂になった。そのことが本当に感動的です。

まあ美月なら「こらぁ、乃木坂感薄めとか言うなぁ!」と笑いながら怒るでしょうけれど。

4年半。そう書くと長い時間です。
でも切り口を変えてみましょう。3期生のほとんど(よだもも以外)が選抜に入ったのって20thシングル『シンクロニシティ』からなんですよ。

『シンクロ』なんてつい最近じゃないですか。古参オタ(かつおっさん)の方ならわかりますよね。
そこから今日までの間にここまでの成長を遂げた3期生たちは本当に称賛に価すると思います。

そしてこの日のライブはそんな彼女たちの4年半の歩みをそのままなぞっているかのようでした。

オープニングで4年前の汗だくで必死にやっていた頃を思い出し
衣装コーナーでは批判を浴びながらも先輩のポジションを埋めてきた覚悟の日々を振り返り
いつしか自分たちなりの乃木坂感を身に纏い
1期生同様に他期の曲を自分たちなりの色をつけてパフォーマンスし
乃木坂の代表曲3曲を歌いきる。

そして本編ラストは特別な曲『思い出ファースト』

4年半が経って、改めて「君とここにいる奇跡」を歌う12人。

 私たち、乃木坂46になりましたよ。

そのどこか誇らしげな表情はまるでそう言っているかのようで。

素晴らしく感動的な光景でした。

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いつか振り向き最高の夏だったと


前の記事、そしてこの記事のここまでの部分は大園桃子の卒業発表以前に書いていたものです。

それをライブ開催後2ヶ月もアップしなかったのは、記事の締めくくりが上手くまとめられなかったためです。

素直に浮かんできたのはこの言葉。

「まさに彼女たちの4年半の総決算」

でも、怖かったのです。
こう言ってしまったらあまりにも大きな区切りがついてしまうから。

それぐらい、この日のメンバーたちはこれまでのすべてを叩きつけ「やり切った感」を発散していました。
観ている側の私が「今日で卒業を決意するメンバーがいてもおかしくない」と心配になるほどに。

そして2021年7月4日。3期生オーディションの募集開始からちょうど5年後。
公式サイト上で大園桃子さんの卒業が発表されました。

この文章を書いている時点では明言されていませんが、この3期ライブ開催が決まった時点で既に彼女の卒業は決まっていたのでしょう。

そう思えばすべて納得がいきます。

オープニングでぞのっちに歩み寄るメンバーたちの姿を観て涙腺が緩みそうになったのも
あの日に未来と呼んでいたものがここにあると感じたのも
完成されたアイドルになったという感慨も

『サヨナラの意味』で山下美月の頬をつたった涙も
『きっかけ』で久保史緒里が顔を歪めて泣いたのも
『ハウス!』でお互いの頭を優しくなで合っていたのも
『僕だけの光』でのメンバーたちの姿があんなにも切なかったのも。

ライブ後、ネット上には絶賛の嵐が巻き起こりました。

それはきっと彼女たちがこの日に込めていた想いが画面越しでも伝わったからなのでしょう。


「合格者は全員。皆さんです」

そう今野さんから告げられたあの日に始まった3期生の物語、
そのひとつの到達点。

本当に心を揺さぶられるライブでした。

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タオル補正
『思い出ファースト』
乃木坂46の3rdアルバム『生まれてから初めて見た夢』収録。2017年5月24日リリース。歌唱メンバーは3期生12人、センターは大園桃子。

