ロスジェネはえてしてこだわりすぎる

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セイコーが150m防水ダイバーズウォッチの第3世代として1976年にリリースした「サードダイバー」。

その亀に似た独特のケース形状から「タートル」というペットネーム(愛称)でも親しまれており、2018年からは国内正規品でも復刻版が販売されています。

タートルの特徴および現行「キングタートル」ことSBDY049について詳しく書いた記事はこちらです。

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今回取り上げるのはそのコンパクト版、なので通称「ミニタートル」。
国内で正規品が発売されるのは今回が初めてとなります。

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キングタートルとの比較


素直にキングタートルと並べて比べてみましょう。

上:SBDY049、下:SBDY085

第一印象は「似てるけど似てない」。

タートルの最大の特徴と言えばCラインと呼ばれる卵型のケース形状。
今回のミニタートルはその基本的なイメージは踏襲しつつも個々のパーツはほとんど別物。
同じなのは分針と秒針ぐらいですかね(これも違うかも)。

実はかつて販売されていたキネティックダイバーSBCZ021あたりとダイヤルからベゼルまでのデザインはかなり近いです。あちらは外胴でしたがこちらは既に述べたCラインケース。そして36912時以外のインデックスはドットでしたがこのミニタートルは違います。

何というか「梨汁ブシャー」のあの人みたいな笑インデックスデザイン。なかなか個性的ですね。

個人的にはラグから続くケース側面がベゼルの外まではみ出すデザインがなんかスピードマスター・プロフェッショナルを思い出しました。スピマスは3時側だけ(リューズガードの役割を果たしているため)の非対称なのに対しこちらは左右対称ですけれど。

途中までポリッシュ、そこから面を変えてサテンと使い分けるラグの加工はSBDC083等の「スモウ」と同じですね。

デイト表示が3時位置なので当然リューズも3時になっています。

バリエーションは3種類。

SBDY083

グリーンモデルでメタルブレス。秒針とチャプターリングの36912時位置マーカーがイエローの差し色。


SBDY085

ブラックモデルでメタルブレス。秒針と「DIVER’S 200m」ロゴが赤の差し色。

SBDY087

ケースやベゼル側面にブラックPVD加工が施されたオールブラックモデル。シリコンラバーベルト。こちらだけ500本という数量限定です。



スペックと価格とまとめ


基本スペックは以下の通り。
自動巻きキャリバー4R35、パワーリザーブ約41時間。200m潜水用防水。SSケースで風防はハードレックス。サイズ厚さ 12.6 ㎜、横 42.3 ㎜、縦 43 ㎜。

キングタートルとの差は、あちらの風防がサファイヤクリスタルでベゼルインサートがセラミックであることとデイデイト表示。そして厚さ 0.6 ㎜、横 2.7 ㎜、縦 4.7 ㎜キングタートルの方が大きくなっていますので腕に乗せた時はかなりサイズ感の違いがあるでしょう。

まあ機械式セイコーダイバーとしてはミニマムのスペックなのですが、その分最安値の設定になっています。

Amazonの表記によれば定価56,100円(税込、以下同じ)。実勢価格はその2割引きで44,800円。以前はネット限定モデルは値引きなしという縛りがありましたが最近は柔軟な価格設定になってきたようです。ただポイント5倍の縛りは続いているようでで実質価格は42,560円となります。

ちなみにSBDY049は定価77,000円、実勢は2割引きで61,600円、実質は同じくポイント5倍で58,520円。実質で約16,000円差という絶妙なライン笑をついています。


さて、ここまでキングタートルとの違いを中心に書いてきましたが、実はこの両者はキャラクターの違う時計だと思います。

歴史的デザインに無骨さとゴツさが際立つキングタートル。
コロンとした愛嬌のあるフォルムだけどちゃんとセイコーダイバー伝統の実用性を兼ね備えたミニタートル。

このポップなデザインが使い込まれていくうちにどういう表情になるのか、ちょっと興味があります。無骨さを兼ね備えてきたら面白いですね。

そしてもうひとつ、セイコーダイバーのエントリーモデルとしての役割も担っています。

価格帯的にも現行機械式ダイバースキューバ最安値で、ちょうどセイコー5とキングタートル(そしてサムライ)の中間に位置していますね。

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セイコー5はダイバーズデザインの普通の時計(100m防水)ですから、そこに物足りなさを感じるユーザーにもこのミニタートル、いいんじゃないでしょうか。

