以前に「フジツボダイバー」ことシチズンNB-6021の記事を書きましたが、同時期=2022年夏にはセイコーとオリエントもダイバーズの新作を発売していました。
いずれも60年代から70年代の国産ダイバーズ黎明期の復刻、奇しくも揃って41mm径。
そうくると並べて比較したくなるのが人情ってもんです。
各社モデルの特徴
セイコー:「セカンド前期型現代デザイン」
Ref. SBDC171/SBDC173
セイコーさんの、公式サイト上に特集ページもなく製品情報ページにも特に何の補足もない新作。どうも「キングタートル」がディスコンっぽい(これも別途記事にする予定)ので一瞬「タートルまで6Rムーブメントにして大幅値上げか!?」と思ったんですが、違いますね。
これ、セカンドダイバー「前期型」の現代デザインです。
(有名な植村ダイバーはセカンドダイバー中後期型)
恐らく初出は1968年。
オリジナルとの違いは各時のインデックスが細いこと。オリジナルはほぼ正方形。そしてデイト表示の位置。オリジナルは3時でこちらは4時半ですね。これはダイバーズの規格に合わせるため(各時位置の夜光が必須となったとのこと)やむなし。
話がややこしくなりますが「オリジナルの」前期型と中後期型の違いも書いておくと、ケースサイズがそれぞれ約41mmと44mm。後者はベゼルからかなり張り出したケース形状であり、さらに4時位置に特徴的なリューズガードを備えています。
スマートな前者と武骨でボテッとした後者。
この差異は現代デザイン同士でも表現されており、今回の「前期現代」は「植村現代」のSBDC109と比べスマート。ホワイトダイヤルの171など、もはやモダンでスタイリッシュと表現してもいいぐらいに感じます。
さらにジュビリーブレスを採用。現行セイコーダイバーではこちらだけです。

出典:セイコー公式サイト
サイズは厚さ12.3mm、横41.0mm、縦46.9mm。
その他スペックはプロスペックスのSBDC系共通のもの。パワーリザーブ70時間の6R35ムーブメント、200m防水、サファイヤクリスタル風防。
バリエーションは2種類。
ホワイトダイヤルの171。ブラックダイヤルにゴールドの針、インデックス、印字の173。
…また標準モデル=ゴールドを使わない普通のブラックダイヤルがない。アメリカでは出すのに(ラバーベルトですが)。相変わらず何考えてるんですかね?
シチズン:「復刻フジツボダイバー」
Ref. NB6021-17E/NB6021-68L
オリジナルはチャレンジダイバーの1977年モデル。
すごくざっくり言うとベンツ針を備えたクラシカルダイバーズ、そして安いのにチタン製に耐磁2種。

出典:シチズン公式サイト
サイズは厚さ12.3 ㎜、横41.0 ㎜、縦はデータなし(約49mmらしい)。
こちらのモデルについては既に記事にしていますので詳細はそちらをご覧ください。
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オリエント:「ダイバー1964 2nd エディション」
Ref. RK-AU0601B/RK-AU0602E
オリジナルが1964年初出の「カレンダーオートオリエント」。
知らないです笑…超マニアック。
今回「2ndエディション」と謳っているのは2021年に「1stエディション」があったため。
そちらのオリジンは同じく1964年発売ながら似て非なる「オリンピアカレンダーダイバー」。ややこしいですね。1stエディションは世界500本限定で、現在は完売しています。

出典:オリエント公式サイト
針とインデックスのデザインはほぼオリジナル通り。
それなのにオリエントスターこだわりの12時位置パワーリザーブインジケーター。どう考えても蛇足ですね。
でもこれがないとただの地味なサブパクり時計に見えるかも。
12時位置の逆三角形と各時のドットインデックス、一見ベンツっぽい時針(円の中の線がないので通称「タコ針」だそうです)。全体に「小ぶり」なのが逆に味になっています。
細かいところでいえばミニッツサークル(分目盛りの外周円)もクラシカルな意匠ですね。
ジュビリーブレスでシリコンベルト付属。
サイズは厚さ14.5mm、横41.0mm、縦49.6mm。この中では一番厚く、重厚感がありますね。
バリエーションはブラックの0601Bとグリーングラデーションの0602E。後者は公式オンラインストア限定となっています。
それでは、戦ってもらいましょう!
「デザイン」「再現性」「質感」「コスパ」の各項目について、例によって独断と偏見で順位をつけてみました。
デザイン:セイコー>シチズン>オリエント
セイコーが最も縦径が短くコンパクト。特にホワイトダイヤルはどことなくDOXAあたりを思わせるスタイリッシュさ。
シチズンは「ザ・普通」ですがベンツ針なのが嬉しいところ。
オリエントはせっかくほとんど完全再現のデザインなのに、メーカーこだわりのパワーリザーブインジケーターが邪魔をしている。まあこれがなければ古臭くて垢抜けないデザインでしょうけれど、好事家はそれが良いのでは?
再現性:シチズン>オリエント>セイコー
パッと見かなりオリジナルに近いシチズン。
オリエントは上に書いた通り。惜しい。
セイコーは現代デザインなので完全再現は敢えてやらないという縛りがあり、さらに植村ダイバー現代デザインとの差別化も図らねばならないので再現性は低め。

出典:オリエント公式サイト
質感:オリエント>セイコー>シチズン
ダイバーズらしい重厚感のあるオリエント。ジュビリーブレスも良い。
同じくジュビリーブレスでいかにもSBDC系らしいサテンの質感が出ているセイコー。
シチズンはチタンなので仕上げが甘い印象。まあこれは軽さや価格とのトレードオフなのですが。
コスパ:シチズン>セイコー=オリエント
これはぶっちぎりでシチズン。
実勢価格はセイコー132,000円(税込、以下同じ)オリエント123,200円に対し、シチズンは96,800円。黒文字盤はウレタンベルトなのでさらに安く67,760円!
しかもチタン製で耐磁2種。パワーリザーブが短いとか風防が無反射コーティングされていない(らしい)という減点材料はありますが、この価格設定では文句は言えないかと。
実用性、コスパのシチズン。
スマートで他の自社ダイバーとの差別化を図ったセイコー。
クラシカルな意匠を重厚感のある仕上げで纏めてきたオリエント。
まあ最後はお好みとご自分の既存コレクションに合わせてお選びくださいというありふれた結論になってしまうのですが笑
個人的にはSBDC171のスマートなホワイトダイヤルが好きですね。