アンセムよりこっちが好き


3期生のアンセム、と言われればそりゃ間違いなく『三番目の風』です。

もちろん異論はありませんし自分もめちゃめちゃ好きな曲です。ライブでの盛り上がりも半端ない。

でも個人的にはこの『思い出ファースト』も負けず劣らず、いやなんならこっちの方がちょっと好きかもしれません。

その理由を考えて思い当たったことがあります。
そうか、『思い出ファースト』ってあの曲に似てるんだ。

もうタイトルの段階で書いちゃってますけど笑、この曲『走れ!Bicycle(以下、『走バイ』)』の3期生版ですよね。

ひとつ前の記事で考察した『走バイ』。その魅力をこんな文章で表現しました。

 「青春感」「通り過ぎた青春感」
 「いつか今が思い出になってしまうことに極めて自覚的」

これ、そのままこの曲にも使えちゃいます。
まあタイトルからそもそも「思い出」って入ってますからね。

歌詞の内容は一言で言ってしまえば「大切なのは最高の思い出を作ることだから喧嘩なんかしないよ」。
ちょっとわがままな彼女を甘やかして言うことを聞いてあげる主人公の心情が一人称で描かれています。まあ率直に言ってしょーもないラブソングです笑

なのになぜこんなに切なさを感じさせるのか。
その鍵は歌詞のこの部分にあります。

 思い出ファースト いつか振り向き
 最高の夏だったと…

この「いつか」の時。私にはどうしても「君」が隣にいるイメージがわきません。

なぜなら『思い出ファースト』で描かれている「君」には魅力がない、というかほとんど描写すらされていないからです。そのため永続的な関係性とは到底思えない。
何年か過ぎて、主人公がひとりで思い出し懐かしんでいる。「あの頃は若かったしバカだったけど、キラキラしてたよな…」そんな心象のように感じます。

「君」のAKB、「僕」の乃木坂


編曲も切なさを強調しています。

イントロのド頭、オルゴールみたいなシンセの音色からして実にノスタルジック。
そこから一気に盛り上がるイントロも夏っぽいしセンチメンタルだし。

でもまあ、これ自体は夏曲としてはよくあるタイプのイントロです。
AKB48の『ポニーテールとシュシュ』や『Everyday、カチューシャ』あたり、特に前者にイントロの構成は酷似していますよね。

これらAKBの夏シングルと『思い出ファースト』を比較すると興味深いことに気づきます。

歌詞は同じく「僕」の一人称ですが、AKBでは「君」の魅力を描写する表現がこれでもかと続きます。
そしてメンバーは「僕」の言葉を歌いながら、演じているのはむしろ「君」。キラキラ輝く魅力的な女の子を演じています。

「こんなにキラキラしているけれどそれは実は一瞬のことなんだ」と観る側に思わせる、アイドルの煌めきが一瞬であることと重ねて切なさを感じさせる秋元康の得意技ですね。

翻って乃木坂。

先に述べたように『思い出ファースト』の歌詞では「君」に関する描写がほぼありません。つまりメンバーが演じているのは曲中の「君」ではなく「僕」。
前の記事書いてる時点では気づいていませんでしたが『走バイ』も同じです。「君」についての描写が極端に少ない。

それがAKBと乃木坂の違いというにはサンプルが少なすぎますし、秋元康がそこまで意識的に書き分けているとは到底思えません。事実『裸足でSummer』では「僕の言葉を歌いながら君を演じて」いますしね。

ただ、その存在自体に「儚さ」「ノスタルジック」な魅力を纏っている乃木坂。
そんな彼女たちが「いつか今が思い出になってしまうことに極めて自覚的」な「僕」として歌い踊る姿が切なさを増幅させていることは間違いないでしょう。