そして43mmという縦径は特筆ものです。ダイバーズウオッチに憧れつつも諦めていた細腕さんや女性もぜひ一度腕に乗せてみてほしい…のですがネット限定なので店頭で試せないんですよね。

このあたりがどうにもこうにもセイコーさんらしい笑



実店舗に置かれず、公式サイト上に情報もないセイコーの「ネット限定」モデル。
メーカーが作らないならば、と今回手作業でカタログを作成してみました。

そのあたりの経緯は前の記事をご覧ください。

 

当記事にはモデル名SBDY~のものをまとめています。

SBDC~のモデル(ファースト現代、1968現代、スモウ)は下のリンク先記事となります。


情報は全て記事作成時点、楽天市場で調べたものであることをお含みおきください。
また価格は全て税込です。
(調査日:2020年10月6日)

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タートル(旧型)


セイコーが150m防水ダイバーズウォッチの第3世代として1976年にリリースしたモデルの復刻盤。その独特のケース形状から「タートル」という愛称で親しまれています。

下に書いている現行タートルとの違いを含め、タートル自体についての詳しい情報はこちらの記事をご参照ください。

 

共通スペック:
自動巻きキャリバー4R36、パワーリザーブ41時間。200m潜水用防水。SSケース+ハードレックスガラス。サイズ厚さ 13.4 ㎜、横 45 ㎜、縦 47.7 ㎜。

SBDY023

オレンジダイヤル+メタルブレス。シリコンラバーベルト付属。限定500本。実勢価格77,000円、実質価格73,150円。

SBDY039

グリーンダイヤル+メタルブレス。実勢51,000円、実質48,450円。

SBDY041

ブルーグラデーションダイヤル+ラバーベルト、PVD加工。実勢52,800円、実質50,160円。


タートル(現行)


旧型からベゼルインサートをセラミックに変更、風防もサファイヤクリスタルにしてサイクロップスレンズを追加。さらに特徴的な型押しブロックパターンのダイヤルにより全体的に質感が向上。それにより愛称もちょっと格が上がって「キングタートル」と呼ばれていたりします。

ただし外装以外の基本スペックにおける変更点は厚さが0.2mm薄くなったことのみ。

共通スペック:
自動巻きキャリバー4R36、パワーリザーブ41時間。200m潜水用防水。SSケース+サファイヤクリスタルガラス。サイズ厚さ 13.2 ㎜、横 45 ㎜、縦 47.7 ㎜。

SBDY049

ブラックダイヤル+メタルブレス。実勢61,600円、実質58,250円。



SBDY051

カーキダイヤル+ラバーベルト。実勢57,200円、実質54,340円。


サムライ


特徴的な鋭角のラグが日本刀を思わせるということで愛称「サムライ」。

サムライ自体についての詳しい情報はこちらの記事をご参照ください。

 

共通スペック:
自動巻きキャリバー4R35、パワーリザーブ41時間。200m潜水用防水。SSケース+ハードレックスガラス。サイズ厚さ 13.4 ㎜、横 43.8 ㎜、縦 48.4 ㎜。

SBDY043

グリーンダイヤル+メタルブレス。実勢51,900円、実質49,305円。


モンスター


怪物が口を開けているように見えるから「モンスター」。ボコボコしたベゼルが「怪物に掴まれた爪痕のよう」という説もありますね。

共通スペック:
自動巻きキャリバー4R36、パワーリザーブ41時間。200m潜水用防水。SSケース+ハードレックスガラス。サイズ厚さ 13.4 ㎜、横 42.4 ㎜、縦 49.4 ㎜。