観る側が切なさを感じるAKBに対し、切なさを感じながら演じている乃木坂。

そんな比較ができるかもしれません。

3年前の記憶


そして『走バイ』と最初のプリンシパルとがそうであるように、この曲と分かちがたく結びついている記憶があります。

2017年5月9日から14日の3期生単独ライブ。

たった3年前のことなんですね。
そのわずか3年の間にも色々なことがありました。
会場となったAiiA Theater Tokyoも既に閉館しています。

そして3期生もそれぞれ様々な浮き沈みを経ながら堂々たる乃木坂の主力へと成長しました。

この3期単独ライブについては以前に4期ライブの記事の中で詳しく書いたのでよろしければそちらもご覧ください。



ナチュラルボーン・センター大園桃子を中心に山下美月と久保史緒里が脇を固める『三番目の風』と同じ布陣。

3期新規のファンの方が多かったのでしょうか。コールもあまり定着していなく、アンコールも途切れがちで。まだメンバーもファンも手探りだった印象があります。

ここでも『走バイ』の考察で初めてのプリンシパルに挑んだ1期生たちについて書いた文章がそのまま当てはまります。

 まだ坂道を上りだしたばかりの、まだまだ無我夢中で本当に何者でもなかった彼女たち。
 若くて未熟で拙くてみっともなくて、でもそのひたむきな姿に胸を打たれた。

そんな3期単独ライブ。与田祐希が「3期の青春みたいな日々」と振り返った日々。
その本編ラストで使われ、エンディングテーマとして鳴り響いていたのがこの『思い出ファースト』でした。

 ラララララ… ラララララ…

ここが夏の終わり感を醸し出しすぎです。3期単独は5月だったのに笑

汗だくになった3期生たちが輝くばかりの笑顔でお互いを見交わしながら歌う姿がもうなんだか青春過ぎて。

忘れられない記憶です。


そして今。

3年経って、まだ全員残っていて。
現在の彼女たちが視線を交わしながら歌う時に去来する思いはいかばかりか。「よくまあここまで俺たちきたもんだな」ってとこでしょうか。(最近ずっと観ていた『LIVE-GYM』の影響です笑)

そんなことを考えながら観ているとまた涙腺が緩みそうです。

おかしな文章かもしれませんが、特別な思い出のある曲なのにいまいち定番化していないあたりがなんかこう逆に儚さとか切なさを深めているというか…そんな気がします。

アンセム『三番目の風』の陰に隠れてはいますが、乃木坂の、そして3期生の魅力が詰まった大好きな曲です。ライブでこの曲のイントロがかかるとひとりでめちゃめちゃ盛り上がります笑


こちらの楽曲は音楽配信サイト「レコチョク」でも購入できます>>>
『思い出ファースト』/乃木坂46



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『毎日がBrand new day』
乃木坂46、25thシングル『しあわせの保護色』のカップリング。歌唱メンバーは3期生12人。

明日も必ず日は昇る


前回の記事で「今、日本を元気にしている曲」と紹介した4期生曲『I see…』。
この『毎日がBrand new day』のMVはその翌日に公開されました。

公式YouTubeにMVが公開されたその日のうちに「SMAP感」というワードとともにバズった『I see…』と比べれば、正直陰に隠れている感は否めません。

でも、この曲を初めて聴いた時も私は涙が出そうになりました。

MVはセンター久保史緒里の美しい横顔のカットから始まります。

『未来の答え』で山下美月とのWセンターはありましたが、単独センターは意外にも初。
これまで色々なメンバーがセンターを務めてきた3期生曲ですが、満を持しての登場です。

昔のフィルム映画をイメージしたのであろう、一見フルサイズだが画面の周辺が黒くぼやけた映像。最後のホワイトアウトの演出もそうですね。

そんなノスタルジックな映像の中で流れ出すのは、「まんま『Stand By Me』じゃん」と言われるイントロから始まるR&B調のナンバー。

心地よいリズムに乗せて穏やかに、でも力強く歌われるのは喜び。

明日も必ず朝が来て日が昇ること、それを信じて夜眠りにつけることへの根源的な喜びと、再生への希望。

世界がこんなふうになってしまった今、とても大切でどうしても必要なもの。
それがこの曲、そしてMVでは表現されているように思います。

アースカラーの民族衣装っぽい格好で自然の中で歌い踊るメンバーたち。
自然児のよだももは撮影の合間に川べりに行って遊んでいたというエピソードが微笑ましいですね笑

その衣装やシンプルで大きな動きの振り付けも相まって、プリミティブな感謝や祈りの舞いのように見えます。

この曲にも音楽の力と笑顔の力が溢れていて、今の私たちを力づけてくれます。

3期生たちが纏った乃木坂感


私がこのMVに心を揺さぶられた理由はもうひとつあります。

それは3期生の姿に「乃木坂感」を感じたことです。

私は以前「3期生は乃木坂感という意味では薄め」と書きました。それは彼女たちひとりひとりの個性、言い換えればタレント性が強いからです。そして乃木坂感の強い4期と個性の3期の対比でこの先の乃木坂は進んでいくのだろうと。

関連記事:

3期と4期に対してのその印象は今でも変わりません。

それでもこのMVでの3期生たちは、穏やかでノスタルジックでガツガツしていなくて。
これって、乃木坂そのものじゃないですか。

「今回のMVは本当に楽しい撮影だった」とメンバーは口を揃えて言います。

ジェンガをやりながら無邪気にはしゃいだり(いつもながら後ろにいる大園桃子の表情が抜群!笑)、2番のサビで座ってキャンプファイヤーを囲みながら踊るシーンでは互いに目を見合わせ笑顔になったり。

ソロショットでのキメ顔(これがまた貫録すら感じさせる美しさ!)とは違う、心を許した仲間とだから出せる暖かい笑顔。幸せな時間。

それはいつか見た光景に似ていて。

私がたびたび引き合いに出す2017年神宮ライブの期別コーナー、バックヤードで円陣を組んだ1期生が「1期!1期!」と叫ぶシーン。

あそこに至るまで、結成から6年近い時が流れていました。
それまで決して仲良しこよしでやってきたわけではない彼女たち1期生がたどり着いたグループ愛、メンバーへの愛。

このMVでの3期生の姿に、私はあの時の1期生たちと近しいものを感じました。


3期生も加入から3年半が経ちます。

決して平らな道ではありませんでした。横一列で一緒に進んできたわけでもありません。
同期全員での現場はほぼなくなり、それぞれ個人での仕事が増えました。
久保ちゃん、山下美月、大園桃子が相次いで一時活動を休止したこともありました。

率直に言えばグループ内での立ち位置に明確な差もついて。
それでも同期って特別で。集まるとやっぱり安心して、自然と笑顔になって。
そして誰ひとり欠けることなく今もこうして12人全員揃っている。

3年半経った今だからこそ出せる、彼女たちの空気感。

変な文章ですが、乃木坂感薄めだった彼女たちがいつしか乃木坂感を身に纏っていた。
そのことが、なんだかとても得難くてとても嬉しいです。



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『毎日がBrand new day』/乃木坂46


最後に蛇足で恐縮ですが、分からない人には全く分からない例えを書いておきます笑

『I see…』は高校野球の県大会で全員1年生のチームが並み居る強豪を倒しながら大旋風を巻き起こしている感じ。
マンガ『おおきく振りかぶって』で主人公のいる西浦高校みたいな感じですね。

それに対し『毎日がBrand new day』は全員3年生のチーム。中には1年からレギュラーだった選手もいて、道のりはそれぞれだったけれど3年の夏にひとつにまとまって勝ち進んでいく。

同じ『おお振り』で探せば全員3年生ではありませんが武蔵野第一高校でしょうか。榛名という才能に恵まれた絶対的な存在がいながらチームとしてまとまりがあり、皆が互いをリスペクトしながら同じ方向を向いているイメージ。
現実世界では松坂大輔3年の夏の横浜高校かな。って高校野球史上最強チームのひとつじゃないですか!笑

まあ要するにどっちも素晴らしいってことです。


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伝説のアンダーライブ2ndシーズンを題材にしたセミドキュメンタリー小説。あの頃の熱量を叩き込んだ渾身の50,000文字です。
 

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当ブログに掲載された記事を再構成し加筆したもの。総文字数10万文字、加筆部分だけでも22,000文字以上のボリュームでブログをご覧の方にも楽しんでいただけることと思います。



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