SBDY037

オールブラックでメタルブレス。実勢54,500円、実質51,775円。


ベビーツナ


「モンスター」にセイコーダイバーのアイコンである外胴プロテクターをつけたモデル。48mmも横幅があってどこが「ベビー」なのか何度見ても疑問です笑
アワーマーカーのところに小さく数字で秒数が書いてあるのでむしろこちらが昔ながらのモンスターデザインを踏襲しています。
このベビーツナは現行レギュラーモデルがありません。

共通スペック:
自動巻きキャリバー4R36、パワーリザーブ41時間。200m潜水用防水。SSケース+ハードレックスガラス。サイズ厚さ 13.8 ㎜、横 48 ㎜、縦 51 ㎜。

SBDY053

アイスブルーダイヤル+メタルブレス。実勢51,900円、実質49,305円。調査時点ではこのモデルの在庫はあと僅かでした(再ロットの有無は不明です)。


SBDY055

ブルーグラデーションダイヤル+メタルブレス。実勢51,900円、実質49,305円。


これまでネット限定モデルは値引きなしが通例でした。そのため個人的に狙っていてウォッチしていたSBDY049が値下げ解禁した時にはわざわざ記事にまでしました。

 

しかし今回調査した時点で、この記事に掲載しているモデルの実勢価格はSBDY023を除きすべて定価の2割引きになっていました。ユーザーとしてはもちろん喜ばしいのですが、セイコーがなりふり構わなくなってきたという気もしますね。

あるいはディスコンして売り切りなのかもしれません。ネット限定の買い時がさらに難しくなったなあ笑



ワールドフェイマスなセイコーダイバー。その「タートル」シリーズに、2020年始早々大注目のモデルが登場しました。

セイコー プロスペックス SBDY049

タートルの歴史と基本スペック


「タートル」は海外ユーザーが名付けたと思われるペットネーム(愛称)です。いつの間にか定着し現在ではメーカー側資料でも用いられるようになりました。

日本ではサードダイバーという名称の方が有名かもしれません。
その名の通りオリジナルはセイコーが150m防水ダイバーズウォッチの第3世代として1976年にリリースしたモデル。その復刻盤であるため「復刻サード」などと呼ばれることもあります。国内正規品のリリースは2018年4月でした。

特徴は何と言ってもケースの形状。
かのジェラルド・ジェンタがオメガ コンステレーションで用いた、Cラインと呼ばれるケースとラグが一体化した卵型のデザイン。そのドレッシーなフォルムを無骨でデカいダイバーズウォッチに採用した結果、この少しユーモラスかつレトロな独特のスタイルが生み出され、タートルというペットネームの由来ともなりました。


この極端に短いラグが格好いい。
公式によれば厚さ13.2㎜、横45㎜、縦47.7㎜。縦と横幅の差はわずか2.7mmに抑えられています。

ムーブメントは4R36。国内正規機械式ではエントリーモデル用ですね。リローンチしたセイコー5と一緒です。21,600振動なのでややロービート。パワーリザーブは約41時間。

防水性能は200mと十分なレベルです。

関連記事:セイコー5、待望の日本逆上陸!

ラグスポ調の型押しダイヤルが魅力の「和製アクアノート」


そして既に上の写真でお気づきのことと思いますが、このモデルの売りはダイヤル(文字盤)。

 

ラグスポ=ラグジュアリースポーツウォッチの印象が強いブロックパターンの型打ちダイヤル。ロイヤルオーク、アクアノート、最近ではジラールペルゴのロレアートやモーリスラクロアのアイコンなどと同じイメージですね。

厳密にはロイヤルオークはタペストリーダイヤル(溝部分にも模様がある)、ロレアートやアイコンはクル・ド・パリダイヤル(細かいピラミッド状の模様)なので微妙に違いますが。

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パターンのブロックサイズはやや大きめ。ロイヤルオークとアクアノートの中間ぐらいでしょうか。ケースが丸みを帯びているのでどちらかと言えばアクアノートの方が近いイメージでしょう。せっかくですので言い切りましょう、「和製アクアノート」だと。

その証拠に?こんなバリエーションも出してます。
SBDY051。実にアーミーなカーキグリーンでウレタンバンド仕様なのですが、これって完全にアクアノートのこれを意識してますよね?
見比べてみるとそっくり…いや結構違いますね笑

ダイバーズの回転ベゼルの有無とインデックスがドットとアラビアという違いがあるのでいたしかたないでしょう(それ以前に値段が100倍ですけど)。

話を戻します。

ラグスポが本当に手の届かない価格帯になってしまった現在。
アイコンはあのブレスの出来で20万円ですから本当に頑張っていると思うし好感が持てます。っていうかなんなら欲しい笑
ただカリプソというデザインコードの元ネタはあるものの、ラグの切り方とダイヤルの細かさは露骨にロイヤルオークインスパイア。

それに対しこのSBDY049はサードダイバーの歴史的デザインをほぼ完全に踏襲し、ダイヤルのみをラグスポ調にしたモデルなので「いやパクッてません、単なるダイヤルバリエーションです」と開き直れます。

いやむしろCライン+エンボス文字盤ってことはジェラルド・ジェンタへのオマージュじゃん!まあそれだと「和製ロイヤルオーク」になっちゃって話がややこしくなりますが。



不満は価格設定と販売戦略


ここまで書いてきたように非常に魅力的なこのモデルですが、不満もあります。

それは価格と販売戦略(流通形態)。

!!!2020年6月5日追記!!!
どうやら当モデルの値下げが解禁されたようです!
詳しくはこちら>>>
【速報】「キングタートル」値下げ解禁!セイコー プロスペックス SBDY049/051

SBDY049の定価が77,000円(税込、以下同じ)。記事作成時点で現行タートルのメタルブレスで最も安いSBDY013が63,800円ですから+13,200円です。
でも実勢価格は2割引きで51,040円、それに対しこちらは値引きなし。
さらに楽天やYahooショッピングでの付与ポイントも、セイコー側からの指示があるのか10倍と5倍と差があるので実質価格は45,936円と73,150円。+27,214円、約160%です。
SBDY013からの変更点は風防がサファイヤクリスタルになりサイクロップスレンズもついたこと。そしてベゼルインサートがセラミックに。それに加えてこのダイヤルですから、全体の質感はかなり向上しているのでしょう(「でしょう」の理由は後述)。

定価の13,200円差であればまあ妥当かと思います。しかし値引きやポイントまで含めた実質価格の27,000円差は…ちょっと納得できません。

定価販売したいという思いと、既存モデルからコストのかかる変更があれば定価を上げざるを得ないということからこういう設定になったのでしょうが、完全にメーカー都合ですよね。ユーザーからすれば実勢価格がすべてです。


しかもこのSBDY049、ネット流通限定モデルなのです。
つまり店舗で実物を確認することができない。そのため上の文章でも「質感は向上しているのでしょう」という表現になっています。

このモデルは質感向上こそがストロングポイントであり、ユーザー側から見れば購入動機そのものです。

なのになぜそれを確認させないのか。
ユーザー目線が欠けているとしか思えなません。

セイコーの思惑としてはレアモデルにして飢餓感を煽りたいのでしょう。
でもこんな一目惚れ購入がありそうなモデルをなぜにわざわざネット流通限定にしてユーザーの目から隠すのか。正直理解に苦しみます。

ネット限定のメリットは本来コストが減る=安くなる、のはずなのに値段は上がるしショップのポイントも5倍までと制約をかけているのもなんだかなあ。


とまあここまで不満に思うのも、裏を返せばそれだけ惹きのあるモデルだということ。

私は手首が極細なのでタートルは正直これまでスコープ外だったのですが、これ見て一度お店で腕に乗っけてサイズ感確認してみようかなと思いました。

元々タートル狙いだった方ならマストバイのド本命モデルと言えるでしょう。



関連記事:セイコー プロスペックス SBDC097、スモウなのにスタイリッシュ!な「和製ヨットマスター」

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